新規事業を実施すると多くの市民から喜ばれます。しかし、限られた財源の中で持続可能な市政運営をしていくためには、その新規事業に必要な事業費について、その初年度だけではなく、その後の経常的に必要となる事業費も示すべきだと考えています。施設整備の場合は、年間の維持管理経費を明示して取り組むべきであることは、初当選後の一般質問(←クリックするとコラム「公園整備と維持管理について」が開きます。)で述べて以来、一貫して主張してきたことです。
第3次行財政改善実施計画の期間中は、新規事業は見送られたものが多かったのですが、計画期間終了後にそのタガが外れて、慎重な検討をせずに新規事業をどんどん始めてしまうと、さらに厳しい財政状況が続く恐れがあると考えています。
そこで、第3次行財政改善実施計画最終年度を迎えるにあたり、計画期間終了後の新規事業の意思決定の進め方について、平成20年3月議会一般質問で取り上げて、議論しました。
===本会議場での議論の概要===
平成20年3月議会一般質問
2.新年度主要事業の意思決定と次期総合計画の根拠となる財源の見込みについて
■主張(田中まさたけ)
これまで10年以上もの間、市民の方々の協力と理解のもとで、3次にわたる行財政改善実施計画を遂行してきました。
その効果額は、お手元の表2に示したとおりです。
平成17年度が45億円と最も多く、単年度効果額の合計は13年間で約309億円となる見込みで、平均すると、年間に24億円削減してきたことになります。にもかかわらず、新年度予算では基金をまだ約68億円取り崩す(財源が不足している)内容となっておりまして、(この取り崩し額も)昨年の財政計画よりも約19億円上回っております。
そして、新たに示されました財政計画によると、これからの5年間も、途中、財源不足も見込まれるなど、引き続き厳しい状況が続くと示されています。そうした状況の中、「新年度の主要な事業等の概要」では、新規事業や拡充事業が多数盛り込まれております。
昨年の主要な事業等の概要に示された新規事業数は31件、事業費で8億9,000万円であったのに対し、新年度のものは、新規事業が52件、事業費12億7,000万円と増大しています。
一例ですが、南北バス運行事業など何十年にも及ぶ懸案事項でも、今後の赤字負担を慎重に検討している一方で、1件当たりの金額は少ないものの、同様に維持管理経費が経常的に発生することが見込まれる、投資的な事業がすんなりと上がってきているものもあります。(どのような基準で予算化されているのか不明です。)
■質問1(田中まさたけ)
第3次行財政改善実施計画の新年度における改善効果額の見込みが12億7,000万円となっている中、主要な事業等の概要に記載されている新年度の新規・拡充事業によって次年度以降に継続的に発生する経費はどの程度と見込んでいるのかお尋ねします。
■質問1に対する市の回答
新年度予算案につきましては、中核市移行に伴い県から移譲される事務事業に要する経費を計上するほか、市民ニーズや国の制度改正などに対応し、医療制度改革に伴う施策、子育て支援、学力向上、保育所等の待機児童対策、小学校の児童急増対策など、保健、医療、福祉、教育など市民生活に密着した事業、施策を優先的に実施することといたしております。
御質問の平成20年度主要な事業等の概要のうち、主として新規・拡充分に係る21年度に要する経費を概算いたしますと、約13億円となります。
投資的事業では次年度に維持管理経費が発生するものはその経費を、新規・拡充施策では新規・拡充分の経費を、新規にリースで導入する設備等はその年間リース料などを計上いたしましたが、これには、国の制度改正などによるものや、一時的に増加または生じる経費等は除いております。
この13億円の内訳の主なものですが、保健福祉関係で5億円、保育所や留守家庭児童育成センターなどの子育て支援関係や小学校の教室不足対策関係で3億円となっており、いずれも市として必要なコスト負担であると考えております。
■質問2(田中まさたけ)
新たに経常経費が発生することが見込まれる一定規模以上の投資的な事業については、(公の場で)検討を要する事業規模とはどの程度のものかという基準や、どのように検討するのかといった体制、こうしたものは極力統一されるべきと考えます。
施策的事業についても同様に検討されるべきと考えますが、見解をお聞かせください。
■質問2に対する市の回答
一定規模以上の投資的事業などについて検討する体制などですが、いわゆる大規模な公共事業につきましては、その効率性及び実施過程の透明性、また、予算等の限られた資源の効果的な活用を図ることが必要であり、そのため、事業実施前には十分な評価を行うことが必要であると考えております。
現在、一定規模以上の投資的事業につきまして、外部委員による評価も含めた事前評価の制度化を検討しておりますが、その中では、事業目的や概要、資金計画や事業効率、必要性に加え、運用経費についても評価項目に入れることとしております。
このような統一した手続を経ることにより、真に必要な公共事業が選択できるものと考えております。
次に、施策的事業についてですが、これは、投資的事業の事前評価の手法とは異なり、今年度に試行実施しました施策評価を踏まえ、本市の目指すべき方向性や重点化施策を明確にしつつ、新規も含めた事業、施策の取捨選択や予算の傾斜配分など、20年度の制度運用に向けた課題の整理に努めてまいります。
■質問3(田中まさたけ)
第3次総合計画で俎上に上がってきたもので、平成21年以降に繰り延べられた主要な事業と事業費の総額をお尋ねします。
■質問3に対する市の回答
第3次総合計画で先送りされた事業と事業費についてですが、震災復興事業等に伴い発行した市債の多額の償還金に加えまして、長引く景気の低迷により市税収入が落ち込むなど、危機的な財政状況に陥るという状況の大きな変化を踏まえまして、現総合計画の一部の事業を平成21年度以降へ繰り延べております。
繰り延べました事業は、新陸上競技場、新体育館整備事業、勤労福祉施設の建てかえなど全部で17事業で、これらの事業の計画期間内の事業費総額はおよそ280億円、一般財源ベースでは100億円となっております。
これら繰り延べました事業につきましては、次期総合計画の策定作業の中におきまして、改めてその必要性の有無や事業効果、実施時期などを検討してまいりたいと考えております。
■意見・要望(田中まさたけ)
(新規拡充事業で)新たに生じる経常的経費が約13億円との御答弁がありました。
これは、あくまでも「主要な事業等の概要」に掲載されている事業に関してということです。
そこでまず、要望をしておきたいことは、意思決定に係る手続の統一化に関することです。
工事を伴う、例えば学校の耐震補強のような事業が想定できますが、こうした事業は「事前に事業評価」をする。そして、工事を伴わない、例えば学校園への警備員の配置のような施策的な新規事業に関しては、現在策定中の「施策評価」の中で、どれだけのコストがかかり、どういった効果があるのかといったようなことを示していただけるという御答弁だと私は理解いたしました。
そうした形でなければ、有効な予算審議も難しいと思いますので、一刻も早くその仕組みをつくってもらって、運用できるような状態にしていただきたい、要望しておきたいと思います。
これは、新年度からということですので、きっちりと運用できるように整えておいてください。
次に、13億円という数字ですが、今実施している第3次行財政改善実施計画における平成20年度の財政効果額とほぼ同額(12億7,000万円)です。この12億7,000万円というのは、滞納整理に係るもので、不透明、不確定な要素がかなり多い中での12億7,000万円となります。
確かにここで、(財政改善の効果額と新規事業の経常経費が)プラス・マイナス・ゼロになっていると理解できますが、これが平常時であればそういう発想で事業を進めるべきだと思いますが、(現在は非常時で)、財源不足の解消の取り組みをしているという状況下では、新規に13億円必要なのであれば、そのまま13億円を既存の事業から削るという状況では不足なはずです。
新しく示された財政計画では、まだこの先5年の間に最大で32億円も足りないという試算がされてるわけです。ですので、もっと削減しておくべきだったのではないかと考えます。
また、(今回の新規事業がすべて)今この時期にやり始めなければいけなかったのかというのも疑問ですが、個々の内容については予算審議がありますので、そちらのほうで審議をしたいと思っております。
===ここまでが本会議場での議論の概要===
この議論の続きは、次のコラムに掲載します。