宮水保全条例の運用ー費用対効果の追求を

2024年10月19日[カテゴリ:その他政策, 自然環境, 質問

 西宮神社の南東側一帯から湧き出し、おおむね地下2~5メートルの浅い地層を流れている地下水のことを「宮水」と呼んでいます。

市のHPより
 宮水地帯には3つの伏流水が流れており、かつて海であった地域を流れる「法安寺伏流」「札場筋伏流」は、酒の発酵を助けるカリウム、リンなどを多く含みます。一方、夙川を起源とする「戎伏流」は酸素を多く含み、水中の鉄分を酸化鉄として沈殿させて除去します。これらの伏流水が合流することでミネラルが豊富で鉄分が少ない、酒造りに適した「宮水」となっています。


 この宮水を保全するために、以前より、開発事業主に宮水のことを理解してもらった上で様々な対策が行われてきましたが、西宮市では、平成29年12月議会において、宮水保全条例を可決し、平成30年4月より具体的な運用が始まりました。

西宮市宮水保全条例
(↑クリックすると条例がご覧いただけます。)

 マンションの建設や学校の改築工事など公共工事も民間工事も対象にして、宮水に影響を及ぼすような開発事業等を行う場合は、宮水保存調査会と協議の上、工事をする際に宮水に影響を及ぼさないよう対策を講じることを求めています。
 
 しかし、この対策には、多額の費用を伴う調査費や対策工事費が求められ、その金額の妥当性や工事の内容の妥当性について疑義があるとのご指摘をいただきました。

 そこで条例の運用状況を調査したところ、対象となる工事はどの程度あって、どのような対策が講じられているのか、開発事業者にどのような負担を求めているのか、その結果、本当に宮水が保全できているのかなどなど、全く不透明な状況になっていることが判明したことから、本会議一般質問で取り上げて、確認し、今後の改善を求めることにしました。

===本会議場での議論の概要===

令和6年9月議会一般質問

2.宮水保全条例の運用について
ア)透明性の向上
■質問の背景(田中まさたけ)

 西宮市宮水保全条例を制定してから6年が経過いたしました。
 そして、資料に掲載いたしましたが、条例第5条に基づきまして、設定されたエリア内で該当する規模の開発事業等を行うとき、西宮市では市長が会長を務めます宮水保存調査会(以下、「調査会」)と呼びますが、この調査会との協議をすること、そして、市長に対してその旨を報告することを事業主に義務づけております。
 しかし、この調査会との協議内容の詳細については公表されておらず、取組みの内容が不透明な状況になっております。

 そのような中、条例の対象となる公共工事につきましては、数万円に及ぶ費用をかけて調査した上で、求められる対策を上乗せして講じていると伺っております。これは税金による対応です。

 また、民間の事業主に対しても大きな負担を求めている中で、調査を委託する事業者の選定において競争性が発揮されているのか疑問視する御意見を受けておりまして、市民や事業者に対して宮水保全に向けた理解を得る上で誤解を招く状況は是正をするべきです。
 せめてまずは、条例を制定した市の責務として、透明性の向上を図り、是正に向けた措置を講じる必要があると考えます。

■質問1(田中まさたけ)
 対象エリア内で行われる市の発注工事において宮水保全の対策を講じるための調査費用については、何社から見積りを取り、入札時の設計価格に反映されているのか、併せまして、宮水保全のために実施された市の発注工事はこれまでに何件あり、調査費と対策工事費はどの程度になっているのか、お示しください。

■質問1に対する市の回答
 市が発注する工事における宮水保全対策のための調査費につきましては、工事中の宮水の水質や水位などを正確に把握するために学術的な専門知識が必要となることから、宮水の特性を理解し、豊富な実績に基づき的確な解析や判断ができる調査会社1社の見積りにより算出し設計価格に反映しております。

 条例施行後に宮水保全のための対策を講じた市の発注工事は、PFI事業を含め10件となっておりますが、調査費及び対策工事費につきましては、場所や規模などによって変わりますので、一例としまして、安井小学校改築工事において宮水対策として必要となりました費用についてお答えします。
 調査費につきましては、宮水を観測するための井戸の設置、2か年にわたって井戸の水質、水位などの観測及び解析を行う業務に約500万円の費用を要しております。
 また、対策工事費としましては、宮水に影響を与えないための所定の深さまでの土留め壁の設置及びくい工法採用などにより、概算になりますが、6,000万円程度かかっております。

■質問2(田中まさたけ)
 条例を運営する市の責務として、条例第5条に基づく協議の件数を公表するとともに、合意後の協定書など対策の概要を調査会より求めて公開するべきと考えますが、市の見解をお尋ねいたします。

■質問2に対する回答
 宮水保存調査会(以下、「調査会」と申します。)、調査会との協議の実施を報告する協議報告書については、西宮市宮水保全条例(以下、「条例」と申します。)、条例の平成30年4月施行以来、本年8月末までに市施行と民間施工合わせて81件の提出を受けております。この協議報告書の提出を受けた工事については、今後、市のホームページで公表する準備を進めてまいります。
 
 条例においては、宮水の存在を広く事業主に周知し、都市開発と地下水保全の両立を実現させるため、事業主に対し、市長が指定するもの、調査会との協議を求めています。
 協議合意後の協定書等の概要の公開については、事業主や灘五郷酒造組合など当事者の同意を要するため、調整が必要と考えます。

 しかしながら、市発注の工事において調査会と締結した協定書等の概要については、公開に向けた内容の検討を進めたいと考えております。

===ここまでが本会議場での議論の概要===

 調査費の見積もりは1社からしか取っていないことが明らかになりました。実際の工事の際にはこの調査会社が調査を担っていることから、調査については、事実上の随意契約が行われてきたと言えます。
 この調査会社に何かトラブルがあった場合、対策が困難となる状況を放置することは、条例を運用する上ではリスクにもなります。開発事業等の好機にも影響する恐れもあります。
 ですので、1社にしか委託ができないような特別な技術や経験を要する調査なのであれば、調査の技術向上、競争性の向上のためにも、他の事業者の育成に取り組む必要があります。

 そして、一つの工事を実施するために、この調査費が約500万円、対策工事に約6000万円の公金が投じられていることが分かりました。
 にもかかわらず、その対策の概要を公開するためには「事業主や灘五郷酒造組合など当事者の同意を要する」と回答しました。
 
 少なくとも公共事業については、隠さなければならない理由が見当たりません。

 今後、条例を適正に公正に運用する責任がある西宮市には、さらに改善を求めてまいります。

 さらに、議論は続きますので、次回以降のコラムに掲載します。

フェイスブックでの投稿より

■10月16日投稿

衆議院総選挙が始まりました。節目となる50回目の総選挙です。
初日の昨日は、朝から元インターンの学生とともに掲示板にポスターを貼ってまわり、その後阪急夙川駅でのやまだ賢司候補の出陣式に出席しました。
午後は市政相談を受けて、夕方に再び阪急夙川駅での街頭活動に参戦したところ。支援者数人とお会いでき、投票依頼もできました。
26日(土)までしっかりとお手伝いしたいと思っています。

今月6日(日)、5年ぶりに安井小学校で行われた安井地区防災訓練に参加させていただきました。
新しくなった小学校に設置されたマンホールトイレの仕組みや応急給水設備付き受水槽の説明と使い方を住民の皆様としっかりと聞くことができ、有意義な訓練だったと思います。次は、今年の代表質問でも取り上げました地区防災計画の策定です。
訓練の途中、高齢の方が体調を崩されて救急車を呼ぶアクシデントもありましたが、後日、幸い大事に至らなかったと聞きました。リアルな対応も経験しました。

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