まず、新型コロナウイルス感染症の動向についてですが、西宮市では、先週12月6日(日)~12月12日(土)の1週間で48名の方(そのうち市外の方は2名)の感染が確認されました。その前の週11月29日(日)~12月5日(土)は67名の方(そのうち市外の方は6名)の感染が確認されましたので、3週間連続減少しています。
しかし、12日に市内私立高校の運動部でクラスターが発生したとの報告があり、その影響もあって、13日(日)は、1日で確認された感染数が最多となる25名(そのうち市外在住の方は9名)の方の感染が確認されています。引き続き、感染防止対策の徹底、感染者の早期発見、早期対応、早期治療、そして、クラスターの早期検知、早期対応が重要です。
(11月29日~12月5日)⇒(6日~12日)の年齢別の人数の変化は、10歳未満が0名⇒1名、10歳代が8名⇒6名、20歳代が13名⇒8名、30歳代が7名⇒5名、40歳代が5名⇒9名、50歳代が15名⇒7名、60歳代が10名⇒6名、70歳代が4名⇒3名、80歳代が4名⇒2名、90歳代が1名⇒1名となり、20歳代と50歳代の減少が大きくなっています。今後の感染拡大の抑制に向けた啓発のためには、気温の低下やGoToキャンペーンの影響といった推察ではなく、11月に急増した要因、11月下旬から12月上旬に減少した主な要因について、積極的疫学調査等の数値に基づいた分析の公表が急がれます。
さて、先日11日(金)に開催された民生常任委員会の結果として、今回は、大学生が提出した請願の審査について掲載します。
「新型コロナ感染症による影響を受けた市内の大学生への生活支援金給付及び、西宮市による学費を満額徴収している大学への授業改善の申し入れの請願」を、先日のコラムに掲載した理由により審査しました。大学生への支援については、マスコミも関心を示しており、当日は、毎日放送と朝日放送が取材のためのカメラ撮影があり、いつもと違う雰囲気でした。
請願事項は2点、
1. 市内在住の大学生へのコロナ感染症対策としての学費免除や減免などを実施していない大学に通う学生へ生活支援金を給付すること。
2.対面授業やオンライン授業などの工夫をせず学費を満額徴収している市内大学への授業改善の申し入れを行うこと。
でした。
残念ながら、常任委員会の委員からの質問に対する請願紹介議員の答弁はあいまいで、請願者(意見表明者である大学生)からの補足説明も感情論が多く、市民の血税である市税投入の是非を判断するだけの情報は得られませんでした。その情報を集めようとする意欲も示されませんでした。
せめて、自分が通っている大学の学生のうち、どのくらいの割合の学生が通常より生活に困っているのか、アルバイトの日数が減らされたり、そもそも仕事がなくなったりした学生が市内にどれくらいいるのか数値を伴った具体的な説明が欲しかったのですが、支援の対象者を決める上で必要な情報を得ることはできませんでした。
また、今期、通常受けるべき授業が何時間あって、そのうち、どれだけの授業が受けられなかったのかも具体的な数値は示されず、この請願は賛成者少数により不採択となりました。
しかし、市ができることはまだまだあると思っています。西宮市では「カレッジタウン西宮構想」を掲げて西宮市大学交流センターを整備しており、以前に西宮市の決算審査をした際に、その役割について指摘したこともありました。こちらのチラシ(←クリックするとPDFファイルが開きます)もご参照ください。
そして、この請願の審査を通じて、西宮市は、大学交流センター及び大学交流協議会を設置しているにもかかわらず、現在の状況を把握できていないことも明らかになりました。
生活支援金の支給については、世帯単位で設計されている他の福祉施策との整合を図る必要があり、また収入の確認方法やそもそも市内在住の大学生の人数がはっきりしないなど非常にハードルが高く、その実現可能性を調査する必要があります。ですので、今すぐ可能な対応としては、現在実施されている公立小中学校での学習支援員としてお手伝いいただく(有償)とか、子供食堂の運営(無料もしくは低料金で食事を提供)のお手伝いを頂くなど、大学生の力を求めている仕事は民間のアルバイト以外にもありますので、それらのマッチングを西宮市大学交流センターが行うことも可能ではないかと考えています。
また、大学に対する授業改善の申し入れについては、市にはその権限はありません。しかし、このような時こそ、西宮市大学交流協議会を活用して大学からのニーズを迅速にくみ取り、感染防止をしながら授業ができる環境を整備するために必要な支援を検討し、また必要であれば市を通じて国に要望書や意見書を提出するなど、市内の大学に通う大学生が適切に授業が受けられるよう支援することが考えられます。
市民から提出される請願について、今回の請願事項は不採択となりましたが、常に内容を真摯に受け止めてこれからも考えてまいります。
また、7年前の平成25年の話ですが、最後に大学交流センターの役割について議論した際の質疑の概要を掲載しておきます。長くなっていますがよろしければ最後までご覧ください。
=====市民文教分科会での議論の概要=====
平成25年9月 決算特別委員会市民文教分科会質疑より。
〇大学交流センターについて
■質問の背景
大学交流センターについては、平成24年度決算で使用料504万3,000円が収入されている一方で、歳出で説明があったとおり、約15億円で床を購入し(平成13年にアクタ西宮東館6階にオープン)、現在、年間約8,000万円を支出してその借金の返還に充てています。それに対して使用料が約500万円ということですが、その費用対効果をどう検証しているのかというところに疑問をもっています。
いろいろと事業をされていますので、一つ一つの効果をこの場で確認していく時間はありませんので、幾つか挙げてみたいと思います。
■質問1
まず共通単位受講者数の目標が年間700人となっており、544人の受講者数が報告されていますが、共通単位受講者数の目標の人数というのは、対象となっている学生さんの大体何割ぐらいに当たるのかというところをお聞かせいただきたいと思います。
■質問2
学生ボランティアの派遣という事業をこの大学交流センターで行っているようですが、活動時間が前年比で74%減となっているのですが、その原因と、改善するために今後どうしていこうとお考えなのか伺います。
■質問3
インターンシップ(学生を対象とした職業体験)の事業をされているのですが、インターンシップをした方のうち、西宮市の採用試験を受験された方がいらっしゃるのかどうかを教えていただきたいと思います。
■質問に対する市の見解
大学交流センターの費用対効果の件ですが、もともと大学交流センターというのは、市内の短期大学、大学と西宮市や商工会議所等が関連して、交流拠点を目的として設立された施設でして、貸し館業務が主な役割とは考えていません。もちろん全ての区分がこの本来の目的の中で使用されているわけではございませんので、空いている区分につきましては市民の皆様方に貸し館として使用していただく必要があると思い、使用料を頂戴してお貸ししておるわけです。次の質問等にも関係しますが、大学交流センターの主たる目的である共通単位講座であるとか、市民講座等々の事業につきましては、使用料を取っていません。減免の対象ですので、費用対効果、お金につきましては、確かに委員がおっしゃるとおり、15億円という中で年間収入が500万という部分については、少し費用対効果という部分には疑問があるかもわかりませんけれども、本来目的として使用されているところが応分ではないかとも考えています。
⇒(田中の見解)質問の主旨をはき違えており、質問していないことに回答しています。そして、減免対象となっている事業こそが本来目的の事業であると考えているのであれば、せめて、その減免で使用された時間数や減免された費用を回答するべきです。
■質問1に対する市の回答
共通単位講座が実績値として544名ということで、何割の学生かとの御質問ですが、対象者としましては市内9大学に通われている学生さん全てが対象となっていますので、その中の544名という形になりますので非常に少ない数(対象となる学生数は回答なし)でありますが、市内には関西学院大学や武庫川女子大学等の多くの学生数を有する大学から、比較的小規模な短期大学まで多様な大学があります。
その中で、せっかく西宮という狭い地域の中で9つもの大学があるわけですから、相互の学生が拠点施設である大学交流センターで単位交換(単位交換制度について少し説明させていただきますと、この共通単位講座という講座を受けていただくことによって、それぞれの大学で単位として認定をするという、例えば関学の学生がこの共通単位講座を受講して単位を取ると、自校での単位として認められるという制度でございます。)、そういう形で関学の学生さんと甲子園短期大学の学生さんが同じところで、例えば大手前大学の教授の先生の講座を受けられるというような形の相互交流と学びの発見の場という形で実施しており、人数についてはまだ544名とそれほど多くないかも分かりませんが、平成24年度からは、新たにこのセンター以外でも各学校のほうで実施できるようなホームキャンパスという制度のもとでも共通単位講座を実施していますので、夙川短期大学が市外移転しましたが、今後拡充に努めていきたいと思っています。
■質問2に対する市の回答
ボランティア派遣の数の減の件ですが、大学交流協議会で実施しているボランティア交流事業につきましては、市内の各団体や地域の方々から、大学生のボランティア派遣について御依頼を受けて、それをマッチングして大学生に行っていただくという事業ですが、ボランティア数につきましては大学交流センターでお受けしているもののほか、各大学でもそういう掲示等でボランティアの派遣等をされているかと思います。ですので、正確な数がなかなかつかみにくい数字ではあるのですが、大学交流センターでは広く市内各大学のほうに情報を伝えたいと思っていますので、大学交流センターのホームページあるいは大学交流センターでの掲示等で広報していますが、これについて議題あるいはマッチングについて今後も進めていきたいと思っています。
■質問3に対する市の回答
インターンシップ事業の件ですが、この事業につきましては大学・生涯学習推進課と人事課、研修厚生課、3課の共催事業という形で実施していまして、今年度につきましても12名の学生を受け入れました。
過去の実績は、詳しい数字はつかんでいませんが、このインターンシップ研修を受けて、市役所に実際に入庁した者も数名、実はうちの課(大学・生涯学習推進課)にも1人いるのですが、このインターンシップを機会に西宮市を受験し、実際に入庁している者も数名いると聞いています。
■市の回答を受けて田中の意見
大学交流センターについてですが、私の発言に語弊があったかもしれません。現在、約8,000万円の償還(アクタ西宮東館6階を約15億の借金をして取得した借金の返済)をして、それが使用料500万しか出てないのは費用対効果が悪いということではなくて、御答弁にもあったとおり、貸し館としてこのセンターあるわけではないので、貸し館収入をもって費用対効果を図るのは私も違うと思っています。
ただ、お答えにあったとおり、ちゃんとした交流の拠点となっているかというところ、15億円も投じてこの拠点をつくった価値が出せてますかというところが質問の意図でした。例えば、目標すらまだ全然達成できていませんが、共通単位受講者数を700人にするためにこの15億円のハコは本当に必要だったのかというところです。
それと、ボランティアの派遣も同じです。改善するために何を考えているかということでお答えいただいたのが、さらにマッチングを進めたいとのことです。一つ課題として私が感じることは、果たして現在9大学に通っている人でこの大学交流センターのことを知ってる人どれだけいるのか、はかったことがあるのかということです。市はそういう努力をしたことがあるのかと、15億円の投資に対して効果を出そうとしてるのかというところが、この質問で私が伺いたかったところです。
インターンシップは市にとってメリットがあったのかどうか、このインターンシップで西宮市のことを知って、西宮市役所で仕事をしたいと思えるという事業も一つの魅力かもしれません、
■再質問
つまりこの大学交流センターでやろうとしていることの魅力をもっと出していくという努力と、それを大学生たちに伝えていこうという努力が見られないのです。そして、経費については償還金だけではなくて、大学交流センター管理運営経費を年間約5,000万円(償還金を合わせると約1億3000万円)投じています。それだけの効果をこの大学交流センターが出せているのかという観点で、もう一度お答えをいただきたいと思います。
■再質問に対する市の回答
大学交流センターの認知の問題ですが、正直なところ正式な数字を持っているわけではないのですが、事業の中の大きな柱の一つである共通単位講座事業につきまして、広く大学生にも知っていただこうということで、大学の御事情もあって全ての大学に行けているわけではないのですが、春学期と秋学期というふうに2期も設けていますが、ちょうど今やっている最中なのですが、各大学に出向き、大学によってカリキュラムの発表であるとか、例えば春先だったら4月の何日には学生さんたちがたくさん来るというような日を大学にお聞きして、その日に合わせて大学交流協議会と職員が手分けしまして、共通単位講座のビラを各大学で配布しに行っています。
一応、共通単位講座のビラという形にはなっているのですが、その中に大学交流センターのことも記述していますので、大学交流センターを知っていただく、あるいは共通単位講座に受講していただく宣伝効果として、単にインターネット等で見る人しか見ないというような状況ではよくないだろうということで、各大学のほうへ出向いてそういう啓発活動は行っていますが、まだ十分ではないかもわかりません。
あと、年間5,000万円等々を使って大学交流センターを運営している意味という部分ですが、大学交流センターには大学間の交流、大学と市民との交流というような二つの交流の目的がございます。その中で、共通単位講座が一つの柱、もう一つの柱が市民対象講座ということで、市民の方々が大学の授業に直接触れていただくという部分で交流も考えています。共通単位講座のほうについても、市民聴講というような形で、実際学生と触れ合って講座を聞いていただくような取り組みもしています。受講人数や認知など、まだ課題は確かに多いのですが、今後、西宮北口という好立地にある施設ですので、認知を深めて交流の拠点となるよう努力していきたいと思っています。
■田中の意見
御答弁を頂きまして感じるのが、大学交流センターの魅力が大学生に伝わってないということです。「市に大学が9つもあるので、何かやりたいよね」という感じでできているとしか感じ取れません。
大学のニーズ、少子化の中で大学はよりたくさんの学生さんに来てもらいたいと必死です。そして、魅力を出そうと思って大学さんはいろんな特徴的な取り組みをしながら学生さんの確保といったら言葉が悪いですが、そういう努力をされている、そうした大学のニーズがあるはずです。そして、当然学生さんのニーズもあります。
その大学や学生さんのニーズを酌み取らずに、市は市の都合で事業を実施していると、今のような結果しか出ないのかなと思います。例えば共通単位講座の700人という目標も、これ自身も低いです。9大学で何万人もいるうちの700人というとものすごく少ないです。それもまだ達成できていないというような状況は、明らかにニーズと市がやってることにミスマッチがあると考えるべきです。
そのことを認識して、この大学交流事業の魅力をもっと高めるための検討を協議会さんと一緒になって、真剣に議論して形にしていかないと年間8,000万円の償還金が垂れ流しとなってしまいます。そこは厳しく、そういった意味での費用対効果を求めていただきたい、今後の努力をお願いしたいと思います。
この大学交流事業の魅力の向上は、大学にとっても魅力にならないといけません。例えば、「こんな魅力的なことを西宮市ではやっているので西宮市の大学に来てくださいよ」ということを大学が言えるぐらいでないとだめです。うちに来てくれたら、他の大学とこんな交流もできているといったことがアピールされないといけないと思うのですが、各大学さんがそんなアピールをしているところを見たことないです。自分の大学がこんなことをやっていますみたいなことはホームページに載せているとは思うのですが、西宮市には大学交流センターでこんなことやってもらってますというのを大々的に出しているかというと見たことないです。そうしてもらえるような取り組みでないと、この価値が上がらないと思いますので、大学さんのニーズをまず酌み取って、そうした観点でもう一度事業自体を見直すべきと意見として申し上げたいと思います。
====ここまでが質疑の概要====
恐らくこの時の議論を市の担当課は引き継がれていなかった結果、今回のような請願が出てきてしまったのだと思います。非常に残念に思います。まさに、コロナ禍の今こそ、大学交流センター、そして、大学交流協議会の存在意義が問われることになると思っています。今後も、動向を見ていきたいと思います。