子供の体力低下は放置できない課題ー令和6年9月議会一般質問

2024年9月14日[カテゴリ:スポーツ推進, 質問

 全国的に子供の体力の低下が問題となって久しくなっています。そして、幼児期や学童期に体を動かして遊べる場所が減ったせいか、西宮市ではその傾向は顕著であり、体力テストの大半の項目で、小学1年生から中学3年生までの大半の学年で、全国平均と兵庫県平均を下回っています。

 学校で行われている体力テストは8項目あります。
 小学生は、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、20mシャトルラン(往復持久走)、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げの測定を行っています。
 中学生は、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、20mシャトルランか持久走(西宮市は持久走)、50m走、立ち幅跳び、ハンドボール投げの測定を行っています。
 
 学年もテスト項目も一部抜粋になりますが、その傾向が顕著なデータを掲載しておきます。
 議会での配布資料(男子体力テスト)
 議会での配布資料(女子体力テスト)
 (市教育委員会から提供していただいたデータを抜粋しています。)
 グラフ内のオレンジ色の囲みは平成29年に小学1年生だった学年の推移となりますが、小学1年生の時の全国平均や兵庫県平均との差が大きくなっている傾向があります。これらの傾向から、学校体育だけでは限界があり、スポーツクラブ21や体育協会など地域での活動の強化が必要と考えました。
 
 青色の囲みは令和元年に小学6年生だった学年の推移となりますが、小学校の時よりも中学校卒業前の方が平均との差が詰まっているテスト項目や、全国平均も兵庫県平均も上回った項目もあります。
 これは、部活動の影響ではないかと推察しました。
 
 これまで、スポーツ団体の会長や役員をさせていただき、現場を見て、関係者からお話を伺ってきました。そして、子供の健全育成、成人の健康増進、高齢者の介護予防など、全ての世代にとってスポーツ政策が重要であることを市議会で訴えてきました。
 質問時間の都合上、令和6年9月議会一般質問では、小学生、中学生の体力低下に絞り、小・中学生のスポーツ・文化芸術活動について取り上げて、文教住宅都市としてのあるべきスポーツ政策を議論しました。

===本会議場での議論===

1.子供の育ちのためのスポーツ・文化芸術活動について

 まず、御担当の職員の皆様におかれましては、市民のスポーツ推進、そして文化芸術活動振興のために、平日、休日を問わず、日々現場で御尽力いただいておりますことに心から敬意を表します。
 そして、現在、パリ2024パラリンピックが開催されておりまして、先月はオリンピックが開催され、日本代表の方々が世界の舞台で大活躍され、日本の子供たちにも多くの感動と勇気、希望をもたらしてくれたことと思います。
 今回の質問は、スポーツや文化芸術活動が子供の育ちに及ぼす効果に鑑みまして、本来は子供の育ちのための取組みは幼児期からの一貫した政策が重要 であると考えておりますが、今回は、質問時間の都合上、小・中学生に絞って質問したいと思います。

ア)子供の体力向上に向けた方策
■質問の背景(田中まさたけ)

 これまで私は、スポーツ政策の重要性についてこの本会議場で何度も議論を重ねてまいりました。
 
 本日は子供の健全育成の観点から取り上げますが、昨今、子供の体力低下が全国的な課題とされておりまして、病気やけがなど健康リスクの増加、学業への影響、精神的な影響、社会的スキルの低下などが指摘されております。
 また、非認知能力、これは人が生きていく上で重要な能力と言われておりまして、数値では測れないとされております。この非認知能力の育成の観点からも、子供の体力低下、スポーツに取り組む子供が減少していることは憂慮すべき状況であると考えております。
 
 教育委員会より提供していただきましたデータをお手元の資料図2図3に抜粋して示しました。
 学年によっても異なりますが、子供の体力は低下傾向にありまして、本市の児童生徒は多くの項目で全国平均、兵庫県の平均を下回っております。また、今後は、教員の働き方改革や少子化の影響により、中学生の教育に欠かせない部活動までもが地域に移行されることになっていることを勘案しますと、小学生の段階から、教育委員会と学校だけではなく、家庭や地域との連携を強化して体力の向上に向けた取組を強化する必要があり、地域スポーツの果たすべき役割がますます大きくなると考えております。

 本市では、西宮市体育協会とスポーツクラブ21に地域でのスポーツ推進の中核を担っていただいておりますが、今後、専門家を有する西宮市スポーツセンターやアスレチック・リエゾン・西宮との連携も強化し、担い手の方々と市が地域スポーツが果たすべき役割について意識を共有していく必要があると感じております。
 また、小学校区ごとに設置されましたスポーツクラブ21におきましては、一つの小学校区だけでは活動ができない競技もありまして、競技種目の選択の幅が狭く、スポーツの多様化と少子化により、図1のとおり、子供の会員数は減少し続けております。
 一方で、西宮市体育協会には豊富な競技種目の団体が加盟しているにもかかわらず、市との結びつきが弱いため市は状況も十分に把握はできておらず、今後は西宮市体育協会との連携も強化すべきと考えます。

■質問1(田中まさたけ) 
 紙媒体のみならず、アプリ等ICTを活用して西宮市体育協会とスポーツクラブ21で活動するチームや団体に関する情報を、競技種目、また、一定のエリアごとに一元的に保護者に提供することで、スポーツに取り組む小学生を増やす、そのことで子供の体力向上を図るべきと考えますが、市の見解と、そして、子供の体力低下に対する地域スポーツの果たすべき役割をどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

■市の回答
 議員御指摘の子供の体力向上を図るべきとの御意見につきましては、本市としても重要な課題と捉えております。
 現在、西宮市体育協会加盟団体――以下、「体育協会加盟団体」と申します。体育協会加盟団体や各スポーツクラブ21は、地域における中核的スポーツ団体として活動しておられ、ホームページやチラシなどで広報に努めておられますが、部員や会員数は、少子化やニーズの多様化などから減少傾向にあります。
 大手のスポーツクラブに比べますと、運営体制や紙媒体、アプリなどICT技術を使用しての広報発信力などが弱いことは否めず、財政的にも大々的な宣伝は困難な状況にあります。
 効果的な広報の在り方として、体育協会加盟団体や各スポーツクラブ21などの地域スポーツ団体の情報提供が一元化されることは、多くの方に活動を知っていただくための有効な手法の一つであると考えられます。
 今後も、関係団体と協議していく中で、より多くの子供が地域のスポーツ団体に参加でき、スポーツを楽しむことや体力向上のきっかけとなるよう取組みを進めてまいります。

■回答を受けての意見(田中まさたけ)
 子供の体力に関する課題については、教育委員会の対応に委ねるばかりではなく、地域スポーツを通じた子供の体力向上に向けて市長部局においてももっと体制を強化するべきと考えまして、本日は入口の入口のような話になりましたが、具体的な施策を一つだけ提案いたしました。
 
 御答弁では、私からの提案に対して一定の理解はお示しいただきましたが、財政状況に配慮され、子供の体力低下に対して本当に危機感をお持ちなのか、伝わってまいりませんでした。
 スポーツは、体力向上のみならず、子供のやる気、意欲を引き出す、つまり、体だけではなく、心の健康にも効果があると言われておりまして、子供の体力と学力の間にも相関関係があると言われております。
 また、子供がスポーツに取り組むことによって、自制心、忍耐力、レジリエンス――これは困難から立ち直る力だそうです。自己効力感、自分で目標を設定する力など、非認知能力を伸ばす効果もあることが研究でも認められております。
 
 財政難を理由にこの課題を先送りすることは、子供の育ち、この子供の育ちへの悪影響、ひいては現在の子供を取り巻く社会的な課題をさらに深刻にしかねません。

 部活動の地域移行もしかりです。
 
■再質問(田中まさたけ)
 この子供の体力の低下が全国的に課題とされて久しく、本市の子供たちの新体力テストの結果の多くが、資料にもお示ししましたとおり、抜粋ではございますけれども、全国平均を下回っています。この状況について、そもそも市長はどのように受け止めておられるのか、いまだに学校で解消すべき課題とお考えなのでしょうか、本日提案したこと以外で、今後の対応をどのようにお考えなのか、お尋ねいたします。

■市長の回答
 子供の体力の状況につきまして、議員もおっしゃっていただきましたそうした懸念につきましては共有しているつもりでもございます。
 そうした中で、特に西宮の場合は、例えば足は速いけれども握力弱いとか、そういう都会的な傾向がある、そういう中でもあるけれども、さらに最近、西宮だけに限らず、日本中で子供の体力の低下というのは大変大きな懸念をしているところでもあります。
 そういう意味では、体育協会、スポーツクラブ21の方々にもさらに御尽力いただいてというような思いは当然持っております。
 また、それだけではなく、様々なところで、民間ないしボランタリーなところで大変御尽力いただいて、子供たちのスポーツに寄与いただいている、そういった方々もおられます。なかなかこれをしたら体力が上がるというような、そんな魔法のようなところは正直思い浮かびませんが、一方で、財政のことを理由にして、それだけをもって今回方針を立てたというわけではないのも御理解いただきたいと思います。
 
■意見・要望(田中まさたけ)
 思いとしましては共有しているつもりだというお答えを頂きました。
 また、先ほど市長から直接御答弁いただきました内容につきましても、一定の理解はしております。
 財政状況が厳しいということもありますし、これからの人口減少の時代、そういったことを踏まえると、既存の施設をより有効に活用していくということが重要だと思っておりまして、今日はいろいろと提案をさせていただいたつもりです。
 現在、全庁的に時代の変化に合わせた課題に取り組むために必要な予算ですら、新たに確保することについては非常に消極的になっていると感じております。

 ですので、市長におかれましては、今後、部活動の地域移行も見据えていただきまして、「子供の体力低下に対しても、地域スポーツを通じた取組みを強化するのだ。」という、そうした方針を市長自らが発するぐらいの姿勢で臨むことが必要だと私は感じておりますので、この点につきましては御検討いただきたいと思います。
 そして、せめて子供たちがこれ以上スポーツや文化芸術活動に取り組みづらくなるような目先の経費削減、これは慎んでいただきまして、子供の体力向上に向けて地域スポーツの強化に必要な財政措置、そして人員配置の改善による強化をしていただきますように要望しておきたいと思います。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 市長の回答から、思いとしては共有すると付け加えられましたが、今のところ「無策」であることが露呈しました。
 
 教育委員会の職務権限に対する市長の権限は制限されています。学校教育については、教育長をはじめ教育委員の合議によって進められることになっていますし、学校のマネジメントに関わる多くのことは、各学校の校長先生の裁量、つまり現場に委ねられています。 
 ですので、市民や保護者から何の権限も委ねられていない「声だけが大きい一部の人たち」が校長に圧力をかけて、教育がゆがめられるようなことも起こり得ます。
 子供たちはよく見ていますから、そのようなことがまかり通ると、子供たちに影響を及ぼさないわけがありません。

 話を戻します。

 スポーツ振興も、教育委員会の職務権限とされていましたが、もう15年以上前になりますが、平成19年に国が「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正し、条例の定めるところにより、学校体育に関することを除くスポーツに関する政策については、地方公共団体の長が管理及び執行をすることが可能となりました。
 そこで西宮市では、それから実に7年もかかったことになりますが、スポーツ推進については平成26年度より市長部局に移管され、市長が主体となって政策を推進できる体制に変えました。

 ちなみに、平成26年には、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」がさらに改正され、教育長の権限が見直され、市に総合教育会議が設置され、市長は教育に関する大綱を策定できるようになりました。
 市長のやる気と能力次第で、解決できる課題がますます増やされています。

 にもかかわらず、相変わらず、子供の成長に関する課題については、教育委員会任せ、学校任せという意識になっているのだと思います。もちろん現場の裁量は大切ですが、裁量をはたらかせる源となる方針については、市長ももっと分かりやすく示さなければ、現場は混乱するだけだと思います。

 以前に掲載しましたが、部活動の地域移行についても、現在の市長の意識のままでは、ますます子供の育ちの環境は悪化することになることを危惧しています。さらに、取り組みたいと考えています。

 一般質問での議論はまだ続きますので、次回以降のコラムで掲載します。

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