2022年6月7日[カテゴリ:コラム, 医療・福祉, 地域福祉]
兵庫県の取組み
令和3年度の西宮市議会健康福祉常任委員会の施策研究テーマに設定し、約9か月間調査をしてきました「ヤングケアラー」について、今年の3月に市に対して提言し、先月の健康福祉常任委員会で市から回答を受けました。「施策研究テーマ」の説明は、最後に掲載します。
その前に、兵庫県のホームページに以下の内容が掲載されています。
令和4年6月1日に兵庫県ヤングケアラー・若者ケアラー相談窓口を開設します。
受付時間:月曜日~金曜日 9時30分~16時30分(祝日・年末年始を除く)
※時間外のご相談は翌開設時間の回答になります。
専用電話番号:078-894-3989
E-mail:yc@hacsw.or.jp
ヤングケアラーについての理解を深める
ヤングケアラーについて国が行った実態調査では、世話をしている家族が「いる」と回答した子供の割合を公表しています。
(令和2年12月調査)
中学2年生:5.7%
全日制高校2年生:4.1%
(令和4年1月調査)
小学6年生:6.5%(世話をしている家族は「兄弟」が最多)
大学3年生:10.2%(世話をする家族が「いる」「いた」と答えた割合)
だったそうです。
西宮市の子供の実態は調査されていません。
まず課題として挙げられることは、子供たちは、自分がヤングケアラーであることを認識していなかったり、現状が当たり前のことだと思っていたり、家族の状況を知られたくないと思っていたり、相談して家族の現状が変わってしまうことを恐れたりするなどして、相談窓口を設置するだけでは、支援が必要な子供が相談ができるとは考えにくいことです。
ですので、周りの大人がヤングケアラーの状況にある子供に気が付いて、福祉制度の利用につないでいくという環境が必要です。そのためには、周りの大人がヤングケアラーについて適切に理解をすることと、この相談窓口が設置されていることを知ることが重要であると考えています。
また、ヤングケアラーについては、法律での「定義」はなく、「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子供」とされています。
私は、家のことを「お手伝い」することは子供の成長、生きる力を養う上で一定必要なことだと思っていましたが、その「お手伝い」をする時間が子供の生活の大半を占めてしまって、子供の間に経験しておくべき学習や遊びなどを犠牲にしなければならないような子供が増えていることにより、過度の「お手伝い」が問題視されるようになりました。
どこまでが必要なお手伝いで、どこからが支援が必要なヤングケアラーなのか、線引きが非常に難しく、さらに理解を深める必要性を感じました。
また、なぜそのような子供が増えたのか、実態調査を進めることで原因を追究しなければならないとも感じます。
ヤングケアラーの取組みは始まったばかり
ヤングケアラーの年齢については18歳未満と定義されています。今年度から民法でも18歳未満が未成年ということになりましたし、児童福祉法でも「18歳未満が児童」ということで対象になっています。
一方で、兵庫県のホームページでは、支援の対象をヤングケアラー・若者ケアラーとして、18歳未満に限定せずに概ね30歳代前半までが対象となっています。なぜ30歳代前半で区切るのかあいまいさが残ります。
こうしたあいまいさは、支援が必要な子供を見逃す可能性が高くなると感じています。まずは、18歳未満の子供たちに、確実に支援の手が行き届く体制を整えるべきだと考えています。
そして、相談窓口も含めて誰かに相談をして、どのような解決が期待できるのかを知ることも重要と思っています。
さらに、確実に支援につなげるための体制を構築するために、実際に支援が必要な子供がどれぐらいいるのか、どのような支援を必要としているのか、実態を把握する必要もあると感じています。
また、実際の支援については、既存の福祉制度が活用できるように制度と家庭を結ぶことに加えて、地域での助け合いも重要になると感じています。子ども食堂もその取り組みの一つだと思います。
■令和3年10月26日投稿
神戸市さんのご協力のもとで開催されました「ヤングケアラーの実情と支援について」のWEB勉強会に出席しました。
現在、健康福祉常任委員会では、ヤングケアラーのことについて集中的に調査を進めていて、例年は現地に伺いますが、昨年度からコロナ対策のためオンラインで調査をしています。
神戸市では、全国初の相談・支援窓口を設置されるなど先進的に取り組まれています。また、厚生労働省の定義では18歳未満の方を対象にしていますが、神戸市では20代の方も支援の対象に含めて取り組まれています。
私は、この課題についても、これまで15年に渡って議論してきた地域福祉の取り組み、市民との協働が重要ではないかと考えています。
しかし、実情は十人十色であり、具体的に考えれば考えるほど大変難しい政策課題であると感じています。
市への提言に向けて、さらに情報収集します。
https://masatake.jp/2433
西宮市には独自の相談窓口を設置する予定はありません。
今年の3月3日に健康福祉常任委員会が提出しました「ヤングケアラーについての提言書」の中で、私からは、以下の意見を記しました。
2.どのような状態の子供が「ヤングケアラー」に該当するのか明確にして、市の各部署や現場の職員だけではなく、地域の方々とも共有しておかなくては、支援を必要とする対象者の把握が進まないのではないかと危惧しています。周りの大人が気づいてあげられる環境を作っていくことも相談窓口の設置と同時に進めて頂きたいと思います。
3.市は、実態把握の調査を早急に集中的に実施するべきと考えます。支援が必要な子供の人数や生活環境など実態が分からなければ、支援につなげる人員強化の必要性について検討できません。
4.市が相談窓口を設置した場合、相談したことによってどのように子供の状態が改善するのか具体的にイメージができるよう、広報に工夫が必要だと思います。
5.個人情報の取り扱いがネックとなることが想定されますが、地域のつながりの中で助け合いができることが理想だと思います。地域福祉計画の中で重点施策に位置付けて、民間の団体と協働しながら、地域で地域の子供を守れるような地域福祉体制の充実に取り組んで頂きたいと思います。
5月20日開催の健康福祉常任委員会では、私たちの提言を受けての西宮市の対応について説明がありました。
結論から言うと、西宮市は、市独自の相談窓口を設置することは考えていないとのことでした。
良く言うと、西宮市は、受動的に相談に来るのを待つのではなく、能動的に発見していくという方針です。
そこでまず、西宮市は、学校の先生が家庭状況を把握できるはずとの前提に立って、学校でのヤングケアラーの発見に重点を置くようです。しかし、社会情勢の変化に伴っていろいろなジャンルの学習が求められ、多くの課題を抱える学校に過度に依存していては、支援が進まないのではないかと心配しています。
私は、学校での把握に重きを置くのであれば、せめて、スクールソーシャルワーカーが学校に出向いて、情報を集める姿勢が必要だと思います。
そして、学校だけではなく、訪問介護や通所介護などの福祉事業者や民生委員など地域の方々からも情報が集まるように、そして、支援が必要な家庭を、確実に既存の福祉制度、支援につないでいく役割を主体的に担う「窓口」が必要だと考えています。
市は、4月から健康福祉局に担当職員を配置して、ヤングケアラーのみならず8050問題やダブルケア、引きこもりの問題に対して、高齢・障害・児童・生活困窮の相談支援機関が連携して支援する、包括的な支援体制づくりを始めるとのことです。
具体性に欠けていて、何が変わるのかイメージがわきませんので、今後、どのような支援ができるようになったのか、実例を示すことで広報するべきだと思います。
また、兵庫県は上記の相談窓口を設置して、具体的な支援については市や支援機関につなぐということになっているのですが、その県との窓口は、西宮市では健康福祉局ではなく子ども支援局が担うそうです。私は、情報を集約するためにも、窓口は健康福祉局で一本化するべきだと思います。
まだ、取り組みは始まったばかりですので、今後も、実効性を高めていく必要があります。
施策研究テーマ
最後に。
施策研究テーマとは?ということですが、西宮市議会では議会改革の一環で、平成24年度から、常任委員会ごとに市の事業や政策について「施策研究テーマ」を設定して、集中して現状や先進事例を調査して、市に対して政策を提言するという取り組みを続けてきました。取り組みを始めてから10年が経過しました。
この施策研究テーマの提言については、あくまでも常任委員会単位で行われているため、議会全体でコンセンサスが取れているとは言えないことに問題を感じています。これは、施策研究テーマでの提言が、指定ごみ袋の導入のように、ある時は「施策研究テーマで提言を受けたので、その提言に基づいている」という形で利用され、ある時は、「無視をする」という状況になっています。
市議会としての提言の出し方や取り扱いについて、今後、改善が必要だと感じています。