国民健康保険。
日本の国民皆保険制度は、
1958年に新しい国民健康保険法が制定されて実現されました。
この法律を受けて、
1961年に全国の市町村で国民健康保険制度が開始し、
国民はみな、大人になったら保険料を納め、
いざ病気になったら低額の自己負担で医療が受けられる制度が確立されました。
世界でも誇るべき制度と言われています。
現に、平均寿命は世界でもトップクラスです。
そして、制度ができて60年。
近年、少子高齢化、生産年齢人口の減少、経済低成長の影響を受け、
健康保険の維持に対する国民の負担感の増大が深刻になってきています。
そもそも、現在の医療保険制度は、保険者が多数あり、
市町村単位では把握できていないため、
市議会では、具体的な医療に関する議論がしにくい環境となっています。
国民が加入する保険制度としては、
(1)被用者保険
(2)国民健康保険
(3)後期高齢者医療制度
の種類に分けられます。
なお、生活保護を受けている人は、
(1)~(3)のいずれの保険にも入りません。
そして、さらに
(1)被用者保険制度は、さらに4つに分かれます。
①全国健康保険協会(協会けんぽ)
運営主体数:1
適用事業所数:約199万4022社
被保険者数:3807万人
②組合管掌健康保険(組合健保)
運営主体数:1399組合
適用事業所数:約10万4869社
被保険者数:2946万人
③共済組合(国、地方、私学)
運営主体数:85組合(国家公務員20、地方公務員64、私学1)
適用事業所:14,288校(私学共済)
加入者数:870万人
④船員保険
運営主体数:1
適用事業所数:5,619
加入者数:12万人
(2)国民健康保険は2つに分かれます。
①市町村国保
運営主体数:1716
加入者数:3013万人
②国保組合
運営主体数:163組合
加入者数:281万人
(3)後期高齢者医療制度
運営主体数:47(都道府県単位)
加入者数:1678万人
(4)生活保護法適用者数:215万人
となっています。
データは厚生労働省資料で、
平成28年度末時点のものです。
人数は、千人以下を四捨五入しました。
市が把握できる医療費としては、
西宮市国民健康保険に加入している約9万人と
生活保護を受けている方の分しか把握できません。
ですので、国からデータの提供を求め、
医療費の適正化と、必要な医療環境の充実について、
客観的なデータに基づいた議論をする必要があると感じています。
令和元年6月議会での医療費適正化に関する議論をご紹介します。
======ここからが、本会議場での議論の概要======
3.医療費の適正化について
■質問の背景(再掲)
表3のとおり、
患者1人当たりの医療費を見てみますと、
診察費等が軒並み増加している中で、
この柔道整復を利用した療養費が際立って減少しており、
これは、不正請求が排除された結果とは考えられず、
受診抑制の結果である可能性があります。
■質問5
国民健康保険の被保険者が減少している一方で医療費が増大しているこの現状をどのように評価し、
今後どのような医療費適正化の取り組みを実施しようとお考えなのか、お尋ね致します。
■質問5に対する回答
国民健康保険の構造上、
本市に限らず、全国的に高齢者の占める割合が多く、
被保険者が減少しても1人当たり医療費は年々増加傾向にあります。
本市では、医療費適正化の取り組みの一つとして、
早期発見・早期治療を図るため、
特定健康診査、特定保健指導や慢性腎臓病予防連携事業などを実施しております。
このほか、過度な受診や必要以上の調剤等を減らすことが
被保険者の健康を守り、医療費の適正化につながるものと考えていることから、
今年度より新たな取り組みとして、
重複受診や頻回受診の傾向にある被保険者2,000人を対象に
文書啓発を実施しております。
今後とも、国の指導に基づき、
被保険者に対し適正な受診について啓発するなど、
適切に対応してまいります。
■意見・要望
医療費の適正化は、削減が全てではないのですが、
先ほど過度の受診も抑えていかないといけないということでした。
本当に過度の受診を抑えるというのであれば、
(効果的なのは)その上の桁が違うところ
(療養の給付費等の中の診療費)ではないかと思っています。
ですので、先ほどの御答弁で、
医療費の適正化について取り組んでいくということでしたけれども、
こうした柔道整復師の療養費に係る調査のやり方も、
大きな効果が出ていると見るのであれば、
他の医療機関に対しても
検討しなければならなくなると指摘しておきます。
======ここまでが、本会議場での議論の概要======
日本国民には、保険料を支払う義務と、必要な医療を受ける権利があります。
一方で行政は、医療費の適正化という名のもとに、
受診抑制を誘導し、医療費の圧縮を呼び掛けるような政策を推進しています。
医療費のもととなる診療報酬は、
今のところ、あまり安くされることはありません。
医師が減少すれば医療が受けられなくなりますし、
医療技術の向上のためにも、
医師の収入は維持していかなければ
将来的に国民が困ることになりかねないわけです。
医療機器も技術の発展の為には費用が必要になります。
必要不可欠な公共事業とも言えると思っています。
また、ジェネリック薬品の使用を勧めて、
薬に係る保険給付が抑制されていますが、
新薬開発の方にお金が回らなくなるようでは、
医療技術の向上の観点、経済成長の観点からも、
デメリットの方が上回る可能性があります。
保険が適用される調剤に関しては、
不要な投薬、飲み残しが出るような無駄を削減しなければならないことは明白ですが。
健全な保険財政を実現するために大切なことの一つは、
国民が元気であること、できるだけ病気にならないことである、
つまり、健康増進政策が重要であると考えています。
もう一つ、
国民が負担感を抱かなくなるだけの経済成長も重要です。
しかし、
そのような悠長なことを言っていられないくらい、
少子高齢化と日本経済の後退が深刻なのだと思っています。
だから、目先の受診抑制に走らざるを得ないのだと感じています。
今回は、質問時間や準備の都合もあり、
医療費に関する入口の議論しかできませんでした。
今後、不正受給の防止対策と市民の健康づくりについて
調査を進めてまいります。