条例を見直す前にやるべきことー令和6年3月議会代表質問

2024年7月21日[カテゴリ:参画と協働, 質問

 今回のコラムでは、本題に入る前に、日々の活動や思ったことを発信していますフェイスブックの投稿を掲載しておきます。
 10年以上ぶりに会派で行った視察について掲載しました。

フェイスブックでの投稿

■7月16日投稿

10日(水)に、会派のメンバーとともに、北九州市を視察させていただきました。
北九州市を視察させてもらうのは、およそ10年ぶり。
前回は現地での視察でしたので、小倉城の横にある市役所に伺うのは初めてでした。
研修内容は、水道水を使った日本酒づくりと私道における水道整備についてでした。
私道における水道管整備については、昨年9月に一般質問で取り上げ、導入を提案した政策で、実際に実施されている自治体の方から説明を伺うことができ、改めて、西宮での実現に向けて取り組みたいと思っています。
水道水を使った日本酒づくりについては、北九州市市制60周年を記念し、民間企業とコラボした期間限定の取組みでした。
来年は西宮市の市制施行100周年、日本遺産と西宮の水道水のPRに、民間の酒造会社とコラボできないものかと想像しながら質問もさせてもらいました。
酒造会社に地ビールを作ってもらうなかで、民間団体とコラボしてホップ栽培にも挑戦されている北九州市の上下水道局は、かなりチャレンジングな取り組みを積極的に行う組織だと感服しました。
お忙しいなか、視察研修を受け入れていただいた北九州市役所職員の皆様に感謝し、今後の政策提案に活かしたいと思います。

■7月20日投稿

11日(木)午前中は、福岡県飯塚市で、立地適正化計画及び移住支援等の取り組みについて研修を受けました。
移住支援や定住支援に、一般会計予算約810億円のうち、約1億9000万円の予算を用意して、人口の社会像を実現していることを確認しました。
神戸市の人口を抜き、まだ人口が増えている福岡市の博多から電車で約50分、単線ですが1時間に3本の列車が走っている飯塚市ですが、死亡者数が出生数を大幅に上回っていることにより、本市同様人口は減少し続けているそうです。
私は、子育て世代の流入による社会増と同時に、出生数の増による自然減の抑制につながる政策が重要だと思っています。
西宮市と同規模の自治体で、出生数の増加の成果を上げている自治体があれば視察してみたいと思っています。

晩はヒューイット甲子園で西宮甲山ライオンズクラブの今期初例会でした。今期は会長を務めます。

協働と参画のまちづくり

 今回のコラムの本題に入ります。
 西宮市は「市民と共に進めるまちづくり」を市政運営の基本とし、市民の皆さんが持つ豊富な知識や経験を生かしてまちづくりを進めていくことを目的として、「西宮市参画と協働の推進に関する条例」を制定し平成21年4月から施行されてきました。

 私は、市政の活性化を掲げて初当選したこともあり、1期目の時からこの参画と協働の取組みについてたびたび本会議で取り上げて、特に協働の部分に注目して、その実効性について議論してきました。
 平成17年6月議会(←クリックするとコラム「(仮称)市民参画条例」が開きます。)では、この条例を検討するにあたって、課題を列挙して条例制定の目的を確認したことがあります。

 一部の人たちだけのためであったり、活動家に利用されるだけの条例にならない注意しなければならないと考えてきました。
 
 ですので、同じく平成17年6月議会一般質問(←クリックするとコラム「条例の整理と市民に対する周知」が開きます。)では、条例を制定しても、そのことが広く一般の方に知られていなければ、効果が上がらないということも指摘していました。

 市政に「参画」するというのは、主に市の政策決定にあたって市民が意見をできるというイメージです。
 参画の機会の一つに、市民意見提出手続(パブリックコメント、以下パブコメ)があります。このパブコメの問題点として、寄せられる意見が少ないという点が指摘されますが、ちゃんとすべての市民がパブコメが実施されているということを知っている上で、つまり、十分に周知されているうえで意見が少ないというのであれば問題はありません。いただいたご意見は、ありがたい意見として丁寧に取り扱う必要があると思っています。

 ちなみに、「反対!」というだけでは、なかなか取り合ってもらえません。どういう点がまずくて反対なのかの意見が付されていれば、その点を修正することは、条例でも、数年後に見直しをする規定を設けて、その際に反映することを検討するこも不可能ではないと感じることが多々あります。

 しかし実態は、せっかく寄せられたご意見を政策や条例に活かされることが非常に少なく、ご意見に対する市の回答が雑であったり、的外れなことも多いと感じています。

 もっと丁寧に対応しなければ、パブコメの制度自体が形がい化しつつある中、ますます意見が集まらなくなるということを、委員会の中でも指摘してきました。

 そして、協働については、幅広い定義があると思っていますが、この条例に基づいて行われている取り組みの一つに、未来づくりパートナー事業(協働事業提案制度)があります。
 私は、協働はもっと広義にして取り組むべきだと主張しています。
 
 例えば、市の業務を委託している企業や団体、工事等の請負契約の相手も協働のパートナーとしてお付き合いする必要があると考えています。
 入札の際に、応札対象事業者から知見をいただいて事業に活かすことができれば、まちづくりに活かされる可能性もありますし、無駄をなくすことも可能になります。市内企業の育成ももっと真剣に実施されるはずです。

 市民が中心となって活動している団体も協働のパートナーとしてお付き合いする必要があります。
 例えば、令和3年6月議会一般質問(←クリックするとコラム「通学路の見守り活動の担い手の確保」が開きます。)でも、子供たちの通学路の見守りボランティアの方々とのお付き合いを学校だけに任せていると、人材の確保が困難になる可能性が高まると考えて、具体的な対策を提言しています。

 平成17年9月議会一般質問(←クリックするとコラム「ボランティア登録制度の創設を」が開きます)では、協働のパートナーを確保するための方策も提案してきました。
 
 平成22年6月議会一般質問(←クリックするとコラム「参画と協働を理念だけで終わらせないために」が開きます。)では、条例施行から約1年経過後に、改めて、透明性の向上や協働の実効性に関する提言をしました。

 そして、施行から15年が経過し、今年の3月議会の市長の施政方針のなかで、この条例の見直し作業を行う方針が示されました。

 現状では、条例の見直しよりも、条例を運用する市職員の意識改革、上述した、市民の意見の取り扱いや協働のパートナーに対する付き合い方を丁寧にする方が先であると指摘したうえで、代表質問において、なぜ見直そうとしているのか確認しました。

====本会議場での議論の概要====

令和6年3月議会代表質問

5.協働について
ア)参画と協働の推進に関する条例の見直し
■質問の背景の説明(田中まさたけ)

 施政方針におきまして、この西宮市参画と協働の推進に関する条例を見直す方針が示されましたが、その中で述べられました課題の原因は、条例自体にあるのではなく、各部署における運用にあると私は感じております。
 市が課題の解消のために市民に協働を求めている中で、
①協働のパートナーとして実際に活動している市民の視点に立って課題に向き合えていない。
または、
②御上(おかみ)の意識が残っていたり、
あるいは
③あるいは市民の善意や努力を利用して、単に経費をかけずに、もしくは安く済ませて課題を解決しようとする発想で検討していたり
など、こうした市の職員の意識を変えずに、条例だけを変えても結果は同じではないかと考えます。

■質問1(田中まさたけ)
 参画と協働を進めるに当たって、現在の「西宮市参画と協働の推進に関する条例」の何が課題で、どのような改善を検討し、どのような効果を期待しているのかお尋ねをいたします。

■質問1に対する市の回答
 西宮市参画と協働の推進に関する条例――以下「条例」と言います――条例は、平成21年に施行してから15年が経過しており、この間に少子高齢化や市民ニーズの多様化がさらに進み、地域のつながりの希薄化をはじめ、社会や地域の課題が複雑化してきております。

 そのため、社会の変化に合わせた参画、協働のあり方について検討が必要と考えております。
 そこで、市民の参画と協働のもと、さらに社会の変化に対応したまちづくりを進めるため、令和4年2月より、西宮市参画と協働の推進に関する条例評価委員会におきまして、条例に基づく市の取組状況や、条例改正の必要性の有無について検証を進めてまいりました。
 
 検証の結果、市民同士の協働を促すような協働のあり方についてやシチズンシップの醸成といった記載について検討するよう提言を受けるとともに、職員の意識向上やパブリックコメントの制度面、運用面での改善も求められております。

 この提言を受けて、多様な主体による地域の課題解決に向け、条例や運用の見直しを進める必要があるものと考えております。

 これら見直しを進め、市民のシチズンシップをより地域課題解決の力とするとともに、参画と協働の視点で、様々な市民活動団体やNPO等と地域課題をつなぐ仕組みについても改善してまいりたいと考えております。

【包括連携協定】の活用
■質問の背景の説明

 一言で協働といいましても、様々な形がありますが、
本日は一つの例として包括連携協定についてお尋ねをしておきます。
 現在、本市では、6社の企業と包括連携協定を締結しております。その協定を締結する際には、私たちにも御連絡を頂いておるのですが、その後の進捗が全く分からない状態になっております。
 どのような取組みをしていただいていて、どのような効果が出ているのか、また、他の企業、団体の皆様への広がりも期待して情報を発信するべきと考えます。

■質問2(田中まさたけ)
 現在の包括連携協定の取組や協定のメンテナンスをどのように行っているのかお尋ねいたします。
 あわせて、ホームページやSNSを通じてその内容を発信するべきと考えますが、市の見解をお尋ねいたします。

■質問2に対する市の回答
 包括連携協定を締結している事業者には、事業者の専門分野などにおける各種セミナーの講師やイベント等でのブース設置のほか、店舗を活用した市政情報の発信などで御協力いただいております。
 また、日本郵便株式会社とは、市制施行100周年を記念した切手の発行に向けて共同で取り組んでおります。
 包括連携協定を締結している事業者とは、年に一度、情報共有や意見交換などを行い、実効性を伴った協定となるよう努めております。
 
 次に、ホームページ、SNSを通じて、その内容を発信するべきではないかについてお答えいたします。
 市では、これまで包括連携協定を締結した旨の広報は行っていましたが、具体的な活動内容は十分発信できていませんでした。
 今後、市ホームページなどの充実を図り、本市と包括連携協定を締結しようと考えている事業者の参考となるよう努めてまいります。

===ここまでが本会議場での議論の概要===
 
 西宮市参画と協働の推進に関する条例の課題についての質問に対して市は、「多様な主体による地域の課題解決に向け、条例や運用の見直しを進める必要がある」と認めたうえで、「地域課題解決の力とするとともに、参画と協働の視点で、様々な市民活動団体やNPO等と地域課題をつなぐ仕組みについても改善」したいとの回答を得ました。

 私は、地域課題に取り組まれている市民活動団体やNPO等も高齢化等で担い手の確保にご苦労されていると感じておりまして、個人と団体・NPO等をつなぐ仕組みをもっと強化する必要があると考えています。

 今は、団体やNPO等のinstagramやFacebookなどSNSを検索して、つながる方も多いと思います。ですので、市が、個人と団体・NPOをつなぐアプリを開発するなり、市のホームページ上で、市内で活動している団体やNPOを活動のジャンルごとに整理してその団体の活動の概要とともに一覧にすることで、自主的に団体やNPOと繋がることが容易になると思います。
 また、そうした環境が整えば、ITが苦手な方に対しては、市の担当部署でサポートすることも容易になると考えられます。

 そうした形で、上述しました、平成17年9月議会一般質問平成22年6月議会一般質問(←クリックするとコラム「提案した政策のゆくえ」が開きます。)で私が提案、指摘していたことが、15年の年月を経て実現されることを期待したいと思います。

 また、包括連携協定の活用については、一定前向きの回答を得ましたが、どのような内容になるのか、引き続き注目していきたいと思います。

 そして、職員の意識改革という回答に含まれていると理解して、時間の都合上、これ以上突っ込みませんでしたが、市民から募った意見の取り扱いや広義での「協働のパートナー」に対する付き合い方を丁寧にしていくことも同時に進められるよう、民生常任委員会において、今年度の取り組みを注視しておきたいと思います。

 この項目に関する質問は次回のコラムに続きます。

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