公立保育所民間移管の議論を通じて明らかになったことー令和3年12月議会一般質問

2022年2月12日[カテゴリ:保育所政策, 質問

前回コラムで掲載した内容の続きです。

 現市長は、4年前の所信表明で「民にできることは民に委ねる(←クリックするとコラム「民にできることは民に委ねるという方針を表明した覚悟」が開きます。)」という方針を示しました。その時に私は、代表質問をする機会を頂いたので、この方針に対する覚悟を質問していました。
 その際に市長は、「これらの取り組みにつきましては、1期4年の評価として総合的に問われるもの」とお答えになりました。
 
 そこで、市長の1期目の任期中に私が質問できる機会はこれで最後になる予定でしたので、令和3年12月議会一般質問において、令和2年12月議会での市長からのご答弁を踏まえて、具体的に耐震化が必要と診断されていて、近々に建替えか改修が必要な「市立上之町保育所」の対応方針と他の公立保育所の民間移管について質問しました。

 市立上之町保育所 

====本会議場での議論の概要====

令和3年12月議会一般質問

2.公立保育所のあり方について
■質問の背景(田中まさたけ)

 こちらも(中央体育館の質問と同様に)、昨年12月議会で取り上げました内容の続きとなります。
 市長は「民にできることは民に委ねる」とのお考えを過去に示されておりますが、保育所の民間移管の状況は大きく変わることなく、1期目の任期を終えようとされております。
 そこで改めて、まず、公立保育所の民間移管についてお尋ね致します。
 
 昨年の一般質問における現在の西宮市民間移管計画に関する質問に対して、市長は、「現在の計画に引っ張られていると感じている、行政経営の発想・観点も踏まえた公立保育所などのあり方について検討を進めたい」と、一歩踏み込んだ(と思わせるような)御答弁をされました。それからはや1年が経過しております。

 今後は、行政経営改革の観点からも、これまでの先行整備方式の民間移管計画に加えて、現在の公立保育所をそのまま民間法人に移管する方法により民間移管を迅速に進めて早く国と県からの財源を確保し、民間の保育所等や認定こども園、私立幼稚園での担い手の確保に必要な事業費に充当するなど、市全体の保育環境の向上を図るべきと考えます。

■質問1(田中まさたけ)
 耐震化が必要とされている上之町保育所の建替えにあたっては、整備費も国や運営法人の負担が見込めることから、民間移管による現地建て替えとするべきです。そして、現在の民間移管計画とは別に、将来を見据えて、さらに公立保育所を迅速かつ計画的に民間に移管することによって国や県の財源を確保するべきと考えますが見解をお尋ね致します。

■市の回答
 保育所の運営経費につきましては、公立保育所の場合は、国の普通交付税による収入を除き、全額市の負担となりますが、私立保育所の場合は、全体のおおむね2分の1を国が、4分の1を県が、残りを市が負担することとなりますので、公立保育所を民間に移管することで市の財政負担は軽減されると考えております。

 しかしながら、公立保育所の民間移管にあたりましては、現に保育所を利用する児童とその保護者の不安を解消し、理解を得るために、十分な説明期間を設ける必要があります。他市の事例を申しますと、例えば横浜市では、民間移管の対象施設を3年前に公表するなど、保護者等への説明期間を設けております。
 
 一方、保育所の耐震化につきましては、市として安心・安全な環境を提供する責務を有していることから、早急に取り組むべき課題であると考えております。

 御質問の上之町保育所につきましては、地域の住民が集う北瓦木センターを併設する複合施設であり、双方の関係者との調整が必要であること、また、周辺は住宅密集地であり、近傍に移転可能な候補地を見つけることが困難なことから、市が責任を持って施設の耐震化に取り組むべきであると考えております。

 日々多くの児童が生活する保育所の環境を守りながら、できる限り経費を抑え、かつ早急な対応が行えるよう、現施設の耐震補強に取り組みたいと考えております。

 公立保育所の民間移管につきましては、まず、民間移管対象の3園を着実に進めてまいります。そのほかの公立保育所につきましては、施設の老朽度合いに関わらず、地域ごとの保育需要や就学前児童の状況を踏まえ検討してまいります。

■意見・要望(田中まさたけ)
 市は、民間に公立保育所を移管することによって、市の財政負担が大きく軽減することは認められました。そして、市はいつも強調されるのですが、民間移管をする際には市民(利用者)に対して十分な説明期間を設けなければならないということでございました。だからこそ、早く現在の対象園以外の公立保育所の民間移管についても方針を示すべきだと私は申し上げているつもりです。

今回は、直近で言いますと(耐震補強が必要な)上之町保育所はどうなのかということをお尋ねしました。お答えでは、建替えではなくて、耐震補強を行うという方針が明らかになりました。
ただ、いずれこれは、建替えが必要になってまいります。将来のお子様の人数等もまだ見えてこない状況ではありますが、お答えにもありました北瓦木センターと併設されている施設ということですので、そのあり方も含めて、保育所の民間移管について実現する方法の検討をもう始めるべきだと私は感じておりま血胸

(公立保育所を民間に移管すると市の財政負担が大きく軽減することは認められましたわけですから、民間移管を)できない理由をつらつらと挙げるのではなくて、できる方法をしっかりと考えて実施していただきたい、このことを指摘しておきたいと思います。

 御答弁にございました現在の民間移管計画の対象園3園を着実に進める、これは以前からずっと繰り返されておりますが、この計画が発表されてからもう既に14年が経過してます。
 ようやく1園だけ、しかも、さらに5年後の令和9年3月に廃園するという形でその1園だけはようやく民間移管が完了することになります。(1園を民間移管するのに計画策定から20年かかることになります。)残る2園はいつになったら完了するのか、まだ示されてもいません。

 今日の御答弁では、他の公立保育所については、施設の老朽度合いに関わらずということと、地域ごとの保育需要や就学前児童の状況を踏まえて検討すると述べられました。これも、いつもそうなのですが、検討の期限がお答えにございません。平成29年3月に策定されました西宮市公共施設等総合管理計画では、必要な公立保育所は13園程度とされておりまして、(仮称)西宮市公立保育所適正配置計画に基づいて管理するとなっております。
 この計画はまだ策定されていないと思いますが、市民に対する説明期間を確保するためにも、来年度早々には具体的に対象園を示すための作業に入る、そういった御答弁が欲しかったというのが私の感想でございます。ただ、今の時点ではそれはなかなかお答えが頂けないということですので、意見、要望させていただきます。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 市長からの回答ではありませんでした。

 公立保育所を民間移管する場合には、当然、利用している保護者への十分な説明期間を設ける必要があります。だからこそ、早くその方針を示す必要があります。上之町保育所の耐震補強が必要なことは10年以上前に分かっていたことであり、市長が4年前に答弁したとおりに、前向きにそしゃくして検証して、すぐに方針を示していれば、市の回答にありました3年程度の説明期間も十分に設けることができました。
 
 北瓦木センターとの併設であっても、民間に移管する方法は十分に検討する時間がありました。

 私は1期4年待ちました。その4年の間も提案やデータを示しながら何度も問い続けました。その結果が、上記のとおり、「できない理由」、「言い訳」を市の担当者に答えさせて終了ということでした。
 現市長が4年前に本会議場で意気揚々と述べた「民にできることは民に委ねる」という方針も、「待機児童ゼロ」という公約も、上辺だけのものであったと断じざるを得ません。そして、このようなマインドをお持ちの方に、本当の行政経営改革が遂行できるとは到底思えません。

 民間移管をくい止めることで公務員の人数を維持することはできます。その目的を果たすために、時間を稼ぐために、待機児童の解消を優先するという名目で待機児童は利用され続けました。そして結局、待機児童も解消できず、全国で最も待機児童が多いという不名誉なことになってしまいました。昨年11月時点で、約1600人もの方が入所の空き待ちの状態になっています。

 これまでに、保育サービスを利用したくても利用できず、引っ越していった方や職場を変えられた市民など犠牲となった市民がどれだけいたのか。
 公務員の人数を維持するために、公務員を守るために、多くの市民を犠牲にしてきたことを、しっかりと認識しなければならないと考えています。
 
 この項目での質問はまだ続きますが、長くなりますので次回以降のコラムに掲載します。

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