ごみ処理広域化の検討と大阪都構想のゆくえ

2020年10月17日[カテゴリ:コラム, 市役所改革, 環境衛生

 本年6月から市内で配布して参りました市政・市議会報告59号を「バックナンバー(チラシ)」に掲載しました。よろしければご覧ください。

さて、

 西宮市での新型コロナウイルス感染症の動向ですが、今週10月11日(日)~17日(土)の間に、4名(全員市内在住)の方の陽性が確認されました。そして、陽性者の確認が0人だった日が計4日ありました。先週の4日(日)~10日(土)が7名(全員市内在住)の方の陽性が確認され、陽性者が確認されなかった日は計3日でしたので、10月に入ってからも減少傾向が続いています。

 7月21日以来、陽性者が毎日確認され続けたことから、8月16日のコラム(←クリックするとコラムが開きます。)からは、西宮市での新型コロナウイルス感染状況として、日曜日から土曜日までの1週間単位で見て、陽性確認数や検査数などの動向を掲載していましたが、10月5日から西宮市のホームページでも1週間単位の動向が掲載されるようになりました。

 晩の会合は未だ自粛傾向が続いていますが、日中の活動はすっかり元に戻ったように思います。引き続き、感染に注意しながら活動を続けていきます。

ごみ処理の広域化のメリットと調整の難しさ

 現在、お隣の大阪府では、大阪都構想の賛否を問う住民投票が行われています。それに比べると、住民に及ぼす影響の次元は異なりますが、現在、西宮市では、お隣の芦屋市とのごみ処理広域化の検討が大詰めを迎えています。なお、市議会での詳細な議論については、民生常任委員会が担当しています。


御前浜公園から撮影

 これまで、市境があるということで、海を挟んで2ヶ所にゴミ処理場を建設し、あたり前のように運営されてきました。そして現在、環境のためにも、効率化のためにも、どちらか1ヶ所に集約しようということで、両方の施設の建替えの検討にあたって統合の検討が始まったのですが、この検討を始めてからはや5年も経過しようとしています。統合することで、建設費と20年間の運営費を合わせて、両市で130億円の削減(約26%の削減)ができると試算されています。しかし、西宮市と芦屋市にそれぞれ選挙で選ばれた市長がいて、それぞれに市議会があり、住民はそれぞれ自分のまちの環境を大切に考えて生活していますから、意見の集約が難しく、どちらの市域に処理場を建設するのか、費用負担割合はどうするのかなどなど、調整が難航しています。

 そして、検討の大詰めを迎えているというのは、焼却施設には耐用年数があり、通常20年と言われています。そして、途中で長寿命化工事をすれば、さらに10年から15年延命できると言われています。西部総合処理センターの焼却施設は、稼働から現在23年目を迎えています。仮に、今年度統合が決定したとしても、その後、施設計画の策定、生活環境影響調査、解体工事、建設工事などに10年近くかかると見込まれ、令和12年度途中からの稼働となります。この時点で、現在の焼却炉は稼働後33年となります。

 また、西宮市内には、建替えや災害等の非常時のことを考えて、東部総合処理センターと西部総合処理センターの2ヶ所に分散しているのですが、芦屋市の唯一の焼却施設と統合したとしても、西宮市側の西部総合処理センターの敷地に建設する案で検討が進められています。なお、ごみ処理場の建設・運営は、市域を超えて広域的に処理が行われることはよくあり、一部事務組合を設立して施設の運営をするケースもありますが、今回検討しているのは処理委託方式です。
 ちなみに、東側のお隣で、中核市である尼崎市にも2ヶ所のゴミ処理場があり、現在、そのうちの1ヶ所を再整備して、その1ヶ所にまとめるという計画が進んでいる様子ですが、尼崎市との施設統合は検討されたことはありません。

 芦屋市との広域化について10月20日に両市の検討会議が開かれ、11月2日に常任委員会を開き、報告を受ける予定です。 

自治体の合併と広域行政の推進と市の解体

 現在、住民投票が行われている都構想は、意思決定機関が統一されている政令指定都市を解体して、4つの区に分け、それぞれ中核市の権限を持った独立した基礎自治体にするということです。意思決定における自治体間の調整の困難さを経験している現在、少しフラットかつ現実的な見方が必要でないのかなと感じています。

 これまでは、市町村が合併すると役所の効率化や財政の改善が図れるなどのメリットがあると言われ、市町村合併が進められてきました。西宮市は、近隣の市と合併して政令指定都市となれば、もっと効率的ができ、かつさらに権限を持って地域課題を解消し、個性を活かしたまちづくりを進められる可能性があると思っていました。しかし、合併構想が本格的に検討されることはなく、平成20年度に西宮市は中核市になることを選択したわけですが、都構想では、大きな自治体となって政令指定都市になるメリットがないことが暗に示されています。

 合併すれば、首長の数も市議会議員の数も公務員の数も減らせると思っていたのですが、都構想は逆に、首長の数は4倍、公務員の数も増やし、議員と庁舎の数は現行から増やさず、4つの中核市レベルの自治体をつくるという構想のようです。そして、1つの区の人口は60万人から75万人となり、議員の定数は現行83名を4つに割ってそれぞれ18名~23名にするそうです。この体制で60万人の市民の声をくみ取り適切に意思決定ができるとなれば、48万都市の西宮市であれば、議員の数を現在の半分に減らしても問題ないということがいよいよ証明されることとなります。しかし、将来的にやっぱり少なすぎるという意見が過半数を超えれば、また条例を変えて議会議員の数が増えることも考えられます。そういう観点では、動向を注視しなければなりません。

 高齢化が進み、人口減少が見込まれるなか、どこの自治体も厳しい財政運営が見込まれる中、人件費の抑制とハコモノの総量抑制の取組みを進めざるを得ない自治体が増えています。西宮市はこれまでの財政改革のおかげで、箱モノを増やす傾向にあり、中核市であるお隣の尼崎市に大規模な運動施設があるからと言って、西宮市に陸上競技場と中央体育館が不要という結論にはなり得ません。県立総合体育館も西宮市にありますが、利便性や防災の観点から、現在の中央体育館の役割は果たしづらいのです。
 また、同じ医療圏内にあり中核市である尼崎市に、大規模の高度医療を提供する県立病院ができたからと言って、西宮市で予定されている県立病院と市立中央病院の統合新病院が不要という結論にはなりませんでした。


自治体の広域連携の実現がカギ

 大阪府と大阪市の二重行政の解消が目的と思っていましたが、現在の案では、各特別区の間で二重行政が発生してしまうことにもなり、将来的には、意思決定のスピードは落ちることすらあり得ます。現在は、府と市の首長が同じ政党の方が選ばれて連携が強化できていますが、仮に4つの特別区の首長のうち、どこか一つでも同じ政党の方が選ばれなかった場合、どのようなことが発生するのかも想定しておく必要があります。
 例えば、同じ中核市レベルの区の間で、隣の区に立派な公立病院があるのだから、うちの区にも作ろうという区長が選挙に当選すれば、ひょっとすると同規模の病院を、多額の税金を投じて近所に建設することがあるかもしれません。確かに住民サービスは向上するかもしれませんが、財政は悪化する可能性があります。

 また、西宮市は中核市ですが、市立中央病院と県立病院のように兵庫県との二重行政は存在してきましたし、病院を統合して新病院が県立病院になっても、これまでの二重行政の名残を断ち切れずに市も負担を続けなければなりません。他にも、西宮市内にせっかく立派な県立芸術文化センターを建設して頂いても、市立の文化施設の中心的役割を果たしているアミティホールが不要という声は小さく、アミティホールの再整備構想は示されました。

 つまり、府との二重行政の解消は限定的となり、中核市間の二重行政が新たに生まれる可能性もあるのです。

 住民ではない私は、都構想については細かいことを理解しているわけではありませんから、無責任なことを言ってはいけないとは思いますが、どう考えても行政の効率化につながるごみ処理施設の広域化の検討ですら、自治体が分かれているだけで難航してしまうという現実を経験すると、多額のコストをかけてまで自治体を分割することにメリットがあるとは思えないのです。

 この住民投票の結果は、近い将来、西宮市にも影響が及ぼす可能性がありますので、動向を注視したいと思います。

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