2018年8月14日[カテゴリ:質問]
◼教育大綱とは◼
平成26年に行われた「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正に伴い、「地方公共団体の長は、教育基本法第17条第1項に規定する基本的な方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めるものとする。」(第1条の3第1項)とされました。
地方公共団体の長は民意を代表する立場であるとともに、教育行政においては、大学及び私立学校を直接所管し、教育委員会の所管事項に関する予算の編成・執行や条例提案など重要な権限を有している。
また、近年の教育行政においては福祉や地域振興などの一般行政との密接な連携が必要となっている。
これらを踏まえ、今回の改正においては、地方公共団体の長に大綱の策定を義務付けることにより、地域住民の意向のより一層の反映と地方公共団体における教育、学術及び文化の振興に関する施策の総合的な推進を図ることとしている。
そこで、平成28年に前市長のもとで策定されたのが、以下の大綱です。
◼西宮市教育大綱◼
子供たちは、未来の主役です。彼らは、現代の社会が実現できなかった夢をこれから実現し、新しい価値を創造する存在として、敬意と寛容さをもって育まれるべきです。
大人は、子供に対して深い愛情をもって接するべきです。但し、ただ弱い未完成な存在ととらえて、守り慈しむだけではいけません。子供の育ちへの大人の過干渉や過保護は、子供の自立した人間性の育成を阻んでしまいます。大人がすべきことは、子供たちが、たくましさ、優しさ、豊かな感性を身に付けることのできる環境を整えることです。
西宮市は、子供に期待することと、その実現のために大人に期待することをここに示し、広く市民と共有するとともに、これを今後の子供を中心とした西宮市の教育・子供施策の礎とします。
【西宮の子供たちへ】
1)自分に自信を持ち、新しいことや自分の目標に挑戦する勇気を持ちましょう。
2)ものごとをして取り組まれる分で判断し、自分の言葉で自分の考えを表現しましょう。
3)失敗しても、落ち着いて、そこからどうすればいいか考えましょう。
4)自分とは違った価値観も尊重し、他に対して思いやりを持ちましょう。
5)規則正しい健康的な生活を心がけ、社会のルールを守りましょう。
6)西宮や日本の自然や伝統文化に親しみ、ふるさとへの誇りを持ちましょう。
【西宮の大人たちへ】
1)子供の興味や意欲に気付き、それを深めたり挑戦したりすることを応援し、見守りましょう。
2)自分の期待や特定の考え方を押しつけず、子供の話にじっくり耳を傾けましょう。
3)挑戦による失敗を責めず、そこでなされる子供の判断を尊重し、共に考える姿勢を持ちましょう。
4)子供が多くの人や体験と出会う機会をつくり、他の価値観も存在することを伝えましょう。
5)子供の健康的な成長に気を配った家庭環境をつくり、子供の模範となる態度を心がけましょう。
6)地域や日本の四季や伝統文化を感じられる機会をつくりましょう。
7)子供たちに対して、愛情と敬意と寛容さを持ちましょう
西宮市教育大綱
↑クリックすると平成28年11月策定の西宮市教育大綱がご覧いただけます。
私には、この西宮市の教育大綱が何のために策定されているのか、いまいち理解できていません。
というのも、西宮で育つ子供とそれを支える大人の理想の姿を示しているのはいいのですが、そのために、西宮市が行政として何をしようとしているのか、一定の期間に重点的に取り組んで達成するべきことは何と考えているのか、全く示されていないからです。
私は、この西宮市教育大綱は、市民憲章に近い、「子供・子育て憲章」と言えると感じています。
まだ、石井市長は就任されたばかりではありますが、所信表明において教育大綱について触れられたので、平成30年6月議会代表質問で取り上げて、市長の考えを確認しました。
====本会議場での議論の概要====
平成30年6月議会代表質問
3.教育政策について
(教育大綱について)
■質問の背景(田中まさたけ)
市長は、所信表明において「教育大綱を深化させる」と述べられました。お手元に資料(←クリックすると配布資料がご覧いただけます。)を用意致しました。
前市長時代に策定された教育大綱には普遍的なことが書かれているのですが、それを実現するためのアクションは具体化されておりません。つまり、現在の教育大綱は、いわゆる子育て憲章、子供憲章といった普遍的な道徳的規範という性質を持っているように思います。そこで、法が教育大綱の策定を義務づけた趣旨を鑑み、改めて教育大綱を策定して取り組むべきと考えます。
■質問(田中まさたけ)
今後、市長が述べた新しい教育を具現化するために、改めて教育大綱を定め、教育委員会が定める教育振興基本計画(現在は「西宮市総合計画の教育委員会所管分野」となっており、単独の計画は作成されていません。)に落とし込むべきと考えますが市長の見解をお尋ね致します。
■市長の回答
教育大綱は、地方公共団体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策について、その目標や施策の根本となる方針とされており、記載内容は市の判断に委ねられております。市長就任後の5月に開催した総合教育会議において、教育長及び教育委員の教育に対する思いをお聞きし、意見交換をさせていただきました。その上で、大綱には当然書かれているべきことが書いてあり、私が進めようとしている施策に支障がないと判断を致しました。
そして、今回の市長交代に伴って変更しなければならない点は現時点ではないと考え、現行の教育大綱の理念を深めていくべきという結論に至ったところであります。
今後、総合教育会議等でさまざまな議論を行い、その理念を深く理解、共有してまいりますが、何よりも西宮の教育施策をどう進めるかが大事であると考えております。また、将来によりましても、大綱を改定する可能性もあり得ると考えております。
■回答を受けての意見(田中まさたけ)
まず、教育大綱につきましては、市長が進めようとしている教育施策に支障がないと判断しましたと御答弁にありました。これは当たり前のことです。この(ごく普遍的なことしか触れられていない)教育大綱が、支障になるようなことがあれば、それこそ大変です。だからこそ普遍的な内容、憲章という、そうした表現を私は用いました。
■再質問(田中まさたけ)
市長は所信表明で、新しい教育を積極的に進めようと述べられました。市長ができることは教育大綱を策定して現場に共有してもらうことだと思い、今回は、教育大綱の策定(改訂)を提案致しました。
それに対する御答弁では、「大事なのは西宮の教育施策をどう進めるかである」このようにありました。その進め方に市長がどのように関与しようとお考えなのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
■再質問に対する市長の回答
まず、一つ目の教育施策を進める上でどのように関与するのかということに関して申し上げます。
その前提となる点ですね。教育大綱について、せっかくの機会ですから付言をさせていただきたいと思います。
先ほど、法が定める趣旨を踏まえ、そして、この教育大綱に向き合うようにということが冒頭に田中議員からの質問でございました。あわせて、この教育大綱というものは、御承知のことと思いますが、平成27年から施行された地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を変えたものでありますが、ここで、これは文部科学省の資料を今ちょうど私は手にしてますけれども、「教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保しつつ、地方教育行政における責任の明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連携の強化を図るとともに、地方に対する国の関与の見直しを図る」というのが法の趣旨であります。
それに基づいて、平成28年に本市の、1年かけてできたというわけでありますが、私自身、この教育大綱というものに際して、ああ、そうか、リーダーが議論を通じて大綱を定めることができるんだというのは、当然もちろん承知をしておりましたが、あわせて、教育大綱に向き合うのは、ここにいる市議会の皆さん方や市民の方たちとあわせて、教育委員会であり、現場のまさに日々の教職に当たられる方たちも向き合うというようなものであります。
これは私の認識ですけれども、教育現場ないしは教育委員会というのは、歴史的にも努めて政治と一定の距離を持ってきたのが我が国の歴史であります。そうした中で、私自身も政治の中立性というようなものを意識しながら、あわせて、今回、法が変わった中で、リーダーシップを持ってどう教育大綱に向き合うかというのを考えました。
そして、この段階において、まだできて2年の教育大綱を、私の施策を進める上での支障がないという判断もありましたけれども、それ以上に、今ここでさわらないというようなことを私の政治的意思として示したわけであります。
あわせて鑑みますと、この文部科学省の資料には、4、5年程度によって大綱を改定といいますか、定めるものと規定をしている。4、5年というのは、市長の任期が4年ということでもあるんですけれども、ただ、あわせて、今これは新しく法律ができて、そして、その中で、平成28年にできて今ちょうど2年という段階でありますから、そうしたさまざまなことを鑑みる中で、私が消極的に教育大綱に向き合っているというのではなくて、私なりにそしゃくをする中でこのように判断をさせていただいたということであります。
あわせて、そうした文脈の中で申し上げると、教育施策を進める上でどう関与するかということは、それはやはり教育委員会であり、そして、現場の先生方であり、そして、まさに子供たちと向き合う保護者、PTAの皆さん方との信頼関係をまずしっかりとつくっていくというようなことが大切であります。
その上で、私が申し上げてきたのは、教育というようなものが、今でもいい教育を行っていただいているところがほとんどでありますけれども、学校現場や親ということだけじゃなくて、より社会全体で支えるような教育を教育政策だけにとどまらず進めていきたいというのが大きな話であります。そのためにも、教育現場との信頼関係を積み上げていきたい。 そうしたことで、こういう私の今この2か月ちょっとの段階での判断になっているということを御理解いただきたいと思います。
■意見・要望(田中まさたけ)
市長の今の段階でのお考えについては、一定判明したと思っています。
教育大綱というのはこうでなければならないというのはもちろんなくて、それを改定するのかしないのかというところも、これはやはり市長と教育委員会のほうで、総合教育会議でも議論をしながら定めていくものと思っています。
今回の所信表明を伺っていて、市長は教育に対してかなり思いが強いと感じましたし、その思いをどういうふうに実現していくのかというところをある程度我々にも教えていただきたいということがございます。
その、どういう方針なのかというのを示せるのが教育大綱だと私は理解をしていました。
今の教育大綱のまま進めるということですので、石井市長のお考えが教育振興基本計画のほうに載ってくるのかといったら、そうでもないのかなと思っています。
所信表明でこういう教育を進めていきたいみたいなことをおっしゃられたわけですから、少しお答えと合わないのではないのかと私は感じました。
何が言いたいかというと、市長がどんなことを教育現場に反映、(住民の代表としての)御自身の考えを、取り組みに反映させていきたいとお考えなのかということを体系的に我々に示していただきたいということで今回は申し上げました。
ですので、教育大綱を改めて策定してはどうかという提案は、これは引き続きしておきたいと思いますが、まだ就任から2ヶ月しか経っておりませんので、今後の動向を注視しておきたいと思います。
====ここまでが本会議場での議論の概要====
市長が回答で述べられた「法の趣旨」は、平成26年に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正した際に、新教育長の任命や総合教育会議の設置、大綱の策定、国の責任の明確化など改正全体の趣旨であり、教育大綱の策定を義務化した趣旨は、「地域住民の意向のより一層の反映と教育、学術及び文化の振興に関する施策の総合的な推進」です。
また、市長の回答中の「大綱を定めることができる」という意識は改めて頂く必要があり、(教育総合会議での議論を通じて)「大綱は策定しなければならない(必須)」のです。「大綱の内容は自由」というだけです。
上記の西宮市教育大綱ができたばかりなので、当面はこのままでいくというのであれば、その判断は住民を代表した意思として尊重しなければなりませんが、「市長の教育に対する意欲はその程度」と言わざるを得ません。
新市長の所信表明では、
・「学校教育と社会を強く結びつけようとする新しい教育」の積極的推進
・「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正(平成29年4月1日より施行)により努力義務化された「コミュニティ・スクール」の推進
・西宮浜での小中一貫校の開校
・西宮市教育大綱の理念の深化?
・インクルーシブ教育システムの構築/幼児期からの繋がりのある支援体制
・不登校児童生徒に対する支援(フリースクールなどとの積極的な連携)
・学校のトイレの洋式化
・社会人教育(リカレント教育)
・スポーツ環境の整備
・環境学習都市を深化させるような取組み
について述べられています。
今後、新市長が教育委員会が所管する教育施策にどのように関与して、施策が進められるのか、注視してまいりたいと思います。