西宮市が実施している防犯の取組みを調査する際に、
市の説明を聞いていても、
市の取組みの全体像や方針などが見えてきません。
地域住民や警察に丸投げしているように感じます。
そこで、
平成18年3月議会一般質問では、
IT技術を活用した防犯の具体的な取り組みを紹介するとともに、
「市の防犯政策」の必要性について議論しました。
=======本会議場での議論の概要========
平成18年3月議会一般質問
1.「安心・安全のまちづくり」について
ア)防犯活動におけるITの導入
■質問の背景・政策提案
市長の平成18年度の行政方針において、
安心、安全のまちづくりが取り上げられています。
そして、
今定例会だけでも、
子供の安全対策について代表質問において多数の会派から質問がされていることから、
本市にとって重要課題であると言ってよいと思います。
以前に、自己防衛能力の低い小学生の登下校時の安全対策の強化策として、
平成16年12月議会においてIT技術を活用した防犯対策について提案致しました。
↑ここをクリックすると議論の内容がご確認いただけます。
教育委員会は、
登下校時の防犯におけるIT技術の活用については消極的でしたが、
その後、他市では、
IT技術と地域団体の活動を融合させた取り組み、
まだ実証実験段階のものも含まれますが、新聞等で多数紹介されています。
一方で、
GPS機能つきの携帯電話を子供に持たせる保護者も増加しており、
民間事業者によるサービスが充実してきました。
しかし、
民間事業者のサービスは、
警備会社による駆けつけのサービスの代金が含まれておりますので、
保護者の費用負担は決して軽いとは言えず、
行政の支援のもとで地域組織がそうしたシステムを活用すれば、
保護者の負担も軽減でき、
より充実した防犯体制が確立できると感じました。
また、
GPS端末のついた防犯ランドセルが大変人気であると
新聞に掲載されていましたが、
子供が普段から携帯電話を持ち、
学校に持ち込むことに対する問題、抵抗感を鑑みると、
防犯専用のGPS端末を活用する方が有効であるとも考えられます。
そこで、今回は、
改めてこのGPS(位置情報検索システム)と
地域組織の防犯活動を融合させた取り組みを
ご紹介させていただきます。
お手元の資料をごらんください。
(↑こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。)
まず、こちら(1ページ目)、
今回提案したいGPS機能を使った防犯活動のイメージ図です。
4点特徴がございまして、
まず1点目、
定点に一定時間滞在したときには、
連れ去りが起こったことによるGPSの放置もしくはいじめ等の可能性があるということで、
警報を鳴らすことができます。
2点目が端末破壊による電源オフ、
これも連れ去りの可能性があるということで警報を鳴らすことができます。
そして、3点目、
もちろんボタンを押すことによって危険信号の発信をすることで、
暴漢の可能性があるということで警報が鳴らせます。
そして、もう一つ、
ある小学校区程度と書いておりますが、
エリアを設定することによって、このエリア外に移動すると、
これも連れ去りの可能性があるということで警報を鳴らすことができる、
こうした4つのオプションがあります。
そしてまた、保護者の方が「帰りが遅いな」と心配になれば、
子供が持っているGPSを検索することで位置がわかります。
こうした警報を、
この事務局と書いているところで情報を集めます。
通常民間事業者が行っているサービスというのは、
ここに警備会社が入っています。
ですので、サービス代が常にかかってくる。
これを地域組織の方々で分担することによって費用を抑えるというイメージです。
事務局にいる人、そして町なかで見守っている人、
この役割分担をすることで、このシステムを機能させます。
そして、例えば警報が入ったときに、
まず、町なかで見守っている人に連絡をします。
そして、位置情報が当然わかりますので、その位置に行って確認をする、
そして、問題が発生していれば、事務局、もしくは警察に直接連絡をする、
このルール決めが必要です。
これは、非常時の危険信号が速く伝わるというメリットがございます。
このシステムは、
私が視察しました神戸市の魚崎小学校での取り組みを参考に致しました。
実際に、先日事件がありました広島市の小学校でも検討されています。
そしてまた、一方で、
県の制度で、まちづくり防犯グループが
地域ごとに立ち上がってきていると今議会の御答弁にもありました。
そして、代表質問において、
地域活動の充実を目的とした県民交流広場事業に関する質問がございましたが、
地域活動の活動資金面での支援も用意されています。
そこで、
新たに立ち上がった組織と既存の組織をどのように結びつけて、
また、先ほど示したようなさまざまなオプションを
どのように活用しながら持続可能な防犯体制を確立していくのかといったビジョン、
そしてまた、防犯の方法、このオプションを多数用意して、
活動に協力してもらえる方々に示すべきです。
地域住民主導の防犯の取り組みといって任せっ切りにしていては、
地域住民も何をすればいいのかわからないところも出てきているのではないでしょうか。
防犯は、いつ起こるか分からないことに対する取り組みですので、
持続可能な体制としなければなりません。
特効薬もございません。
今回紹介した体制は、1つの事例にすぎません。
そこで、
人とお金を用意してくれている県の制度、
そして警察、地域の活力、IT技術を最大限に活用した
総合的な防犯体制の確立に向けたビジョンを市が示して、
広めていくべきと私は考えます。
■質問
1点目、IT技術を活用した、特に子供の安全対策に関する調査研究の進捗状況をお聞かせください。
2点目、GPS──位置情報検索システムなどIT技術の導入コストや維持管理経費の費用計算、
そしてシミュレーション、実証実験を行うことに対する市の見解をお聞かせください。
3点目、総合的な防犯体制の確立に向けたビジョンの策定についても当局の見解をお聞かせください。
■回答
まず、1点目のITの活用につきましては、
平成16年度に犯罪の発生状況や防犯の基礎知識などをホームページに掲載いたしました。
平成17年度には、総務省が進めております携帯電話やパソコンのメール機能を活用して、
防犯や防災の情報を提供する地域安心安全情報共有システム、
いわゆるにしのみや安心eネットでございますが、
この実証実験に取り組んでおります。
実証実験は、現在、上甲子園小学校をモデル校として、
教職員やPTA役員、そして地域団体の役員の方々の御協力をいただきまして実施しております。
その中でシステムの改善などに関する御意見をいただき、
国に報告をすることになっております。
2点目のGPS等のITの導入についてでございます。
ITの進展は、防犯面におきましても、
パソコンや携帯電話に防犯情報を提供することや、
GPS等によりまして個々の子供の所在が確認できるなど、
多様な取り組みを可能にしております。
御提案のGPSを活用した新たなITの導入につきましては、
近隣の市の小学校におきまして
保護者有志が費用負担しながらみずからで運営されている事例もございますので、
その運営実態や効果、学校の状況などについて調査を行ってまいりたいと考えております。
3点目の防犯体制に関するビジョンでございます。
子供の安全を守るためには、
学校、地域、行政がそれぞれの役割を果たしながら、
連携して取り組むことが極めて重要であります。
このような基本的な考え方のもとで、
現在、学校におきましては、
教職員やPTAが、地域の方々の御協力を得まして、
校内や通学路の見守り活動を行っております。
また、地域におきましても、
自治会や青少年愛護協議会、防犯協会、自主防犯グループなど
さまざまな団体が防犯パトロールや子供たちの見守り活動などに
取り組んでいただいているところでございます。
市といたしましても、
地域での防犯活動への働きかけや
活動支援のための情報提供などに
取り組んでいるところでございます。
新年度には、
県民交流広場事業について
地域団体の理事会や総会の場で情報提供に努めるとともに、
にしのみや安心eネットの本格導入に取り組んでまいります。
また、
地域の方々や警察と一体となって協議会を立ち上げまして、
それぞれの活動についての情報の共有化、
地域での取り組みについての意見交換を行うなど議論を深めまして、
地域の防犯活動の一層の推進に努めてまいります。
■まとめ・要望
前向きのご答弁をいただいたと
私は受け取っています。
というのも、
ITの導入事例に関して「調査を行ってまいりたい」ということですので、
「研究」は、何もしないというふうに議会用語だと言われてますが、
そのようなことのないよう、要望しておきます。
今回提案しましたシステムは、
あくまでも選択肢の一つです。
実際に動くのは地域の方となりますので、
地域の方が選択する、しないというのは、また別の話です。
ですので、そうした選択肢を行政として持っておくべき ということです。
その選択肢が多い方がいい。
それを住民さんが知って、どの方法をとるかというのは
住民さんで選んでもらったらいい、
これが地域主導で進める防犯活動だと思います。
それをいきなり(選択肢も提示もせずに)地域でやってくださいって投げられても、
分からないのではないかということですので、
そういったことを進めていくための体制を、
今回はイメージ図として
資料でも示しましたが、
(↑ここをクリックするとご覧いただけます。)
御答弁の中では、「協議会を設ける」とありました。
まさにそうした活動が、
体制の強化につながるのではないかと思いますので、
よろしくお願いいたします。
1点、つらいことを言いますけれども、
現在の取り組みの状況は、少し悠長なような気がします。
被害者が出てから動き出すのでは遅いと思います。
ですので、被害者が出る前に十分取り組んでもらえますように、
取り組みを進めてもらいますようにお願いしておきます。
========ここまでが、本会議場での議論の概要========
議場では、「前向きと受け止める」と言いましたが、
市の回答では、
肝心のGPS、位置情報検索システムなど
IT技術の導入コストや維持管理経費の費用計算、
そしてシミュレーションが必要と考えているのかいないのか、
言及されませんでした。
また、
防犯ビジョンの策定についても
言及されませんでした。
「防犯の取組みは、警察、つまり県が主体となって実施する事業、政策である」
という姿勢が垣間見れます。
警察行政については県の政策となりますが、
身近な防犯の取組みは、
きめ細かな対応が可能な市が主導して取り組む必要があると考えています。
IT技術を活用した防犯体制を構築するには、
一定の恒常的な財源も必要となります。
IT技術を活用しなくても、
財源や活動費が必要となります。
ですので、
防犯に関する「市の政策」を示し、
財源や人員を確保するために、「防犯ビジョンの策定」を提案したのですが、
市にはその意を受け止めてもらえませんでした。
今後も、文教住宅都市に欠かせない
「治安がいい状態」を実現するために、
市と議論を重ねる必要があります。