感染症対応とお役所仕事のツケ

2021年5月15日[カテゴリ:コラム

感染症対応

 今月末まで緊急事態宣言が延長されることになりました。

 やっぱり。。。
 
 と感じた方が多かったのではないでしょうか。期間の問題よりも、今一番疑問なのは、「緊急事態宣言って何なん?」ということだと思います。科学的根拠どころか、都道府県は感染状況の事実関係もはっきりさせないまま、ただ飲食店を中心に休業を要請し続けるだけの対応に、不信感が募る一方です。

 今年に入ってから、PCR検査による陽性判定の妥当性、科学的根拠を疑うご指摘を市民より頂くようになり、書籍など資料にも目を通していますが、今回もPCR検査陽性=新型コロナウイルス感染ということと、PCR検査陽性者の隔離政策を続けていくのであればという前提で、考えたことを掲載します。

 西宮市では、今週5月9日(日)~15日(土)の1週間で215名(市外在住の方は11名)の新規陽性者が発表され、先週5月2日(日)~8日(土)の1週間324名(市外在住の方は14名)よりも大きく減少しました。
 さらにその前の週4月26日(日)~5月1日(土)が335名(市外在住の方は24名)でしたので、ゴールデンウィーク以降に減少傾向に入っているわけですが、ゴールデンウィークの真っただ中の2日(日)~8日(土)の1週間の陽性率が24.3%となり、この率の上昇傾向は3月から2ヶ月以上もの間ずっと続いています。
 
 ゴールデンウィークは、大半の方が仕事を休み、緊急事態宣言により行楽地が閉ざされるとともに雨天が多かったことから、接触機会が減少し、その1週間後に新規陽性者が減少した可能性は大いに考えられます。

 そのような中、昨日、PCR検査の課題に関する指摘を市民の方より頂きました。
 
 まず現在も、基本的には、発症してからか、濃厚接触者に特定されてからでなければ、自己負担なしのPCR検査を受けることができません。

 厚生労働省が作ったアプリCOCOAについては、不具合を長期間放置していたことが報道されて以来、すっかり信用を無くして触れられなくなってしまいました。しかし、今でもCOCOAで陽性者との接触が判明した方は、PCR検査を受けることができるのですが、西宮市に確認したところ、週に2回、決められた曜日しか受け付けていないとのことでした。つまり、COCOAで陽性者との接触の可能性が通知されだけでは、発熱等発症していない限り検査を受けられないまま過ごすことになるそうです。そしてその間、自主的隔離して頂かない限り、他の方に感染させてしまう可能性があるということを確認しました。

発症前の2日前にはもう他の人に感染させてしまう可能性が高いと言われているにもかかわらずです。

 また、例えば、仕事で頻繁に接触していた方が他市で陽性であることが判明して、このCOCOAによらずに陽性者の発症前の2日間に接触していたことが分かった場合、その陽性者が住む自治体を所管する保健所によって積極的疫学調査が実施されて濃厚接触者に特定されない限り、もしくは、何らかの症状を発症しない限り、検査を受けさせてもらえないのです。

 ただでさえ、積極的疫学調査の手が回っていないと言われる中で、感染力が高いと言われる変異株が流行していると言われているのに、検査を受けられる基準を変えようともせず、陽性である可能性が普通よりも高い人ですら、検査を受けさせないという仕事を続けているのです。
 市民からのご指摘は、「役所仕事」も甚だしい、というご指摘でした。

西宮市は「本当に市民の命を守る気はあるのか?」と。

 国民に対して状況を考えて行動するよう求めておきながら、役所は状況の変化を全く考えず、杓子定規の対応を続けているようです。
 
感染症がまん延してから1年以上が経過して、自治体の担当者も疲弊していることはもう重々承知しているつもりです。しかし、知事の要請により緊急事態宣言が発出されたわけですから、そうした細かいところに一層気を配ってしっかりと対応していくのが、緊急事態宣言対象自治体の果たすべき役割ではないのかと感じるのです。 

 この陽性者と接触した方がもしも感染していて、発症するまで5日~6日もあると言われる中で、さらにその間に他の方との接触を続けたとしたら、さらに犠牲者が増えることになりかねませんし、ご家族の方も不安な日々を数日間も続けなければならなくなります。これでは、感染者や重症者を抑制できなくなるのは当たり前ですし、知事による国民に対する呼びかけも虚しいだけです。
 
 ゴールデンウィークが明け、今週から再び仕事が動き出し、PCR検査による陽性者の隔離体制も変えず、まん延防止措置の期間に効果が上がらなかった対策を続けるだけでは、再び陽性者数が増えることは覚悟しておかないといけないと感じました。
 
 一介の市会議員に届く市民からの少ない情報で感じたことですが、きめ細かな対応が求められる自治体には、私たちとは比べ物にならないくらいの情報が届き、3000人を超える職員が働いているわけですから、もっと状況を客観的に分析して迅速に手を打って頂けるように、そして、説明ができるようになってもらいたいものです。

 このような状態は西宮市だけではなく、感染が拡大している地域は同じ状況なのかもしれません。以前にも書きました通り、いよいよ根本的な対応の見直しが迫られていると感じます。もちろん、8割の接触削減という持続不可能なことではなく、もっと根本的なことです。

ワクチン接種の対応

 西宮市も例外なく、ワクチン接種の予約にあたって混乱をきたしてしまいました。後になってこのようなことを書いても仕方のないことですが、混乱を避けるためにもっと考えてできることはあったと感じています。
 事前に議会に対しても準備状況や課題をもっと詳細を教えてくれていれば、提案もできたのですが。。。

 まず、今からでもできることとして考えられることは、
○個別接種(各医療機関)の予約状況を速やかに公表すること。
 ⇒ワクチンの発注は自治体にしますから、日ごとの予約数を公表することぐらいは十分に可能と思われますが、まだ、どうするのか不明です。
○集団接種会場の枠を増やしておくこと。
 ⇒すでに6月中に2か所(ヒューイット甲子園、浜甲子園体育館)増設されることが決まっています。
○コールセンターは予約のための番号と問い合わせのための番号を分けて増設すること。
○各接種会場の予約可能日や予約状況を随時公表していくこと。
が挙げられます。

 振り返りますと、
 西宮市での4月はワクチンの供給量は975人分と非常に少なかったことから、高齢者施設の入所者に限定しました。
 そして、5月の供給量も3月末時点では3万5100人分と、65歳以上の高齢者の30%分程度しかないことは分かっていたことですから対象者を絞るべきでした。
 
 住民基本台帳の情報によりますと、80歳以上の方が約3万7000人ということですので、まずは80歳以上の方に接種券を発送することが考えられました。ただし、予約や接種開始の時期は、国からの情報が出たタイミングを考慮すると今回よりも前倒しするのは難しかったと思います。

 そして、問い合わせが殺到することを想定して、医療機関が約200ヶ所ですから各医療機関は1回線と計算し、コールセンターの回線は30回線確保したとのことでしたので、80歳以上の全ての人が電話をしたと仮定すると、1日1回線で平均160件をさばかないといけない計算になります。実際には、医療機関に出向いて予約する方もいらっしゃるでしょうから、電話の件数は減っていたかもしれません。
 すると、9時~17時半の8時間半休憩もなくフル稼働させても最大1時間に18件、1件あたり約3分で予約作業をこなさなくてはならない計算になります。医療機関は診療をしながらですので、さすがにそれは無理だと推測されます。そこで、2日間かけたとしてもようやく6分、3日間でようやく10分近く時間をかけられることになります。

 ここで、大きく違うのは、3日待てば、接種券が送られてきた80歳以上の方で希望する方は全て予約できたということです。たとえ3日間でも電話をかけ続けた甲斐があったと思えるわけです。

 今回は、仮に全ての方が接種を希望したとすると、3倍の人数が一斉に電話をすることになりますから、1件の電話に10分かけていたのであれば、10日近く電話がかかりづらい状況になることは明白だったのです。
 しかも、1週間もしてから電話がつながった時には予約はいっぱいと言われた時のストレスは容易に想像がつきます。

 また年齢別に分けた場合の話に戻りますが、4月になってさらに国から通知があり、5月の供給量が5万2650人分、高齢者の44%分まで増えることが判明していました。そこで、次は75歳以上80歳未満の方が約2万2000人ですので、7000人分が不足しますが、75歳以上の方に対象を広げて、80歳以上の方の予約が落ち着くであろう5月15日頃に接種券を郵送すれば、郵送環境によっては不公平が生じますが、予約のタイミングを2段階に分けることができ、電話がつながらない混乱を減らすことはできました。
 
 さらに結果論ですが、4月末時点で6月6日までに西宮市に供給されるワクチンの量は約6万3000人分、65歳以上の53%が確保されることが判明していますので、75歳以上の方には十分に接種できるだけの供給量は確保されていたわけで、75歳以上で希望するすべての方の予約を確定することも不可能ではなかったはずです。

 そもそも、5月17日から6月6日までの3週間でこれだけのワクチン接種を終わらそうとすると、約12万5000回接種しなくてはなりません。医療機関で毎日接種してもらって、1日約6000回、1ヶ所1日平均30回も接種して頂かなくてはならない計算になります。通常の診療をしながら、しかも接種者の副反応の対応のための待機時間やので感染対策、医師の体調も考慮すると、200ヶ所の医療機関とわずかな集団接種会場だけでは絶対に無理なのは明白です。3週間どころか、その3倍近くの時間がかかる可能性は十分あります。

 6万3000人分の対応だけでもこうした計算ができます。さらに約5万7000人の方がいらっしゃるわけですから、それを7月中というのは。。。
 
 いずれにしても、5月15日時点では、残りの47%の方の供給量は決まっていませんので、お待ちいただくことにはなりました。上記のやり方では、65歳から74歳までの方には不満を抱かれるかもしれませんが、どなたかが待たなければならない中ではご理解を頂くほかないわけです。現在は、電話がかからないというストレスと、予約ができなかったというダブルのストレスにさらされてしまっています。

 すでに接種券を65歳以上の方全てに送った今となっては、年齢別に分けることはもう困難です。
 今回予約が取れなかった方は、次はいつまで待って予約をすればいいのか、どの会場なら予約が取れるのか、全く分からない状況に陥ってしまっています。
 医療機関によって対応が異なり、自分のところの患者さんしか接種しない医療機関が多いとも伺っています。

 このような事態になった以上、各医療機関にはお手間かけることになりますが、さらにご協力いただいて、現在の予約済数や予約の可否、予約可能な時期等の情報を開示して頂かなくてはなりません。
 そして、今回予約を取れなかった高齢者にとっては、これから予約を取れるまで毎日、感染と接種予約に気を取られることになるわけですから、せめて、次の市政ニュースでは、各医療機関のもっと詳しい情報、特に予約枠や時期などの情報を掲載したものを差し込むべきです。

 また、大量のキャンセルが出た場合にワクチンを無駄にしない対応もはっきりしていないので、どうするのか市民に対して示してもらいたいと思います。
 
 今の体制であれば、65歳以上の方がぼほ全員接種を希望すると、9月くらいまでかかる可能性もあります。それをどこまで縮めることができるか考えなければならないわけですが、夏休みの時期にまで伸びるようであれば、エアコンを整備した中学校の体育館や市立体育館を活用するなど集団接種の会場を大幅に増やすことで高齢者の利便性を上げ、せめて予約だけでも早く終わらせて安心して頂く方法を考えるしかありません。

 国もワクチン供給量の通知が遅すぎますが、今回の騒動は、執行機関としての自治体のシミュレーションが甘すぎたと言わざるを得ません。

 今回の騒動は、西宮市だけではないかもしれませんが、お役所仕事体質を放置し続けた市役所のツケを市民が払うかたちとなったと言っていいと考えています。

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