11月2日(月)に、民生常任委員会が開催されました。
お隣の芦屋市とのごみ処理広域化検討会議の開催結果について、市より報告がありました。
本年の5月に開かれて以来の検討会議の開催ということで、生活に不可欠な施設の再整備計画の策定に早急に取り掛からなければならないという状況下で、半年も放置するとは、本当にやる気があるのか?と疑ってしまいます。そして、統合する気がないのであれば、検討に要する職員の人件費の無駄ですから、さっさと切り上げて次の段階に入らなければなりません。自然環境問題にも、生活環境の問題にも関わる重要事項であるにもかかわらず、緊張感がなさすぎます。
この施設統合の検討は、4年前の平成28年度から始まっています。
なぜ、こんなに時間がかかってしまったのか、これまでの経緯を振り返りたいと思います。
◼平成28年11月24日
西宮市議会民生常任委員会では、「西宮市一般廃棄物処理基本計画」の見直しについて市から報告され、その中で、焼却施設と破砕選別施設(燃やさないごみと粗大ごみの処理選別施設)の再整備にあたって、芦屋市の同施設との統合を検討することが明らかにされました。今村市長の時代でした。
◼平成29年4月27日
第1回の「西宮市・芦屋市ごみ処理広域化検討会議」が開催され、検討が本格化していくわけですが、検討事項は以下のように確認されました。この時点で、平成29年11月には、単独で進めるのか、広域化するのかの方針を定めることが確認されています。
(1)基本項目(広域処理の開始時期や広域化するごみ種別、施設の設置場所や規模など)
(2)メリット及びデメリット(課題)の検討
(3)広域処理の運営方式
(4)広域処理に係る費用負担
(5)協議スケジュール
(6)その他(市民への説明・周知など)
◼平成29年11月22日
第5回西宮市・芦屋市ごみ処理広域化検討会議が開催され、中間とりまとめが発表されました。わずか半年の検討期間で多くのことが決まったものの、費用負担についてはまとまらず、両市による検討が翌年度上半期まで延期されることが確認されました。この費用負担のあり方の検討だけで、ここから3年を要することとなるのです。
第1回の検討会議で確認された検討事項の結果まとめは以下のとおりです。
(1)基本項目
a) 広域化する破砕選別施設は、主に運営面のコストが有利となる東部総合処理センターに設置する。
⇒2年後にこの結論は覆されることになります。
b)広域化する焼却施設は、運営面や建設費の点で有利となる西部総合処理センターに設置する。
c)収集業務は広域化の対象にしない。
(2)メリット及びデメリット(課題)の検討
(メリット)
・コスト面では、ライフサイクルコスト(事業費)が両市で224億6000万円削減できると試算。
・環境面では、1日あたりの温室効果ガス排出量が13.3%削減できると試算。
・売電収益が31億9000万円増加すると試算。
(デメリット)
・運搬車両の集中及び市民の利便性への影響が生じる。
⇒芦屋市に中継施設を整備し、大型車両に積み替えて運搬することで対応可能。
・分別区分を統一する。
・収集方法(もやさないごみ・ペットボトル)広域処理施設において円滑な処理が可能な状態で搬入する。
(3)広域処理の運営方式
・一部事務組合ではなく事務の委託で実施。
(4)広域処理に係る費用負担
・費用負担のあり方について今後協議が必要。
ここまでは非常に意欲的に協議されてきました。しかし。
◼平成30年4月
西宮市長が平成30年2月に突如辞任し、新市長に石井市長が就任しました。この年の10月までには結論を出さなくてはならなかったにもかかわらず、それまで検討会議が開かれることもなく、公開された場での協議がされない中、時間だけが過ぎることになります。
◼平成30年11月28日
第6回西宮市・芦屋市ごみ処理広域化検討会議が開催されました。前回の検討会議において、結論のリミットを平成30年度上半期、つまり10月までと確認していたにもかかわらず、会議の開催自体が11月末となり、しかも、過去の議論の振り返りがなされただけで、前回に確認された協議事項について結論が出た内容は一切ありませんでした。この会議で確認されたことは以下のとおりです。
(1)費用負担の割合は、均等割率について他の論点と併せて検討する。
(2)中継施設等に係る費用については、中継施設の個別の内容や必要性等について検討する。
(3)「広域処理施設設置に伴う環境負荷」に係る費用の取り扱いについて検討する。
◼平成31年2月1日
第8回西宮市・芦屋市ごみ処理広域化検討会議が開催されました。第6回からわずか1ヶ月後に開かれた第7回の検討会議では、以前に、広域化する破砕選別施設を東部総合処理センターに整備することでまとまっていた事項が、平成30年の台風被害により阪神高速湾岸線側道の通行止めの影響もあり、統合のメリットについて否定的な見解が示され、この第8回の会議で、以下の理由により、広域化の検討施設から破砕選別施設を除くことが正式に決定し、今後は、焼却施設のみの統合に向けた協議を継続することとなりました。
【燃やさないごみ、粗大ごみ、ペットボトルの処理施設は両氏とも単独で整備することにした理由】
・焼却施設との比較において、環境負荷の低減が見込めない。
・収集形態(袋とコンテナ)の違い等を解決するために中継施設に多額の費用が必要となる。
・広域処理の対象・ごみ種によっては運搬効率が悪くなる。
・検証によって明らかになった課題や中継施設の費用負担他の協議等に時間を要することになれば、広域化の前提になる施設整備計画の進行がさらに遅れ、焼却施設の稼働時期にも大きく影響する。
前市長時代の平成29年度の検討はいったい何だったのか、上のいずれも「統合をしないために作られた理屈」と言わざるを得ません。ごみ処理の広域化に対する意欲が低下し、検討の時間切れで、破砕選別施設の統合の機会を逃したと言っても過言ではありません。そして、この結論により、両市の試算に疑念を持つことになったのは確かです。
◼平成31年4月
芦屋市長が任期満了で引退され、新市長に伊藤市長が就任されました。また、西宮市議会議員選挙と芦屋市議会議員選挙もあり市議会のメンバーも大きく変わりました。
◼令和2年4月10日
1年2ヶ月ぶりに第9回西宮市・芦屋市ごみ処理広域化検討会議が開催され、ようやく、広域化する焼却施設の建設と運用における費用負担の協議が本格化しました。
平成29年の中間まとめの時点では、財政効果として事業費ベースで224億6000万円削減できると試算されていましたが、平成31年2月に破砕選別施設を統合しないことを決定したことにより、この効果額は170億円に減少してしまいました。
そして、国からの交付金と地方交付税を差し引いた「実質負担額」の効果として、両市で130億円の削減になるとの試算が出され、今度は、この130億円の財政効果の振り分け方が協議されることになりました。
当然このままでは、西宮市の効果額が少なすぎます。今後の論点として、①効果額を均衡にする方法、②効果額を活用する方法、③その他必要な事項に絞ることが確認されました。
これまでの長期にわたる検討の過程で、西宮市の西部総合処理センターを使って芦屋市のごみも処理することになるわけですから、あとは、西宮市民が受ける環境負荷と運営に関するリスクを勘案して、西宮市が納得できる費用負担の計算方法を提示し、それを芦屋市が受け入れられるかを判断してもらうしかないと私は考えています。
◼令和2年10月21日
そして、半年ぶりに第10回西宮市・芦屋市ごみ処理広域化検討会議が開催され、この検討会議での協議の結果について、11月2日の民生常任委員会で報告されました。
西宮市が示した費用負担の計算方法の一部をご紹介します。
第10回西宮市・芦屋市ごみ処理広域化検討会議より抜粋
↑NO.4-2とNO.5を抜粋しました。
第10回西宮市・芦屋市ごみ処理広域化検討会議では、最低でもNO.5に近い条件でなければ、西宮市は受け入れることができないことを芦屋市に伝えて、芦屋市は今月末に開催見込みの検討会議までに検討することに決まったとの報告でした。
なお、NO.4-2は、財政効果額が1:1(65億円ずつ)に均衡を図る試算、NO.5は、財政効果額を概ね、西宮市:芦屋市=6:4(81億円と50億円)にする試算として示されました。そして、両市の負担割合がどのように決着しても、温室効果ガスを約13%削減できるという試算に変化はありません。
そして、芦屋市は西宮市へごみを持ち込むための中継施設をつくることになっており、この整備については広域化の検討事項(事業費)には含めないことも確認されています。
NO.4-2の場合、西宮市は65億円の財政効果を生むことができますが、芦屋市の環境負荷の軽減分の負荷が増えることになります。また、広域化する施設を利用することになる市民一人あたりの負担額で視点でみると、それぞれ単独で整備した場合は、芦屋市民は西宮市民の約1.5倍の費用を負担することになりますが、広域化すると1.2倍に縮まり、芦屋市民のメリットは非常に大きくなります。また、西宮市の運営面での不測の事態によるリスクは抱えることとなります。これでは、両市の努力による広域化とは言いづらくなります。
NO.5の場合、芦屋市の財政効果額は約65億円から約50億円に減少します。そして、西宮市は芦屋市の環境負荷軽減分の負担を引き受ける代わりに、芦屋市よりも財政効果が約31億円多くなります。また、ようやくこの試算で、市民一人あたりの負担額が、それぞれ単独で整備した場合とほぼ同じ負担割合となり、市民1人あたりが受ける財政的な効果が等しくなると言えます。
芦屋市が中継施設をつくって、自分が住むまちからゴミ処理場をなくし、温室効果ガスの削減と財政負担の軽減を実現できるというこの費用負担のあり方を受け入れられるのかどうかは芦屋市の判断次第ということで、現在、持ち帰ってもらっています。
その他の試算は、第10回ごみ処理広域化検討会議資料に掲載されています。
両市で広域化して財政面と環境面でメリットを生み出す上で、広域処理施設を芦屋市域に作るのか、西宮市域に作るのかという問題が大きな問題でした。
ごみ処理施設は私たちの生活に不可欠とは言え嫌悪施設ですから、自分が住む地域にはできれば作って欲しくない施設です。それを西宮市域側に作るという前提で検討を進めることが決まったのが平成29年度のことです。そして、一部事務組合を設立せず、西宮市が処理委託を受けるという形で運営すると決定したのも平成29年度のことです。
あとは、広域処理を引き受ける西宮市が費用負担の考え方を提示して、その考え方を芦屋市が受け入れるかどうかで決めるしかない問題だったのですが、西宮市はあまりに時間をかけ過ぎました。
今回西宮市が示した費用負担の考え方を芦屋市が受け入れられないということになれば、事実上統合は不可能となり、今後は、単独整備で準備を進めていくしかなくなります。つまり、これまで試算してきた財政効果も温室効果ガスの削減効果も0にはなりますが、4年間も話し合って解決できなかったのであれば仕方がありません。それが自治体間連携の宿命です。
先日のコラム(←クリックするとコラム「ごみ処理広域化の検討と大阪都構想のゆくえ」が開きます。)に掲載した通り、現在の焼却施設は10年後にはほぼ限界を迎えます。その10年後の市民に、これ以上の故障発生のリスク、メンテナンス費用の増加リスクを押し付けるわけにはいきません。
この費用負担の考え方を両市が受入れて「統合する」という方針になった場合には、売電収益の配分や広域処理施設に故障等のトラブルがあった場合の対応など、基本的な合意をするまでに決めておかなければならないことがあります。それらをあと半年ほどの期間で決め、来年3月にパブリックコメントを実施した後に、6月には両市議会で議決をしなければ、前には進めません。
今月末開催見込みの次回の検討会議の結果を待ちたいと思います。