私が初当選する前から保育所が足りないという問題はありました。
これまで18年間、民間認可保育所を増やしても増やしても需要が上回り、待機児童は解消できず、ついに全国で最も多い待機児童数(令和3年4月時点で182名)となってしまいました。
〈市政報告会配布資料より〉
そして、就学前児童数が減少し始めてから約15年、これまで指摘してきた通り、いい加減やり方を変えないと過剰投資となってしまい、将来的に不要となった“ハコ”だけが残ると、維持管理経費が将来世代にとっての大きな財政負担となるのではないかと心配してきました。
現に、西宮市は、市立の小・中学校では、将来の需要減を見込んで、教室不足を仮設校舎で対応して、15年以上にもわたって子供たちにも不便を強い続けています。
保育所を仮設園舎にするべきというやり方を提案したことはありませんが、これまでのやり方ではうまくいかなかったわけですから、入園児童が減少し続けている私立幼稚園を含めて、既存施設の有効活用を徹底するというやり方や前回のコラム(←クリックするとコラム「公立保育所民間移管の議論を通じて明らかになったこと」が開きます。)に掲載のとおり、公立保育所の民間移管によって生まれた財源を、保育士等職員の処遇における大きな官民格差を是正することで、既存の民間保育所の保育士を確保して受入れ児童数を増やすなど方法へと転換するべきであり、そのためにまず市民との対話が不可欠だと考えています。
そして、市民と対話するためには、市がもつ将来ビジョンを共有にすることと、明快な市の政策が不可欠です。
令和3年12月議会一般質問では、待機児童対策としての私立幼稚園の活用について提案し、市の回答を得ました。
====本会議場での議論の概要====
令和3年12月議会一般質問
2.公立保育所のあり方について
(待機児童対策について)
■質問の背景(田中まさたけ)
本市の長年にわたる待機児童対策は、現在の民間移管計画がだらだらと引き延ばされている大きな要因の一つとなっております。本年4月の保育所等の待機児童数は、昨年よりも162名減少して182名となりましたが、4月の利用保留児童は1,034名、11月1日現在の利用保留児童は1,607名に及んでおります。
一方で、配布しました資料には就学前児童数の推移を記載しましたが、これまで10年間で約4,700人(これは約17%に相当しますが)減少し、今年は昨年と比較して779名、約3%も減少しています。
地域偏在や保育士不足などの課題も含めて、今後の対応には就学前児童を預かる施設に関する明確な将来ビジョンが不可欠であると考えております。
公立、私立ともに、幼稚園の入園児数が減少の一途をたどる中、待機児童対策のためにやみくもに認可保育所等を増やし続けた結果、ニーズの減少局面に入った際に急には公立保育所を縮小できない事態となれば、結果的に民間にしわ寄せが行くことが懸念されております。ニーズが増加している間に早急に市が将来需要に対する方針を示して備えておく必要があると考えております。
そして、待機児童対策として児童を受け入れて頂いている私立幼稚園が現在11園あり、この協力幼稚園制度を活用している児童は122名、昨年度と比較して46名増加していると伺っております。既存施設の活用の観点からも、入園児童が減少局面に入っている私立幼稚園の活用をもっと積極的に推進するべきと考えます。
保育需要は今後も増加することが予想されていますが、今後の少子化を見据えると、保育所を新設し続けるのではなく、既存の施設を活用する観点から、私立幼稚園の認定こども園への移行も見据えて、現在空き教室が生じている私立幼稚園においては、その部分を活用して1歳・2歳の児童を対象にした保育事業を始めて頂くことはできないものかと考えます。私立幼稚園の状況の把握も含めて、市の今後の対応をお尋ね致します。
■市の回答
毎年増加し続ける保育ニーズに応えるため、当面は新しい保育所の整備が必要であると考えておりますが、就学前児童数は平成18年をピークに減少していることから、今後の待機児童対策にあたり、将来の少子化を見据えた既存施設の活用を検討していく必要があると考えております。
中でも私立幼稚園は、通常の教育時間に加え、平日の夕方や夏休みなどの長期休業期間中に預かり保育を実施されており、保育を必要とする児童の受皿となる環境が整っております。市としましても、議員御提案のとおり、空き教室を活用して小規模保育事業を実施する、もしくは幼稚園から認定こども園へ移行するといった手法により、保育ニーズの高い1歳と2歳児を受け入れて頂くことは待機児童対策として非常に有効であると考えております。
そのため、私立幼稚園に対し、園舎の建て替え、教室の改修や調理室の設置など、施設整備に係る費用の補助を新たに実施することで、認定こども園への移行促進を図りたいと検討を進めているところでございます。
私立幼稚園と連携した取組みにあたりましては、これまでも、各園へのアンケート調査や関係団体との協議など、私立幼稚園のニーズ把握に努めてまいりました。
今後は、個別に私立幼稚園各園へ聞き取りを行うなど、より実態を把握した上で検討を進めてまいります。
■意見・要望(田中まさたけ)
本来は、まず少子化に歯止めをかけるための議論が必要だと私は思っています。その件につきましては、以前にも議論をしてまいりましたが、市は手が打てていないと私は感じております。今回は、あくまでも子供が減少していくことを前提とした議論を致しました。
さらに、今回、私立幼稚園の活用に対する市の支援につきまして踏み込んだ御答弁を頂いたと思っております。これは評価しております。
今後の保育所整備に大きく関わってまいることでもありますので、是非ともスピードアップもお願いしたいということと、私立幼稚園の方々との協働体制をしっかりと築いて、迅速に結果を出して頂きたいと思います。
====ここまでが本会議場での議論の概要====
認可保育所は市の所管になりますが、私立幼稚園の所管は基本的に県となります。同じ役所内ではありませんが、縦割り行政は県市間では多々存在していて、放置されがちです。
今回の議論において、市は私立幼稚園の空いた部分の活用の有効性を認めたうえで、認定こども園化を進めるための補助も実施すると明言されました。そのためには、各幼稚園によって認定こども園への移行に対する考え方や事情が異なることから、市の回答にもあった通り、今後、さらに私立幼稚園との連携を強化することが重要だと思っています。今後の市の対応に期待したいと思います。
議論の続きは、次回以降のコラムに続きます。