真に「財政構造を変える」とはー令和6年3月議会代表質問

2024年3月9日[カテゴリ:財政・財政改革, 質問

 新年度から、西宮市では財政構造改善に取り組むことになっています。

西宮市財政構造改善基本方針(令和5年10月発表)

 私は21年前、初当選した時にまず重点的に取り組んだのは財政問題(←クリックするとコラム「財政改革ー初めての一般質問より」が開きます)でした。

 当時は、阪神・淡路大震災の復興に要した事業費を借金で対応せざるを得ず、発災から10年が経過しようとしていたころですが、その借金の返済額が膨らみ、財政を圧迫してきていました。
 また、昭和40年代に入庁した団塊の世代の大量退職の時期が重なり、多額の人件費(退職金等)が必要となることが見込まれていました。

 平成15年7月、市に対して、将来世代のために財政改革を断行するよう求めた結果、第3次行財政改善実施計画(平成17年度から20年度)が断行されることとなり、約4年間、議員報酬も5%カットするなどして、危機的な財政状況、そして、懸念された財政再建団体への転落を免れることができました。
 
 計画を終了した平成21年度以降は、公共施設の老朽化や高齢化社会に対応するための備えができていないなど、財政的な課題は残されていましたが、新たな財政改革に関する計画は策定されずに、財政の健全化に向けて、しばらくは堅実な財政運営が進められていました。

 しかし、年月が経過するにつれて、痛みを伴った改革の辛さ、教訓を忘れはじめ、特にこの6年間は、市立中央病院と県立病院との統合に伴う事業費、多額の事業費を投入して建設された第二庁舎と引き換えに、廃止、縮小すべきであった施設の方針を二転三転させてきたこと、また、ひたすら市職員を増やし続け、財源のめどがあいまいなまま目先のバラマキを加速させてきたことなど、放漫財政が加速し、再び、危機的な財政悪化を招いてしまいました。

 時代の変化とともに行政課題も変わり、昔は行政がやらないとできなかったことが民間企業でもできるようになった事務事業が増えています。今こそ、そうした事業を民間へ委託することにより、市の人材を迅速に新たな行政課題の解消に充てる必要があると考えています。

 もちろんそれだけでは、大きく財政状況が改善するわけではないので、新しい課題に取り組むためには、行政が実施する必要性の低くなった事務事業は手放していかざるを得ないことは、財源に限りがある地方では当たり前のことです。
 その政策効果の低い事務事業をやめる決断ができるような客観的根拠も重要となります。そうした仕組みが必要であることも16年前の本会議(←クリックするとコラム「新規事業実施のルール化について」が開きます。)で提言しています。それが、真に財政構造を改革するということだと思っています。

 令和6年3月議会では、会派を代表して行う代表質問をする機会をいただきましたので、財政構造改善の取組みについて、現在の市の考え方を問い、議論することにしました。

====本会議場での議論の概要====

令和6年3月議会 代表質問

1.財政運営について
ア)財政構造改善計画
■質問の背景(田中まさたけ)

 石井市長には、市長就任直後の平成30年6月議会の代表質問におきまして、人件費の高騰による財政の悪化を懸念し、改善を求めました。そして、それから約6年が経過して、ようやく新年度より財政構造改善計画が策定されることとなっております。
 
 この取組みは、単なる収入の増加、そして経費削減による収支改善にとどまることなく、時代と行政課題の変化に合わせて、人員の配置とお金の使い方を計画的に変えていくようにしなければならないと考えております。本日は、時間の都合上、この件につきましては、教育委員会技能労務職のみ取り上げたいと思います。

 私は、これまで一貫して学校給食の調理業務は、公務員が行う必要性が低く、民間事業者に委託するべきと主張してまいりました。
 しかし、先般示されました財政構造改善基本方針に基づく取組みの大枠の中では、教育委員会技能労務職については、会計年度任用職員の活用など、担い手の最適化の項目に位置づけられております。

■質問(田中まさたけ)
 財政構造改善基本方針に基づく取組の大枠の中で示されましたこの教育委員会における技能労務職のうち、特に用務員及び調理員について、その執行体制も含めて、どのような構造改善を図るお考えなのか、お尋ねをいたします。

■市の回答
 教育委員会の技能労務職員の携わる業務の今後の方向性につきましては、平成29年11月にお示ししました、技能労務職が従事する業務の見直しについての中で分類整理したところです。
 用務員については、令和3年3月に求められる業務の明確化を図るため、その標準職務を定め、進捗管理を行うことで、個々の職員の意識向上にもつなげています。
 用務員が担う学校の環境整備等業務については、年間を通じて計画的に行う作業のほか、建造物や備品の維持修理や構内の除草や剪定、児童・生徒の安全を確保するための日常的な巡視など、学校運営上必要な業務であると認識しております。
 また、現場で学校管理職等からの依頼や指示が日常的に発生する特性の業務であることから、業務委託による実施については、偽装請負となり得る可能性が指摘されているところです。
 このような中、現在は会計年度任用職員を活用し、体制の維持を図っておりますが、会計年度職員を含めて、職員の高齢化が顕著で、スキルの継承を含めた体制の維持が困難な状況になりつつあり、効率的な運営及び多様な業務を安定して実施できる持続可能な体制づくりのため、引き続き様々な手法を検討してまいります。

 また、学校給食調理業務については、会計年度任用職員の活用を進めており、令和4年度からは、会計年度任用職員がチーフ調理員として従事する執行体制を取り入れるなど、保護者から信頼の厚い自校直営を維持しつつ、昨今人件費が高騰している中、業務委託した場合のコストを意識しながら費用を抑えて実施しているところです。
 今後も安全・安心な給食の提供とともに、効率かつ持続可能な運営に努めてまいります。

■意見・要望(田中まさたけ)
 まず、用務員につきましてですが、皆さんのお手元の資料のほうには用務員の方と、あと調理員の方のそれぞれ年齢別の人数を記載をさせていただきました。
 間もなく退職をされる方々が、非常に多くなっている今こそ、この(民間委託の)方針を固めていくというのは非常に重要なことだと思っております。
 その中で、用務員につきましては、民間事業者への委託が難しいと、正規職員の退職不補充によって、多様な業務を安定して実施できる時持続可能な体制づくりのための様々な手法を検討するということで、少し遠まわしにお答えを頂いたと思っております。
 この様々な手法ですが、くれぐれも正規職員を再び補充することを、この手法の選択に加えることのないようにお願いをしておきたいと思います。これは指摘をしておきます。
 加えまして、現在のように、全ての学校・園に用務員を配置する必要があるのか疑問が残ります。もっと詳細に業務を可視化して、スキルの継承が図れるように、効率化も図った上で、1人の方が複数校を担当する方式で職員を配置するなど、正規職員のみならず会計年度職員も減らしていただいて、特別支援学級の支援員であったり、スクールカウンセラーなど、増加している課題に対応する人員強化に転換する、こういった真の財政構造改善を図っていただきたいと思っております。
 
 新年度の検討の中で、そうした方針がこの用務員・調理員に関しまして示されますことを強く要望しておきたいと思います。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 この課題につきましては、現市政では、頑なに直営にこだわっていますが、私は、学校給食の調理業務は民間に委託し、用務員業務は効率化して全校配置を取りやめるという改革を進めるべきと考えています。
 
 これらの問題は、これからの5年程度の間に、市の方向性を決めていかないといけない重大な時期に入っていると思っています。引き続き、議論をしてまいります。

 財政に関する代表質問での議論の続きは、次回以降のコラムに掲載いたします。

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