生活環境の保全と経済対策ー令和2年度補正予算(第7号)⑤

2020年9月10日[カテゴリ:コラム, 商工政策

 新型コロナウイルスについては、先週、8月30日(日)~9月5日(土)に確認された感染者は12名(そのうち市外在住の方が1名)となり、その前の1週間が18名(そのうち市外在住の方は3名)でしたので減少傾向が続いています。引き続き、油断せずに経済活動をする必要があります。今回は、令和2年度補正予算第7号のうち、事業者支援、経済対策に関するものをまとめて掲載致します。
 

路線バス運行継続支援事業(新規)

 緊急事態宣言、8割接触削減政策により、交通事業者は大きくダメージを受けていることは想像に難くありません。感染症がまん延する前から、西宮市内のバス交通に対する市民の期待、主に高齢者の移動手段の確保、ニーズに応えるためには、平成28年度建設常任委員会の施策研究テーマで「高齢化社会における交通政策について」取り上げ、市による財政出動が不可欠であることを市に対して提言しました。
 さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、公共交通機関の利用者が激減した中で、路線を維持してもらうための支援を実施することになりました。

市の説明の抜粋
 
 新型コロナウイルス感染症の影響により、路線バス利用者は本年4月において前年度比約50%減という状況にあります。しかしながら、感染症対策という側面から、路線バス車内における密集、密接を避けるためには、利用者数が減少しても運行便数を減少させることなく、利用者に対して余裕をもった便数での運行を継続することが重要です。
 これを受け、感染拡大防止のため、必要な事業費を補正により予算化し、利用者数に対して余裕をもった便数での運行を支援するため、奨励金を交付いたします。
【補正予算額】
 総額4851万円(財源:全額市の一般財源)
【事業内容】
 路線バス車内における密集、密接を避けるため、兵庫県に緊急事態宣言が発出された期間(令和2年4月7日から同年5月21 日までの45日間)において、利用者数が減少しても運行便数を減少させることなく、利用者数に対して余裕をもった便数での運行を継続したことに対する奨励金
(市内を路線定期運行する系統(231 系統)に対し、1系統数あたり21万円)
【対象者】
 公益社団法人兵庫県バス協会の乗合会員であり、西宮市内で路線定期運行(高速バス路線を除く。)を行い、西宮市内に複数の停留所を有する路線バス事業者

 今後は、人口減少により、運転手不足も深刻な状況となっているなかで、利用者の少ない路線の見直しは避けられなくなることが危惧されています。今回の措置に限らず、アフターコロナを見据え、市民生活に不可欠なインフラとしての市内バス路線のあり方と財政出動について、市はもっと真剣に検討する必要がある と考えています。

キャッシュレス決済を活用したポイント還元による消費喚起事業(新規)

市の説明の抜粋
  
 新型コロナウイルス感染症拡大により発令された緊急事態宣言に伴い、県からの要請で休業や営業時間の短縮、また、感染を懸念した消費者の外出自粛の影響を受け多くの事業者は売上高が減少しています。今後は「新しい生活様式」のひとつとして現金を手で触らないキャッシュレス決済の導入を広げることに加え、ポイント還元により消費を喚起することにより事業者の支援に繋げるための補正予算を計上するものです。
【補正予算額】
 4億3000万円(財源 全額一般財源)
(内訳)
 ①事務局運営費(委託):3000万円
 ②ポイント還元原資:4億円
【対象者】
 キャッシュレス決済を導入している市内事業者
 ポイントの還元を受ける市内店舗での購買者
【実施方法】
 キャッシュレス事業者によるポイント還元
 ポイント還元率:20~25%(還元上限は未定)
 事業期間:令和2年10月1日~12月31日(予定)
【事業スケジュール(予定)】
 9月~ 事務局委託先のプロポーザル実施
 10月1日~ キャンペーン実施

 ↑10月から市内事業者や市民に対する説明会を実施する予定とのことです。ポイント還元の買い物の対象期間は令和2年11月以降となる見込みです。

 8月7日の民生常任委員会では、次の事業↓や、マイナポイントの付与のように、似たようなポイント付与制度が同時に実施される可能性があることから、そもそも市民に知り渡らなければ消費喚起にはつながりませんので、情報の差によって不公平が生じないよう、分かりやすく十分に周知する必要があることを指摘しました。

商店街お買い物券・ポイントシール事業(新規)

市の説明の抜粋
 
 新型コロナウイルス感染症による地域商業のダメージを回復するため、商店街等が取り組む期間限定のプレミアムつきお買い物券・ポイントシールの発行を支援し、消費喚起と地域商業の活性化を図るための補正予算を計上するものです。
【補正予算額】
 1億2000億円(財源:県2/3、市1/3)
(1200万円×10 団体)
【対象者】
 商店街・小売市場等
【支給額】
 補助上限額 1200万円/1団体(プレミアム分及び事務経費)
【実施方法】
 各商店街等がお買い物券事業かポイントシール事業のどちらかを選択して実施。
 還元率は売上金額の20%以内とする。
【事業スケジュール(予定)】
 本補正予算の成立後、各団体の任意の期間で年度内に実施

 ↑県の補助制度であり、実施する商店街と実施しない商店街があり、実施期間や対象店も異なるそうです。十分な広報が必要です。

 また、消費者の目線での制度設計が必要であり、これから冬場の感染症の流行期を見据えて、宅配やグループ購入に対する配達、密を避ける取り組みと外出自粛を支援する買い物支援をセットで実施する必要があることを、8月7日の民生常任委員会では指摘しました。
 現在、今年度の民生常任委員会の施策研究テーマの一つ「新型コロナウイルス感染症対応としての産業振興」について調査を進める中で、協議していきたいと考えています。

店舗等の感染症対策PR事業(新規)

市の説明の抜粋
 世界的にも新型コロナウイルス感染症の根絶には相当な期間を要すると認識されており、今後は本市においても新型コロナウイルスとうまく付き合いながら日々の生活や経済活動を継続する必要があります。そのようななか、一般社団法人日本フードサービス協会が「外食業の事業継続のためのガイドライン」を公表するなど、感染症対策を徹底することで安心して顧客に店舗を利用してもらう取り組みが始まっています。
 本市においても、飲食店に関わらず感染症対策を後押しするため、チェックリストの作成とホームページからのダウンロード、確認済みをPRするステッカーの配布などをするための補正予算を計上するものです。
【補正予算額】
 18万円(財源:全額一般財源)
(内訳)
 ①使用料 予算額:8万円(8ヶ月×1万円)
 ②印刷製本費 予算額:10万円(100円×1000枚)
【対象者】
 市内事業者
【配布物】
 感染症対策セルフチェックリスト(ダウンロード)
 感染症対策確認済みステッカー(1000 枚:商工課等で配布)
【実施方法】
 事業者に感染症対策セルフチェックリストで自己が運営する店舗等の対策状況を確認。対策済みである場合に希望者へは感染症対策確認済みステッカーを店舗で掲示。
 追加の対策が必要な小規模事業者へは小規模事業者持続化補助制度などの活用を案内。
【事業スケジュール(予定)】
 本補正予算の成立後、速やかに実施
 ステッカーの配布は在庫限り

 ↑8月7日の民生常任委員会において、複数の議員から信頼性や実効性について指摘が相次いだ取り組みです。東京でも問題となった通り、自己申告だけでは信ぴょう性に欠けることになります。ステッカーの一部は、商工会議所と大学が連携して売上状況調査を兼ねて、感染対策を啓発しながらステッカーを配布して回るそうです。
 私は、民生常任委員会において、ステッカーを張っている店舗が適切に対応していることを、市がチェックできた店舗については市のホームページに掲載して、市民に安心してもらえるような取り組みを実施するよう求めました。

 今年の3月の健康福祉常任委員会でも、令和3年6月から完全義務化されるHACCP(ハサップ:食の安全を守る衛生管理手法)に関する条例の審査をした際に、保健所に対して、衛生管理対応店のホームページ掲載を提案していました。

3月10日健康福祉常任委員会での議論の概要
■田中正剛の質問 
 現在、新型コロナウイルスが問題になり、市民から寄せられる御意見として、飲食店の中でも特に、サラダバーやスープバー、バイキング形式など、複数の方が同じ道具を使って自分の器によそって食事をするような飲食店は、感染の拡大につながる恐れが高いのではないかというご心配の声を頂きました。現在、そうした飲食店に対する市からの注意喚起を実施しているのかお尋ねします。
■市の回答 
 当市におきましても、コロナの関係のことでそうした苦情等が入っております。その中で、バイキング形式のところに対して、まだエビデンスが証明されてない時点で強い指導はなかなか難しい面もございますが、そういう苦情があるということをお伝えして、注意してもらうようにということだけ現段階では行っております。
■田中正剛の質問
 指導まではできないのは分かるのですが、不安を抱いている方がいらっしゃるので、対策をしていることを掲示して頂き、保健所からも飲食店に対して注意喚起していることを、ホームページ等で市民の皆さんに広報されたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。
■市の回答
 現在のところ、ホームページ等でそこまでのことはしておりませんが、以降、幹部で検討させていただきたいと思います。
■田中正剛の意見・要望
 私のところにもいろいろと不安の声が届いています。お店の方でもきっちりと対策をされていると私は思いますので、「対策を講じている」ことをできるだけ市民に対してお伝えできるようにしていただきたいと思います。
 HACCPの対応に関連して申し上げたのですが、HACCPについても同じことが言えると思っておりまして、これを守ることによって、消費者に安心していただけると思っています。ですので、そうしたメリット、「やらないといけない」というよりは、「やったほうが安心につながる(結果的に売り上げにもつながる)」ということを十分理解していただいて、適切に実施されている事業者については保健所のほうからも「対応店」といった形で市民の方に広報することも、普及される手法として検討していただきたいと思います。

持続化給付金・家賃支援給付金申請支援相談会場設置事業(新規)

 国の給付金の申請手続きは全てオンラインでの対応になることから、市内の個人事業主の方から対応に苦慮しているとの声が私のもとにも届いていました。地元の行政書士の方々も手続きの支援をして頂いていると伺いました。そして、商工会議所でも支援が実施されてきたものの、それでも対応が困難な方もいらっしゃるということで、さらに申請に関する支援を強化することになりました。

市の説明の抜粋
 国の事業者支援策として持続化給付金や家賃支援給付金の制度が実施されていますが、いずれもインターネットによる申請となっているため、パソコン操作を苦手とする事業者については国が各地に申請サポート会場を設置し申請手続きを支援しており、本市においては西宮商工会議所で実施されています。
 しかしながら、申請サポート会場においても必要書類と国からの連絡を受けるためのメールアドレスを予め用意しなければならず、支援が行き届いていない事業者が存在していることから、西宮商工会議所と市の共同事業として相談支援会場を設置するための補正予算を計上するものです。
【補正予算額】
 300万円(財源:全額市の一般財源)
 ※総事業費は700万円、そのうち市の負担額が300万円)
(内訳)
 ①給付金申請説明会 予算額:40万円
 ②申請サポート窓口 予算額:420万円
 ③訪問型申請サポート 予算額:240万円
【対象者】
 市内事業者(国の申請サポート会場でも対応できないケース)
【事業内容】
 以下の事業を西宮商工会議所、西宮市の共同で実施。
 ①給付金申請説明会の実施
 各給付金の申請手続き等に係る説明会を8月中旬以降に複数回開催
 ②申請サポート窓口の設置
 税理士等による相談対応(電話、対面)、申請支援を完全予約制で8月中旬から9月末まで実施
 ③訪問型申請サポート
 必要に応じ、中小企業診断士等による現地での申請サポートを8月中旬から10月末まで実施
【事業スケジュール(予定)】
 8月中旬:給付金申請説明会の開催及び申請サポート窓口の運営、訪問型申請サポート実施
 9月末:給付金申請説明会の開催及び申請サポート窓口の終了
 10月末:訪問型申請サポートの終了

↑平日の晩や土日の相談についても、必要な方がいらっしゃるようであれば対応を要望しています。

住宅リフォーム助成の対象人数拡大(拡充)

市の説明の抜粋
 市内在住者が自己の所有・居住する住宅をリフォームする際に、市内事業者を利用する場合はその費用の10分の1(上限10万円)を助成する制度を運用しています。しかし、今年度は世界的に新型コロナウイルス感染症が蔓延し、海外の設備等生産工場が操業を停止するなどで住宅リフォームを請け負う事業者の受注が滞るなどの影響により事業の実施を延期しています。そのような中、8月に事業を実施できる見込みとなり、事業者の支援に繋げるために補助対象者の定員を拡充するために補正予算を計上するものです。
【補正予算額】
 300万円(財源:全額市の一般財源)
(補正後の予算額は1500万円)
【対象者】
 市内事業者を利用して自己の所有・居住する住宅をリフォームしようとする市内在住者
【実施方法】
 助成金の予算額を30人分増額して実施。(当初予算で120人、合計150人)
【事業スケジュール(予定)】
 令和2年8月 助成制度の受付開始
 令和3年3月 令和2年度事業終了

 工事費が20万円以上の住宅リフォームを実施する際に、10万円を上限に、経費の10%分の補助金が受けられる制度です。当初予算の見込みを上回る、ニーズが高い事業となっています。補助率がもう少し高くなれば、さらにリフォームが進むように思います。内装工事や外壁工事、バリアフリー化や住宅敷地内の自家用車駐車場の修繕工事などが対象になっていますが、畳の張替えやクーラー等電化製品の入替え等は対象となっていません。補助対象となる住宅リフォームの具体的な内容については、市のホームページをご確認ください。

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