市民と政治の意識の乖離ー令和6年3月議会代表質問

2024年6月24日[カテゴリ:地域コミュニティ, 子育て・教育, 質問

 「少子化は国を衰退させる」ということを実感することが増えてきました。

 今、少子化対策に必要なのは、子育てを支援することと、出生数を増やすことを分けて、政策を再構築していくことではないかと考えています。
 
 日本では、私が学生のころ(1995年に大学に入学)から少子化が問題視され、様々な対策が講じられてきましたが、特に市議会議員として活動するなかで、少子化対策の方向性に違和感を抱き続けてきました。

 「子育てにはお金がかかるから子供を作れない。」

 確かにそうした一面はあると思います。

 私は3人の子供の子育てを経験しましたが、子供が増え、そして、大きくなるごとにお金の問題も出てきますから、行政が金銭面で助けてくれるありがたさを実感してきました。

 また一方で、子供を授かることができなかったご夫婦も知っていますので、そうした方々にも政治は思いをはせる必要があると思っています。
 例えば、令和4年4月より不妊治療が保険適用になり、負担はかなり軽減されたと思いますが、かなり対応が遅かったと感じています。
 私は、平成17年の一般質問(←クリックするとコラム「不妊治療に対する支援の拡充を」)で不妊治療に対する公費助成を提案したことがあります。
 肉体的にも、精神的にも、金銭的にも負担がかかる不妊治療に対して、せめて保険適用でなかった当時でも、金銭的な支援だけでもするべきだったと今でも思っています。

 そして、現代はさらに時代が変わり、仮に生活にかかるお金の問題がクリアされても、少子化は止まらないような気がしています。若い方とお話していると、そもそも子供は作りたくない、子育てをしたくないという方が増えているように感じますし、結婚したくても相手が見つからないという相談も受けることが、まだ少ないですが増えてきたからです。
これは単に私がそういう相談を受ける年齢になっただけだとは思えません。
 
 子育てが自分の人生を豊かにしてくれたことは間違いないと思っています。
 子育てが自己実現よりもさらに有意義なものだと感じ、そう感じる人がパートナー探しを積極的にできる環境づくり、これは企業や行政の手助けも必要だと思いますが、その環境を作る必要がある時代なのだと感じています。
 
 国民の意識を政治が敏感に感じ取り、迅速に対応するという政策を積み重ねることで、ようやく効果が出てくるのではないかと思っています。
  
 さて、前置きが長くなりましたが、現在、西宮市が制定しようとしている「(仮称)宮っ子つながり支える条例」について、令和6年3月議会の代表質問で取り上げました。

 「社会で子供を育てよう!」という文言は少し昔によく聞きました。
 
 しかし、「自分の子供すらいらない」という人が増えていると言われ、価値観が変わってきている世代が、そのまま年齢を重ねた場合、そもそも地域活動に関わるきっかけもなくなってくるでしょうし、仮に地域活動に関わることになったとしても、少し極端ですが、積極的に「地域の子供を育てよう!」という気に本当になれるのか。現代にあっては、「つながり支える」という文言には違和感しかありません。
 
 その前に自分の子供を育てようと思う人をもっと増やすのが先です。

 また、地域コミュニティの希薄化、担い手の減少や高齢化に対して何も手を打てていない市が、地域で人々がつながって子供を支えていこう!と呼びかけても響かないのではないかとも思います。

 地域コミュニティの希薄化を食い止めるためのこまめな対策を講じるのが先です。
 
 このように、「(仮称)宮っ子つながり支える条例」などを策定する前にやるべきことがあるのではないか、
 財政が厳しくなって人員を削減しようとしているときに、こんな具体的な効果を期待するものではないふんわりとした条例の策定に、いらない人員を割くという感覚を疑う、

 そうした私の疑問が、単なる思い込み、誤解であることを願って、会派の許しも得て、代表質問で取り上げさせてもらって議論をしました。

====本会議場での議論の概要====

令和6年3月議会代表質問

2.子育て・教育環境について
ウ)(仮称)宮っ子つながり支える条例について
■質問の背景(田中まさたけ)

 昨年の市長の施政方針におきましても、この条例の制定に向けて取り組むと述べられておりましたが、この1年間、議会に対して中間報告すらされることはありませんでした。そうした中で、また今年の施政方針でも着手すると述べられております。

■質問(田中まさたけ)
 まず、この条例制定の目的に関して、どのような課題を解消するために、地域に対して何を期待して、条例を制定するお考えなのか、明確にお答えいただきたいと思います。

■質問に対する市長の回答
(仮称)宮っ子つながり支える条例について、御質問を大きく二つ頂きました。
目的と、それから地域に何を期待するかということでございます。

 目的は、全ての子供を主体とし、そして健やかな育ちのために社会全体で子供や子育て世帯を支えていくと、また子供たちの声を聞き、まちづくりに生かしていくという、こういうような思いを形にしたいというのが条例の大きな目的でございます。

 その中で、地域に何を期待するかということでございますけれども、今も本当に子供に対して愛情、そして時間を注いでいただいている方もおられる一方で、地域が希薄化しているところもございます。
 また、以前にも増して、家庭も含めて支援ニーズが多様化、そして増加をしているところでもございますので、こういったようなことも含めて、地域が様々な家庭、地域、当該の方たちだけでなくて、企業などとも含めてつながり、支えていくというような、こんなようなことを地域に期待をしていくという、これが形にできるような条例にしていきたいと思っております。

■再質問の趣旨(田中まさたけ)
 丁寧にお答えをいただきました。
 ただ、何を解決したいのかというところで、地域のつながりというお答えだったんですけども、地域のつながりがあって何を解決したいのですかということを私は聞きたかったんですね。

 それがまだちょっと示されておりませんが、それはまた次の機会にしたいと思います。
 繰り返しになるのですが、この条例を策定する狙いがいまいちイメージができません。

 と言いますのも、市長からの御答弁にもありましたけど、昔から西宮市では、地域の方々が御自身の子供だけではなくて、地域の子供たちを見守り支えてきていただいたと私は認識をしております。

 しかし、そうして支えてもらってきた世代、この世代の価値観が変化をしてしまっておりまして、既存の仕組みが否定をされ始めていますし、価値観が多様化して、例えばこれは自治会の加入率の低下であったり、PTA役員のなり手不足など、地域活動の担い手の減少、高齢化が課題となっているのだと私は認識をしております。

■再質問(田中まさたけ)
 この子供たちを支えていただきたいという地域に対する支援ということですが、自治会の加入率が減少しておりまして、地域コミュニティーの希薄化が課題となっている状況にあって、市はこの条例を制定するに当たって、地域に対して財政出動を伴うような支援を実施する用意はあるのか、お尋ねをしておきたいというふうに思います。

■再質問に対する市長の回答
 地域団体の維持自体がまず困難となっているということ、そうしたことも御指摘いただいたところでございますが、今回の条例制定によって、やはりこの次世代を担う子供がいかに大切だという、そのことを全ての地域の方々と一緒に再認識をし、そして持続可能な地域活動のきっかけの一つになればいいと思っております。
 そうした中において、今財政的にということでありましたが、そのことにつきましては、既存の政策などの検証もしながら、そして仮にする場合にはどういう効果を求めてというようなことをしっかりさせた上で、様々、もろもろ検討を判断してまいりたいと思います。

■意見・要望(田中まさたけ)
 少しだけ厳しい言い方をします。
 この条例の制定というのは、本当に現在の担い手となり得る世代の価値観に沿っているのかというところに私は疑問を持つべきだと思っています。

 また、先ほどの御答弁の中であったと思うのですが、子供の声を聞きながらというところもこれは施政方針でも述べられておりましたけれども、この取組みにしても、子供の声を聞くというのはいいのですが、考えておかないといけないのは、子供が大人に利用されてしまう(「本当は大人がやってほしいだけなのに、子供が言っていることだからやってあげるべきだ」という風潮)、その結果、子供が傷つくようなことにならないように、気をつけなければならないと私は思っています。

 そして何よりも、この財政構造改善を進めようとしているこの時期に、貴重な職員の手を使って策定しているわけですから、お答えいただいたような、ふんわりした理念だけを示すだけで終わるような条例になっては、これはもう時間と財源の無駄であると私は思います。
 ですので、これも御自身の公約にとらわれることなく、条例制定について考え直すことをお勧めしておきたいと思います。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 待機児童の解消すらできない市が、この条例を制定しても説得力がありません。

 まずは、市がやらなければならないことを着実にやって、その成果を示してから、地域との協働を求めるべきだと、改めて感じます。

 財政が厳しいときは、箱ものが無駄の象徴のように言われてしまいますが、私は、こうした外からは見えにくい無駄な経費(人件費)を抑えるのが先ではないかと思っていますので、本当に残念な市長の回答だったと受け止めています。

 「そら、危機的な財政状況を招くわ。

 こうしたしがらみまみれの無駄な経費を守るために、市民の皆さんが受ける公共サービスが削られたり、負担を増やされようとしているということを、一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。

 そして、なんとか、こうした流れを地方から止めたいと思っています。
 
 長くなったにもかかわらず、最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

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