2020年9月16日[カテゴリ:コラム, 公共施設マネジメント]
インフラ
「インフラストラクチャー」の略語で、私たちが安心・安全で豊かな生活を営むために、生活や産業の基盤として整備される施設のことです。市が整備してきた具体的なインフラは、学校や公民館などのいわゆる公共施設、道路や下水道などの土木構造物、ごみ処理場など多種多様であり、ICT環境やシステムも含まれます。普段、直接目に触れなくても、毎日利用している施設です。普段の公共施設の利用者は限定的かもしれませんが、災害時には避難所に指定されていますので、全ての市民を対象にした安心のためのインフラと言えます。
インフラはいずれも、一度整備すると普段の維持管理や数年から数十年サイクルでの設備更新が必要であり、新たに整備する際には、必ず、維持管理、ライフサイクルコスト、市全体の総量、財政負担を念頭に入れて整備する必要があります。
これまで10年以上にわたって、市が維持管理するインフラに関するマネジメントの必要性を訴え続けてきましたが、マネジメントについては未だ発展途上です。
今回のコラムでは、8月に可決した令和2年度補正予算第7号で計上された、加速する行政サービスのICT化、デジタル化、インフラ整備についてまとめて掲載します。
自転車利用環境改善事業(新規)
平成27年度は、私は建設常任委員会の委員をしており、その年度の施策研究テーマの一つが「交通安全政策について(自転車対策)」でした。その調査の一環で、名古屋市の自転車政策と福岡市の自転車政策を視察したことがあります。その施策津報告書で以下のとおり、市に対して提言していました。西宮市議会ホームページでも、報告書を見ることができます。
=====視察視察報告において市に対して提言した内容(抜粋)=====
平成28年1月4日提出
(市に対する提言部分の抜粋)
⚫自転車利用環境に関する総合計画(駐輪対策、自転車走行ネットワーク整備、マナーの周知など)を策定し、自転車政策を明確にするべきである。
本市には、自転車に関する総合的に明確化された政策が存在しない。駐輪対策、自転車の安全走行に関する政策、環境に配慮した自転車利用など、自転車利用に関する総合的な政策を検討するためにも、自転車利用に関する総合計画を策定し、計画的に環境整備を進めることを提言する。
⚫整備すべき自転車走行空間をネットワーク化し、財源を明示したうえで、自転車レーンや歩行者自転車道の整備を計画的に進めるべきである。
本市においては、市役所前線や山手幹線など一定の自転車通行量がある幹線道路に全てにおいて、自転車走行空間が明示されているわけではなく、さらに整備を進める必要がある。そのためには、財源の確保も必要となるため、県道や国道も含めた自転車走行ネットワークを再度検討し、県とも連携して、計画的に整備を進めることを提言する。
⚫事故件数や自転車や歩行者の交通量の把握し、整備路線を選定するべきである。
まず、警察との連携を深め、事故件数をはじめ、現状把握に努めるよう提言する。その上で、①駅や高校、スーパーなど近隣の状況、②自転車・歩行者の通行量、③事故件数、④歩道幅員の状況、⑤道路の改良計画の有無、⑥車道の状況、⑦舗装の劣化状況を勘案して、整備路線の優先順位付けを行い、自転車レーンをはじめとした自転車走行空間を計画的に整備するべきである。
⚫自転車走行に関するルールの周知を図るための方策を検討するべきである。
自転車の安全対策は、住宅都市においては、喫緊の課題と考える。ハード整備のみならず、自転車の走行マナーやルールの周知を図るためのソフト面での対策も必要である。自転車走行ネットワークやルールを記したガイドブックを作成して安全教室などの機会に配布するなど、マナー向上に向けた方策を検討することを提言する。
⚫ソフト面での安全対策に実効性のある条例制定を検討するべきである。
条例によらなくてもできる啓発を行うためだけの理念条例を制定しても、効果が薄いと推測される。自転車交通安全対策事業として有効と考えられる事業を規定し、条例を根拠にした指導などが可能となれば、一層の効果が期待できると考える。ソフト面での安全対策を強化するために、上述した計画の策定と合わせて、条例の制定を検討するべきである。
⚫中学校においても自転車通学を許可し、自転車の安全教室などを強化することでルールの周知を図ることを提言する。
ルールの周知を図ることを提言する現在、本市においては、全ての中学校で、自転車通学は許可されていないが、通学以外の生活においては、自転車を利用している中学生は多く、危険運転も見受けられる。高校に進学すればさらに自転車通学をする生徒が増加することから、中学生の時から、自転車の安全利用に関する意識を高める必要がある。
そうした観点から、公立中学校においても、一定の条件付きで自転車通学を認め、自転車免許状の制度化や交通法規に関するテストの実施など、ルール・マナーに関する教育を強化すること提言する。
=====ここまでが市に対して提言した内容(抜粋)=====
つまり、自転車利用の環境整備については、新型コロナウイルス感染症の拡大前から不可欠な取り組みとして議論してきたことであり、自転車レーン等の整備は検討・実施されてきた事業でした。今回の感染症拡大により、自転車利用の促進を図る観点で、整備が加速されることとなりました。
【補正予算額】
5081万2千円(財源:全額一般財源)
(内訳)
・矢羽根設置工事1110万円
・歩道内ピクト設置工事 3821万2千円
・工事発注用資料作成(委託料)150万円
【事業概要】
矢羽根のイメージ
(設置予定路線)
市役所前線(1960m)
ピクトマークのイメージ
(設置予定路線)
市役所前線(1960m)
中津浜線(7230m)
山手幹線(4350m)
西福河原線(950m)
駅前線(1250m)
鉄道沿線北側(420m)
「新しい生活様式」の実践に向けた庁内ICT環境整備事業(新規)
この環境を活かしてどのように市役所業務が変わったのか、この環境を的確に活かせたのか、必ず検証が必要な取り組みです。ICT環境を整備すれば、各支所やサービスセンターなど既存の公共資産を活用することで事務スペースは十分に確保でき、密状態や接触機会を減らせることになると考えられます。
【事業概要】
①テレワーク推進のためのWeb閲覧履歴取得ソフトの導入
職員ノートPC用のWeb 閲覧履歴取得ソフト(資産管理ソフト)を購入し、テレワークにおけるリスクの低減を図ります。
②サテライトオフィス用機器の購入
事務室を増設した際に必要となるパソコン(仮想PC 基盤)、プリンタ、スキャナ、無線アクセスポイント等の機器を購入することで、サテライトオフィスの設置に備えます。
【事業費】
2831万3,164円(財源:全額市の一般財源)
(事業別内訳)
①に要する費用:1232万9284円
②に要する費用:1598万3880円
行政サービスのデジタル化推進事業(新規)
行政サービスのICT化やデジタル化を進めることは、行政サービスの利便性向上の観点から有効です。しかし、同時に、業務の効率化、自動化により、その業務に従事する必要がなくなった人材を別の業務に活用する、もしくは、市全体で人員削減をすることも視野に入れていかなければ、これからの人口減少、財政縮小時代には適応できなくなると考えています。10年・20年先を見据えた政策推進が必要です。
【事業概要】
① 各種申請手続きのデジタル化
来庁者及び対応職員の感染防止対策として、窓口受付用端末を購入し、各対象窓口に設置します。
② 行政サービスのデジタル化
AIチャットボットの導入を実施し、来庁せずに問い合わせ対応サービスが利用できる環境を構築します。
③「密」を避けるために変更となった避難所等への通信環境整備
これまでの一般避難所では社会的距離が確保できないため、学校等の体育館に変更となったことから、それらに安定した情報通信環境を整備し、避難者が情報にアクセスできる手段を確保します。
【事業費】
1008万5,196円(財源:全額市の一般財源)
(内訳)
①窓口受付用タブレット:288万8996円
②AIチャットボット:452万1000円
③避難所通信用サーバ構築:267万5200円
Web 口座振替受付サービスの導入事業(新規)
ICT化は私たちの生活の利便性を飛躍的に向上させますが、同時に様々なリスクも生じることとなります。特に、セキュリティ対策には万全を期す必要があります。
現在、本市では、市税の納付の口座振替を希望する場合、金融機関窓口にて所定の様式で手続きを必要とするところ、「Web口座振替受付サービス」を導入することで、金融機関窓口に出向かず、自宅や外出先でスマホから簡単に口座振替手続きが可能となるものです。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止の取組みを進めていくうえで有効なサービスと考え、導入することとします。
【補正額】
1793万円(財源:全額一般財源)
(内訳)
・導入費:サービス業者との契約費用473万円(税込)
・金融機関(7行)との契約費用1320万円(税込)
【事業の概要】
市税3税目(市県民税(普徴)、固定資産税・都市計画税、軽自動車税)の口座振替手続きに「Web口座振替受付サービス」を導入し、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に取組むとともに、納税義務者の利便性の向上を図る。
【開始予定】
・契約等、諸手続は令和2年8月から
・運用開始は令和3年10月から
市税キャッシュレス決済導入事業(新規)
来年1月から市県民税や固定資産税、軽自動車税をキャッシュレス決済できるようになります。定期的な納付が必要な税金の支払いについては、上述の「Web口座振替受付サービス」が実施される来年10月以降は、銀行振替を利用した方が利便性は高くなると思われます。また、特別定額給付金の給付事務の際に課題が浮き彫りとなりましたが、マイナンバーと銀行口座の紐付けについても、セキュリティ等の課題についても国会で集中的に議論を深めて頂き、来年には対応が加速するものと思っています。
そのような中で、1件あたり55円の手数料が必要となるこの市税のキャッシュレス決済が、納税者によってどのように活用されるのかについては、注意して見ていかなければなりません。
コンビニや金融機関窓口に出向かず、自宅や外出先でスマホから簡単に支払うことのできるキャッシュレス決済は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の取組みを進めていくうえで有効な納付手段と考え、導入することとします。
【補正予算額】
29万2千円(財源:全額一般財源)
(内訳)
・導入費:12万1千円
・運用経費:17万1千円
(運用経費内訳)
システム月額基本料:単価1万5000円×1.1×3ヶ月=4万9500円
処理手数料:単価55円×2000件×1.1=12万1000円
【事業の概要】
市税3税目(市県民税(普徴)、固定資産税・都市計画税、軽自動車税)の納付方法に「キャッシュレス決済(LINE Pay、PayPay)を導入し、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に取組むとともに、納税義務者の利便性の向上を図る。
【開始予定】
令和3年1月から
運動施設キャッシュレス決済導入事業(新規)
この予算の可決により、来年4月から運動施設利用料のキャッシュレス決済が可能となる予定ですが、今回の補正予算では計上されなかった他の公共施設の利用料金の支払いについてもキャッシュレス決済の導入検討が必要です。公共施設の縦割り管理がまだまだ透けて見えます。
【補正額】
720万円(財源:全額市の一般財源)
※事業費総額は、既決予算と合わせて770万円になります。
【事業スケジュール(予定)】
令和2年8月 システム改修委託契約発注
令和3年4月以降 キャッシュレス決済導入
掲載が遅くなっていますが、まだ、補正予算第7号は続きます。