市立学校再開を決定ー市の意思決定に対する危機感

2020年4月3日[カテゴリ:コラム, 学校教育

まず、先月31日のコラム(←クリックするとコラム「海外からの帰国者の対応が急務ー西宮市内で一挙に5例増加(14例目)」がご覧頂けます。)で、感染者の情報について、「情報更新が滞っている」ことを指摘し、「続報を待ちたいと思います。」と書きましたが、偶然にも早速、昨日2日に、7例目から14例目の方の追加情報がありましたので、10例~14例目の方の情報を追記しました。よろしければご確認ください、

11例目の20代女性は、大阪大学の学生であることがマスコミの報道にありましたが、市が作成する文書には記されていません。
また、10例目の20代男性は、当初の市の報告文書では職業が「会社員」となっていましたが、「学生」の誤りでした。こちらも卒業旅行のための海外渡航であった可能性がありますが、感染者の濃厚接触者のうち、市内在住の方がどの程度いらっしゃったのかなど、詳細な状況は公表されていません。

さて、
市立学校の再開についてです。

西宮市では3月3日からの臨時休業に入り、いよいよ来週から学校が再開される予定となっていました。

そして、感染が確認された市内在住の方が徐々に増えており、無症状病原体保有者による感染拡大も心配されているところです。しかし、本日夕方、当初の予定通り、春休み明けの市立学校の再開を決定したとの報告がありました。ただし、4月7日~17日は短縮授業とするという内容でした。

無謀。

市立学校の再開について(←クリックすると市から送られてきたPDFファイルが開きます。)

私はずっとコラムで連載しているとおり、先月上旬とは比較にならないほど感染拡大のリスクが高まっていると感じており、学校の休業期間を延長すべきであると考えておりましたので、今回の決定には、心底疑念を抱きました。そして同時に、市の意思決定に至るまでの状況分析力と方針の一貫性の欠如、説明力の低さに、危機感を抱かざるを得ません。

「3月の臨時休校措置はいったい何だったのか。」、「今こそ、あの時の経験を活かして対応するべき時なのではないのか。」という思いがぬぐえません。

ちなみに、3月は保育所を閉園しませんでした。
これは厚生労働省の方針を踏まえた対応でした。

=======(抜粋)=======

■新型コロナウイルス感染症防止のための学校の臨時休業に関連しての保育所等の対応について(令和2年2月27日時点)
(保育所について)
1.今回の要請は、小学校、中学校、高等学校等については、現に感染が拡大していない地域においても、感染のリスクを予防する観点から、春休みの前段階として、臨時休業を要請するものである。
一方、保育所については、保護者が働いており、家に1人でいることができない年齢の子どもが利用するものであることや、春休みもないなど学校とは異なるものであることから、感染の予防に留意した上で、原則として開所していただくようお願いしい。

厚生労働省文書(←クリックするとご覧頂けます。)

なお、令和2年4月1日時点ということで、以下の第二報が出されています。
厚生労働省文書第二報>(←クリックするとご覧頂けます。)

=======(ここまでが抜粋)=======

親が給料を稼がないと子供も食べさせることができませんので、やむを得ないのです。

それでも市は、「令和2年2月28日付で保育所等の施設や保護者の方へ、感染予防の観点から、可能な限り家庭での保育をお願いしているところです。」と市のホームページに掲載しています。
そして、3月2日から3月31日までの間、新型コロナウイルス感染症対策に伴い、登園自粛等により欠席した児童について、保育料の日割り計算を行っています。
この市からのお願いに応じた方がどの程度いらっしゃったのか、市からの報告はありません。ですので、現時点では、今後の対応を提案することはできません。ただ、危機感が高まる中で3月にも保育園を運営してきたことで、感染対応の課題や不安が見つかれば即対応することによって、対応力は増してると推察されます。

一方で、学校については、4月1日に、政府専門家会議の提言に基づいて文部科学省が示した「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン」(←クリックするとご覧頂けます)に基づいて判断されています。

このガイドラインがまた、非常にわかりにくいです。
(1)児童生徒等又は教職員の感染が判明した学校の臨時休業の考え方について
(2)感染者がいない学校も含めた、地域一斉の臨時休業等の考え方について
に分けられ、(2)-2)の中で、「専門家会議の提言では「感染拡大警戒地域」においては、「その地域内の学校の一斉臨時休業も選択肢として検討すべきである。」とされています。」と表記されています。

その「感染拡大警戒地域」の定義は、以下のとおりとなっています。
〇『直近1週間の新規感染者数やリンクなしの感染者数が、その1週間前と比較して大幅な増加が確認されているが、オーバーシュート(爆発的患者急増)と呼べるほどの状況には至っていない。また、直近1週間の帰国者・ 接触者外来の受診者についても、その1週間前と比較して一定の増加基調が確認される。』
〇『重症者を優先する医療提供体制の構築を図ってもなお、医療提供体制のキャパシティ等の観点から、近い将来,切迫性の高い状況又はそのおそれが高まっている状況。』と定義づけられています。

数値としての判断基準がなく、あいまいです。

西宮市の直近1週間の新規感染者の確認状況は、
先週26日(木)までの感染者数が8人、昨日2日までの感染者数が14人ですから、6名増加(1.75倍増)しました。その前の1週間は2名の増加でしたので、1週間単位で比較すると新規感染者数は3倍に増えたことになります。

帰国者・ 接触者外来の受診者数は分かりませんが、PCR検査を受けた方は、
先週26日(木)までの累計が108人でしたが、昨日2日には144名(1.33倍増)となり、36人が新たに検査を受けています。なお、その前の1週間は26名でした。

いずれも増加傾向にあります。

ちなみに、兵庫県は、
先週26日(木)までの感染者数が120人、2日(木)の時点で169人ですから、49名増加(1.41倍増)しました。その前の1週間は27名の増加でしたので、新規感染者数の上昇率は大幅に上がっています。

PCR検査を受けた方の人数は、3月26日~4月2日の間に、2121人から2791人と670名増加(1.32倍増)しています。その前の1週間は811人の増加でしたので、上昇率は減少しています。(検査を断った件数は不明です。)

兵庫県全体と西宮市は少し状況が異なるのが分かります。

そして、こうした状況を感染拡大警戒地域と判断するのか否かは結局、自治体の長の「総合的な」判断に委ねられていると言えます。地方分権時代を実感します。

そこで、兵庫県知事は県立学校の再開を決定しました。しかし、「第1、第2、第4学区」と「第3学区」と「第5学区」の3パターンで対応を変えています。西宮市は第2学区地域です。
そして、市・町立学校については、「県教育委員会の対応を『参酌』して、設置者が判断する。」との方針が示されています。 通常「参酌すべき」と表現されるものは「参考にして」と解釈され、「従うべき」という表現よりも拘束は若干緩くなっています。

やはり、臨時休業にした方がいい。

上述のとおり、数値を見ても感染者は明らかに増えていますし、急激に感染者数が拡大している大阪との往来をする方が多い阪神地域です。1ヶ月前とは大きく状況が変化したなかで、確実な感染防止対策がないまま学校を再開するとなると、保護者の不安が募ることはあまりにも明らかです。

完璧な感染防止対策があるのであれば、不要不急の外出自粛など呼びかけるわけがありません。
自分の身は自分で守るしか、方法がなく、皆さんに協力を呼び掛けているのです。特に小学生くらい子供が、自衛はなかなか難しいと考えるのが普通だと思います。

以上の情報だけで判断すると、西宮市で小・中学校を再開するのは、あまりにも危険と言わざるを得ません。

市長は、10代、20代の人たちに向けて、わざわざ以下のメッセージを発しています。

=====(抜粋)=====
新型コロナウイルス感染症対策に関して今日は特に10代、20代の若い人たちに
私市長、石井登志郎からメッセージがあってこの動画でお届けをしております。
(中略)
コロナウイルスは高齢者が重篤化し、若い人はかかりにくい
もしくはかかっても重篤化しない、そんなイメージがあったのかもしれませんが
しかし、海外では若い人でも重篤化する事例も発生していますし
そして、若い人を通して皆さんの大切な
お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん
こうした人たちのリスクを高めてしまうということが本当に心配をされております。

そうした中で特に皆さんに改めて心掛けていただきたいこと
それは3つの密、これを避けるということです。

換気の悪い 密閉空間
多数が集合 密集場所
間近で会話 密接場面

この3つが揃うと集団発生のリスクが高い
そして3つが揃わずとも感染のリスクはあると言われています。

皆さんがこの3つの密を常に意識し、避けて生活をしていただくことによって
コロナ感染の拡大が防止をされていくという風に私たちは考えています。

=====(抜粋終わり)=====

通常の学校は、3つの密が揃った環境となります。
密閉空間は、窓を開ければ回避できます。あとの2つは、たとえ短縮授業にしても、回避するには相当の工夫が必要となります。
しかも、給食を食べて帰ることになっていることから、子供たちの配膳が前提となっている給食の感染防止管理などは至難の業と言えます。

代替案を考える。

以上のような状況を鑑みると、4月17日(金)までは休業とし、自宅での学習のフォローに力点を置くべきだと私は考えていました。
なぜ、4月17日かと問われれば、刻一刻と状況が変化しているわけですから、こまめに判断をする機会を設けるべきだと考えるからです。
学校の先生方は大変になるとは思うのですが、授業がなくなった分の時間を変更に応じる準備に割いていただけるのではないかと考えられます。

そして、不要不急ではない登校として、入学式と始業式が考えられます。

始業式については、①教科書や計算、漢字ドリルなど副教材の配布は絶対に必要です。また、教職員の異動はなされましたので、②クラス分けの発表(担任、担当の変更)、③今後の連絡体制の確認、も必要です。春休みに入ってからの3月26日、27日に実施された登校日と同じような対応により、「密」を避ける対応が可能と考えられます。

入学式は、やはり始業式と同様に、必要な手続き、行事と言えます。規模を縮小することで、小学校の一学年だけであれば、何とか席の間隔をあけて開催することが可能ではないかと思われます。中学生は人数が多いので、時差開催で3密を回避することも考えられます。

そして、自宅学習については、
国語は教科書の音読、漢字ドリル、読書、
算数は計算ドリルや1学年前の復習問題、
理科は教科書の音読、自然の観察
社会は先生作成のプリント、調べ学習
体育は体を動かす課題、
図工は絵画や工作

など、夏休みの宿題を想定すると、自宅でもできることが多数あるはずです。

もちろん、教科書の内容の解説については、新型コロナウイルスが終息し、学校が本格的に再開できる状態になったら、急ピッチで進めなければならなくなります。

そして、考えられる自宅学習のフォロー体制としては、
①始業式もしくは入学式の際に、その週の「家庭学習の課題」を伝達する。
授業で使う準備をしていたプリントなどがあれば、先に渡して調べ学習をしてもらうことも可能かと思います。

②週に一回程度の登校日を設ける。
この登校日については、学年ごとくらいの単位で日を分けて設定し、勉強については前の週の課題に応じた確認のための小テストを実施したり、運動場で密を避けた内容で体育をしたり、勉強で分からなかったところの質問を発表してもらうなどの指導が可能となると思います。
また、1クラスを10人程度のグループに分けて教室を分け、担任の先生+他の学年の先生で対応すれば、1学年4クラスの学校でも12グループ程度となり、2学年分の対応も可能となり、一つの教室での「密集」な状態を避けられます。
しかも小テストであれば、会話も必要最小限ですみ、「密接」な状態も避けられます。あとは換気で、3つの密は避けられます。

世間ではオンライン授業の導入も言われておりますが、端末の有無やネット環境など家庭の事業もあり、義務教育では課題が多いことから、当面は、アナログの対応が妥当であると考えられます。

といった具合に、とにかく今は、外出を極力自粛し、感染拡大を防ぐために、3つの「密」を避けようと呼びかけている最中ですから、このような対応とせざるを得ないと考えます。

しかも、この対応の期間、も現状では4月中の終息は見込めませんので、5月以降の授業再開、場合によっては、1学期丸々このような対応が続くことも想定しておかなくてはなりません。

「学校再開ガイドライン」によると、教員もしくは生徒児童に感染者が出たら、結局休業を検討しないといけなくなるわけですから、そう考えれば、教室がクラスターになる前に、子供たちが感染して重症化するようなことになる前に、休業にした方が得策だと思うわけです。

確かに、学校の一斉臨時休業は、保護者にも大きな影響を及ぼします。特に給食の有無は大きいです。
特に、共働きやひとり親のご家庭には、引き続き、ご苦労をおかけするかとは思いますが、自分の子供を感染の憂き目に合わせることを想像すると理解はしていただけるものと思っています。

次に、臨時休業にした場合は、長期戦を見据えて再開したときのことを考えて、給食に携わる事業者の方々のことも考慮しなければなりません。

民間に委ねている食材の調達体制の維持、運搬体制の維持ができるような支援が必要です。食材を各学校で販売してもらえれば、保護者や地域の方々に買っていただけると思います。販売員としては、調理員さんが考えられます。

大人が少しずつ協力して、やろうと思えば、感染拡大の回避も、子供の健全育成も、経済対策も、完全ではないかもしれませんができると、私は思ってます。
これまで何度も日本人が直面してきた災害の時に、そうして乗り越えてきたように。

ちなみに、市からの文書によると、再開後の授業のやり方や内容についても、わざわざ学校に行かなくても実施可能な内容であると思います。

改めて、市立学校の再開について(←クリックすると市から送られてきたPDFファイルが開きます。)

自主的に子供に学校を休ませるご家庭も出てくることも予想しているものと推察されます。
「給食を実施する。開始日は、学校の当初予定通りとする。
但し、保護者より1週間以上の欠席の申し出ある場合は、給食を停止することができる。
※3日前 10:30までの連絡(例)8日(水)連絡→13日(月)より停止」
と記載があります。

以上のことを総合的に考えると、休業による「分散登校方式」が最も合理的であると、私は思います。

最後に、昨日、一昨日の市の報告も検討しておきます。電話相談の件数が増加傾向にあります。

=====市の報告(4月1日(火)18時)のコピー=====

1.第40回新型コロナウイルス感染症対策本部会議
・本日(4/1)行った検査7件すべて陰性であった。
・本日(4/1)16時時点での相談件数は、健康医療相談は108件、一般電話相談は94件、融資等相談は26件であった。
・若者向けの注意喚起の市長メッセージ動画を作成し、ホームページにアップする。
・さくらFMの中で、外国語で電話相談窓口などのお知らせを行っている。

=====ここだけが、4月1日(火)の市の報告=====

なお、4月2日は、の対策本部会議は開催されず、感染者に関する情報の更新以外、報告はありませんでした。

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