保健所の状況ー新型コロナウイルス感染症対応の検証より

2021年10月11日[カテゴリ:コラム, 危機管理

 先月開催された健康福祉常任委員会で、新型コロナウイルス感染症の今年の5月末時点までの対応の検証結果が報告されました。第4波までの対応となります。

 報告書(←クリックすると市が公開しました資料が開きます)のタイトルは、「新型コロナウイルス感染症対応検証報告書における第5波に向けた保健所の備えについて」とありますが、報告書の発表から議会での報告まで2か月近くが経過し、第5波に突入した段階での議論となりましたが、この検証結果に基づいての現在の状況について確認することとなりました。

 ページ数が多くなっていますが、上記の報告書は、保健所の役割がまとまっていてよくわかる資料でしたのでご覧いただければと思います。市のホームページにももちろん掲載されています。


報告書をまとめた資料

 市民はマスコミからの情報だけ入ってきても、自分が住んでいる地域の情報が分からず、漠然とした不安を抱いていることが伝わってきます。ですので、私は地域の情報を冷静かつ迅速に伝える体制を準備しておくことも大切な備えではないかと感じています。

 第5波に向けた備えが掲載された資料を見て、その第5波の真っただ中に「備えの検証」をするという観点で質疑し、次の波への備えについて意見を述べました。以下、常任委員会でのやり取りを掲載します。

====健康福祉常任委員会での議論の概要====

令和3年9月13日 健康福祉常任委員会

■質問の背景(田中まさたけ)
 私からは、大きく2点質問します。
・(新型コロナウイルス感染症対応の)検証についてと、
・この中で全く触れられてない職員の皆さんの状況について
お尋ねします。

 まず一つ目です。
 今回御報告頂いた内容というのは、一定、市民に対する説明責任として、第4波までの状況と市の対応が伝わるという意味では高く評価しています。
 ただ、それが労力対効果の視点ではどうなのかというところを見ていかないといけないと思っています。

 まず、この報告書を見た時に、「第5波に対する備え」が、第5波に突入した今の段階で出てきているというところが課題でして、今年の5月末で区切って調査を始め、検証してこのタイミングで報告ということになっていますので、一定の時間をかけないと仕方がないというところが、こういう検証作業のジレンマなのかなと思ってます。

■質問(田中まさたけ)
 迅速な対応が必要だと思っていまして、第5波に向けた備えというところで4点挙げて頂いているのですが、これらを今の第5波が少しですけど、ピークより落ち着いたという段階で、この備えはどうだったのかというところを今どのようにお考えか、どのように評価しているか、率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。

■市の回答(地域防災支援課長)
 先に、この発行の時期だけ私のほうから答弁させていただきます。
 こちらの検証報告ですけれど、5月末から作業を開始して6月中に完成を目指してやっていたのですが、結局、発行したのは7月16日ということで、実は今回、今この場で御説明していますけど、だいぶん以前にできていたものです。一旦、8月頃に議会に対する所管事務報告をする方向で調整に動いていたのですが、感染が急に拡大してしまいましたので、今回この9月に延べさせて頂いた状況です。

■市の回答(保健予防課担当課長兼参事)
 第5波に向けた備えの4項目について、雑感ですが、どうなったかということをお答えしたいと思います。
 
 まず、1番目の「新たな感染の抑止に向けた取組み」、こちらは広報課とも連携しまして常に感染対策の広報もしております。ここに書かれています施設等のクラスター発生予防に向けた指導・助言、定期検査による予兆の把握、この定期検査というのは高齢者施設の職員の方の定期検査のことを指しておるんですが、そちらも予定どおり実施させて頂きまして、幸い第5波では高齢者施設、医療機関等のリスクの大きいところでの大型クラスターというのは発生しませんでした。感染の傾向とも相まって、どの要因でそうなったのかはちょっと分かりかねるのですが、おおむねクラスターの発生予防というところも第4波に比べると第5波では抑えられていたのではないかと考えております。

 2番目の「保健所の体制強化に向けた取組み」ですけども、こちらも早めの対応で7月下旬に陽性率が4%、5%になったところで十数名の人員の補強も頂きまして、その後も断続的に増員を続けて、最終、事務・技術の応援を今43名まで増員して頂きまして、第5波では第4波の倍ほどの感染者が出ていますので、個人個人の患者さんに対する対応では不十分なところもあったかと思いますが、第4波の時と比べてもスムーズな事務の運営はできていたと考えております。

 3番目の「業務効率化」、これも今のお話と関連してくるのですが、システムによる患者情報の管理の導入によりまして、保健所全体での患者情報の共有ですとか業務の引き渡しの情報連携の部分がかなり簡素化されまして、患者数の増加によって患者対応で一部不十分なところがあったかもしれませんが、第4波までの実務と比べるとかなり業務効率は改善されたと考えております。

 最後の「自宅療養時の支援充実に向けた取組み」につきましても、健康観察アプリの導入によって早期の患者の体調の変化を察知できるようになりましたし、在宅療養に必要な機器の確保もそうですけども、更新等を実施する際にドクターや訪問看護事業者と連絡を取るような情報連携のシステムを導入しまして、第4波の時に比べると自宅療養者への支援もかなり充実したと考えております。

 総じてこの検証報告書に書かせていただきました保健所の改善策というのは、第4波と比較して第5波のほうが患者対応が円滑になったと考えております。

■意見(田中まさたけ)
 今回の対策を実施したことで第5波の中でいろいろと効果があったということは分かりました。
 ただ、第5波を経験した中で、この検証結果が出た時点と比べて想定どおりだったのかというところに少し疑問がありまして、例えば一番最初の高齢者施設のクラスターの発生は予防できたけれども、子育て関連はできませんでした。まさか子育て関連施設でこんなにクラスターが出ると思っていませんでしたということなのか、検証が後追いみたいになって、対応が後手後手に回ると、また感染者が増えてどんどん業務が増えていくもとになると思います。
 
 例えば、陽性率にしても4%で初動となっていますが、現在、新規感染者数は少し減りましたが、陽性率はもう30%に近いような27%という状況だという報告がある中で、桁が違うのかなと思ってます。(その先の備えも必要だと思います。)

 想定というのは難しいのですが、もう少し先を見られないかなと。 

 秋以降の対策というのは、非常に重要になってくると思っていますので、このタイミングでこの報告を頂いて、こういう意見が述べられる機会を頂けるというのは非常にありがたかったと私は思っています。
 今後想定されることとしまして、クラスターへの対策は重要ですけれども、その感染拡大の防止を保健所だけの力で行うのはもうほぼ不可能ではないかとも感じています。感染者を隔離していくというのは。ですので、保健所としてはまず陽性者を早く把握していく。その人たちが重症化しないように早く措置をしていく。(ある段階になったら)保健所は今これをするんだ、だから市民の皆さんには協力してほしいということをより明確にお伝えしていかないと、この秋以降、本当に大変になると感じています。

 それと同時に、高齢者のワクチン接種が進みましたので、今は感染者数に比較すると重症者が抑えられているのか、その真偽は分からないですが、仮にそうだとすれば、いつまで効果が続くのかということが分かっていません。いつまでこのワクチンの効果が持続するのか、まだよく分かってないと私は認識しています。
 
 第5波の中で、去年の状況と何か似た傾向の感染の波があるのかなと私は感じています。ちょうど10月ぐらいは、去年も少し収まっていました。また11月ぐらいから増えてきて、ここから重症化する人が非常に増えてきました。このときはワクチンはありませんでしたので、今年はワクチンが効いてくれていたらいいのですが、それは分かりません。
 
 結局、高齢者の方の死者が増えていて、その高齢者の方々はワクチンを打っているから大丈夫だと思っていたら、効果が切れていたみたいになったらまた大変なことになるなということも想像してしまいます。それはちょっと考え過ぎなのかもしれないのですが、想定としてはできることではないのかと私は思ってまして、もう少し先を見た対応、市としては第6波に向けて準備しておかないといけないのではないかと思っています。

■質問2(田中まさたけ)
 第6波を迎える前に、来なかったら一番いいのですが、来るという前提で考えた時、その辺を保健所はどのように考えているのか。具体的にこういう冊子は作れないと思うのですが、どういう形でその辺は抑え込んでいく、対応していこうとお考えなのか。今の段階であるようでしたらお答えをお願いしたいと思います。

■市の回答(健康福祉局長)
 今委員の御質問の、今回の新型コロナウイルスで第4波と第5波とを比較した時の子供に感染力があるかどうかという特性なんかは、やはり市のほうではつかみにくいというのが現状でございます。また、ワクチンの効果もいつまで続くのかとか、新たな変異株に対応できるのかというのは、やはり市では知見を持ち合わせておりません。
 市としてできることと致しましては、この報告書に基づきますように、どの時期にどのような形で感染者が広がり、それに対応するような体制を保健所内、局内、全庁的にそれぞれどのように取っていくのか、これをしっかりと推し進めていくことが必要だと思っております。

 また、それと同時に、例えば自宅待機者についてどのように不安を払拭していくのか、また感染後、または濃厚接触者に対してどのように広報していくのか、こういったことをきちっと市民に広報することによって感染拡大を抑えていく、そういったことが必要になってくると考えております。

■意見(田中まさたけ)
 最終的には市民の皆さんと情報共有をして、その対策をしていかないといけないと感じています。ですので、そのために市が独自に知見を持てと言っているのではもちろんなくて、国が示しているものを、厚生労働省のホームページを見てという市民がどれだけいらっしゃるのかと考えた時に、やっぱり市がその辺を分かりやすくまとめて市民の皆さんにお伝えする。それで、一番最初に言いました、保健所は今こういうことを重点的にやっているので皆さんにはこれをお願いしますということをしっかりと伝えていかないと厳しいことになるのではないかと思いました。
 今回の検証に対する私の意見とさせてもらいたいと思います。

====ここまでが常任委員会での議論の概要====
 
 市の対応についても、陽性率5%になった時の初動のこと分かりますが、30%近くまで増加することは想定されていなかったことが分かります。しかも急激に増加してしまいました。なぜ急激に増加したのか分析されていません。また、5%から10%に上がる期間の短さも、その対応に必要な人員も経験しましたし、陽性率が30%近くまで上がってしまうことも経験しましたので、今後、30%を超えた場合は何ができるのか、想定しておく必要が出てきたわけです。

 兵庫県の病床使用率が70%を超えたら入院調整が難しくなると分かったのであれば、その後どうするのか、市立中央病院を設置している市として、病床をもっと迅速に増やすことはできないのか、ということも検討するべきです。
 自宅療養者に対するケアは不十分であったと回答でも繰り返された通り、今後は備えが必要だということですからなおさらです。

 まだまだ気を抜けない状況が続きます。

 長くなりましたので、もう一つの項目につきましては、次のコラムに掲載します。

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