ICT技術を活用した介護保険給付の適正化ー平成25年12月議会一般質問

2014年4月9日[カテゴリ:質問, 高齢者福祉

介護給付適正化

(厚生労働省文書より)
介護給付の適正化を図ることにより、利用者に対する適切な介護サービスを確保するとともに、不適切な給付が削減されることは、介護保険制度の信頼感を高めるとともに、介護給付費や介護保険料の増大を抑制することを通じて、持続可能な介護保険制度の構築に資するものである。

介護給付適正化の主要5事業とは
以下の(1)~(5)が主要5事業と呼ばれています。
(1) 要介護認定の適正化
(2) ケアプランの点検
(3) 住宅改修等の点検
(4) 縦覧点検・医療情報との突合
(5) 介護給付費通知

介護保険制度については、今後、給付費が加速度的に増加することが見込まれ、それを負担するのは高齢者を始めとする市民です。介護予防や健康増進がもっとも重要と考えていますが、介護給付の適正化も効率的に実施する必要があります。

現在は、ほぼ手作業で行われている縦覧点検・医療情報との突合等を、ICT技術を活用して効率的に実施できる「介護給付適正化支援ソフト」を導入することについて、平成25年12月議会一般質問において政策提案しました。

=====本会議場での議論の概要=====

平成25年12月議会一般質問

2.高齢化社会への対応について
ア)介護保険給付の適正化
■質問の背景

厚生労働省は、第2期介護給付適正化計画に関する指針の中で、要介護認定の適正化やケアプランの点検など主要5事業に加えて、適正化システムを利用した「給付実績の活用」についても、費用対効果が期待できることから、実施の促進を掲げております。

資料の図1のとおり、西宮市では、これからおよそ10年後の2025年には、85歳以上の高齢者が現在の2倍となる計算となっており、介護保険制度開始以来、これまでの要介護認定者数や介護給付費の推移を見る限り、介護に要する財源がますます増大すると予想されます。ですので、不適切な給付を一層抑制すべきであり、現在行っているレセプトチェックをより効率的に実施できる体制が必要と考えます。

また、介護保険給付の適正化を支援するICTソフトもあると聞いており、導入した自治体の中には、年間で介護給付費の1%強に相当する数千万円もの効果を出した自治体もあると聞いております。現在、本市では、国民健康保険団体連合会のデータを活用し、職員の手で抽出しながら、レセプトチェックをされていると思われます。

■質問1
市は、現在の体制でどの程度のレセプト点検を実施し、年に何件程度、適正化の指導を実施しているのか、お尋ねいたします。あわせて、改善額もお聞かせください。

■質問1に対する市の回答
 本市では、介護保険の給付適正化に向けて、ケアマネジャーの資質向上のためのケアプラン検討や、不適切な保険給付の是正を図る給付データチェック、いわゆるレセプトチェック、サービスの給付を受けた御本人がその内容をチェックできる給付費通知などといった取り組みを行っているところでございます。

 このうち、御質問にございましたレセプトチェックでございますが、本市では、平成12年の介護保険制度施行当初から、国民健康保険団体連合会のレセプトデータを活用し、職員がシステムと目視によりチェックを行い、不適切な保険給付の是正に努めているところでございます。

 次に、レセプトチェックに携わる職員数でございますが、本市の場合、1月から12月までの1年間のデータを蓄積し、翌年2月に全件を抽出し、本市が活用しているシステムにより整理を行い、疑義のあるデータを事業所に照会し、1週間程度、職員1名で対応している状況でございます。平成24年度の指導件数は66件、効果額は年間50万1,875円となっております。

 次に、現在どの程度のレセプト点検を行い、適正化を実施しているかについての御質問でございますが、例えば医療と介護の重複した請求に着目すれば、2万9,654件全件のデータのうち疑義のあった196件を抽出し、最終的にサービス事業者に是正を求めた件数が22件でございます。

■質問2
ICT技術を活用したほうが効率的に効果をあげることができると考えますが、市の見解をお尋ね致します。

■質問2に対する市の回答
 現在、本市では、国民健康保険団体連合会の適正化システムからのデータを活用し、職員の手で疑義のある給付データを点検しております。しかし、その情報量は膨大であり、全件の中から不正を判別することに時間を要しております。それに比べ、ICTを活用した給付適正化の専用ソフトを導入致しますと、膨大な情報からさまざまな視点での疑義データを早期に抽出することができるため、多様な視点から適正化業務を行うことにより、効率的な事務の執行につながるものと考えられます。

 今後は、既に専用ソフトを導入している他都市の状況を調査研究し、導入した場合の費用対効果やレセプト点検を専門的に行う事業者への業務委託なども考慮致しました上で、本市の介護保険給付の適正化に効果が見込めるものであれば、導入に向けて検討してまいります。

■意見・要望
介護給付の適正化というところで、これはサービスの切り捨てみたいに言われることもあるのですが、これから介護保険制度が改革される中で、利用負担も1割から2割に増えていくというような状況で、不適切な介護サービス給付は、サービスを受ける方にとっても不利益になると思っております。

回答では金額は約50万円ということでしたので、200億円を超えるような介護給付費に対しては、非常に小さくなっております。
職員が1人で1週間かけてチェックをしているということで、3万件ものデータをチェックするのはなかなか厳しいと思いますし、今はICT技術が発達していますので、効率的にレセプトのチェックができるような体制を構築して頂きますよう要望致します。

=====ここまでが、本会議場での議論の概要=====

介護保険の給付の適正化については、現在のやり方では効果は限定的であることが判明し、偶然抽出されて指導を受けた事業者にとっても、サービス利用者にとっても、不公平感が募るものと推察されます。

市からは、ソフトの導入を「検討する」との回答を得ましたので、その結果と効果について調査を継続したいと思います。

記事一覧