平成27年12月議会で、
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家庭教育支援としてのPTA活動の活性化について取り上げました。
そして、その質問に対する回答をふまえ、平成28年12月議会においては、家庭教育支援のあり方について議論しました。
まず、訪問型家庭教育支援チームの設置に関する議論をご紹介します。
========ここから、本会議場での議論の概要========
2.家庭教育支援について
(訪問型家庭教育支援チームの設置)
■質問の背景・田中の主張
平成18年の教育基本法の改正により、家庭教育の項目が追加され、
第10条において、「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」としたうえで、
「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供、その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」と規定されました。
また、来年には、議員立法により、「(仮称)家庭教育支援法案」が国会に提出される予定との報道がありました。
教育基本法改正から10年が経過した現在、本市では、具体的にこれまでどのように取り組んできたのか、これからどのように強化していくのか、質問したいと思います。
家庭教育は、すべての教育の出発点とされ、
家族のふれ合いを通して、子供が
・基本的な生活習慣や生活能力、
・人に対する信頼感、
・豊かな情操、
・他人に対する思いやり、
・基本的倫理観、
・自尊心や自立心、
・社会的なマナー
などを身につけていく上で、重要な役割を果たすものです。
近年、核家族化に加えて、共働き世帯やひとり親世帯の増加などの家族形態の変化や、貧困家庭の増加、地域のつながりの希薄化などにより、子育ての悩みや不安を抱えたまま保護者が孤立してしまうなど、家庭教育が困難になっている世帯が増加していると指摘されていることから、本市においても、家庭教育の支援のあり方について、議論を深める必要性があると感じています。
学校では、担任による家庭訪問や懇談によって、家庭の状況を把握されているとは思いますが、学校だけでは家庭教育支援の対応は困難と思われます。
また、
昨年の平成27年12月議会では、家庭の教育力向上に向けたPTA活動の活性化の取り組みについて取り上げました。この質問に対する教育委員会のご答弁では、
「(家庭教育に関する学習の機会を設けても、)保護者の関心の違いなどから、講座や講演会の参加者に偏りが生じる傾向が見られる」と述べられています。
■質問
訪問型家庭教育支援チームを設置し、ひとり親家庭、共働き世帯での子供の生活実態を把握することで、適切な家庭教育支援を施す必要があると考えますが、市の取り組みと今後の見解をお尋ねいたします。
■教育委員会の回答
国の通知によると「訪問型家庭教育支援チーム」とは、
・子育て経験のある地域人材や教員OB、
・スクールソーシャルワーカー、
・民生委員・児童委員
などをチーム員として、家庭を訪問して個別相談に応じたり情報提供を行ったりするものです。
また、必要に応じて専門機関につなげる活動を行い、教育と福祉の連携により家庭の孤立化を防ぎ、家庭に関わる問題発生の予防や早期発見につなげることを目的としています。
市では、公立小・中学校に、県のスクールカウンセラーや市の教育相談員を配置するとともに、必要に応じて教育学、医学、心理学などの専門家チームやスクールソーシャルワーカーを派遣することで、学校を通じて、課題のある家庭への支援に努めております。
また、地域においては
・PTAや公民館活動推進員による家庭教育に関する講座などの啓発事業や、
・民生委員・児童委員による見守り・相談支援、
・子育て地域サロン、子育てひろば事業など、
教育・福祉の両分野から子育てや家庭教育への支援に取り組んでおります。
今後もすべての子育て家庭や子供たちを地域社会全体で見守り支えるため、地域の各団体や行政のネットワークを生かした家庭教育に係る施策を確実に実施してまいります。
また、子供や家庭を巡る問題の複雑化・多様化に伴う様々な課題に対応するために「訪問型家庭教育支援チーム」についても国の動向を注視し研究するとともに、教育分野と福祉分野が、それぞれの特徴を生かしながら家庭や子供の状況を把握して、学校・地域と一体となった適切な支援が出来るように、連携を深めてまいります。
■回答を受けて再質問
私自身は、今回の御答弁をいただいて、家庭教育の支援に対してどのように取り組んでいこうと議論されているのか、正直まだしっかりと議論できていないので、これからやっていかないければならないと受けとめました。
市長は、西宮市教育大綱(←こちらをクリックするとご覧いただけます)を策定されようとしており、この中で、大人に対して呼びかけをしています。こういう形の教育大綱をつくることで、これを市民の方々がどこまで読んでいただけるか(受け止めていただけるか)という問題も一つあると思いますが、家庭教育という部分がすごく重要な内容になってくると思っています。「大人の方へ」というところが特にそうだと思います。
家庭の教育力が低下していると言われている中で、私は、これから教育委員会がしっかりそういうところを強化していただけると理解したいのですが、市長は、今回の教育委員会の答弁を聞いてどのようにお感じになったのか、お答えいただけますでしょうか。
■再質問に対する市長の回答
私の最近の家庭教育に対する考えとしましては、放置・放任というタイプの家庭と過干渉・過保護という家庭と両極端に出てきているのではないかと感じています。意識がすごく強い方と、極端に色々なところで色々な情報を集めて意識高い系になってしまっている方とあると思っています。
そのような中で、ここが中道ではないか、これが基本ではないかというところを出していくということが大事ではないかと考えています。それぞれの家庭でそれぞれやり方があっていいかと思いますが、この辺が真ん中ですよということを子供を預かる行政としてやっていければと思っております。
■まとめ・要望
昨今、家庭の教育力の低下が指摘されている中で、それをどうしていくのかということが国のほうでも議論されているのだと思います。先ほど壇上でも申し上げましたが、法律も改正されて明確に家庭教育が定義づけされ、また、家庭教育支援についても法律が作られようとしているということです。
教育委員会の御答弁を聞いてましたら、教育と福祉が連携して取り組めていますという内容だったかと思いますが、決して私は、今の段階で十分であるとは感じていません。特に、家庭教育という切り口では、今もまだ取り組めていないと考えています。
支援が必要なご家庭にとって、まず一番大事なのは、福祉的な支援を要している人の必要性を把握する、そして、そこに必要な福祉の支援をしていくということ、これは命にもかかわることですから重要だと思いますし、こちらの本会議場でも多々議論されていると思います。
その福祉が実現した次に必要なのは、子供たちがしっかりと教育を受けられるという環境を整備していくことが、この時代に必要になっていると思います。しかし、この家庭教育に関しては、なかなかこの本会議場でも議論を聞くことがありません。
実際、今回質問させていただいて、市の取組みを調査する中でも、様々な課題があると感じました。
まず、実態が把握できていない。今、家庭教育がどういう状況になっているのかということを教育委員会も把握できていません。
もう一つが、幼児期の家庭教育も非常に重要だと言われていることから、今日は、公立幼稚園の家庭教育支援の取り組みを質問しましたが、正直申し上げて、内容はうーん?という感じです。
昨年は、家庭教育に対する学習の機会をいろいろ設けているものの、親御さんの意識の違いによって、参加者に偏りがある旨の御答弁もいただきました。今度は、来てくれない人に対して、具体的にどうアプローチしていくのかということを提案致しましたが、教育と福祉の連携という漠然とした回答にとどまりました。
教育委員会のほうでしっかりと研究をしていただきたいと思います。
========ここまでが、本会議場での議論の概要===========
支援が必要なご家庭や子供に対して、福祉的な施策については、命にもかかわることですから、本会議でもよく(他の議員が)議論されています。
そして、福祉がなんとか行き届いた後に必要なのは、貧困の連鎖を断ち切る必要があるとよく言われますが、子供たちに適切な教育を受けさせる環境を整備することだと考えています。
しかし、今回の市の回答は、抽象的な内容にとどまり、家庭教育支援の議論がおざなりにされてきたことが露呈したと言えます。また、再質問に対する市長の回答に、「家庭の教育に、市は立ち入らない」という姿勢が表れていたように思います。そして、市長が策定することになっている教育大綱の中で、大人に呼びかけるという姿勢とは少し異なるように感じます。
昨年の質問の回答では、(保護者に対する)家庭教育に関する学習の機会をいくらつくっても、なかなか参加できない保護者がいることは認識されていることがわかりました。そして、今回の回答にあったように、いくら専門家を学校に配置して相談を待っていても、支援が必要な家庭の保護者が昼間に相談に行けるのか、本気で考えれば(困難であることは)わかると思います。
ですので、家庭教育は自主性を尊重しなければならないとは言っても、どうしても来てもらえないなら、こちらから伺わざるを得ないと考えて、訪問型の家庭教育支援チームの設置を提案したわけです。
現状のままでは、意識の高い家庭と低くならざるを得ない家庭の差は開くばかりであり、子供たちに対する影響も大きくなることは想像に難くありません。
元々、行政が関知するようなことではなかったのかもしれません。それは、各家庭で先代から自然と引き継がれてきたことだったからです。
しかし、家庭の教育力の低下が問題視されるようになって久しく、教育基本法が施行されてから10年、国会では来年も新たな取り組みを強化する法案が審議されるというなかで、市は、これから「国の動きを注視し、研究(情報収集)」というのでは、あまりに意識が低く消極的と言わざるを得ません。
法が変わっても、いくら新しく法律を作っても、基礎自治体・教育委員会の意識を変えなければ意味がないことを物語っています。
今後とも、国とも連携しながら取り組んでいかなければならないと感じています。