医療崩壊の回避ー「オーバーシュート」を理解する

2020年3月28日[カテゴリ:コラム, 危機管理

オーバーシュート。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会見をニュースで見て、初めて聞いた単語でしたが、話の文脈から、「感染者が大幅に増えること」であると想像しました。

「オーバーシュート」は、様々な分野で使われている単語のようで、証券の業界では、「相場や有価証券の価格の行き過ぎた変動」を意味するそうです。有価証券には、その時の経済状況にもとづいて分析、予想される適正な基準があるそうなのですが、「行き過ぎた変動」とは、短期的にその基準からかけ離れて価格が急上昇したり急降下したりすることを意味するそうです。

私は、株式の取引をしていませんので、違っていたら、判明し次第、修正します。

今回の「オーバーシュート」という単語の意味を、「爆発的な感染者数の増加」と捉えた時に、具体的に何日間で何人くらいというのは定義が示されていません。そこで、上記の説明にあてはまめて考えると、越えないと想定している基準ラインが「医療崩壊を起こしてしまう患者数」であり、そのラインを一気に超えてしまうほどに患者数が急上昇してしまう状態がオーバーシュートであると理解すべきであると感じています。

つまり、オーバーシュートが起こると、医療崩壊が一気に起こってしまうと理解したほうがいいと思っています。そう理解しておくと、「感染者数の爆発的な増加」とは少しニュアンス、深刻さのイメージが異なってきます。

また、有価証券の場合は、オーバーシュートのあとに、実体を反映した水準に修正される動きになるのが一般的らしいのですが、感染症の場合、オーバーシュートを引き起こすと、短期では基準には戻らないのは明らかですので、ひとたび起こると取り返しがつかないことが起こることは、海外の様子を報じる報道を見ても想像に難くありません。

ですので、オーバーシュートとは、
単なる「感染者数の爆発的増加」ではなく、「オーバーシュート=医療崩壊が起こってしまう=死者が増大することである」という理解を国民と共有し、国民に対して感染拡大を防ぐ行動を求める必要があると思いました。
まだ、その理解を国民とは共有しきっていないように思います。

はっきりしない実体

よく考えてみると、「感染していても症状が出る場合と出ない場合がある」、「咳や発熱があっても皆がPCR検査を受けているわけではない」ことから、新型コロナウイルスの感染状況については、「実体」がまだまだ分かっていない状態と言えます。

そして、感染が広がった要因として「クラスター」が注目されていますが、当然、陽性が判明した全員がクラスターからの感染であるわけではありません。感染経路が判明していないのです。
例えば、西宮市在住の方が8名、感染が確認されていますが、そのうち半分の4名の方は感染経路が特定されていません。
また、兵庫県では、そのクラスターが6ヶ所もの場所で発生していますが、クラスターが発生した要因(そこから先の感染経路)もはっきりしていません。

そうしたことから、今週は兵庫県での感染者数の増加は少し落ち着きましたが、いつ「オーバーシュート」が起こってもおかしくない状態と言っても過言ではないと思います。
「オーバーシュート」だけは絶対に回避しないといけない、私たちは、そのための行動をしないといけないという意識を持つ、持たざるを得ないような雰囲気づくりをしなければならないと理解しました。

そしてそのために、行政が、どこまで「実体」を把握して、私たちに具体的な情報を提示できるかということも、重要な鍵を握っていると強く感じます。

市からの報告と東京都の対応のギャップ

首都では、オーバーシュートが起こるかもしれない、重大局面と知事が発表した一方で、西宮市からは、以下のような報告が届きました。以下の報告文書を見ると、今週は、西宮市でも兵庫県でも、新たな感染者が先週ほど急激には増えなかったからか、土曜日の報告とはいえ、温度差、ギャップを感じます。

これまで感染が確認されている方々の容体や感染経路の調査状況、濃厚接触者の調査状況や健康状態などもっと多くの情報の開示、感染爆発が起こった場合の対応について検討すべきこととしてどのような項目を挙げているのかを示すなど、報告すべきことはもっとあるはずです。市の担当者が疲れているのか、あってはなりませんが、緩んでいる表れだと感じます。

改めて、市民に危機感を持ってもらうための情報を開示する必要があります。

もし疲れているのであれば、今後の長期戦を見込んで、どのようなメンバーでも、しっかりと検討・対応ができるようなシフトも準備しておくべきです。

以下が、市から送られてきた報告文書のコピーです。

=====市からの報告(3月28日(土)19時30分)のコピー======

1.第36回新型コロナウイルス感染症対策本部会議(会議資料抜粋添付)
・ 本日(3/28)行った検査7件すべて陰性であった。
・ 本日16時時点での相談件数は、健康医療相談は62件、一般電話相談は42件であった。
・ 今後、感染爆発が起こった場合の対応について検討を進める。

第36回対策本部会議資料

=====3月28日(土)19時30分時点の報告のコピー======

以前の報告については、こちらをご覧ください。

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