新型コロナウイルスワクチンについて。

2021年5月18日[カテゴリ:コラム

 早くも先日の日曜日に梅雨に入りました。観測史上最も早く、過去の最速を6日更新したそうです。平年よりも3週間も早かったそうです。

 さて、今回のコラムも新型コロナウイルスワクチンに関する話題となります。
 以前のコラムで、ワクチンの接種については求める効果とリスクについてよく考える必要があると掲載しましたが、年齢や個人が置かれた環境等によって、メリットとリスクの判断が大きく変わると考えています。特に感染症対策として制限を余儀なくされている方々にとっては、ワクチンが普及することはメリットでしかないと考えられます。
 しかし、今回のコラムでは、あえて主に厚生労働省が発表している情報を知った上で国民は接種を判断した方がよいと考え、掲載することにしました。

ワクチン接種は義務ではない

 日本では、厚生労働省が承認した医薬品は安全であるという意識があり、医療機関で処方される医薬品に対して警戒した経験は多くはありません。
 これまで国内で多くの薬害を経験し、厚生労働省での医療における安全に関する規制が強化されていった歴史があります。厚生労働省の敷地内には「誓いの碑」が建立されていることも知りました。
 その結果、薬害に対する教訓は残っているものの、今回のワクチンに関しては、緊急とは言え、世界中で接種されているのだから「おそらく安全なのだろう」という判断のもと、薬害を警戒する情報は少数となっています。
 

厚生労働省ホームページより抜粋
◼接種を受ける際の同意
 新型コロナワクチンの接種は、国民の皆さまに受けていただくようお勧めしていますが、接種を受けることは強制ではありません。しっかり情報提供を行ったうえで、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます。
 予防接種を受ける方には、予防接種による感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について理解した上で、自らの意志で接種を受けていただいています。受ける方の同意なく、接種が行われることはありません。
 職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします。

 ↑厚生労働省のホームページにはこのような記載があるのですが、これを目にする高齢者は非常に少ないのではないかと思っています。また、少なくない一部の方々が「集団免疫を獲得するために接種をするように!」と、誤解を生むような呼び掛けを公共の電波を使ってしているのを耳にしますが、現時点では、本当に集団免疫が獲得できるのかははっきりしていませんし、ワクチン接種の本来の目的ではありませんので誤解のないようにしないといけません。

 厚生労働省のホームページQ&Aでも(令和3年5月17日現在)、「新型コロナワクチンによって、集団免疫の効果があるかどうかは分かっておらず、分かるまでには、時間を要すると考えられています。」と掲載されています。

 誤った情報がテレビで流布される恐れもありますので、住民に身近であるべき自治体として、高齢者の皆様に対して、市政ニュースなど紙媒体を使って適切に効果とリスクについて情報を提供していく必要があると考えています。

 今回のワクチンについては、副反応に関する情報が少しずつ出てくるようになりましたが、中長期的な人体への影響や効果の持続期間はまだ分かっていません。

 分かっていることは、他国の約36500人を対象に実験した結果、接種していない方々よりもワクチンを接種した方のほうが、発症した人数・・が162名⇒9名に、95%減少したという実験結果が出たことです。

 この効果は魅力的ですが、さらに残り5%の発症した方(8名)が、重症化する確率は分かっていないようです。

メッセンジャーRNAワクチン

 現在接種が進められているファイザー社製のワクチンは、メッセンジャーRNA(以後mRNA)ワクチンと呼ばれ、種類としては、これまでの生ワクチンや不活化ワクチンと異なり、「核酸ワクチン」、「遺伝子ワクチン」とも呼ばれています。 

厚生労働省ホームページより抜粋
◼特徴(ファイザー社の新型コロナワクチンについて)
 本剤はメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンです。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)の設計図となるmRNAを脂質の膜に包んだ製剤になります。
 本剤を接種し、mRNAがヒトの細胞内に取り込まれると、このmRNAを基に細胞内でウイルスのスパイクタンパク質が産生され、スパイクタンパク質に対する中和抗体産生及び細胞性免疫応答が誘導されることで、SARS-CoV-2による感染症の予防ができると考えられています。

 RNA(リボ核酸)とは、遺伝子であるDNAと同じく細胞内ある核酸です。中学生か高校生の時に習いましたが、細胞のところだったのか、遺伝のところだったのか記憶が定かではありません。mRNAというのは、タンパク質をつくるために、DNAの遺伝情報を伝える役割を果たすそうです。ここまで詳しいことは習った記憶はありません。

 今回のワクチンはウイルスを弱毒化したものを体内に入れるのではなく、新型コロナウイルスの遺伝子を利用した製剤とということです。
 
 このmRNAを利用したワクチンが実用化されるのは今回が初めてということは知られているのですが、日本でも法律に基づいて特例承認され、ワクチンの接種が進められています。海外に比べてワクチン接種が遅いとの批判がありますが、安全性を重視する日本では仕方のないことだと思います。なお、ファイザー社は今月9日に、アメリカ食品医薬品局(FDA)の正式承認に向けた申請手続きを開始したとの報道もありました。

 パンデミック下において、通常開発から実用化まで数年要する臨床試験の段階を省略して緊急で承認されていることから、「中長期的な人体への影響」や「効果がいつまで持続するのか」ということはまだ分かっていません。まずは、このことをよく認識した上で、私たちは接種の判断をする必要があると考えています。

 医学の進歩のためには多少のリスクは覚悟しないといけないのかもしれませんが、この事実を知った上で先陣を切ってワクチンを接種される医療従事者の方々には、改めて敬意を表するところです。

 そして、あまり気にされていない方が多い様子ですが、連日報道される感染者数や重症者数、病床使用率、医療がひっ迫しているという映像、そして、特に高齢の方にとっては、お亡くなりになられた方々の人数を毎日耳にするという現在の環境下では、なかなか冷静ではいられないと思います。
 
 少し目線を変えて、日本の死因の第1位となっているがんの状況について考えてみました。3年に一度調査されているのですが、最新の平成29年度のデータによると、全国で約131万2600人の方ががん治療のため入院され、37万3334人の方がお亡くなりになったそうです。私の父も平成29年にがんで他界したので、この中の一人となります。
 さらにその3年前の平成26年度は、約131万8800人の方が入院され、36万8103人の方がお亡くなりになっています。つまり、例年約131万人の方ががんを発症され、36万人を超える方がお亡くなりになっているという事実があります。
 
 仮に、がんが発覚した年齢別の人数や、がんで亡くなった方の人数を毎日国が収集して、テレビで発表されるようになれば、がん検診の受診率や基本健診の受診率が大幅に上がるのかもしれません。

 話を戻しますが、新型コロナウイルス感染症については、昨年12月までの陽性者数は無症状の方も含めて23万5908人、お亡くなりになったのは3492人でした。しかし、変異株が現れ、連日テレビで、感染者数や死亡者数が増加していることが報道され、ますます恐怖心が増しています。
 ですので、ワクチンを接種することによって、「中長期的な自分の体への影響」よりも、まずは目の前で起こっている心配事から解放されたいという心理に陥るのも当然のことと言えます。
 
 しかし、「中長期的な自分の体への影響」として、もしも花粉症のように、致命的ではないものの、今後、定期的に体の不調が生じるようなことが判明すれば、わざわざその道を選ぶかどうかは微妙な判断になると思います。
 
 ですので、中長期的な人体への影響に関するデータは、接種を判断するうえで重要な要素であると考えています。特に子供に対しては。

ワクチンの副反応の状況


↑厚生労働省HP内資料「ワクチンの副反応に対する考え方及び評価について」より抜粋。

 現時点では、ワクチン接種によるメリットがリスクを上回ると評価されています。

 令和3年5月15日時点で、PCR検査陽性者数は67万9530人となっています。それを日本の総人口で割ると0.54%、1000人中約5人の割合で陽性となったことになります。そして、お亡くなりになった方は1万1490人ですので、全人口の0.009%、10万人に約9人の割合になります。その多くが高齢の方に集中していることが公表されていますが、一度陽性となっても無症状のまま陰性になった方の割合は把握されていないのか公表されていません。

 メリットというのは、上述のとおり、発症する人数を95%減らすという効果を期待して、まずは、新型コロナウイルスによって亡くなる方を0.009%から増やさないこと、そして、0%に近づけていくことだと思います。
 
 一方で、リスクとは何か、ということです。副反応のことかもしれませんが、医学について素人の私にとっては、未だ全く分かっていない「中長期的な人体への影響」の方が気になるリスクです。

 ちなみに、副反応については、国内でも2月17日から接種のデータが報告され、データが集まり始めています。その中で、5月2日までに推定382万3386人が接種し、5560例(0.15%)の副反応が報告され、そのうち重篤なものが642件(0.02%)となっています。
 なお、「『重篤』とは、①死亡、②障害、③それらに繋がるおそれのあるもの、④入院、⑤①~④に準じて重いもの、⑥後世代における先天性の疾病又は異常のものとされているが、必ずしも重篤でない事象も「重篤」として報告されるケースがある。」との説明が付されています。
  
 そして、接種後に亡くなった方は5月7日時点で39件報告され、そのうち、70歳以上の高齢の方が23人、基礎疾患のない方でも、20歳代の方から100歳代まで12人の方がお亡くなりになっています。心からご冥福をお祈り申し上げます。
 いずれの事例も、「ワクチンとの因果関係がない」とも「因果関係がある」とも評価されておらず、「情報不足等により評価できない」もしくは「評価中」と判定されています。

 ワクチンを接種することで死に至る確率は低いのかもしれませんが、少なくとも副反応はありえるということは、接種前に正確にお伝えする必要があると思います。

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