入札制度改革ー行政に対する信頼

2020年7月7日[カテゴリ:市役所改革, 質問

引き続き、令和元年12月議会一般質問の内容です。

今回掲載する内容は、私たちの普段の生活とは関わりの薄い内容ですが、税金を使っての事業を担う事業者を決める重要な手続きに関することです。コロナ禍でそれどころではない雰囲気となっていますが、公共物のメンテナンスにかかる事業、業務委託や物品の購入に関する入札は粛々と進められていますので、改革を止めることは許されないと思っています。

国の業務委託先の業者の選定に疑念がもたれる報道もあったところですので、地方においても同様の疑念がもたれることの
ないよう、情報が開かれた行政運営が必要であると考えています。

西宮市では、昨年続々と発覚した市職員による不祥事の再発防止の観点から、入札制度改革が進められており、令和元年12月議会で取り上げました。

■論点1:変動型最低制限価格制度について
不祥事とは、工事の入札において、開札後の公表となっていた「最低制限価格」が市職員によって事前に漏らされていたことにより、公平な入札が阻害されていたことが昨年発覚しました。
昔は、事業者間の談合により、「予定価格」(落札できる最高額)のギリギリを争う「落札価格の高止まり」が問題となっていた時代もありました。しかし近年は、西宮市の土木に関する入札では、落札できる最低額のギリギリを争う入札が続いていました。自治体の工事請負の入札では、「最低制限価格」を下回る金額を提示すると「失格」となり落札できません。

私たちの生活においても、何か大きな買い物をする際には、いくつかの事業者の価格を調べて、できるだけ安い価格を提示してくれた事業者から購入することが多いと思います。しかし、あまりにも安い価格が提示された場合、その品質を疑って選ばないことも多々あります。
公共事業も同じで、相場よりもあまりにも安くで落札をされると、手抜き工事を誘発したり、下請け事業者に不当に安く請け負わせたり、落札事業者が破綻して工事が止まったりなど、間接的に市民に不利益が生じる可能性が増すことから、「最低制限価格」を設定して、その価格を下回るものは採用しないという制度になっています。
近年の西宮市では、この最低制限価格が数千万円で設定された工事の入札において、なんと数百円の差で失格するという内容の入札もありました。それぐらい、厳しい環境で競争が行われていたのです。
つまり、事前に誰にも知らされていない「最低制限価格」を、自分の会社だけが事前に知れることは、落札する上で圧倒的に有利になるという不正が発生していたのです。

ですので、西宮市は、最低制限価格の漏洩対策として、入札前に価格を決めるのではなく、応札された価格によって最低制限価格を決める「変動型最低制限価格」制度を導入することにしました。この制度自体は導入してみる価値はあると思うのですが、どさくさに紛れて、不当に落札価格の引き下げを図るような制度設計となっていることを問題視しました。
公共事業のみならず、市役所の事業については、適正価格で事業者に担ってもらわなければ、適正な完成物が納品されないなど間接的に市民が不利益を被ることになります。

■論点2:工事以外の入札における不正の未然防止策
今回不正が発覚したのは工事請負の入札でしたが、市が実施している入札や見積もり合わせは、物品の購入や委託業務においても多数行われています。むしろ、工事よりも多いと思われます。
工事請負において市職員が関わる不正が発覚した以上、委託業務や物品購入における入札や見積もり合わせについても、不正の未然防止策を検討していかなければならないと考えています。

以下、一般質問の概要を掲載します。

=====本会議場での議論の概要=====

令和元年12月議会一般質問

3.行政の信頼性向上に向けた市役所改革について
ア)入札制度
(変動型最低制限価格制度)
■質問の背景
本市で発覚した官製談合事件を受けて、令和元年10月に発表された「公共工事に係る不正行為の再発防止対策報告書」では、職員に対する対応のほかに、入札制度の改正も行われることが示されました。その一つとして、早速この12月より変動型最低制限価格制度が、予定価格5,000万円以上の工事の入札において試行実施されております。

そこで、現在、ホームページで公表されております予定価格5,000万円以上の工事結果について、資料(←クリックしてご覧ください。)にも例を掲載しましたが、今回の算定式をあてはめて検証してみました。大半は、もともと設定されていた最低制限価格を約1%から2%程度下回っておりまして、落札事業者が変わるというケースも多数ございました。

その場合を例で3つ示しました。まず、例1の場合、落札額が予定価格の約2.36%、約238万円下がるという試算になりました。例2では、落札額が390万円、予定価格の5.8%も下がり、例3の場合は、255万円、予定価格の4.7%も下がるという試算となりました。

これは、最低制限価格が、建築案件では90%、土木の案件では89%前後で設定されてきたのに対して、今回の変動型最低制限価格を決める算定式のベースが86%に設定されていることが要因と考えられます。
これまでの最低制限価格は一体何だったのか、これ以上価格を下げると適正な施工ができないと判断される金額であったはずですので、これではダンピングによる工事の品質低下、労働者へのしわ寄せ、また、入札不調が増加することも懸念されます。

■質問1
過去の予定価格5,000万円以上の入札結果における影響額を算出されていると思いますが、どのような結果であったのか、具体的にお答えください。あわせて、これまでの入札の最低制限価格を鑑みますと86%の設定は低いと考えますが、市の見解をお尋ね致します。

■質問1に対する市の回答
当該制度につきましては、現在、予定価格5,000万円以上を中心に試行実施をしておりますが、今後は、課題等を検証した上で適用範囲の拡大を図る予定としており、算定式を検討するに当たっては、平成30年度の全入札案件を対象として試算し、制度設計をしております。

当該年度の最低制限価格の対予定価格率は平均で約88%でしたが、この入札結果をもとに変動型最低制限価格制度を適用した場合の対予定価格率を試算すると、1ポイント未満ですが、変動型最低制限価格のほうが低くなる結果となりました。

しかしながら、今回の制度設計においては、一定の落札率の水準を維持することを目標としており、落札率と最低制限価格の設定率との差がこれまでより変動型最低制限価格制度のほうが若干大きくなると予想しており、現時点においては、1ポイント未満の設定率の差を調整する必要性は低いと考えております。

また、ダンピングにつながる可能性があるとの御指摘につきましては、市といたしましても、工事品質の悪化、事業者の労働条件の悪化、下請業者へのしわ寄せなど、さまざまな弊害の要因となることから、その防止は非常に重要であると認識しております。今回の制度設計においては、この点においても十分留意しておりますので、ダンピングが起こる可能性は低いと考えておりますが、この制度に基づき入札を行った結果、落札額に一定の低下傾向が認められた場合は、速やかに算定式の調整などの対応をいたします。この場合、議員御指摘の86%の設定の見直しも調整方法の一つであると考えております。

■意見要望
御答弁では、86%というのは低過ぎる数字ではないということでしたが、先ほどこちらの資料で示したとおりですが、今回示したもの三つだけではなく、こういう結果になるものが結構多いです。5,000万円以上の工事というのは。
私は全てについて試算したわけではございませんので、5,000万円以上の工事を見る限りでは、軒並み最低制限価格が下がります。しかも、数%です。変動型最低制限価格の導入は今回の不正があっての対策ということです。これまで真面目にやってきた事業者が不利益をこうむるというのは、納得いかないことだと私は思いますし、先ほど壇上でも申し上げましたとおり、ダンピングであったり、入札不調とか、そういった悪影響が及ぶ可能性がございます。「速やかに」と御答弁がありましたけれども、迅速な御対応を要望しておきます。

(工事請負以外の入札における不正の未然防止)
■質問2
工事のほか、委託、物品購入などさまざまな入札が行われておりますが、工事以外の入札についても、官製談合など不正の未然防止の観点から、実態を調査し、対策を講じる必要があると考えますが、市の見解をお尋ねいたします。

■質問2に対する市の回答
このたび西宮市公共工事不正行為再発防止対策委員会として取りまとめた各種対策のうち、研修の強化や啓発を目的とした文書の発出を初め、職員ノートパソコンを活用したリマインド、指名停止基準の改正などについては、公共工事に限定した対策ではなく、業務委託や物品購入など入札全体を対象として策定しております。

また、公共工事の入札についての対策は、業務委託や物品購入などの入札と異なる点があることをふまえたものとしております。例えば、公共工事の入札においては、これまで、最低制限価格について全国で広く使われている算定式により求めるとともに、その算定方式を公表しており、予定価格や積算内訳がわかれば最低制限価格を推測しやすい状況であったことから、事業者の不当な情報提供要求を抑止する必要性が高いと判断し、新たな入札制度の設計を行ったものでございます。

また、市として公共工事に係る情報漏えいを踏まえた対策を早期に取りまとめ、実行する必要があったことから、公共工事における入札制度の改善を中心に据えて再発防止策の策定を進めることとしたものですが、業務委託や物品購入などの入札に係る不正行為の防止についても、今後、公共工事の入札について講じた対策を参考として、どのような対策を講じるべきかを調査研究してまいりたいと考えております。

■再質問
御答弁では、物品購入に関しては最低制限価格を制度として設定していないようです。委託については、今回、(工事請負入札の)不正対策で行った調査のような形で、一度全庁で調査をして対策を検討するべきと考えて質問致しましたが、「どのような対策を講じるべきかを調査研究してまいりたいと考えております。」ということです。
これは今回の対策委員会のように、期限を設けて何か組織をつくって具体的に調査をするという意味での調査研究なのかどうかということを確認しておきたいと思います。

■再質問に対する市の回答
調査研究ということでございますが、委託に関しましては、公共工事のように参考とするような基準がありませんし、それから、状況も多種多様でございます。そういうこともありまして、まず、原局のほうで、私どものほうで調査をさせていただいた上で、特別な委員会を立ち上げてということは今考えてはおりませんけれども、まずは状況を調べた上で、多種多様な委託がある中で一律の基準をつくるということもできないことはわかっております。
ただ、工事で行いましたような、こういった予測ができないような手法というか、これは参考にしながら今度検討したいと思ってます。できるだけ早期に結論を出したいと思っております。

■意見要望
調査研究というのは比較的消極的な感じなのですが、今日の午前中にもありましたとおり、入札制度を何か変えないといけないとかではなくて、まず、職員の方々のモラルであったりというところの調査であったり、また、委託の入札が行われるときにも、例えば事業者さんからの働きかけみたいなことがないのかなど、随意契約も対象にして、今のいわゆる契約、入札も含めて、職員さんほとんど全ての方が関わっていると思うのですが、改めて不正が起きないうちに対策をこれを機に講じておくべきと思いますので、その点、また具体的に報告がなされることを期待しておきたいと思いますので、その点、要望しておきたいと思います。

====ここまでが、本会議場での議論=====

のど元過ぎれば、熱さを忘れる。

市の回答からは、市役所内で不正が発覚したことに対する緊張感が全く伝わってきません。
委託業務や物品の購入に関する入札についても、同様の不正が発生する可能性はないのか、契約の相手先となる特定の事業者と市職員による不適切な関係、事例はないのか、少なくとも調査すべきであり、公正な入札が担保されるような制度設計を追求するべきです。

委託業務の内容は多種多様であるとのことですから、1年ですべてを片付けることはできないにしても、年度ごとに委託業務の対象を設定して調査し、必要に応じて改革をするべきです。西宮市も「内部統制制度」を導入することになっていますが、本気で内部統制をやる気なのであれば、「内部統制制度の中で精査していく」くらいのことは回答できたはずです。
そうしたことが市議会の答弁で触れられないこと自体、内部統制制度自体も「形だけ」に終わることも心配されます。また、せっかく監査制度もあるわけですから、委託業務の契約事務についてテーマを設定しながら監査して頂けることも期待したいと思います。

変動型最低制限価格制度については、今後の動向を見ていかなければなりません。

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