一般質問/(仮称)市民参画条例

2005年8月29日[カテゴリ:コラム

(ア)条例策定の意義
昨今、全国的に住民の参画と協働が叫ばれ、
「○○市自治基本条例」や「○○市まちづくり条例」など名称は異なりますが、
市政運営の基本方針となるような条例が、他の地方自治体では制定され始めています。
(通常こうした条例の中で、参画と協働によってまちづくりを進めることが謳われています。)

また、このような住民生活に直接関与する条例や
各種計画(総合計画を初め、環境や福祉、まちづくり等の基本計画など)を制定・策定する際には、
①公募で集まった市民が委員となって会議を何度も開いて話し合ってもらい、
②必要であれば、学識経験者やNPOなど専門家を招致して学習しながら会議を進め、
③与えられたテーマに対して一定の見解を提言として市長に提出し、
④その提言を市が条例や計画に反映させる
という手続きが流行になっています。

この形式での住民の会議は「市民会議」(※)と呼ばれています。

従来は、議会に議員を選挙で送り出すという行為が、
市民にとっての行政参加であったものが、
「審議会での公募委員」、
「パブリックコメント」、
「まちかど3つの出会い事業」など、
本市でも、個別の案件に対して市民が直接行政に意見を言える機会が設けられてきました。
しかし、そうした動きに反して、
行政と市民の距離は広がる一方で、
行政と議会だけでは、多様化・複雑化した課題や市民ニーズに対応できなくってきたことから、
2000年の地方分権一括法の施行以来、
こうした動きが全国的に活発になってきています。

本市の行政経営改革基本計画でも、
「参画と協働によるまちづくりに関する基本指針の条例化」として項目にあげられ、
平成19年度に(仮称)市民参画条例が制定される予定となっています。
予定では、昨年度に今後の方針と進め方を検討し、
平成17年度・平成18年度で方針に基づく取り組みを実施するとなっています。

「市民会議」を立ち上げて意見を取り入れるつもりであれば、
その会議の立ち上げから提言を出してもらうまでに相当の時間と手間がかかると言われ、
かけなければ価値も薄れるため、そろそろ具体化していくべきです。

今回は条例策定の前に、以下のとおり、具体的に整理しておくべきことをあげました。
(条例で何を規程するのかというところにも関わってきます)
①住民にとってのメリット
②そもそも、参画と協働によってどういったことが解決できるのか
③今後予想されるテーマ。(例えば、マンション問題に代表される都市計画に関するもの、教育、環境、介護問題、医療問題、子育て支援、防犯、防災等々が今のところ考えられます。)
④これまでも公募された市民委員が入っている「審議会」と「市民会議」の役割分担。
⑤「市民会議」による提言を受けた条例案の審議や関連した政策を議論する「議会」の役割。
(→各議員が考えなければならない事項ですが。)
⑥情報提供の進め方。
⑦自治会への加入率が低下している中で、より多くの市民に参画してもらうためのPR方法。
⑧「既存団体」(自治会をはじめ、社会福祉協議会、青少年愛護協議会、コミュニティ協会、スポーツクラブ21、防犯協会、まちづくり協議会、自主防災組織など、これまで、課題が出てくるたびに住民主導のものあれば、県からの働きかけで作られた組織まで、多種多様に現存しています。)の活用方法。

そのためには、そうした「既存団体」の地域によって温度差のある活動状況を把握しなければなりません。
条例や計画を策定するたびに、行政からの働きかけで住民に「組織」や「会議」を作ってもらい進めていくには、
住民の負担は計り知れませんから、この項目は非常に重要です。

⑨市民会議の答申にどこまで実現性を付与できるのか。提言が行政の単なる言い訳のネタとなる危険性もあります。
(私も一般質問の場で、よく言い訳にされたもののひとつに、なんとか検討委員会の答申があります。
検討委員会に答申や提言が出されれば、議会でも、その方向性が変わるような議論は、行いにくくなっているのが現実です。)

⑩透明性・公正性を担保する仕組み。
実は、本市では環境基本条例と新環境計画を策定する際に、
すでに、市民会議が開かれ提言に沿って策定作業が進められるなど、
参画条例がなくともこうした動きもできており、
新環境計画では、地域に根ざしたエココミュニティ会議を設置していくことによって、
環境に関する住民の参画と協働を促し、環境学習を推進していく施策が始まろうとしています。
これが、うまく機能するかどうかは、これからの課題というところですが、
すでに参画と協働の動きは本市においても動き始めていることから、
個別の条例で進めることも可能だと考えられます。

そこで、以下の2点を質問しました。
1点目:(仮称)市民参画条例を策定する意義、何のために制定し、どのように活用するつもりなのか。
2点目:どのような体制で、策定していく考えなのか。

(市からの答弁の概要)
この「参画と協働」についての質問に対しては、必ず、市長が自ら答えられることから、条例制定に対する相当な意欲が伺えます。

答弁内容は、
○制定する意義:参画と協働の重要性について理解を深めるとともに、仕組みを整え市政運営の基本とするために制定する。
○何のために制定するのか:各種計画の策定をはじめとして、本市のまちづくりを共に考え、進めるために活用する。また、個別の条例で進めるのでは各施策の取り扱いが異なる恐れがあり、さまざまな分野で参画と協働を進めることを明確にし、その取り扱いを定めるために制定する。
○体制:一般市民の方に参画してもらう予定。法的問題等を検討する必要もあることから、法律等の専門家の支援を受ける必要があると考えている。

との教科書どおりの答えが返ってきました。

単に条例や仕組みを作るだけでは、機能しないケースが多いのが実情であり、
そうした状況を打破するために何をするのかが大事であると考えます。
そういったことを行政にも意識してもらいたいがために今回の質問をしました。

住宅都市であり、子育て世代が増えている本市において、
より多くの層の市民の方に集まってもらおうにも、
PR不足で一部の人たちだけの偏った参画になる恐れがありますし、
的確な情報提供が行えない恐れもあります。

早急に今回挙げた整理事項についてくらいは見解をまとめるべきであると指摘しました。

(イ)条例の整理と体系化について  

先般、福利厚生事業や特殊勤務手当のことなど、
マスコミに取り上げられてからの市民の反応を見ていると、
まだまだ、市からの情報提供不足、PR不足が露呈しているように感じます。

情報提供が不足していると、
その伝え方によって、行政に対する市民の不信感はますます募ることでしょう。
市民参画条例を制定するから情報提供が必要というよりも、
参画を促すのであればなおさら、という話です。

市民に対する説明責任が問われて久しい中で、
情報提供の内容は、条例だけではありませんが、
まずは、行政の活動・住民の活動の根本となる条例から整理・統合し、
積極的に市民に知ってもらうことで実効性を高める必要があるように思えます。

そのためにもまずは、245も存在する条例を整理、
できるものは統合して市民に浸透しやすい仕組みを作るべきです。
条例が市民にとって見えにくいものであれば、なじみにくいものとなり、
存在の意義すら問われることになります。

例えば、ホームページひとつとっても、施策のPRは一定なされているものの、
関係条例や規則は、ユーザーに改めて、例規集で検索して調べてもらわないと分からない状況にあります。

そこまでするユーザーは、一般の方には少ないと思われるわけです。
各課のホームページや各施策のページ、テーマごとに関係する条例や規則へリンクさせるなどのひと工夫で、
市民の認識や意識も徐々にではありますが変わってきます。

そこで今回は、市民に浸透させるための条例や規則等の情報提供のあり方に対する当局の見解を伺いました。

(市の答弁の概要)
市民と行政が情報を共有し同じ認識のもとで議論を行う必要性があるとの認識の下で、
情報公開条例を整備し、ホームページを充実させて情報提供に努めてきたものの、
条例や規則については市民にとってわかりにくい状況であることを認めたうえで、
今回の指摘をふまえて改善すると明言しました。
※「市民会議」を活用したシステム:行政と本来は市民の代表であるはずの議員による意思決定の前に「市民会議」による提言という形で、市長に対して直接提言を行います。そして、その提言を受けて市長は条例や計画を策定し、必要に応じて審議会に諮問し、条例については(計画は議会の承認を必要とされていません)最終的に、議会の承認を受けるというかなり複雑な構造(市民の提言を直接取り入れた案を市民の代表である議員が再度審議することになる構造)になるといえます。 市民会議のメリット

(機能した場合)
①これまでの審議会のように行政がつくった素案を審議するのではなく、白紙から議論を始めることにより、住民の意見がより反映できる。
②審議会であると、委員に対する費用弁償が生じるため開催日数に制限があったが、市民会議の場合、ボランティアでの参画が基本であるため、予算的に開催日数に制限がない。
③情報提供が行われることで住民の行政に対する理解が深まり、行政と住民の距離が縮まる。
といったことが挙げられます。

一方、デメリットとして、
①住民の負担が増大する。
②情報提供が中途半端であれば議論が浅くなる。
③限られた人しか集まらず、偏った市民参画になる恐れがある。

といったことがあげられます。

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