甲子園球場のリニューアル工事に伴って、小学校連合体育大会と中学校連合体育大会が中断されることになったことをうけ、改めて、市のスポーツ振興政策に向き合う姿勢に疑問を持つようになりました。
甲子園球場がたまたま西宮市にあるから、市が数日間、プロ野球のシーズンオフの間に甲子園球場をお借りして、市内の小学生と中学生が体育大会を実施させてもらっているというだけで本当にいいのかと。
工事が行われるから、連合体育大会も実施できないとあきらめていいのかと。
これは、甲子園球場で連合体育大会を実施させていただいている意義が問われているのではないかと。
そして、自分の中でその意義を問い直すなかで、教育的な観点だけではなく、そもそも教育委員会がなぜスポーツ政策に取り組んでいるのか、その意義を考えるようになりました。
これから少子高齢化が進み、財政状況が厳しくなる中で、スポーツ推進、スポーツ施設の整備を、なぜ公共が行っているのかを考えるようになりました。
市には、多数のスポーツ施設が整備されており、近年では、財政状況が厳しい中、西宮浜に人工芝の多目的グラウンドの整備が進められています。
スポーツ施設の整備は、これまでは単に市民のリクリエーションのために行われてきたのかもしれません。しかし、高度経済成長の時代からは状況が大きく変わってきました。いずれ、スポーツ政策に多額の公費を投じる意義が問われることになるのではないかと考えています。
そこでまず、スポーツ振興政策をしっかりと市の政策の中で確立し、スポーツ政策を公共が担わなければならない理由、政策目的と公費投入の妥当性を明確にしておく必要があると感じ、平成20年3月議会において、市がスポーツ振興政策を推進する目的について、議論しました。
===本会議場での議論の概要===
平成20年3月議会一般質問
1.文教住宅都市におけるスポーツ振興政策について
ア)スポーツ振興政策を推進する目的と将来ビジョンの明確化
■質問の背景(田中まさたけ)
現在、本市には多種多様の公営のスポーツ施設が多数存在し、新年度には西宮浜の人工芝多目的グラウンドもオープンする予定です。
そして、オリンピック選手やプロ野球を初めとして、多くのプロスポーツ選手を輩出しているまちでもあります。
お手元にお配りしました資料の表1をごらんください。
保健体育費のうち、人件費とスポーツクラブ21施設整備費を除いたスポーツに関連する経費を決算書から抽出したものです。体育施設の整備や維持管理に要する経費が約9割と大きな割合を占め、財政改革の影響もありまして、トータルでは減少傾向にあるということが見てとれます。
近年、他都市では、スポーツ振興政策の目的や目標を明文化した、概ね10年単位の「スポーツ振興に関する基本計画」を策定して、施策を進めている自治体が増えています。
これは、スポーツ振興法第4条において、国が策定する基本的計画を参酌して、地域の実情に即したスポーツ振興に関する計画を定めるよう規定されていることによるものです。
また、平成12年に国が策定したスポーツ振興基本計画においては、各地方公共団体においては、みずからの選択と責任に基づく主体的な地域づくりの一環として、創意と工夫を凝らしたスポーツ振興施策を推進することが期待されるとしています。
先日行われた次期総合計画策定に向けてのアンケート調査によると、将来の都市像として好ましいことに関する質問に対して、文化、スポーツが盛んであることと答えた回答が全体の約7%にとどまり、一昨年前に行った市民意識調査においても、スポーツを全くしない人が60%、今後どのようなスポーツ行政を望むのかという問いに対しては、特に希望はないというのが24.9%と2番目に高くなっています。
こうしたことから、現状では、スポーツ振興政策に対する市民の理解、関心が薄く、あまり期待されていない結果となっています。
しかしながら、生活が便利になるにつれて、青少年の健全育成、体力の向上、そして生活習慣病の予防、介護予防など、あらゆる世代にとってスポーツがますます重要な時代となったと私自身は感じているわけですが、市の方針が総合計画のわずか3ページでしか表現されていないこの現状では、期待されている役割が大きくなっていると思われるスポーツクラブ21や西宮スポーツセンター、そして西宮体育協会などのスポーツ団体に携わる方々に対しても市の方針を明確に示せるわけもなく、そうした姿勢がこのようなアンケート結果に結びついているように思われます。
今後、市全体で事業の取捨選択が迫られる中、何となく進めている政策は淘汰されるでしょう。
文教住宅都市を宣言してまちづくりを進めてきた本市は、中核市となるにあたって、本市の実情に即したスポーツ振興の目的と将来的な施策の目標を明らかにする必要性があると考えます。
■質問(田中まさたけ)
1点目、本市においてスポーツ振興に関する施策、政策はどのような位置づけとなっているのか。
2点目、現在遂行しているスポーツ進行政策の目的と期待している成果はどのようなものなのか。
3点目、西宮の特性に応じたスポーツ振興政策の目的や将来ビジョンを示した基本計画をまずは策定すべきと考えますが、当局の見解をお聞かせください。
■教育委員会の回答
最初は、スポーツ振興政策、施策はどのような位置づけかとの御質問でございます。
本市では、幼児から高齢者に至るまで、すべての市民が生涯にわたりスポーツ、レクリエーションに親しむことができるよう、スポーツ奨励事業の充実や指導者の養成を図っているところでございます。
また、文教住宅都市宣言では、「風光の維持、環境の保全・浄化、文教の振興を図り、当市にふさわしい都市開発を行い、もって市民の福祉を増進する」とうたわれております。
市民がスポーツに親しむことにより、健康の増進が図られ、地域コミュニティーが進展することで、本市のまちづくりの一端を担っていると考えております。
2点目の現在のスポーツ振興政策を遂行する目的と期待する成果についてお答えいたします。
市民がそれぞれのライフステージに合わせて生涯を通じてスポーツに親しむことにより、健康や体力の保持増進及び仲間づくりや地域コミュニティーの進展を図ることであります。
また、だれもがいつでもどこでもいつまでもスポーツに親しめるよう、生涯スポーツ社会の実現を目指しているところでありますが、具体的には、現在、各小学校区に設立されておりますスポーツクラブ21が自立し、安定的に運営されること及び各種団体が駅伝、野球、サッカー等の大会を実施されることにより、多くの市民がスポーツに親しむことができる地域スポーツの振興を図ることであります。
なお、各種目の競技力向上を図るため、西宮市体育協会を支援しております。
3点目の西宮の特性に応じたスポーツ振興政策の目的と将来ビジョンを示すスポーツ振興基本計画の策定についてお答えいたします。
本市では、第3次総合計画の基本計画、人と文化をはぐくむ生涯学習のまちづくりの中のスポーツ、レクリエーションの振興の中に位置づけし、スポーツ振興事業を展開しております。具体的な事業実施に当たっては実施計画で見直しを行い、年度ごとの事業を整理しながら実施しております。
なお、スポーツ振興基本計画につきましては、その必要性は認識しておりますので、総合計画との整合性を図りながら、今後の課題として研究してまいります。
■意見・要望(田中まさたけ)
スポーツ振興政策に関してですが、こちらは、壇上でも申しましたが、スポーツ振興に関するビジョンがあまりにもなさ過ぎるのではないか思い、本日は質問しました。
お答えを伺っていると、私の感じたことはスポーツ振興に関しては無策であるということです。
年間に4億円の経費をかけているということをあまり意識されてないと思うのです。
スポーツ施設はたくさんあります。これは、市民の方は喜んでいると思いますが、スポーツ施設を使って一体どのような政策目的を達成するのかということが、今後は必要だと思います。
特に大規模改修等、いろいろと考えていかなければならない問題があると思っているのですが、(老朽化した施設を)どのように(更新して)有効活用していくのかということは絶対に考えないといけないと思っています。
財政が厳しいですから、まずは市民生活に直結する政策の優先順位が高くなってくると思います。その中でスポーツ振興は市民生活に本当に必要なのかというと、そうはなっていません。
しかし、私は、壇上でも言いましたけれども、不可欠だと思っています。
子供たちが体力が落ちてきているという中で、体力の向上にも取り組まなければなりませんし、健全育成もやっていかなければなりません。
生活習慣病の予防などは、他の部局にもまたがっています。
そうしたことを連携してスポーツ振興の政策を進めて、その求める結果を示すべきだと考えています。
そうでなければ、予算がどんどん削られていって、何をしているのかよくわからないような状態になるのではないかと心配しています。その点は重々お願いしておきたいと思います。
そして、特に、スポーツ振興政策を所管している教育長には、しっかりと指導していただきたいと思っています。現場ではいろいろやっていただいていると思っています。しかし、それがどの方向に向いて動いているのかが全く見えない状況になっていると私は感じています。
現場ではいろいろやらないといけない、しかし、それで一体どうなるのだろう、何のためにやっているのだろうというということが見えてこないと、有効な施策も展開できないと思っています。
その点(スポーツ振興の目的と将来的な施策の目標を明らかにすること)は、強く要望しておきます。
===ここまでが本会議場での議論の概要===
教育委員会の回答では、スポーツ振興基本計画の策定については、その必要性は認識しつつも、今後の課題として研究するという回答で、これは、「何もしない」ことを意味すると言っても過言ではありません。
なんとなく必要だから、漫然と公費を年間数億円の経費をかけられる時代は間もなく終わると思っています。
教育委員会が答えた通り、本市のまちづくりの一端を担っているスポーツ振興について、文教住宅都市を守り抜くために、もっと力を入れて取り組むべきと、一般質問での議論を通じて、改めて確信しました。
今後、重点的に取り組みたいと考えています。
この項目に関する一般質問の概要は、次回以降のコラムに続きます。