今回のコラムは、令和2年度補正予算(第7号)のうち、新生児及び妊産婦に対する支援をまとめて掲載します。
不安を抱える妊産婦への支援事業(新規)
新型コロナウイルスが妊産婦や胎児に及ぼす影響については、まだまだ情報が少ない状態です。そして、私たち男性には分からない不安がたくさんある中で、さらに、様々な感染症の感染に気を付けながら生活をしなければならず、神経を擦りへらしていることは想像に難くありません。そのような中で、妊産婦向けの取組みも感染防止のために制限されて情報が入りにくい状態かと思われますので、少しでも不安を解消する取り組みが急がれます。
令和2年度補正予算第4号(←クリックすると内容が確認できます。)では、「寄り添った支援の一環として」、マスクと消毒液を配布するための予算が計上されました。補正予算第7号では、さらに具体的な支援を実施することが決まりました。
また、感染が確認された妊産婦は、医師の判断により分娩が帝王切開となったり、出産後も一定期間の母子分離を強いられる可能性があり、自責の念にかられる等のメンタルヘルス上の問題や、母子関係(ボンディング)障害などのリスクが懸念されます。さらに、予定していた里帰り出産が困難となり、家族等による支援を得られず孤独の中で産褥期を過ごすことに不安を抱える妊産婦も存在することから、新型コロナウイルス感染症の流行下における妊産婦への寄り添った支援を実施します。
なお、不安や悩みを抱えながらも感染への懸念から母親学級への参加や窓口への来所・家庭訪問等を躊躇する妊産婦等もいます。このような中で妊産婦に対し積極的に情報提供や相談支援等を行うために、ビデオ電話等によるオンラインでの健康教育の開催や、個別相談・保健指導を実施できるように整備します。
【補正予算額】
8766万1千円(財源:国の負担8080万2千円、市の負担685万9千円)
(1)妊婦への分娩前のウイルス検査補助等の支援事業
【事業費】
8589万3千円
(内訳)
・委託料(妊婦3400人分のPCR検査料及び判断料等(2万1560円/人)):7330万4千円
・扶助費(市外でPCR 検査を受けた妊婦(600人)への償還払い(上限2万円/人)):1200万円
・その他(消耗品、郵便代等):58万9千円
陰性と判定されれば安心してもらえると思いますし、仮に陽性と判定されても、周産期医療機関で適切に対応してもらえるという安心感は重要だと思います。
(2)ウイルスに感染した妊産婦への寄り添い型支援事業
【事業費】
・委託料:45万円(1万5000円×6人×5回)
↑市役所内で、感染を確認する部署と妊産婦の支援をする部署は、場所が異なっていることからも、調査を担当する部署が制度を理解していなければ、対象者に支援ができないことになりかねませんので、保健所内で連携をとって対象者に制度を周知することが重要となります。あってほしくはないですが、利用者が増えれば、さらに増額補正が必要となります。
(3)妊産婦等へのオンラインによる保健指導等事業
【事業費】
131万8千円(財源:国の負担1/2(カメラ購入費及び携帯用パソコン購入費が対象))
(内訳)
・消耗品費(カメラ5台購入費、ZOOMライセンス料):11万6千円
・備品購入費(携帯用パソコン5台購入費):66万円
・通信料:54万2千円
↑西宮市でもオンラインで相談ができるようになりますので、今後、対象となる方々への広報が重要と考えていますが、ぜひともご利用いただければと思います。
今年4月の緊急事態宣言下で接触削減を実施していた時期に、他市の事例ですが、助産師会の方々がボランティアで、妊産婦の方々の孤立を防ぐために、オンラインで顔を見ながらの子育て相談に応じる取り組みをしていることを報道で知り、必要性を感じていました。
そして、令和2年度補正予算第4号(5月補正)(←クリックすると5月21日のコラムが開きます。)について掲載したコラムでは、「接触削減に取り組まれてきた中で、妊産婦の方向けの対面での支援事業が中止や延期になっていることが心配されます。電話だけではなくオンラインで顔を見ながら、抱える不安に対して的確なアドバイスができる体制づくりが必要ではないのか。」と書きましたが、今回の補正予算第7号で予算化されました。
母子保健事業については既存の予算で対応される様子です。4月・5月とは状況が変化し、母子保健事業の多くは、感染防止対策を施した上で再開されていますが、未だ解明されていないウイルスの感染を恐れて、サービスの利用を控える方も少なくないと思われます。定期的な自宅への訪問や電話・オンライン等により、不安や孤立感の解消、育児技術を提供するなど、妊産婦に寄り添った支援は、どの妊産婦にも必要と考えられ、事業の委託先に対する必要経費の補助も検討が必要と思われます。
新生児特別定額給付金事業の実施 (新規)
西宮市議会の6月定例議会で、請願「新型コロナウイルス感染から妊婦と胎児を守る為の施策の充実と強化に関する請願」が可決され、早速、具体化された事業です。
【補正予算額】
1億6677万7千円(財源:全額市の一般財源)
(内訳)
給付金:1億5000万円
事務費:1677万7千円
【給付対象者】
令和2年4月28日から令和2年12月31日までに生まれ、出生により西宮市民として住民登録された新生児
(市外からの転入により住民登録された新生児は対象外)
【給付対象者数】
約3000人
【給付額】
給付対象者一人あたり5万円
【給付金の申請及び給付方法】
・申請方法 郵送方式
・給付方法 原則として口座振込
【事業スケジュール】
・9月10日(木):8月31日までに届出のあった対象世帯へ申請書を発送
(以降の対象世帯へは順次発送を予定)
・9月29日(火):要件審査後、順次給付開始
・12月31日(木):給付対象期限
・令和3年2月26日(金):申請期限
今春に決定された、国民一人あたり10万円支給された「特別定額給付金」の基準日が本年4月27日に設定され、4月28日に生まれた子供は1日違いで対象にならないという問題が生じました。そこで、制度が決定した時点でおなかにいたであろう赤ちゃんも支給の対象にするという発想から生まれた制度で、給付対象は本年12月31日までに生まれた新生児となりました。結局、どこかで線を引かざるを得ず、今度は、1月1日に生まれた新生児は対象にならないという結果となります。
また、1人あたり10万円ではなく5万円となった理由も、特別定額給付金を1人10万円とした根拠がなかったように、市も明確な根拠は示していません。
本来であれば、児童手当に上乗せして支給されるようにしておけば、児童手当の申請と同時にできたのですが、先般の特別定額給付金の事務手続きと同じ体制で実施されることとなり、児童手当とは別に、申請をしてもらわなければ支給されません。西宮市が、「児童手当と別で振り込んだ方が、市民に実感を持ってもらえる」と考えたのかどうかは分かりません。
対象となる新生児は上述のとおりですが、令和3年2月26日が申請の締切りとなっていることは注意が必要です。子育て支援は制度が年々増えており、大変多くの制度があり、そのほとんどが申請が前提となっています。間違いのないよう十分な周知が必要であると感じています。
少し話はそれますが、海外勤務等で、日本人が住民基本台帳から外れて外国に暮らしている場合、給付金の対象となっていません。5月に国会議員にその理由を問い合わせたところ、支給するよう要望し続けてくれているそうです。
外国でもコロナ禍で大変な生活を強いられている日本人もいらっしゃるでしょう。支援がある国であればまだいいのですが、企業の人事により、海外勤務のため外国で生活をしている日本人には、その企業を通じて給付すべきだと思うのですが、まだ動きがありません。
育児等支援サービスの提供事業(新規)
このようなことから、里帰り出産が不可となった妊婦等を対象として、里帰りをしなくても安心して産前・産後期を過ごせるよう、民間の育児支援サービス等の利用に係る費用の補助を行い、新型コロナウイルス感染症の流行下における妊産婦への支援を実施します。
【補正予算額】
888万円 (国の補助:1/2、市の負担:1/2)
【支給内容】
里帰り出産を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、里帰り出産が困難となった妊産婦に対し、民間事業者等が提供する育児支援サービス等を利用した際の利用料を補助
【対象期間】
令和2年4月1日から令和3年3月31日まで
【補助額】
1回あたり1万円(1世帯につき、月4回を限度とし半年間)
「里帰り出産が困難となった妊産婦」に限定していますが、里帰り出産を予定していたことをどのように証明するのか、新型コロナウイルス感染症の影響でできなくなったことをどのように証明するのか、明確には示されていません。
888万円の補正予算となっていますが、制度としては、1世帯につき上限が1回1万円×月4回×半年間=24万円の利用が可能ですから、計算上は37世帯の利用しか想定されていないことになってしまいます。年間の出生数が約4000人であることを鑑みると、想定している対象者が少なすぎるように感じます。
予算の審査の段階では、年間で、里帰り出産をしている方がどの程度いらっしゃるのか説明はなく、これまでの民間の育児支援サービスの程度状況も把握できていません。対象となる方は極めて限定的ですが、補助を受けられる育児支援の内容は幅広くなっています。
妊産婦の負担軽減のために、里帰り出産の予定の有無に関係なく、西宮市内もしくは隣接する市内の産婦人科で出産し、住民票がある自宅で利用した育児支援サービス等は、全て対象にするなど、対象者の幅を広げた方がいいと思っています。経済対策の観点からも、積極的に民間の育児支援、家事援助サービスを利用してもらえれば一石二鳥です。
国の補助事業ですので制約があるのであれば、国の補助対象から外れる方には、補助単価を下げてでもできる限り幅広い妊産婦を対象にして支援するべきです。この件につきましても、今後の動向を見ていきたいと思います。
次のコラムでは、経済対策について掲載する予定です。