防災対策についてー平成23年12月議会一般質問

2012年3月11日[カテゴリ:質問, 防災対策

東日本大震災から1年。
阪神・淡路大震災から17年。

地震により大きな被害を受けた経験をもつ西宮市ですが、東日本大震災の被害を見て、改めて、現在の防災対策を検証する必要があります。
平成23年12月議会において、主に津波を伴う地震に対する防災対策について取り上げて質問しました。

========本会議場での議論の概要=======
平成23年12月議会一般質問
1.安心・安全のまちづくりについて
ア)防災対策
(津波による浸水の想定)
■質問の背景・田中の主張
まず、津波の被害想定と対策について取り上げます。

政府の中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」は、去る9月27日に最終報告書をまとめ、これまで発生確率が低いとして、869年に発生したとされる貞観地震など過去に起きた巨大地震を想定しなかったことを反省し、古文書等の史料の分析、津波堆積物の調査、海岸地形などの地質調査などの科学的知見に基づく調査を進める必要があるとされました。

今回の仙台平野の浸水エリアは、その貞観地震の浸水エリアと類似しているそうです。そして869年の貞観地震の前に、関東北部や東北などでマグニチュード7クラスの地震が相次ぎ、貞観地震の翌年には、関東直下型地震(870年)、そして、17年後の887年には、東海・東南海・南海地震の3連動と言われている仁和地震が発生していることを、遺跡の発掘調査において、地割れや液状化現象などの地震の痕跡から確認されております。

そして、近年の昭和58年に発生したマグニチュード7.7の日本海中部地震や、平成7年のマグニチュード7.3の阪神・淡路大震災、そして、マグニチュード6.8の新潟県中越沖地震など、各地でマグニチュード7前後の地震が発生した後に東日本大震災が発生した点が、その平安時代の状況と共通していることも指摘されており、阪神・淡路大震災の被災市である本市においては、直下型の巨大地震はもとより、東海、東南海、南海の3連動の津波を伴う巨大地震に対しての備えが急がれます。

また、津波については、これまで想定してきた1707年に発生した宝永地震での津波被害よりさらに浸水エリアが広かったとされる1361年の正平地震においては、海岸線から約4キロメートル、海抜が5から6メートルの天王寺付近まで津波被害があったとの古文書の記述が見つかっており、さらに遺跡調査においても事実であることが確認されているそうです。

西宮での被害に関する記述のある当時の古文書はほとんど見つかっておらず、津波堆積物の調査や地質調査によって過去の被害を確認する必要がありますが、想定に対して、「それはないだろう」という思いが市民に強ければ、対策が甘くなるおそれがあります。たんなる計算上のシミュレーションではなく、過去の史実に基づいた想定のもとで対策を講じることで、一層防災意識も高まるものと考えます。そのためにも、歴史学や考古学と連携した防災対策が重要性を増していると思われます。
 
そして、県は、去る10月24日に、津波の高さを、これまでの想定のおよそ2倍に当たる4.4メートルから5.2メートルとして、阪神地域の暫定的な津波浸水予想図及び津波被害警戒区域図を発表致しました。
その浸水予想は、防潮門扉が閉められなかった場合でも西宮市内の浸水区域は概ねJR神戸線以南となっており、標高によっては警戒区域が阪急神戸線以北に及んでいる地域もございます。

■質問1
国、県が示した想定に基づいて、各市町村がさらに地域防災計画を策定する趣旨を鑑みると、津波堆積物の調査など、本市独自のデータに基づいた防災対策を講じるべきと考えますが、市はいつまでにどのように防災計画を見直すお考えなのか、お尋ね致します。

■質問1に対する市長の回答
津波堆積物調査など、本市独自のデータに基づいた防災計画をいつまでにどのように見直すかについてでございますが、国におきましては、本年9月28日に発表されました中央防災会議の東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会の報告に基づきまして、古文書などの歴史資料の分析、津波堆積物調査、海岸地形などの調査を実施することとしております。

また、兵庫県におきましては、10月24日に、東南海・南海地震で予測される津波の高さを2倍に引き上げた浸水シミュレーションを公表致しました。本市では、兵庫県の公表を待たずに、いち早く、市民の安全・安心を確保するため、暫定的に津波の高さをこれまでの想定の2倍程度と見込み、浸水予想区域をJR神戸線以南と拡大し、その地域の3階建て以上の堅固な建物を津波避難ビルとして指定することに鋭意努めているところでございます。
 
今後、地域防災計画を見直すにあたりましては、中央防災会議の報告に基づく国の調査結果や兵庫県の地域防災計画の内容を踏まえるとともに、その上に市独自の検証も加えてまいります。また、国や兵庫県の新たな災害想定や計画などが発表され次第、地域防災計画に反映してまいります。

■田中の主張
東日本大震災より以前の津波においても、河川を10キロ以上も遡上したケースがあり、急な傾斜の河川ではありますが、夙川については、5.2メートルの津波が押し寄せた際にどの辺まで決壊することになるのか想像もつかず、夙川周辺にお住まいの方にとっては、大変不安な思いをされている方もいらっしゃるのではないかと思われます。

■質問2
夙川を遡上する津波の想定はどのように考えているのか、お尋ね致します。

■質問2に対する市の回答
夙川の遡上についてでございますが、兵庫県では、本年10月に暫定の津波浸水想定区域を公表されました。それによりますと、想定津波高さを5.2メートルと算定し、2級河川である夙川の護岸はそれ以上であることを示すとともに、本格的な津波対策の検討については、来年度以降に公表予定の国の中央防災会議等による津波高さの設定や技術指針策定後に実施するとされており、それを踏まえて津波遡上が河川構造物に与える影響などの検討も行うこととしております。本市としましては、兵庫県に対し、早期に津波遡上に対する検討を行い、河川への必要な対策を実施するよう要望してまいります。

■まとめ・要望
防災対策についてですが、市としての古文書の活用や、考古学、地質学、歴史学などの情報を加味した防災対策については、回答の中で一定具体的な言及はありませんでしたが、想定をすることが目的ではなく、私は、いかに市民が現実味を持って備えていただけるかという点が一番大事かと思っております。そのためには、歴史的な根拠づけも必要なのではないかと考え、今日はデータをお示ししました。(地質調査の実施について)検討して頂きたいと思います。

=========ここまでが、本会議場での議論の概要========

実感がわくようなデータに基づいたシミュレーションを市民に対して周知しなければ、実際の市民の行動、防災意識の向上に結びつかいない恐れがあります。それが一番危険なことだと感じています。市が独自で津波堆積物の調査をすることについては、財源も必要ですし、調査をする場所についても一定のめどをつけなければなりませんので、現時点では、容易ではないかもしれません。
引き続き、私自身も情報収集に努めたいと思います。歴史など情報をお持ちの方がいらっしゃれば、是非とも市に対しましてご提供頂けましたら幸いです。

次のコラムでは、防災に関する街なかでの表示についての議論をご紹介します。

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