医療費や雇用など市民生活に関する支援ー令和2年度補正予算(第7号)⑧

2020年9月26日[カテゴリ:コラム, 医療・福祉

西宮市各会計の決算審査

 現在、9月議会の会期中で、令和元年度決算を審査する特別委員会が行われています。昨日は、民生分科会が開かれ、環境局と市民局の決算を審査しました。

 環境局に対しては、環境学習やごみの減量、エネルギー政策など環境問題に関する取組み、墓地管理や空き地・空き家対策、不法投棄など生活環境に関する取り組み、ごみの収集や処理場に関する事業等に関して、質疑がありました。
 市民局に対しては、マイナンバーカードや各支所での課題、自治会活動など地域コミュニティに関する取組み、防犯に関する取り組み、国民健康保険、平和施策や男女共同参画などについて、質疑がありました。

 昨年担当した健康福祉常任委員会とは異なり、民生常任委員会が扱う内容は、大変幅広くなっています。来週月曜日は、産業文化局の決算を審査した後に、常任委員会を開催し、「新型コロナウイルス感染症対応としての産業振興について」協議をする予定ですので、今日もこのコラムを書きながら準備に勤しんでいます。

 予算の審査は、無駄が発覚した場合、税金が使われる前に止めることもできますし、新規事業などは目立ちますから、注目されます。一方で、決算審査は、既に税金が使われた後の審査となりますから、税金を取り戻すことはできませんが、その使い方の効率性や効果等を検証するという点で、非常に地味ですが重要な審査となります。現在は、この分科会での各委員からの指摘や、各会派ごとに9月議会の最終日に「討論」という形で市に対して述べられる意見要望を、市長がチョイスして次の予算に反映しています。予算の編成権は市長にしかありませんから、現在の仕組みでは、この分科会で詳細に審査し議論した内容が次年度予算に活かされるかどうかは、市長や市幹部の胸先三寸と言っても過言ではありません。
 せっかく決算特別委員会を設置して、分科会に分けて審査しているわけですから、分科会ごとに各事業の改善点等を議会の見解としてまとめ、市に提言し、それらを次の予算に反映させるような仕組みに変えれば、さらに意思決定過程が見えやすくなるのではないかと考えています。
 分科会では、各委員は、数字の確認等は事前の準備で済ませ、市民からの意見を参考に、改善すべき点を指摘するための質疑をすることが多くなっています。
 

新型コロナウイルス感染症入院患者等に係る医療扶助費等(拡充)

 今回も、令和2年度補正予算第7号の続きを掲載します。今月に入って、市内で感染が確認される人数は減少してきましたが、引き続き、再拡大に備える必要があります。

 新型コロナウイルスに感染した場合、入院を勧告され、入院費用は全額公費負担となっています。また、兵庫県では軽症者や無症状者の場合、入院後、医師・看護師等医療体制を整備した宿泊施設において療養となりますが、この費用も公費負担です。
 そして、保険適用でPCR検査を受診した場合の自己負担分も公費負担されます。これは、保険適用の場合、加入している保険者が7割から9割を負担していることから、被保険者の保険料で成り立っている保険財政への影響も懸念されます。保険者については、こちらのコラム(←クリックするとコラム「医療費の適正化④」が開きます。)をご覧ください。

 6月下旬以降の陽性患者数の増加、4月以降の保険適用によるPCR検査数の増加により、これらの公費負担に要する予算が不足すると見込まれ、さらに増額補正されました。

市の説明の抜粋
 現在、新型コロナウイルス感染症の陽性患者が発生した場合、県の方針により当該患者に医療機関への入院勧告を行なっています。その入院に係る医療費は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」により全額公費負担となっており、当該患者が増加し、重症患者が発生した場合、その公費負担額は相当高額になると見込まれます。
 また、帰国者・接触者外来等で実施されている医療保険適用によるPCR検査数も4月より顕著に増加しており、これに係る医療費の自己負担相当の公費負担額も相当高額になると見込まれます。
 上記医療扶助費は新型コロナウイルス感染症対策に必要不可欠な経費であるため、必要見込額を増額補正するものです。
【補正予算額】
 3851万1千円(国の補助金:2110万9千円、市の一般財源:1740万2千円)
(内訳)
〇手数料等:37万3千円
〇扶助費:3813万8千円(入院医療費、医療保険適用PCR検査10か月分)
 ・入院医療費(社保9万2641円×20件+国保8万2円×10件+国保(後期)5万1044円×10件+重症患者用費用500万円=816万3280円)
 ・医療保険適用によるPCR検査費(社保5854円×3850件+国保5525円×1150件+国保(後期)2166円×500件=2997万4650円
【実施状況】
(入院勧告・公費支払い件数(患者発生件数とは一致しない))
 3月:4件、4月:25件、5月、6月:未確定
(医療保険適用PCR検査実施状況)
 3月:32件、4月:327件、5月:424件、6月:460件

 仮に新型コロナウイルスに感染した場合、入院費や検査費の自己負担はありません。これは、新型コロナウイルス感染症が、感染症法で「2類相当」に指定されているからです。国民の安全のために、国や自治体が感染者に対して入院を半ば強制する代わりに、それに係る費用も国や自治体が負担すると理解していいと思います。しかし、ホテル療養での実費や医療機関での初診料等については自己負担がありますので、感染してもまったく自己負担がないというわけではありません。私は委員会での審議を通じて、市に対して、様々なケースを事例に挙げて、どのような費用が自己負担となるのかについても広報するよう求めています。
 
 そして、現在、無症状者に対する入院勧告が医療機関や保健所の負担となっていることから、新型コロナウイルスを「2類相当」の指定から外すことが検討され、まもなく結論が出されると思われます。インフルエンザと同レベルの5類に引き下げられるようなことがあれば、感染状況の把握と公表は続くこととなりますが、現在のような積極的疫学調査がされず、入院を勧告されることもなくなり、感染拡大を抑えることは今以上に困難になるはずです。また、呼吸困難等入院が必要な症状となって入院した場合の入院費や検査費に関しても、多額の自己負担が発生することになります。上記の公費負担額が自己負担になると理解しておいていいと思います。しかし、「国や自治体の負担」も、当然のことながら降って湧いたお金ではなく国民の税金です。借金をしたとしても、その返済資金は税金であり、すぐに払うか後年度に負担を残すかの違いで、国民の負担となります。
 
 つまり、費用負担も感染拡大防止も、国民一人一人の自己責任に方向転換するのか、社会全体での対応を続けるのかの選択ということになります。私は、ワクチンも開発されておらず、有効な治療法もはっきりせず、致死率も後遺症もはっきりしない中では、感染拡大を今以上にコントロールしづらくなるのであれば、2類相当の指定を解除するのは時期尚早と考えています。

緊急雇用対策(新規)

市の説明の抜粋
 新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、企業から離職を余儀なくされる等、雇用環境への悪影響が生じていることを受け、失業されている方等を対象に会計年度任用職員として任用します。この対策に必要となる事業費は令和2年度予算を増額補正して対応します。
【補正予算額】
 4229万8千円(財源:全額一般財源)
(内訳)
・報 酬:2800万円(140万円×20人)
・職員手当等(期末手当):595万3千円(29万7616円×20人)
・旅費:280万円(14万円×20人)
・共済費:554万5千円(27万7,205円×20人)
【事業内容】
(1)任用予定者数
 会計年度任用職員(パートタイムA) 20名程度
(2)対象者
 新型コロナウイルス感染症の影響により、離職を余儀なくされた人で、市内在住者又は市内の企業等で働いていた人
(3)任用期間
 任用開始日(令和2年9月1日以降)から令和3年3月31日まで
(4)業務内容等
 一般事務(配属先での電話・来客・パソコン作業等)
 ※新型コロナウイルス感染症対策に係る業務を担当する部署を中心に配置

 20名の半年分の人件費となります。あくまでも予算ですので、実際に採用される人数や支給される額は異なります。

コロナ離職者就労支援事業 (新規)

 新型コロナウイルスの影響が続く中で、人手が必要な仕事も増えていると見込まれています。

市の説明の抜粋
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う休業要請等により、離職を余儀なくされた市民や離職の恐れのある市民の就職活動が円滑に進むよう、求職者に寄り添った支援を行います。
 受託事業者は、求職者に対する相談窓口を設置し、求職者の適性把握、教育訓練等を実施するとともに、求職者が就職を希望する業種の事業所に対して、就業実習可能な事業所を開拓します。
 受託事業者は、就業実習の受け入れ可能な事業所に対し、当該求職者を1~2週間程度、受託事業者が雇用したうえで事業所に派遣して、有給の就業実習を実施します。就業実習終了後、求職者と事業所の双方が合意した場合、求職者は事業所の従業員として正式採用されます。
 なお、就業実習の実施にあたり、受託事業者はハローワークや、西宮若者サポートステーション、西宮市中高年しごと相談室等の就労支援機関とも連携し、来所した求職者を適切な窓口に紹介するとともに、合同就職説明会・面接会を案内するなど求職者の適性や希望に応じた就労支援を行います。
 これらの取り組みにより、求職者の適性や希望に応じた伴走型の就労支援を行うものです。
【補正予算額】
事業費:4000万円(財源:全額一般財源)
【事業内容】
受託事業者は、求職者の就職活動に必要な支援を行います。
<就業実習を活用した就労支援の流れ>
①適性把握:受託事業者は、求職者の状況や適性を把握し、就職に至るまでの必要な支援等を計画します。

②教育訓練:必要に応じ、求職者に基礎的な教育訓練を実施します。

③求人開拓:求職者が希望する業種の事業所を訪問し、就業実習可能な事業所を開拓します。

④就業実習:希望者には、適性等に応じた事業所を紹介し、一定期間、有給の就業実習を実施します。

⑤就職決定:一定期間経過後、求職者と事業所の双方の合意により正式に事業所に就職します。
※教育訓練や就業実習を希望しない求職者には、適性把握後、事業所等を紹介します。
【実施方法】
プロポーザル方式にて選定した受託事業者に委託して実施。

↑特徴は、概ね2週間程度の就業実習期間が設けられていることだと説明を受けました。働く人にとっても、企業にとっても、その職業に対する適性があるのか確認してから就職を決めることができます。
 プロポーザルにより、受託事業者は株式会社パソナに決定しています。就労支援を受けた人数に関わらず固定費は約3200万円、残りの800万円が実績に応じて支払われることを見込んだ予算との説明を受けています。この支援の成果がどの程度表れるのか注視し、有効であればコロナ禍に限らず続ける必要があると感じています。

住居確保給付金の対象者拡大

市の説明の抜粋
 住居確保給付金とは、離職や廃業に伴い、住居を喪失またはそのおそれが高く、所得等が一定水準以下の人を対象に、就労に向けた活動を行うことなどを条件に、一定期間家賃相当額(上限有)の支給を行い、生活の土台となる住居を整えたうえで、就労に向けた支援を行う制度です。
 国が、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、住居確保給付金の支給の対象を拡大したことを受け、本市においても令和2年度予算の増額補正を行いましたが、現時点の支給実績が4月30日専決処分時点の見込みを上回っているため、この度追加での増額補正を行います。
【補正予算額】
 7340万4千円(財源:国3/4、市1/4)
 補正後の予算総額は、1億5194万4千円
【制度の概要(令和2年4月20日より)】
 最大で9ヶ月間の支給が可能であり、生活困窮者自立相談支援窓口「ソーシャルスポット西宮よりそい」(勤労会館2階)にて受付しています。
【対象者】
・離職・廃業後2年以内の者
・給与等を得る機会が当該個人の責に帰すべき理由・当該個人の都合によらないで減少し、離職や廃業と同程度の状況にある者
【支給上限額】
 単身世帯:4万2500円
 2人世帯:5万1000円
 3~5人世帯:5万5300円
 6人世帯:6万円
【支給見込額】
 現時点の実績から年間支給見込額を積算すると1億5194万4千円となり、現計予算の7854万円(月間654万5千円)から大きく不足が生じる見込みである。
R2年4月実績:5件、22万1000円
R2年5月実績:86件、357万円
R2年6月実績:293件、1270万2600円
R2年7月以降見込:各月350件、1505万円
合計 3534件、1億5194万3600円

 新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は、徐々に顕在化してきています。これから、ますます政治による判断の真価が問われることになります。引き続き、情報発信をしてまいります。

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