医療崩壊の回避②-行動規制と生活保障・行政に対する信頼

2020年3月29日[カテゴリ:コラム, 危機管理

前のコラムの続きです。

以前に、こちらのコラム(←クリックしてご覧ください。)でも一度、市の動きを振り返ったことがあります。

ここでは、これまでの感染拡大の推移を振り返ってみたいと思います。

■1月15日(水)国内で1例目の感染確認

まず、
国内で1例目の感染が確認されたのは1月15日です。この時点では、報道で治療薬がない感染症であるとの情報が伝えられ、漠然とエボラ出血熱と同程度の恐怖感を持った記憶はありますが、2か月後に国内外でこのような状況になっていることは想像していませんでした。私のコラム(←クリックするとご覧いただけます。)では、甲子園球場で開催された成人式のことを記載しておりました。

また、中国では原因不明の肺炎症状として武漢市で59例(昨年12月)が報告されており、それまでは死亡例が報告されていなかったものの、1月14日の厚生労働省の報告で、1名の死亡が報告されたとの記載がありました。

■1月29日(水)隣の大阪府で1例目の感染確認

そして、
以前のコラム(←クリックするとご覧いただけます。)でも書きましたが、私が初めて市の保健所に市内の対応状況を電話で確認したのが1月30日でした。
この時、国内での感染者は10名を超えていましたが、ダイヤモンド・プリンセス号の対応が始まったのが2月3日でしたので、まだこの時点では、現在とは緊張感、雰囲気は違っていました。

この前日1月29日に、お隣の大阪府で1例目の感染者が確認されていました。この方の濃厚接触者は特定され、1週間後の2月5日まで健康観察が行われ、その全ての方が発症しなかったと報告されています。

そしてこの方は、
2月1日に退院後自宅静養、
2月6日にPCR検査を実施し、陰性が確認
されています。
そして、
2月13日の受診時には症状がなく、
2月19日に再度、のどの違和感と胸の痛みがあり受診しており、
その後、
21日、22日、25日にも受診して、
ようやく
2月26日に再び陽性が確認されています。

その報告書を見ると、
「当時の退院基準は、退院時に検査を必須としておりませんでしたが、2月3日付けの厚生労働省からの通知を踏まえて、大阪府において、念のため、退院後に検査を行い、陰性である旨、確認しておりました。」との記載がありました。

PCR検査の精度の問題は、どう理解していいのかまだ分かりません。ただ、有効な薬も特定されておらず、治療法もないなかで、「検査の結果が『陰性』だったからといって必ずしも治った、感染していない、とは限らない。」ということであれば、今の対策では不十分と考えられます。

①陽性となった患者が一度陰性になって、再び陽性となった方はどの程度いらっしゃっるのか、
②初めての検査で一度陰性と判定された方が、その後、陽性と確認された方がどの程度いらっしゃるのか、

今(3月29日現在)もデータが見当たりません。

そして、この件数によっては、PCR検査を受けなければならないような症状がある方は、例え陰性になっても自宅での経過観察を強制しなければ、感染の拡大は防げない可能性がある と思うのですが、
①こうした対応は必要ないのか、間違いなのか、
それとも、
②そこまでの対応は不可能なのか、だとすればそれはなぜなのか、
③国会では議論、検討をどこまでされているのか、

現時点でもわかりません。

■2月3日(月)ダイヤモンドプリンセス号の対応が連日報道される

検疫に時間がかかり、どんどん感染する方が増える様子が報道で伝えられ、空港では体温計測モニターによるチェックだけだったのと異なる対応に、「なぜ?」という感情を抱いたのは確かですが、水際対策を徹底する政府の姿勢が伝わってきました。
海外からは批判もあり、この週頃から、国会での議論も焦点が当たるようになったと記憶しています。
そして、
この対応で、犠牲になられた方がいらっしゃることを忘れてはいけないと思っています。その犠牲の上に、一定期間の感染者拡大の抑制が実現できたと感じています。

この件についての連日の報道により、徐々に、国内の雰囲気も変わってきたと思います。

なお、2月3日(月)に開かれた健康常任委員会では、新型コロナウイルスに関する議論を始めています。
こちらのコラムもご参照ください。

■2月15日(土)クラスターとなった大阪市内のライブハウスでライブ開催

大阪市内の4ヶ所のライブハウスで2月15日(土)~24日(月)の間に開催されたライブに参加していた方から、多くの感染者が確認されました。初めのライブハウスがクラスターの可能性があると疑われ始めたのは2週間後の2月29日のことだったようです。
クラスターが表に現れる、発覚するまでの期間の長さを実感するとともに、その間に、2次感染が急激に進むことも考えられることから、改めて、クラスターの恐ろしさを実感します。

なお、2月15日は、天候を気にしながら、ライオンズクラブ主催の西宮市小学生駅伝大会が開催された日でした。この前日までの国内での感染者数は37人でしたが、この時期の自粛ムードはまだ、今とは異なったものでした。

第1回新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下、専門家会議)が2月16日に開かれ、委員から「不要不急の外出をさけてもらいたい」という発言があり、ここからの自粛ムードは、どんどん雰囲気が変わっていきました。

■2月21日(金)国内での感染者数100名を突破

この時点でも兵庫県の感染者数は0人と発表されていました。
関西では、大阪府が1名、和歌山県が12名、奈良県が1名、京都府が2名、滋賀県が0名でした。
そして、
今では、1日で100人どころか200人を超える感染者数が増えている事態となっています。

なお、イタリアで新型コロナウイルスによる死者が初めて確認されたのはこの日であるとのことです。その時の感染者数は3人、この日を境に爆発的に増加していくことになります。

■2月25日(火)政府基本方針が発表

政府から新型コロナウイルス感染症対策の基本方針が発表されました。
そして、専門家会議より「今後1~2週間が、感染が急速に拡大するか収束に向かうかの瀬戸際だ」という見解が示されました。
結果的に収束には向かいませんでした。

■2月27日(木)首相による学校の臨時休業要請

そしてこの日、安倍総理が「小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、3月2日から春休みまで臨時休業を行うよう要請」しました。西宮市でも急激に事態が動き始めたのはこの日以降だったと思います。

なおこの日、お隣の大阪府で2人目の感染が確認されました。

■3月1日(日)兵庫県(西宮市)で1例目の感染確認

晩に年内初の感染者が確認されたとのニュースが流れました。コラム(←クリックしてご覧ください。)にも掲載しています。
そして、
国内で1人目が発覚してから1か月半後に県内で1人目が発覚したのに対して、この後たったの20日間で、兵庫県の感染者数は100人を超えることになります。
この日のコラムはこちら。

■3月11日(水)WHOがパンデミックを宣言

イタリアで感染者数が1万人を超え、日本時間では12日未明になりますが、WHOがパンデミックを宣言しました。
日本政府の対応はそれまでにしっかりとやってきたとして、対応が大きく変わることはありませんでした。

なお、甲子園球場で19日から開幕予定であった第92回選抜高校野球大会の中止が決定、発表された直後になります。

■3月21日(土)兵庫県で感染確認者が100人、国内では1000人を超える

わずか3週間で兵庫県内の感染者数が100人を超えてしまいました。
そして、国内ではこの2ヶ月余りで1000人を超え、死者は36人となりました。

3月29日現在も、何人の方が入院中で、どれだけの医療設備が空いているのか、どのような対策が講じられているのか、整理された数字は分かりません。
今後、このペースで国内の感染者が増加し、重症患者が増加すると、医療崩壊が起こる可能性があると懸念されているにもかかわらずです。危機感を共有するためには、情報を共有した方がいいと考えます。

なお、この日に、イタリアでは死者が4000人を超え、感染者は4万7000人を超えたとの報道がありました。

■3月28日(土)1日の感染者確認数が200人に達する

全国で1日に確認された感染者の数が初めて200人に達し、感染者数は1700人を超えました。
イタリアでの感染者数は、3月2日に感染者数1689人(死者35人)、3月3日には2036人(死者52人)でしたが、3月28日には、86,498人(死者9136人)となり、約1ヶ月で死者数が急激に増加したことが分かります。
アメリカでの感染者数は、3月12日で1663人(死者29人)、3月13日には2179人(死者36人)でしたが、3月28日には、121,610人(死者1246人)となり、2週間余りで感染者数が急増していることが分かります。

■3月29日(日)覚悟を決めるとき


こうして振り返り、世界の動向を見ると、日本が現在、重大局面を迎えているという東京都知事のメッセージは実感が湧いてきます。

オーバーシュート=医療崩壊=死者の急増。

多くの国民の命がかかっていると言っていい状態ですので、「コロナ疲れ」とか、「自粛疲れ」とか言っている場合ではないことは解ります。

また、こうして振り返ると、こうなる前に、手を打てた場面、対策を強化すべきタイミングがあったように思います。
全ては結果論ですが、例えば、兵庫県は、せっかく関西広域連合があるわけですから、1月29日にお隣の大阪府で1人目の感染者が確認された段階で、府県で連携してもっと突っ込んだ調査とウイルスの封じ込めができていれば、状況は違っていたかもしれません。
ちなみに、
第1回の関西広域連合新型コロナウイルス感染症対策本部会議が開催されたのは3月15日でした。もちろん、感染拡大抑制と医療体制の強化のために、これからまだまだできることはたくさんあると思います。

今さら過去のことを後悔しても仕方がないのですが、これまでの動きと結果を教訓にして動けば、まだ、何とか手遅れでない重大局面であると信じたいと思います。そして、西宮市という基礎自治体ができることもまだあるとは思っていますが、限界も見えてきました。

どれだけの財政負担、経済的な打撃を受けるのか本当のところを分かっていない一地方議員だから言えるのかもしれませんが、今後、国民の命を守るために、政治家は覚悟を決める、決断する時期が来ていると思っています。そして、後になって間違いだったと言われるかもしれませんが、生活保障を伴った国民の行動規制による感染拡大防止策を講じなければならない段階になっていると、今は感じています。

引き続き、自治体がやるべきことを考えていきたいと思います。

記事一覧