市立中央病院の公立病院としての役割

2021年11月14日[カテゴリ:コラム, 医療・福祉

 新型コロナウイルスの感染者は大幅に減少し、11月に入って半月が経とうとしていますが低水準でキープされています。
しかし、これまでのことを鑑みますと行政としても油断はできません。現在は、スタッフの休息も含めて次の波に備えてもらいたいと思っています。

 「備えあれば憂いなし」

 備えていて次の波が来なければそれに越したことはありません。
次の波が来てしまった場合に、備えによってきちんと対応ができていればいいと考えています。

 医療体制に関する備えについて、病気は新型コロナウイルスだけではありませんので、市内の民間病院と連携して、民間にできることは民間で、公立でなければできない不採算医療は公立で、役割分担して医療環境を維持してもらわなければなりません。

 なお、市立中央病院には、西宮市から令和2年度の1年間で約17億6800万円が支払われました。しかも、資金ショートしないよう、短期貸付金としてさらに毎年8億円を貸して経営を支援しています。

 少し古くなりますが、今年の8月に開かれた健康福祉常任委員会において、中央病院の経営状況の報告を受けたい際に、新型コロナウイルス感染症の対応について常任委員会で議論していましたので、今回、掲載致します。

 市からの報告の際に提供された資料(「中央病院の経営状況について(令和3年度第1四半期)」)(←クリックするとPDFファイルが開きます。)

====健康福祉常任委員会での議論の概要====

令和3年8月19日  健康福祉常任委員会にて

■質問の背景(田中まさたけ)
・新型コロナウイルス感染症の対応病床の件、
・職員の状況について、
・救急の対応について、
以上三つの項目を一問一答で質問します。

 まず一つ目、「コロナ対応」と呼びますが、このたびコロナ対応の病床数(最大20床)を公表して頂いたことは評価をしております。
 今までなかなか見えてこなかった部分ですので、中央病院が公立病院としてどの程度の役割が果たせているのかということが一定明らかになったことはいいことだと思っております。
 ただ一方で、市立中央病院の許可病床は193床、200床近くある中で最大20床しか対応できないのか、私のような医療の素人から見ますと、もう少し増やせないのかというところが疑問として残ります。

■質問1(田中まさたけ)
 看護師の人数で(コロナに対応できる)病床数がほぼ決まっていると理解したのですが、コロナ対応の病床数を増やせないのは看護師さんの人数がぎりぎりだからと理解すればよろしいでしょうか。

■中央病院の回答
 病床を増やせない理由はいろいろあります。

 一つには、もちろん今御指摘のあった看護師の人数的なもの。5階の(コロナ対応の)病棟は現在、4対1で回しているという状況の中で、決して看護師が潤沢にいるわけではなく、夜勤切れも起きるような状況もありますのでかなり厳しい状況がございます。
 
 あと、医師の問題もあります。医師は、正規の医師が50名程度おりますが、内科医師を中心に回している状況がございます。この病床を増やすとそこの負担がかなりかかってくるということも一つございます。
 
 あと、病院全体のことでいきますと、もちろんコロナの病棟があるということもありますけれども、発熱外来、ワクチン接種の集団接種会場、一般の業務をやりつつも、193床の許可病床があるとはいえ現在の実力としては100床程度の実力しかないというところから見ますと厳しいと思っております。
 
 あと、設備関係のところもありますが、当院は、昭和40年代の設計の病院で、昭和50年2月に開院し、構造的にもかなり古い病院になっております。今回、コロナの関係で対応するのには、特に酸素であるとか陰圧の問題がございます。酸素につきましては、中等症のかなりひどい方につきましては、ネーザルハイフローをはじめとした酸素の供給をしてマスクを着けて対応します。それについてもかなり制限がございます。設備的に厳しいということがあります。

 それから、酸素の必要な重篤な方が増えると、先ほど4対1と申しましたけれども、それ以上に付きっきりにならないといけないケースであったり、現在のように中等症以上の重症患者が増えてきて、中央病院では(設備上)重症患者を受けるのは無理ですので、重症患者を受けられるような病院に後送するのですが、それがなかなか難しい場合に、当院で診なければいけないという状況となると、またかなり手がかかるというようなこともございます。

 あと、病室の関係ですが、陰圧してウイルスが外に出ないようなこともしておりますが、構造的に厳しいところがあって、ミンティという壁をつくって空気が出ないような形にはしています。しかし、ネーザルハイフローのようなウイルスがすごく外に出るような患者さんが増えると、中の空気の状況がかなり悪くなるということもあって、なかなかたくさんの中等症患者を受けられないという状況もあります。病床数を増やすと、どうしても中等症を受けてくださいという声が強くなると思いますので、その辺もかなり厳しいと思っております。

■意見(田中まさたけ)
 諸々の理由を述べていただきまして、総合的に計算すると20床までということだと思うのですが、まず、看護師さんが5階の病棟で携わっている人数や、各階で携わっている人数、7対1でやっているところ、現在、地域包括病棟が休床ですので、10対1で対応している病床はないと思いますが、各フロアの人数配置がどうなっているのかが分かりません。
 
 一般病床の稼働率が下がっているというのも、スタッフの人数の問題なのかどうなのかが分かりません。ニーズの問題、患者数の減少に伴うものなのか、それとももうこれ以上受け入れられないという状況なのかということが今回の分析では分かりません。
 
 フロアごとに対応しているのであれば、人数配置をどのようにされているのかが分からなくて、あるフロアでは人員的には少し余裕があったりしないのか、医師についても約50人の医師がいらっしゃって、そのうちの内科の方でコロナの対応をされているとのことです。
 そうしたら、その他の方は対応ができないのかどうか、各フロアでダブついているところはないのかというところが厳密に見られていないと思っています。

 つまり、目いっぱい人的資源を活用できているかというのがこの資料からは読み取れないということを指摘しておきたいと思います。後日でも結構ですので、お示しいただけるのであればありがたいと思っております。

■質問2(田中まさたけ)
 (質問1に対する中央病院の回答の中で)設備の課題がございましたが、現在既に自宅療養の方がかなりの人数いらっしゃって、その中でリスクの高い方もいらっしゃったり、宿泊療養をされている方でリスクの高い方、優先して病院に入院して頂いた方がいいのではないか、中等症ほどの設備は要らないというような方が宿泊療養をされていると思いますが、今回、休床された37床は、そういう方々のために活用できないのかと思うのですがいかがでしょうか。

■質問2に対する中央病院の回答
 現在、5階で言えば、20床を(コロナ対応で)受け入れて29床が休床になっています。そこに自宅療養の方も入れないかということですが、基本的にコロナの患者さんを入れてしまうと、たとえそれが軽症であっても、それなりの看護体制、7対1あるいは10対1の看護体制を取らないといけません。
 先ほど言いましたが、看護師については、現状として余裕がないということ、それとあと、医師については、内科医が中心に担っていますが、要は、普通の外来診療、入院診療、それと通常のワクチン、そういった諸々もしながらの状況で、内科医についても限界の状況です。
 
 これ以上本当にするとなれば、何かをやめて対応するという方法しかないような状況でありまして、現状としては、基本的には中央病院の体制というのはこれが限界というところで、これ以上病床を増やすことは基本的には無理、不可能と考えております。

■意見(田中まさたけ)
 自宅療養されている方の不安であったり、宿泊療養の方も同じだと思うのですが、その方々が病院にいることによって不安が軽減できるのではないかという素人的な感覚が私にはありまして、ですので、ホテルの代わりに病院を使ってもらったらというのが許されるのかどうか、私は分からないのですが、その点、先ほど部長に御答弁いただきました、入院される限りは7対1で見なければいけないとか、そういう制限があるかとは思うのですが、それは、法律なりガイドラインでそういう使い方はしてはいけない、看てはいけないということにはなっているのでしょうか。

■質問3(田中まさたけ)
 先ほど、コロナ病床の対応については4対1で看ているというお答えでしたが、この休床している部分、5階の部分を比較的軽症の方で重症化リスクが少し高い方を優先して受け入れるという対応までも、ふだんの病院と同じような体制で看なければならないという、そういう決まりがありますか?ガイドラインや厚生労働省からの通知とか、そういったものは存在しているのでしょうか。存在しているのであれば、その名称を教えていただけますでしょうか。

■中央病院の回答
 具体的な正式な名称までは覚えてはおりませんが、確かに厚生労働省の通知に伴いまして病床の運用に関しては、今回のコロナの対応については臨時的な対応という形での通知はかなり出てきております。
 ただ、先ほどおっしゃられました37床の休床の部分に関しましては、一般病床の中での37床ということでございまして、今回、当院としましては、コロナ患者さんの専用病床として5階を専用という形でさせて頂いた上で、感染のリスクを軽減させてもらうためにも、ミンティを使わせていただいてコホートしている、隔離したような状況で対応しています。

 ただ、ガイドライン的では、そこまでしなければいけないということではないのですが、当院の施設がかなり古いというところもありますので、隔離までさせて頂いて対応しているということですので、一般病床にコロナの陽性患者さんを入れるということは感染リスクがかなり高くなるということで、それは避けなければいけないと考えております。

 また、これ以上の患者さんを受け入れるといった場合、今、基本的には個室で診させて頂いているというところは、今、複数のコロナの株ができている状況でございますので、極力コロナの患者さん自身も交差しないようにしなければ、また新しい株をつくる可能性もあるということで現在の対応をさせて頂いておりますので御理解いただければと思います。

■意見(田中まさたけ)
 できない理由を挙げれば恐らくいっぱい挙げられるんだと思います。
 そこを、本当にできないのかというところをお尋ねしているわけで、休床している37床全床を使ってというのが理想ですけれども、そのうちの何床かでも使えないかというところは、もう少し努力をして頂きたいと私は思います。

====常任委員会での議論の概要はここまで====

 もちろん、新型コロナウイルス感染症の対応について、中央病院がサボっているとは思っていません。
 しかし、税金が入っている病院として、民間が担いにくい医療に対してもっとできることがあるのではないか、という視点で休床させているところを活用できないかと思っています。

 次の項目は、次のコラムに掲載します。

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