実は初めて。- 請願の紹介議員として内容を説明

2024年4月4日[カテゴリ:その他政策, コラム

 3月25日(月)に西宮市議会第5回定例会が閉会しました。

 今定例会では、市民から提出された「年金制度における外国人への脱退一時金の是正に関する意見書提出を求める請願」の紹介議員となり、民生常任委員会で請願内容を説明し、委員からの質疑に回答しました。あまり自慢できたことではありませんが、紹介議員として請願の質疑を受けるのは議員活動21年目にして初めてのことでした。

 今回のコラムでは、その請願の内容と議論につきまして、一部とはなりますが、掲載したいと思います。

請願第7号(←クリックするとPDFファイルが開きます。)

 この課題は、行橋市議会議員の小坪慎也氏による調査、行橋市議会での議論の結果に基づいて、全国への呼びかけで全国各地の市民にも広がったものと認識しています。
 そして、昨年の12月議会の前に、西宮市議会事務局宛てに、小坪氏から「年金制度における外国人への脱退一時金の是正を求める意見書の採択を求める陳情」が郵送で送られてきたそうです。しかし、西宮市議会では市外在住の方から郵送で送られてきた陳情については、委員会では審査せずに議長供覧で終えるルールになっています。

 その結果を知った市民から問い合わせがあり、陳情の制度の説明をし、請願の制度もご紹介しました。

年金制度における脱退一時金とは

 まずは、年金の脱退一時金の制度について掲載しておきます。

 外国人が6か月以上日本で年金保険料を納めていた場合、日本から住所を移して出国すると、転出日から2年以内であれば、最大で5年分の保険料を「脱退一時金」として返してもらえることになっています。
 日本人が外国に住所を移してもこのような制度はありません。
 もちろん、脱退一時金を受け取るとその分の期間は日本では年金保険料を納めていないことになります。

 将来、日本に住み続ける意思がなければ、外国人にとっては保険料の掛け捨てにもなりますので、納めてくれた保険料をお返しするのは一定理解はできます。しかし昨今、この制度の趣旨を正しく理解せずに、もしくは悪用して、請求する方がいらっしゃるのではないかという疑念が生じているとのことなのです。

 制度上は、日本に就労して年金保険料を天引き等で納め、数年おきに住所を移して自国に戻り脱退一時金を繰り返し受け取ることは可能で(そのような方がいるのかどうかは不明です)、その方の国籍がある国の社会保障制度によって異なりますが、自国の年金の受給資格を満たすこともできていなければ、将来的に無年金状態になることが考えられます。

 話は少し変わります。

 日本の社会保障には生活保護制度がありますが、日本で外国人が生活保護を受けるためには、現時点では永住権を有していることが必要です。また、就労ビザで日本に在留して永住権を得るためには、永続的に10年以上日本に滞在するとともに5年以上就労している必要があり、無年金状態の方が新たに永住権を取得することは難しいと考えられます。
 しかし、日本人と結婚をするなどして永住権を取得した方が、脱退一時金を繰り返し申請するようなことがあれば、将来的に無年金となって生活保護を受ける外国人が増えないとは限りません。

 ちなみに、昨年令和5年3月末の西宮市の推計人口は約48万3600人、在留外国人の人数は昨年6月時点で約8200人、そのうち永住者が約1,800人、日本人の配偶者等が約400人、永住者の配偶者等が約50人、定住者が約170人、特別永住者が約2,700人となっています。
 そして、令和4年度末時点で西宮市で生活保護を受けておられる方は約7800人(人口の1.61%)、そのうち外国籍の方は約450人いらっしゃるそうです。

 さらに別の視点では、
 脱退一時金を5年ぐらいおきに受け取りながらも長年日本で働き、日本の永住権も得られずに高齢になって職を失った場合、無年金状態で自国に帰らされることになると、どうやって生活していくのか、人権的に問題になることは明白です。

 労働人口の減少により外国人労働者の長期就労を求めている日本において、また、SDGsが浸透しつつある中で「働けなくなった後のことは知らん!」ではすまなくなるのは明らか です。
 仮に、の話とはなりますが、永住権がなくてもこれまで長年日本で就労してきた外国人であれば、生活に困窮した際に生活保護を受給できるようになった場合、そのときに無年金のまま日本で生活する外国人が増加していれば、社会保障経費がますます増大することにもなりかねません。
 そうなると、生活保護制度においては、基礎自治体も4分の1を負担することになっていますので、将来的に地方の財政負担の増加につながる可能性もあり、「年金制度は国が考えること。」ではすまされなくなります。

 話を戻しますが、
 そもそも現在は、この脱退一時金を申請された方が、その後ずっと外国で生活を続けているのか、再び、すぐに再入国して就労されているのか、実態がつかめていないというのが大問題だと感じています。

 この問題を放置していては、子供たちが大きくなった時代の我が国の社会保障にかかわる問題になると心配され、この請願の提出に至った市民の思いは十分に理解できますし、行動を起こされたことに敬意を持ちました。

請願の審査

 そのような中、この請願に反対をした日本維新の会西宮市議団の渡辺議員のホームページにおいて、

『「同制度は再入国を妨げていない」
「永続的に帰国する前提であるという制度の趣旨」
この2つの表現に矛盾を感じたので法律等への記載などエビデンスがあるか委員会で確認したところ、提出者から明確な回答はありませんでした。

と掲載されていることを同僚議員から知らされました。

 ちなみに、私は提出者ではなく、請願の制度は、市民から提出された請願を紹介議員となった議員が西宮市議会議員の皆さんに説明して採択してもらうという制度になっています。ですので、請願の「提出者から」回答がないことは問題なく、その代わりに回答するために紹介議員がいるわけです。
 おそらくこの記載は、「紹介議員から」とおっしゃりたかったのだと思います。

 ですので念のため、私がこの請願について民生常任委員会においてどのような説明をし、日本維新の会の委員さん(渡辺議員ではありませんが)からの質問に対してどのような回答をしたのか、議事録の抜粋を以下に掲載しておきたいと思います。

 なお、渡辺議員からは、事前に問い合わせを受けたことも文言の修正をアドバイスされたことも一切ございません。
 私は、事前に請願者とともに全会派を回って説明していますし、事前に他の会派の方からの指摘もいただいて請願者には文言修正もしてもらいました。
 渡辺議員が担当されている委員会は、私が委員長を務める教育こども常任委員会でして、ともに施策研究テーマの調査を進める中で1年間結構密に接してきた議員さんですから、請願の意図ではなく文言に疑問があるのであれば、事前に問い合わせてくれればよかったのに。 という思いはぬぐえません。


昨秋に町内会のバス旅行で鳥取にも行きました。

 そして疑問を抱かれた文言についてですが、
 
 まず。

 「同制度は再入国を妨げていない」と「永続的に帰国する前提であるという制度の趣旨」の2つの表現が矛盾していると感じたそうですが、文脈からすると、法律ができたときは、外国人が「永続的に帰国する前提」だったから、「再入国に関する規定がなかった」と解するのが普通ではないかと思いますので、何が矛盾するのか私には理解できません。
 
 次に。

 「同制度は再入国を妨げていない」ことについて、「法律等への記載などのエビデンスがあるのか」という疑問についてですが、あるに決まっています。法律で定められた年金の脱退一時金の請求要件に、再入国に関する条件は記載されていないわけですから、再入国を妨げていないことは、ちょっと法律を読めば分かる内容です。
 それを委員会当日は、「永続的に帰国する前提であるという制度の趣旨」のエビデンスと合わせて問われたので、整理して答えることが難しかったです。

 最後に。

 「永続的に帰国する前提であるという制度の趣旨」のエビデンスについてですが、この制度は法律の「付則」に定められていて制度の趣旨までは明記されていないのですが、当時の法律改正について説明された「厚生省発の都道府県知事あての通知」において、当時、短期間日本に滞在する外国人が増加していることを踏まえてこの制度が創設されたことが明記されていました。そのことを何度もエビデンスとしてお答えしましたが、質問をなされた委員さんには理解してもらえなかったようです。

 なお、「外国人の年金保険料の掛け捨てを防止するために脱退一時金の制度ができたこと(=永続的に帰国する前提である)」は、ある自治体のホームページでの説明にもありますので、周知の事実とも言えます。


鳴尾川の防潮堤の耐震化の結果を現場確認に行った時の写真です。
この近辺の小中学校には外国籍の子供が多数通学しています

===民生常任委員会の議事録===

令和6年3月11日

■請願説明(田中まさたけ)
 それではですね、請願第7号 「年金制度における外国人への脱退一時金の是正に関する意見書提出を求める請願」について、私のほうから説明させていただきます。

 まず、請願のほうを朗読いたします。

 年金制度における外国人への脱退一時金の是正に関する意見書提出を求める請願。

 請願趣旨。
 国民年金や厚生年金保険(共済組合等を含む)の被保険者(組合員等)で日本国籍を有しない方が日本を出国する際は、脱退一時金を請求することができます。
昨今、脱退一時金の裁定件数は増加傾向にあり、令和3年度は9万6,000件に達し、過去10年の累計は72万件を超えています。
 年金を受給するためには、最低10年間の加入期間が必要ですが、10年を満たすことができず受給権を得られない外国の方々に特有の事情を踏まえて、例外的に脱退一時金の制度は設けられています。

 しかし、同制度は再入国を妨げていないため、後に日本において再度就労することができます。入国時には就労ビザや留学ビザにあっても、やがては永住資格などの申請を行うことができるようになっており、永住資格を持つ外国人であっても、脱退一時金の申請を妨げるようにはなっていません。

 日本人は基本的に公的年金を脱退することはできず、特に派遣労働者が雇い止めになった等の場合、生活に及ぼす影響に大きな差が生じるなど、国民が強い不信、不公平感を抱く状況となっています。

 請願事項。
 脱退一時金を請求した方は、永続的に帰国する前提であるという制度の趣旨に立ち返り、政府において必要な実態把握を行い、在留資格に関する議論の進捗も踏まえながら、次期年金制度の改正に向けて必要な検討を行うよう強く要請する意見書を、地方自治法第99条の規定により提出していただきますようお願いいたします。

(請願者の住所氏名等の議事録の掲載は割愛します。)

 少しだけ説明を加えさせていただきたいと思います。

 この脱退一時金の制度のことです。
 こちらの脱退一時金を請求できる要件(法律でには請求できない要件が規定されています)につきましては、

一つ目が「日本国籍を有していない」こと。
二つ目に「公的年金制度、これは厚生年金保険または国民年金の被保険者ではない」ということ。
三つ目に「保険料納付済み期間等の月数の合計が6か月以上ある」、ただしこれは国民年金に加入していても、保険料が未納となっている期間は、この期間の要件に該当しません。
四つ目に、「老齢年金の受給資格期間、厚生年金保険加入期間等を合算して10年間となりますが、この期間を満たしていない」こと。
五つ目に、「障害基礎年金などの年金を受ける権利を有したことがない」こと。
六つ目に、「日本国内に住所を有していない」こと。
七つ目に、「公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない」こと。

 となっております。

 つまり、この請願趣旨にございます同制度は、脱退一時金を受けとっても、再入国を妨げていないため、後に日本において再度就労することができます。

 そして、やがては永住資格などの申請を行うこともできるようになっており、また、永住資格を持つ外国人であっても、脱退一時金の申請を妨げるようにはなっておりません。

 一方、日本人が国内にいる限り、当然年金を脱退できないということはおろか、海外に転出して資格を喪失しても、このような脱退一時金が支給されることはありません。

 この制度は、もともとは平成6年(法の施行は平成7年4月から)に、外国人の保険料の掛け捨てを防止する目的で創設されましたが、それから30年、少子高齢化、人口減少による労働者不足、外国人労働者の増加、労働法規の度重なる改正など、国内の社会情勢が大きく変化してきた中で、この脱退一時金の制度が趣旨のとおりに運用されているのか、疑問を生じる事象が発生しつつある との情報も入っているとのことです。

 よって、この不公平感や、制度の悪用による労働者の権利侵害、また将来にわたる日本の年金制度をはじめとする、社会保障制度の持続可能性に影響を及ぼすことを懸念する市民の求めによりまして、年金制度を所管する政府において、実態調査をするとともに、在留資格に関する議論の進捗も踏まえながら、来年に控えている次期年金制度の改正に向けて、必要な検討を行うよう強く要請する内容の意見書を、市議会より提出するということは、自然のことと考えております。

 以上、簡単ではございますが、請願の説明とさせていただきます。何とぞ御理解いただきまして、採択していただきますよう、よろしくお願いいたします。

■質問(日本維新の会委員)
 一問一答で一つ、請願の内容についてと。
 脱退一時金の制度に関して、文章では、同制度は再入国を妨げていないとありますが、一方で、永続的に帰国する前提であるという制度の趣旨も述べられています。

 これらの二つの記述は、一見すると相反しているように思えるんですが、法律的な記述やエビデンスはあるのか、教えていただけないでしょうか。

■回答(田中まさたけ)
 法律的なところ(記述)なんですけども、基本的にですね、まず、永続的に、日本で年金を納めた方(外国人)が、自国に帰られるということが前提で、先ほども申しました、保険料の掛け捨て、これを防止するということで、平成6年にですね、改めてこの制度ができたという通知がなされております。

 一方でですね、そのときは、ですので、永続的に帰ることが前提となっていた、その当時の時代背景だと思うんですけれども。ですので、再入国ができないということは、法の中で規定がされていない(つまり、再入国を妨げていない)というのが今の実態でして、ですので結果的には、この時代の変化も伴ってですね、再入国をされる方でも、まず一回出国してですね、脱退一時金の申請をして、また再入国をされるということが可能になった、今の法体系になっているというふうに、私は理解をしております。

■質問(日本維新の会委員)
 まあちょっとエビデンスといえるのかどうかっていうところなんですけれど、法律的なちょっと記述とか、そういうのはちょっとないというふうに認識してもらってっていうのでもいいですかね。

■回答(田中まさたけ)
 平成6年のこの通知(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)の引用なんですけれども、まず、「我が国の経済社会の国際化の進展や、外国人技能実習制度の実施に伴い、短期間、我が国に滞在する外国人が増加していることを踏まえ、」とあります。
 「外国との年金通算協定が締結されるまでの経過的な措置として、外国人に対する脱退一時金制度を設けることとした」ということが、まず通知のほうで(説明)されております。

 国民年金法なんですけれども、こちらのほうでちょっと読み上げたほうがよろしいですか、たくさんあるんですけれども、日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給という項目が追加をされておりまして、第9条の3の2から、これどこへいったらいいんかな。これ全部読みますか(先の説明と重なりますが)。
 第9条の3の2というところで、それぞれこの脱退一時金が支給されるという条件がそれぞれ載っておりまして、そちらのほうには、再入国を、例えば予定している方には支給しないとか、そういう項目がないという、この法律、国民年金法になっているということでございます。

■質問(日本維新の会委員)
 ちょっと頭混乱してきたな。永続的に帰国する前提であるというのは書いていないっていうことでいいですかね、それ。

■回答(田中まさたけ)
 通知の中では、先ほども申しましたとおりなんですが、「短期間我が国に滞在する外国人が増加していることを踏まえ」とありますので、これが、つまり短期で日本にいて自国に帰られるという方が当時増加していたということを踏まえて、この制度ができたというふうに、通知のほうではされております。

■(日本維新の会の委員)
はい、分かりました。

(他の会派の方からの質疑のやり取りにつきましては、今回は議事録の掲載は割愛します。)

■討論における反対理由の表明(日本維新の会委員)
 日本維新の会 西宮市議団は、請願第7号について、不採択とします。
以下、意見を述べます。

 国民年金や厚生年金保険(共済組合などを含む)の脱退一時金は、日本国籍を有しない方々が日本を出国する際に、特定の条件下で請求することができる制度です。
 この制度は、特に10年の加入期間を満たせずに、年金受給権を得られない外国人労働者の事情を考慮して設けられています。
 令和3年度には9万6,000件、過去10年間で累計72万件以上の脱退一時金の申請がありましたが、この増加は、日本国内での外国人労働者の数が増えていることを反映しています。

 しかし、実際には帰国に伴い、一時金を受けとった後に、日本に再入国し、再度就労する外国人も少なくありません。

 請願で提起された脱退一時金制度の見直しの必要性があることは認識しています。しかし、請願が求める、永続的に帰国する前提に立ち返り、の制度趣旨は、グローバル化した現在の労働市場や人々の流動性を考慮すると、現実に合っていないと思われます。
 
 労働市場の変化や国際的な人の動きを反映した、より適用性の高い対応策が必要だと考えます。

 また、政府は、脱退一時金制度を含む年金制度全体の公平性と持続可能性を確保するために、広範な観点から検討を進める必要があるとしています。

 したがって提出された請願に対しては、その趣旨は、理解しつつも、現実の労働市場の状況と国際社会の動向を踏まえた上で、不採択とします。

以上です。

===ここまでが委員会での説明と質疑の内容===

 議事録として文字を起こして読み返すと、不要な単語や接続語、読みにくい語尾が多数あり、こうした単語を発している間に頭で何を答えればいいか考えているわけですが、文字にすると読みづらいかもしれません。

 しかしそれを、「明確な回答がない」の一言で片づけられるとちょっと辛いです。
 エビデンスについては、法律の条文のことも通知の内容から読み取れることも何度もお答えしています。

 そして、日本維新の会西宮市議団としての反対理由を述べられていますが、その内容は請願を採択すべきではないという反対の理由になっていません。
 むしろ、賛成するべき理由が述べられているようにすら思います。

 まず、「請願で提起された脱退一時金制度の見直しの必要性があることは認識しています。」
とおっしゃっています。
 
 ならばこの請願事項にある通り、意見書を提出したほうがいいという結論になるのが普通だと思います。

 そして、「『永続的に帰国する前提に立ち返り』、の制度趣旨は、グローバル化した現在の労働市場や人々の流動性を考慮すると、現実に合っていない。」
 とおっしゃっています。

 だからこそ、請願者は、政府に対して検討を求める意見書を出してほしいとおっしゃっているのです。

 もちろん今後も、将来的には日本には住まないとお考えの外国人もいらっしゃるでしょうから、年金保険料の掛捨てにならないよう脱退一時金をお返しする制度を残す必要はあると思います。そうした詳細については、政府の方で検討していただくべき内容であることも考慮して、請願事項は「必要な検討を行うよう」となっています。

 ちなみに、現在は、社会保障協定と呼ばれていますが、日本で外国人が保険料を納めた年金加入期間を自国の年金制度の加入期間と通算したり、自国の年金制度との二重加入を防ぐことを目的に、平成12年以降、徐々に締結されていっています。
 平成6年の厚生省の通知には、「外国との年金通算協定が締結されるまでの経過的な措置として、」と掲載されていますが、現在は、23か国と社会保障協定が締結されています。そして、現在の在留外国人の国別人数の上位10か国のうち半分の国と締結されています。状況はかなり変わってきています。

 最後に、啓誠会の賛成討論と採決結果を掲載します。

===本会議場での討論===

令和6年3月25日

 ただいま上程中の請願第7号「年金制度における外国人への脱退一時金の是正に関する意見書提出を求める請願」につきまして、啓誠会は採択することに賛成いたします。
 以下、理由を述べます。

 現在、日本国籍を有しない方が、老齢年金の受給資格期間を満たさずに、国民年金や、共済組合等を含む厚生年金保険の、被保険者、組合員等の資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内であれば、年金の脱退一時金を請求することができます。
 
 そして、同制度は脱退一時金を受け取っても、再入国を妨げていないため、のちに日本において再度就労することができます。また、やがては永住資格などの申請を行うこともできるようになっており、また、永住資格を持つ外国人であっても、脱退一時金の申請を妨げるようにもなっていません。

 一方、日本人は国内にいる限り、年金を脱退できないことはおろか、海外に転出して資格を喪失しても、このような一時金が支給されることはなく、不公平感を抱く方もおられると思います。

 この制度は、創設当時、外国人技能実習制度の実施に伴い、短期間我が国に滞在する外国人が増加していることを踏まえ、外国との年金通算協定が締結されるまでの経過的な措置として、平成7年4月より、外国人の保険料の掛け捨てを防止することなどを目的に創設されています。そして、その後30年が経過し、少子高齢化、人口減少、外国人労働者の増加、労働法規の度重なる改正など、国内の社会情勢が大きく変化してきたなかで、この制度が趣旨の通り運用されているのか、疑問を生じる事象が発生しつつあるとの情報も入っているとのことです。

 日本の労働人口の減少が進み、様々な産業において人手不足が課題となる中で、昨年10月末時点での外国人労働者が初めて200万人を超え、約205万人となりました。そして、今後も外国人労働者に依存をせざるを得ない状況におかれつつある中で、外国人の社会保障は、重要な課題の一つであると捉えています。

 よって、現在の不公平感や、制度の悪用による労働者の権利侵害、また、日本の年金制度など社会保障制度の将来にわたる持続可能性に悪影響を及ぼすことを懸念する市民の求めにより、請願事項にあります通り、年金制度を所管する政府において、実態を把握するとともに、在留資格に関する議論の進捗も踏まえながら来年に控えている次期年金制度の改正に向けて、必要な検討を行うよう強く要請する内容の意見書を提出することに賛成するものです。

 以上、意見と致します。

===ここまでが本会議場での討論===

結果としては、
【賛成】(19名)
 啓誠会(自民党公認議員を含む5名)、公明党議員団(議長を除く6名)、会派・ぜんしん(6名)、無所属議員2名

【反対】(20名)
 日本維新の会西宮市議団(8名)、市民クラブ(立憲民主党公認議員を含む6名)、共産党西宮市会議員団(3名)、あなたの声を市政に!(れいわ新選組公認議員を含む2名)、無所属議員1名

【欠席】(1名)

 で、不採択となりました。

 政治は数の力とは言え、紹介議員としての結果を出すことができず、特に請願者には申し訳なく思っています。
 この経験もまた今後の糧にしたいと思います。

 大変長くなりました。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

記事一覧