18歳までの医療費完全無償化の条例改正案に反対した理由

2025年9月17日[カテゴリ:医療・福祉

 本日、開会中の西宮市議会において、市長より提案されていた議案の採決が行われました。
 私が所属する会派「啓誠会」は、18歳までの医療費を保護者の所得に関係なく無償化するための条例改正と、そのために必要な費用が計上された補正予算(第5号)の議案に反対しましたが、賛成多数により可決しました。

 これらは、石井市長が3年半前の選挙で掲げていた公約であり、来年1月、市長選挙の直前に公約が実現する形となります。

 反対理由を述べる機会をいただきましたので、以下の通り、理由を述べました。

===本会議場での発言===

令和7年9月議会 討論

 ただいま上程中の議案第387号 西宮市医療費助成条例の一部を改正する条例制定の件につきまして、啓誠会は反対致します。以下理由を述べます。

 今回の改正は、保護者の所得に関係なく、18歳までの子供の医療費を無償化するものです。
 私たち啓誠会は、子供が行政から受ける支援については、原則として、保護者の所得にかかわらず、平等に受けられるように制度設計と財源の確保がなされるべきものと考えております。財源と申しあげたのは、例えば、今回の施策のように、無理をして子供の医療費を無料にし、別のところで子育て世帯の負担が増えるようなことになるなど、本末転倒なことになる可能性があるからです。

 また、私は昨年の代表質問において、4年の任期の間に公約を実現できればいいとの市長の政治姿勢に対し、「子供にとっての4年間は大変大きいことから、(公約実現のための)財源は速やかに確保するべきである」、そして、「年間40億円の収支改善にとどまらず、さらに、財源のねん出をする努力をしなければならない」と、意見を申し上げました。

 そうした立場から、反対理由を4点申し上げます。

【1点目、市長選挙の前に市より示される「見通し」は信用できないということです。】
 本件は、来年1月より実施されることから、まさに市長選挙の直前に市長ご自身の「公約を実現する」形となります。

 そして、わが会派の財政見通しに関する質疑に対しまして、「令和6年度決算を反映した全体の財政収支見通しから今後も財政的にやっていけると判断した」旨のご答弁がございました。しかし、現在の市当局の見通しも、そして、呑気な財政感覚で危機的な財政悪化を招いた市長の判断も、そのまま信用することはできないと考えております。

 と言いますのも、前回の選挙の直前に、市長が1期目の選挙で掲げた「待機児童ゼロ」という公約に対して、「保育所等の待機児童がほぼ解消する見込み」、「ゼロも視野に」などと発表されました。しかし、選挙後にふたを開けてみると、待機児童は52名、全国で8番目に多いという状況となり、決して「ほぼ解消」とは言えず、さらに、その後2年間、待機児童数は上昇し続けました。これは、(現在の)市長及び市より提示される、選挙前の結論ありきの情報は極めて信憑性が低く、その情報に基づいてなされた施策も決していい効果を生まない ことを示しております。

 つまり、事実を見て慎重に判断すべきであることを示唆していると考えております。

【2点目、危機的な財政状況を脱することができていないということです。】
 令和6年度決算の単年度実質収支は、いまだ約14億円の赤字となり、引き続き、財政構造改善実施計画(以後、計画)の取組みを続け、市民サービスの低下、市民の負担増を迫ることに変化はありません。そして、経常収支比率も、96.7%と、まだまだ高止まりしております。また先日、報告されました計画の進捗状況は、計画終了後の令和11年度の経常的な収支の効果額として、約38億円の改善を見込んでおられますが、ここに(医療費の完全無償化のために)年間約6億円の扶助費が増大することになれば、年間約40億円の収支改善という計画の目標から遠のくことにもなり、経常収支比率もまた悪化することとなります。

 市長は、わが会派の収支見通しに関する質疑に対して、「(全体の収支見通しを示す中で、)医療費無償化に関しては、この先も持続可能だと判断した」とご答弁されました。確かに、続けることは可能、むしろ、やめることは難しくなる と思います。つまり、財政の一層の硬直化を招くこととなります。

 また、西宮市では16年前、3次にわたる行財政改善実施計画を完了し、危機的な財政状況を乗り越えてから、平成22年7月より、全国に先んじて、所得制限付きではありますが、中学校3年生までの医療費の無料化に踏み切りました。こうした過去を踏まえましても、危機的な財政状況にある 中で「扶助費」を大幅に増大させることには慎重であるべきです。

【3点目、子供に関する政策の優先順位を精査するべきであるということです。】
 仮に、年間6億円の経常経費を増やせる財政状況なのであれば、施策の優先順位としては、保育所等の待機児童、利用保留児童の解消、留守家庭児童育成センターの待機の解消が最優先です。絶対に実現しなければならないことを後回しにし、さらに、例えば、第2子以降の保育料の軽減などの子育て支援の優先順位を検討することもなく、市長の公約実現ありきで判断されたことも常任委員会においてはっきりとご答弁されております。
 今後、プレみやの保護者負担の軽減も不可欠であることを鑑みますと、子供に関する政策の優先順位について、もっと慎重に検討するべき財政状況にあると考えます。

 さらに、インフラ、公共施設の老朽化対策に必要な投資的経費をもっと確保しなければならないと、長年、指摘をしてきたわけですが、こうした市民の安全にかかわる部分を先延ばししてまでも、医療費の完全無償化を市民が求めているのか、現実を踏まえて施策の優先順位を慎重に検討するべきものと考えます。

【4点目、子供の医療環境の悪化、健康への悪影響につながる恐れがあるということです。】
 優先順位に関する質疑に対して、「単なる子育て支援、経済的支援以上に、社会保障の要素が強い施策であると考えている」と答弁されました。
 医療費を完全に無償化することにより、過剰な診療や医薬品の過剰摂取を助長する可能性もはらんでおり、そもそも医療費を無償化することで受診者が増えることは市も認めており、健康保険で賄われる医療費の増加のみならず、小児科医など医療資源も限られていることから、本当に必要な方が医療を受けづらくなるなど、医療環境が悪化する可能性があります。

 また、薬の過剰摂取による「子供の健康への影響」に対する不安も残ります。現に、これらは現実的な課題となりつつあり、無償化の見直しをする自治体も出てきております。つまり、子供の命を守るためにならないのであれば、施策の実施には慎重であるべきです。

【まとめ】
 このように、将来世代にとって悪影響を及ぼす可能性がある予算案をそのまま通してしまう政治が、現在のような財政悪化を招いてしまったと、多くの市民からのご指摘もいただいております。
 財政的にも、また、医療環境や子供の健康を守る視点でも、将来世代に対して無責任ともいえる政策をそのまま許す政治はもう終えなければなりません。

 苦渋の決断をせざるを得なかった議員も多数いらっしゃると推察しております。
 私たち啓誠会は、現市長の放漫な「市政運営」に対して、責任ある判断をするために、将来の財政負担や優先順位、施策が及ぼす影響をさらに慎重に検討する時間を設けるべきと考えまして、先の民生常任委員会において、関連予算が計上されております令和7年度西宮市一般会計補正予算(第5号)に対して修正案を提出いたしました。
 しかし、修正案は否決となりましたので、現時点での判断としては、条例改正に反対せざるを得ないという結論に至ったものです。

 なお、本条例改正に伴う予算が計上されております、議案第392号、令和7年度西宮市一般会計補正予算(第5号)につきましても、同様の理由により反対致します。

 以上、反対討論と致します。

===ここまでが本会議場での議論===

(9月20日追記)

 国政選挙の結果から、今の国民は「負担の軽減」を求めていると受け止めています。
 18歳までの医療費完全無償化という「目先のタダ」は、今の負担軽減を実現するのかもしれません。

 しかしなぜ、今、負担感が実感を伴ってきたのか。

 少子化と高齢化が同時に進行し、教育は変わらず、経済も発展させてこなかったことが大きな要因だと言われています。

 しかし。
 何より問題だったのは、結局30年以上もの間、政治が変わらなかったことだと私は感じています。
 政治はその場の「痛み」を回避するために、選挙受けをする「楽」を選択し続けてきたのだと思います。

 楽あれば苦あり。

 私は、今の流れを断ち切らない限り、正常な生活を取り戻すことは難しいと感じています。

 25年前。
 
 議会に挑戦する前の4年間、市会議員の事務所スタッフとして市民の皆様の声を聞き、「市政の活性化」と「負の遺産の清算」を掲げて、22年間、市議会議員として活動させていただきました。

 「志・約束」のページに記しました通りです。

 これまでも「市民との対話なくして、真の政策なし」との確信のもと、市民の皆様と対話を続けてきました。

 そして、今回の議会で改めて、「市長の暴走」「市役所の暴走」を、市議会からでは変えられないことを痛感しました。

 この反対討論は、啓誠会の皆さんが幹事長でもない私に委ねてくれました。

 この討論を私にとっての、政治を変えるための「覚悟」とし、このような面白みのない記事を最後までご覧いただいた、政治をあきらめていない方々とともに政治を変えるために、今後、さらに行動してまいります。

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