高齢化に伴う市内の移動環境についてー令和5年3月議会一般質問

2023年7月8日[カテゴリ:交通, 質問

 令和元年6月議会一般質問(←クリックするとコラム「モビリティ・マネジメント」が開きます。)で、西宮市の交通不便地域において、コミュニティ交通の導入がなかなか進まない原因を分析し、モビリティマネジメントの手法を駆使して検討から導入までのスピードアップを図るよう提案しました。

 コロナ禍を経て、高齢者が増加している本市においても、市内での生活における移動手段の確保、充実は喫緊の課題です。

 令和5年3月議会において、改めて、高齢化に伴う市内の移動環境の充実について取り上げて議論しました。

====本会議場での発言の概要====

令和5年3月議会一般質問

5.高齢化に伴う市内の移動環境について
ア)交通不便地域の課題
■質問の背景(田中まさたけ)

 交通不便地域の一例として、今回は具体的に、段上・仁川地域を例に挙げたいと思います。
 
 お手元の資料には、交通不便地域図(南部地域)を掲載しました。

 段上・仁川地域では、住民の皆様の間で、阪急仁川駅を起点・終点として、地域を巡回するコミュニティーバスの導入を検討されていたと伺っております。その後、地域の自治会によりまして、阪急仁川駅から段上地域を通って西宮北口駅に抜ける一部新規路線の整備を阪急バス株式会社に対して要望され、以前の西宮市総合交通戦略では検討中、協議中となっておりました。

 これらの動きは、高齢化が進むに伴って、日常の買物や病院への通院、地域活動が実施される公共施設など、日常生活における移動の利便性が課題となっていることを表していると感じております。

 社会的には、高齢者に対して免許の返納を促している中で、住宅都市である本市においては、交通安全の観点からも、市内交通の利便性の向上はスピード感を持って対応すべき と考えます。

■質問1(田中まさたけ)
 今年度新たに策定された都市交通計画では、バスの個別路線に関する計画は示されておりません。そして、以前の「西宮市総合交通戦略」で「検討中」となっていた当該新規路線はいまだ実現もされておりません。この検討状況と今後の市の対応をお尋ね致します。

■質問1に対する市の回答
 まず、仁川駅から段上地域を通る阪急バスの新規路線についてです。
 
 令和元年から2年にかけて、段上地域の住民グループから、市や阪急バスに対して、北段上線を運行するバス路線を新設してほしいとの要望が市に寄せられていました。これを受けて阪急バスでは、令和3年4月のダイヤ改正に合わせて、逆瀬川駅と仁川駅、甲東園駅を結ぶ武庫川線35系統の減便及び経路の一部変更と、仁川駅から甲子園段上線、県道西宮宝塚線を経由してJR甲子園口駅を結ぶ武庫川線36系統の路線廃止を前提として、新たに仁川駅から北段上、甲子園段上線を経由し、市立中央病院、西宮北口駅を結ぶ路線の検討を開始し、地元や警察などの関係者と協議を行っていました。

 その結果、阪急バスからは、新型コロナウイルス感染症の影響が続く状況下では、
・利用者の見込みが不透明な路線新設には経営リスクを伴うこと、
・路線新設に必要な北段上線沿いへのバス停設置について地元同意が得られないこと、
・また、既存の35系統の便数維持と36系統の路線存続を強く要望される意見も多く、路線新設に対し沿線地域全体として理解と支援を得ることが難しい

との判断もあり、段上地域を通るバス路線新設を当面見合わせるとの報告がございました。

 市としましては、段上地域は、南部市街地では路線バスの利便性が相対的に低い地域であると認識しており、今後も、阪急バスに対し、段上及び仁川地域において新規路線を含むバスサービスの改善について要請してまいります。

■質問2(田中まさたけ)
 当該新規路線の解決の見込みが立たないようであれば、別の方法を模索しなければなりません。
 コミュニティー交通の導入においては地域の合意が不可欠とされておりますが、まだまだコミュニティー交通について周知が行き届いておらず、理解が得られているとは言えません。市は、地域に対してさらに丁寧に情報を提供し、助言・支援をすべきと考えますが、市の見解をお尋ね致します。

■質問2に対する市の回答
 市内公共交通不便地域の改善には、既存の路線バスの拡充と地域住民によるコミュニティー交通の導入を行う場合の主に二つのケースが考えられます。
 既存の路線バスの拡充については、深刻な運転手不足などの慢性的な課題に加え、昨今のコロナ禍により外出・移動機会の減少による利用者減も重なり、路線バス事業者からは困難な状況と聞いております。
 
 一方、コミュニティー交通については、現在、市内では本格運行8年目となる生瀬地域、2回目の試験運行を実施中の名塩地域、また、試験運行を検討中の山口、苦楽園、甲陽園の合わせて五つの地域で取組みが進められていますが、持続性の高いコミュニティー交通を実現するには、当事者である地域住民を中心に、交通事業者、市役所を加えた3者が連携協力し、持続可能な運行計画をつくり上げていく必要がございます。
 
 こうした地域によるコミュニティー交通の取組みを広く市民に理解していただく必要があると考え、今月発行の市政ニュース3月10日号の1面にコミュニティー交通の記事を掲載する予定となっています。
 市としては、今後も、本市が直面している交通課題に対し、市民の関心が高まるよう、公共交通の状況やコミュニティー交通の取組み及び支援制度などの情報について丁寧な周知に努めてまいります。

■意見・要望(田中まさたけ)
 コミュニティー交通の導入に向けた広報ですが、いまだに漠然とした周知になってしまっていると感じていまして、本市の場合、せっかく8年の実績をもつコミュニティー交通(ぐるっと生瀬)も実現しているわけですし、実際に試験運行がされている事例もあるわけですから、そういった実例をしっかりと広報に使っていただいて、今後検討しようという方々が、具体的なお金のことであったり、手間のことであったり、そういったことが具体的にイメージできるような広報を心がけていただいて、よりスピーディーに実現ができるように市も支援をしていただきたいと思います。

====ここまでが本会議場での発言の概要====

 地域住民主導で進められることもあり、住民の合意形成も大きなハードルとなっていることが伺えます。
 広報については、ありふれた内容を市政ニュースという限られた紙面に掲載するだけではなく、実際に検討されている地域において、検討している内容や課題等の詳細がある程度分かる会議録の概要などを市がまとめ、ホームページに掲載することも一つの方法ではないかと考えています。

 各地域で、一から時間をかけて検討をして、ようやく実現したとしても、その時にはすでにニーズが落ち込んでいる、といったことになるのではないかと危惧しています。

 そこで、この一般質問では、民間事業者によるMaaSの取組みについても取り上げました。

 次回以降のコラムに、議論の概要を掲載します。

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