市長の処遇ー平成30年6月議会代表質問

2018年7月4日[カテゴリ:人件費, 質問

 市長選挙での公約に基づいて、議案として提案されている市長の給料を自ら減額する目的と退職金を不支給とする考え方について、代表質問で取り上げて議論しました。

====本会議場での議論の概要====

平成30年6月議会代表質問

2.公金に対する考え方について
■質問の背景(田中まさたけ)

 まずは、市長給与の減額と退職金の不支給についてお尋ねをいたします。
 数字をいじるのは手段です。そして、給与、退職金、これらはいずれも、市長の個人資産の話ではなく、公金あるいは公に定められている制度をどう扱うかという問題です。

 つまり、これを動かす以上、当然合理的な目的がなくてはなりません。

 ご自身の広報では、市長給与に関し、阪神間で断トツの給与を受け取るわけにはいかないとされ、その減額を「率先垂範」と述べられております。
率先垂範とは、文字どおり人の先頭に立って物事を行い、模範を示すことです。何かこの後に続く削減を計画しているのでしょうか。

 また、地方議員や市長の報酬や給与、これらはその都市の財政規模にほぼ比例して設定されているにもかかわらず、なぜ中核市など同規模自治体ではなく、都市規模の違う阪神間で比較して単純に高いと表現されたのでしょうか。
 18%という削減率の理由は、それ以上減額すると副市長の給与を下回ってしまうからということでしたけれども、なぜ給与だけは副市長を下回ってはいけないのでしょうか。退職金はゼロ、つまり副市長を大きく下回ろうとしているにもかかわらずです。

 退職金の不支給に関しても同根です。市長は4年で2,800万円という退職金は市民感覚からして非常識だと述べられましたが、市長の退職金は、時の市長が勝手に創設をし、金額を決めているわけではなく、昭和50年ごろから現在の制度となり、きちんと公表もされ、歴代市長はこの制度に基づいてこれを受け取ってきました。石井市長は、この過去の全てが非常識だったという御意見なのでしょうか。

 私たちは、これらをこのまま受け取るべきと言いたいのではありません。公に定められた制度を大幅に変更しようというのに、条例改正の意味や生み出される価値が全く見えてこないと言いたいのです。

 所信では、49万市民の英知を広く集めることができるような仕組みを導入していく、その改革への意思を示すためにこれらをなすと述べられておりますが、市長が給料を下げたり、退職金を受け取らないことがどう英知を広く集める仕組みづくりに効果的なのか、理解に苦しみます。
 もし制度や金額がおかしいというのであれば、そのように提起し、まさに英知を広く集めて、本市はこれをどうするべきか、議論によって堂々と決め、一代限りなどではなく、恒久的制度にするべきです。
 また、これらは大きな変革をなすための手段というのであれば、その後何をなしたいのか、目標を具体的に示し、同じく広く議論をして、目標と手段の是非を問うべきです。

 このどちらでもなく、自分一代限りだから議会も認めるだろうという軽率なことを堂々と述べるその姿勢は、市議会をばかにしているとしか思えません。

■質問1(田中まさたけ)
 まず、自身の給与を18%削減し、退職金を不支給とする目的を明確に教えてください。ここでは、本市のこれからにどう価値をもたらすのかなど、本来の目的、狙いについてお尋ねいたします。

■市長の答弁
 今定例会で私の退職手当の不支給並びに給与減額に関する条例案を上程しておりますが、これは、私自身の政治姿勢を示す意味で提案させていただいたものであります。
 市長の退職手当のあり方については、本来は十分な時間をかけてさまざまな観点で慎重に議論を積み重ねた上で結論を導き出すことが適切であると認識してはおりますが、かねてより、私自身の感覚として、4年の任期で約2,800万円という退職手当は高過ぎると感じていたところもあり、今回に関しては、私自身の政治姿勢を示す意味で、現任期にかかわる退職手当を不支給としたいと考えたものであります。

 一方、市長の給料の額につきましては、限られた財源の中でより効果的かつ効率的な行政運営を行うためには、今後、全ての事務事業に対する見直しも必要であると考えており、これらの見直しを市民にお願いしていくのに先立って、まずは市長みずからがその姿勢を示すことが必要であると考え、私自身の給与の自主減額について判断したものであります。
 なお、給与減額後の額算定の根拠につきましては、市長以外の常勤特別職で最も高い副市長の額を下回ることは職責のバランス等の観点から適当ではないと考えたことから、副市長の額を下回らない限度として、本則額の18%減の額としたものであります。

 また、今回上程しておる条例案は、先ほど申し上げたとおり、私の政治姿勢を示すための提案であり、あくまで私自身についての問題でありますことから、副市長を初めとした私以外の常勤特別職や一般職の給与については、同様に扱うことは現時点において考えておりません。

■意見・要望(田中まさたけ)
 市長給与の減額と退職金の不支給ですけれども、残念ながら、御答弁を受けてもなお、この意味や今これをなすことの価値を理解することはできませんでした。率先垂範が意味することで一つだけわかったことは、今後市民サービスを削減することを示唆する、事務事業の見直しを考えているということでした。「先立って」とおっしゃいました。これは大きな方針です。あとは一貫して政治姿勢だというお答えでした。
 
 この「政治姿勢」という言い方は、便利な常套句ではございますが、抽象的でありまして、論理的な説明を求めた私の質問に対する答えにはなっておりません。
 そもそも政治姿勢とは政治に対する哲学や柱となる考え方のことですが、市長は、受け取る所得が安いほど、よい政治家、すばらしい市長であり、周りからの信頼を得ることができるとの考えに立つということなのだと思いました。
 
 身を切る改革、私たちはこの言葉を使いませんけれども、この真意は、大事をなすに当たってはみずからの処遇や待遇さえ惜しまず捨てることができるという覚悟のことであり、不要不急のセルフディスカウントによって、大衆にこび、その留飲を下げ、喝采を浴びようという低俗なポピュリズムとは似て非なるものであると思っています。

 退職金に関しては、廃止されるのではなく、自分だけは受け取らないとしているにすぎません。市の最高責任者たる市長が自分の後は知らずというこのやり方で、「改革できました!公約達成!」と胸を張るおつもりなのでしょうか。

 給与減額や退職金に関し、ここまでやりとりがかみ合わないということは、信念に基づいた課題解決のための価値ある目的など初めからなかったことが露呈したと言わざるを得ません。
 前市長は、本市の名誉を毀損し、多くの市民から批判を受けました。時間的にリコールもできない中で、議会は退職金の減額を検討したわけですけれども、それらが報道された過程で退職金の額が改めてクローズアップされ、あのような人物にこれだけ支払われるのか、そうした怒りが一時的に湧き起こった、これが当時の退職金騒動の実態です。
 
 市長の表明は、この不満に対する選挙集票のためのパフォーマンスであった、そう思われても仕方がありません。特に退職金は4年後の話です。今ここで多くの疑問符を投げつけられたまま、それを振り切るように議決を強行することにどんな建設的な意味があるのでしょうか。ですので、これらの条例は一旦取り下げ、仮に本当に疑問を抱いたのであれば、この機会に改めてもう一度本質的議論から始めるべきです。提案をしておきます。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 公金の使い道を決める権限をいただいている市長や市議会議員の給料などの処遇を、自らの考えのみで決めていいわけがないと考えていました。

 削る、減額することについては、感覚的、感情的には許されても、給料を増額するとか新たに市長の政策調査費を設けるなど、費用が掛かることは、今回のように議論が浅い段階では認められないはずです。あくまでも感覚的なものですが。

 法治国家ですから、地方政治においては、権限を持った者の処遇については、第三者の意見を入れて議会で定める条例で決めることになっているのは、権力者が自分の権限を濫用できないようにするためであったと理解しています。

 この類の議案を、市議会がそのままスルーするようでは、もはや市議会の存在意義はないと考えています。

 具体的な行動については、次のコラムに続きます。

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