市営住宅の活用ー保育ルームとして

2010年8月17日[カテゴリ:保育所政策, 質問

 日本では、少子高齢化が進み、人口減少が危惧されていますが、新しい公共施設をどんどん建てて増やしていく時代は終わったと考えています。
 そして、社会的ニーズの変化に対応するためには、既存施設の変更や目的外使用など、既存施設の有効活用をもっと進めるべきと考えています。
 
 行政財産は使用目的が決められていますが、地方自治法では、その行政財産の目的外使用が認められています。

地方自治法238条の4第7項
行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。

 そこで、西宮市では、待機児童が課題となっている一方で、待機児童が発生している地域では認可保育所を整備する土地が確保しづらいなどの課題もありなかなか進まないことから、平成22年6月議会一般質問において、空いている市営住宅の一室を保育ルームとして活用することについて、状況を質問しました。

====本会議場での議論の概要====

平成22年6月議会一般質問

2.市営住宅の活用について
イ)目的外使用(保育ルームとしての活用)
■質問の背景(田中まさたけ)

 今定例会においても、待機児童の解消については様々な議論がありました。具体的にも御答弁がありましたが、私からは、保育ルームについての質問を行いたいと思います。

 河野新市長の所信表明においても、待機児童の解消を重要政策として掲げております。
 市は、0歳から2歳に集中している待機児童の特性や、施設の将来需要を鑑み、本年度より賃貸物件を活用した保育所の整備にも取り組むとしております。
 
 表8(←クリックすると資料がご覧になれます。)には「0歳から2歳児」と「3歳から5歳児」に分けて、定員の増加と昨年からの待機児童の推移を示しました。

 全体では、昨年に比べて230名の定員を増やしましたが、なお待機児童は4月1日時点で比較して87名増加の310名となりました。
 特に待機児童が多かった夙川地域では、60名の定員増が図られたものの、本年4月1日現在で、(前年よりは減少したものの)いまだ80名となっておりまして、解消のめどが立っていない状況です。

 また、大規模の保育所や分園を整備しても充足率が80%台にとどまる一方で、0歳から2歳の待機児童は10名を超えているような状態になっています。

 今後は、この0歳から2歳を対象にした保育ルームのスペースとその担い手を確保することに重点を置くべきと考えます。その際の金銭的な負担の軽減もさることながら、担い手や物件探しなどの負担の軽減も一定考慮すべき課題であり、空いている市営住宅を目的外使用することで、それらが可能となるのではないかと考えます。
 
■質問(田中まさたけ)
 表9に戸数を示しました(←クリックすると資料がご覧になれます。)が、近年の市営住宅の公募において、毎回、夙川地域近辺で倍率が1倍を切る人気の低い住宅が見受けられます。空いている住宅の1階部分や店舗があれば、当面、政策的な措置として、0歳から2歳の子供を対象にした保育ルームなど、保育施設として活用すべきと考えますが、課題を含めて市の見解をお尋ね致します。

■市の回答(都市局)
 現在、市営住宅等の総管理戸数は、店舗を含めて約9,800戸でございます。また、1階にある住宅数は約1,500戸でございます。そのうち、1階の空き住宅は現在約30戸あり、空き店舗は約20戸ございます。

 御指摘の市営住宅の保育ルームとしての活用についてですが、本市の待機児童の解消への取組みは喫緊の課題となっており、健康福祉局から市営住宅の保育ルームへの活用について検討の依頼を受けております。このことから、公営住宅の本来の目的である住宅困窮者に対する空き家募集を阻害しない範囲内で、過去の空き家募集におきまして応募倍率の低かった住宅のうち、1階でかつ棟の端の住宅や、改良住宅の店舗のうち駅に近いものを対象に、検討を進めているところです。

 なお、市営住宅の保育ルームへの活用は、国の目的外使用承認を得る必要があることから、市としましては、国及び県に本市の待機児童の現状を説明し、目的外使用の承認を得られるように努めてまいります。

■市の回答(健康福祉局)
 年々待機児童が増加する中で、設備投資を必要としない保育ルームは、定員5名の施設ではありますが、0歳から2歳児の貴重な受け皿となっておりますので、今後も拡充していきたいと考えております。

 保育ルームの保育者募集におきましては、家庭への負担が大きいため、自宅開放での応募者が減少している状況から、今年度に施設の賃貸料助成を制度化したところです。
 市営住宅の空き部屋を保育ルームとして利用することは、賃貸料の助成額を抑え、運営経費の縮減につながるとともに、応募者の物件探しの負担軽減にもつながるというメリットがあります。

 保育ルーム開設にあたりましては、何よりも熱意ある保育者の確保が課題であり、また、児童が3歳になったときの受入れ先の確保、保育環境などの課題はございますが、都市局など庁内関係部局間の連携、調整を図りまして、市営住宅空き部屋の活用について検討をしてまいりたいと考えております。

■意見・要望(田中まさたけ)
 市営住宅の活用について、本市でも本当に重大な課題となってます待機児童解消に向けた活用については、1か所開設すると5人の解消につながるということで、保育所入所を待っている方にとっては貴重な取り組みだと思いますので、空いている部屋を一般の公募を阻害しない限り使用してもいいと回答していただきましたので、きっちりと活用していただきたいと思います。

 課題も含めてよくわかりましたので、実現に向けて取り組んでいただきますよう、引き続きお願い申し上げます。

===ここまでが本会議場での議論の概要===

 詳しい説明とともに、前向きの回答をいただきました。

 生活者の視点に立った時、保育所の待機児童の解消は迅速な対応が求められると考えており、市営住宅の空き部屋の活用はそれを可能とすると期待しています。
 市営住宅の活用が実現した際には、その効果や課題についても検証を続けなければならないと考えています。

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