今年の春先から、兵庫県知事の問題がクローズアップされ、明日、県議会から知事に対して不信任案が提出される予定とのことです。
県議会議員の方々には、県民を代表してもう少し我慢して頑張ってほしかったというのが、私の率直な感想です。
県民の多くが「辞職するべし」と考えて、世論として投げかけるのは自由です。リコールのハードルが高くて、県議会に「知事をやめさせること」を期待するのも理解できます。しかしです。
私が6年前に西宮市議会議長を務めていた時の、当時の市長の暴言問題への議会の対応を思い出します。当時に掲載したコラムはこちら(←クリックするとコラム「市長の退任について」が開きます)になります。
あの時は現職の市長が出馬しないことをすでに表明して、その任期もあとわずかというタイミングでしたので、退職金に関する議論も議会運営委員会で出てきて、結果的に、市長の判断で、新年度の骨格予算だけを組んで、3月議会が始まる前に任期を待たずに辞職したということがありました。議長としては、いろいろと悩んだ中で、多くの同僚議員、そして議会事務局の職員の皆様が助言をくれたことを思い出します。
これらの助言には本当に救われました。
今回の件では、今年6月に、元県民局長が作成した文書の内容を明らかにするために、百条委員会(正式名称は「文書問題調査特別委員会」)を設置することを決めたところまでは、議会としてのあるべき姿だったと思います。しかし、その後、世論、外圧に県議会までが流されてしまったのではないかという印象を抱きました。
県議会議員はこれまでの流れを最も知っている存在ですから、世論を参考にしつつも、県議会としての対応は一貫するべきだったのではないかと思っています。
百条委員会としての結論はまだ取りまとめられていませんし、調査についても、9月議会が終わってからもまだ続く予定だったと聞いています。
なぜ、百条委員会を開いて真相を解明している途中に不信任案を提出することになるのか、その辺の説明がありませんし、知事に、県議会を解散するスキを与えているのではないのかとすら感じます。
特に、日本維新の会の対応は理解できません。
真相を解明するための百条委員会の設置に反対をし、当時は知事をかばっていたのに、突然、明確な理由もなく、突然知事に辞職を求め、それまでかばってきた知事が言うことを聞かないから、不信任案を提出する方向にかじを切ったように見えます。
短絡的すぎる。
職員の命が失われていることを重く受け止め、このようなことが二度と起こらないよう、最後まで真相を究明し、再発防止策を講じるように県庁に促すことに、議会としては全力を注ぐべきであったと私は考えます。
仮に、不信任決議が可決し、県議会を解散されて新しい県議会のメンバーとなり、さらに新しいメンバーで不信任決議を可決して知事が失職し、新しい知事になった場合、この問題についてのマスコミの注目は薄れ、調査結果もうやむやにされたまま終わる可能性すらあるのではないかと心配しています。
おそらく明日提出されるであろう不信任決議案の提案理由を見守りたいと思います。
部活動の地域移行の在り方について
さて、今回のコラムの本題に入ります。
昨年5月に教育こども常任委員会の委員長に就任し、現在、国から方針だけが示されて、現場では大きな問題となっている「部活動の地域移行の在り方について」を委員会の施策研究テーマに設定して、管内視察、他市の視察も含めて、集中的に調査、議論を進めてきました。
そして、今年の5月に報告書を作成し、その中で各委員から市に対して今後取り組むべきことを提言してもらいました。なかなか全委員が一致した意見を見出すことはできませんでしたが、教育委員会、そして、市長部局の文化スポーツ部には、各委員からの意見を最大限受け止めていただいて、今後取組みを進めてもらえることを望んでおります。
議長に提出した報告書はこちらになります。
令和5年度教育こども常任委員会施策研究テーマ報告書
↑こちらをクリックすると施策研究テーマの調査報告書が開きます。
昨年8月に実施しました管内視察の報告書はこちらになります。
令和5年8月 管内視察報告書
↑こちらをクリックすると管内視察の結果報告書が開きます。
本来は、部活動を地域移行するべきかどうかを検討したかったのですが、国がすでに方針を決めている中ですので、基本的には、地域移行を進めるにあたっての課題を抽出したような形となりました。
施策研究テーマ報告書における提言の前に、また、浜甲子園中学校での合同部活動の視察をし、以下の意見を付して報告書を提出しました。
野球部は、暑さ指数(WBGT)が基準値を超えていたことから、室内(格技室)での活動に切り替えていました。3年生が引退したのちにもかかわらず、格技室だけでは手狭なほどの部員が活動し、メニューを分けて練習していました。また、男子バレー部は体育館で12 名が練習していました。いずれのクラブも、生徒たちは学校間の隔たりなく、順応していきいきと練習に励んでいる姿を確認できました。
当日の指導体制は、野球部は3 名、バレー部は1 名の先生が指導に当たられ、特に野球部は6 名の指導者がいる中で、生徒10 名から15 名に1名の割合で配置されており、適切な指導体制が確保され、かつ、教員の負担の軽減にもつながっていることを確認できました。
よって、特に生徒数が減少している地域においては、部活動の持続可能性や生徒にとって選択の幅を広げる観点からも、教員の負担軽減の観点からも、現時点では、合同部活動の取組みは有効な手段と考えられます。
また、限られた練習スペースにおいて、各部活動の練習場所を確保、調整しやすいという利点も考えられますし、部活動の地域移行を進めるにあたっては、指導者の確保の観点からも、まずは複数校による合同部活動を進めることが有効であると考えられます。
⚫合同部活動を実施する学校間のルール作りが急がれます。
細かいところでは、これまでは各学校名がチーム名になっていたところを、拠点校以外の学校に通学する生徒にとっては、通学する学校名と所属する部活動のチーム名が異なることになり、また、地域クラブとして合同で行う場合は、どのように調整してチーム名を決定するか、その他、大会への出場の可否も影響を受ける可能性があるなど、様々な課題が生じることが予想されます。
今後、この拠点校方式や地域クラブ方式の合同部活動を全市展開するためには、合同にする学校間の距離や地形、合理的な拠点校の決め方、拠点校以外の学校の生徒の学校間の移動の負担、その安全性についても検証し、全市統一のルール作りが必要になると考えられます。
⚫体育館に設置されたエアコンは熱中症対策として効果が高いと思われます。
エアコンが設置されていない格技室での練習の様子を視察した直後に、エアコンが稼働している体育館での練習を視察したこともあり、エアコンの効果をより一層実感することができました。もちろん、体育館の耐熱性はこれまでどおりですから、真夏の晴れた日は特に、教室ほど冷えるわけではありませんが、適度な水分補給により、クラブ活動中の熱中症リスクはかなり低下すると思われます。
中学校学習指導要領において、部活動については、第1 章総則の第5「学校運営上の留意事項」の「1.教育課程の改善と学校評価,教育課程外の活動との連携等」の中で、
その際、学校や地域の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い、持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。と記載されています。
議長に提出した報告書の中から、私からの提言を以下に記載します。
1.中学校部活動の今後の在り方について
【1】「西宮市立中学校・義務教育学校部活動の方針」に示された部活動の教育的意義を実現するために、部活動のあるべき姿を見直し、休日の部活動の地域移行と並行して、市立学校に通学する生徒にとって、部活動の選択の幅を広げる環境を整備すべきと考えます。
そのためにまずは、複数校による合同部活動の取り組みを、休日の部活動から広げることが有効と考えます。管内視察において、合同部活動でも生徒たちは学校間の隔たりなく練習に携わることができていることを確認しました。
そこで、
①各部活動の練習場所の確保、調整がしやすくなる、
②地域移行をしても部活動指導者が確保しやすくなる、
③少子化が進んでも部活動の持続可能性が高まる、
④教員の負担が軽減できる
などの利点が考えられることから、中学校2~3校程度のブロックを定めて休日の合同部活動を実施し、ブロック内の生徒が合同部活動を選択できる制度とすることで生徒の部活動の選択肢を増やすべきと考えます。
特に、柔道、剣道、バドミントン部などすでに存続できている学校が少ない部活動については、地域と連携した休日の合同部活動を実施し、生徒の部活動の選択肢を増やすべきと考えます。
なお、西宮浜義務教育学校は校区外からの通学が可能な特認校であることから、学校の特色化を図るために、地域と連携して土日の合同部活動の拠点校となって多くの部活動を実施できるよう努力するべきと考えます。
平日の部活動については、授業終了後の学校間の移動が課題となると考えられることから慎重に検討を進めていただきたいと思います。
【2】茶道部や演劇部、囲碁将棋部などの文化部については、ブッロク制を導入して生徒を受け入れられる体制の構築を目指して取り組むよう提言する。
なお、楽器の移動を伴う吹奏楽部については、土日においても単独校での実施、もしくは平日から拠点校型の合同部活動として存続する体制を構築するべきと考えます。
2.地域移行について
(1)移行先となる地域の課題(担い手不足等)と対応
【1】地域の人材と部活動を結びつけるためには、コーディネーターが不可欠と考えます。そのコーディネート業務については、教員の負担軽減の観点からも、西宮市体育協会やスポーツクラブ21、西宮市文化振興財団など地域の関係団体と連携可能な民間事業者に委託することを検討するべきと考えます。
【2】部活動に携わることを希望する教員に対しては、休日に指導に携わった際の謝金が支給されるよう措置するべきと考えます。
【3】部活動の地域移行にあたっては、専門的な指導者が集まっている西宮スポーツセンターや「アスレチック・リエゾン・西宮」の参入についても積極的に検討することを提言します。
【4】人材の確保及び育成については、部活動である限りは、スポーツ推進課と連携して教育委員会が責任をもって進めるべきです。
(2)人材等の強化に関する対応と市の財政負担
【1】土日の活動については各部活動に1名以上の部活動指導員(顧問)を配置する予算を確保するべきで、そのためにも、土日の活動についてはブロックごとの合同部活動へ移行する必要があると考えます。
【2】部活動の教育的意義を鑑み、土日の部活動を地域へ移行するにあたっても、謝金等の運営にかかる経費を賄うために保護者の金銭的負担を増やすことのないよう、地域移行によって生じる新たな費用については市が予算化するよう要望します。
【3】土日の完全地域移行を目指して段階的に部活動指導員を確保するために、令和6年度途中からでも、準備できた部活動から謝金等の予算を確保するよう要望します。
(3)その他
【1】現在のガイドラインを改めて見直し、休日の地域移行を前提とした部活動の方針を定めるとともに、部活動は教育上不可欠と考えることから、今後も学校教育に位置付けて取り組むべきと考えます。
また、中学校体育連盟は教員が担っていることから、教員の負担軽減の取り組みや大会への参加資格等の課題についても、解消に向けて早急に検討する必要があると考えます。
その検討の際には、希望する生徒が参加できる方向で検討を進めるべきと考えます。
【2】地域移行されたのちの活動場所は、原則、休日も学校の施設を使用するべきと考えます。
合同部活動を進める場合、休日の部活動の施設使用時間が減少することが予想されることから、その際には、神戸市同様、ICT 技術を活用した予約システムを導入し、地域開放を一層進めるよう要望します。
【3】合同部活動を進めるにあたって、これまでは各学校名がチーム名になっていたところを、拠点校以外の学校に通学する生徒にとっては、通学する学校名と所属する部活動のチーム名が異なることになり、また、地域クラブとして合同で行う場合は、どのように調整してチーム名を決定するか、その他、大会への出場の可否も影響を受ける可能性があるなど、様々な課題が生じることが予想されます。
今後、休日の合同部活動を全市展開するにあたっては、合同にする学校間の距離や地形、合理的な拠点校の決め方、拠点校以外の学校の生徒の学校間の移動の負担、その安全性についても検証し全市統一のルールが必要になると考えられます。合同部活動を実施するにあたってのルール作りを早急に実施するべきと考えます。
【4】休日の部活動の地域移行を進めるためには、「西宮市立中学校・義務教育学校部活動の方針」に示された部活動の教育的意義を実現するための、部活動のあるべき姿と、地域移行の実現に向けたロードマップを早急に描き、地域の文化・スポーツ関係団体に示して、地域の方々と協働して、令和8年度からの休日部活動の完全地域移行を実現されることを期待します。
以上です。今後も、子供の育ちの観点から、政策提言をしたいと考えています。
長くなりましたが、最後までご覧いただき、ありがとうございました。
もう一つの施策研究テーマ「幼児教育・保育の在り方について」も、西宮市にとって大変重大な方針転換の年を迎えるにあたって、集中的に調査を進めてきました。報告書についてはプロフィールのページに貼っておりますが、別のコラムでもう少し詳しく掲載したいと思っています。