図書館運営の効率化ーICタグとRFIDシステムの活用

2005年7月25日[カテゴリ:財政・財政改革, 質問

 これまで2回の一般質問では、市の財政難の解消に重点を置いて、民間活力の活用を中心に提言を交えて市と議論しました。
 3回目となる平成16年6月議会一般質問においても、具体的に図書館運営の効率化について取り上げましたが、今回は民間委託ではなく、急速に進化する最新のIT技術を活用することでサービスの向上と経費削減を期待できるシステムの導入について、市と議論しました。

 今回取り上げる最新のIT技術とは、ICタグを利用した蔵書管理システムです。このICタグとは、ICチップが埋めこまれ、電波を使って無線で通信する機能を持ったタグのことです。
 このICタグを使った蔵書(備品)管理システムは、「RFID(Radio Frequency IDentifier)」と呼ばれています。

=====本会議場での議論の概要=====

平成16(2004)年6月議会一般質問

3.図書館運営の効率化について
■質問の背景

 西宮市の図書館の現状は、中央、北部、鳴尾、北口図書館の四つの拠点と越木岩、上ケ原、高須、段上、甲東園の五つの分室、それと、移動図書館があり、蔵書は約87万冊であると伺っております。
 今年度から北口図書館において金曜日のみ20時まで開館を延長し、特に北口図書館の整備以降、平成12年には貸出蔵書数が約230万冊であったのに対して、北口図書館がオープンして281万冊に増えて、平成15年には290万冊まで貸出蔵書数が増え、図書館利用者が増加していると伺っております。

 これもサービスの向上に対する不断の取り組みの成果であると評価されるべき点と考えています。財政難の中、徐々に予算を削減せざるを得ない状況にあるのは、他の部署同様、例外ではありません。本市の図書館は、市民や議会でのさまざまな要望にこたえるべく努力してこられたと思います。そして、図書館サービスを拡充するためには、多かれ少なかれ経費が増大するのは必至です。
 開館時間の延長一つとっても人件費が増大します。しかし、文教住宅都市を宣言している本市にとって、図書館サービスの向上に向けた努力を怠ってはいけないのだと思います。そこで、業務を効率化し、浮いた財源で図書館サービスの拡充に充てるという姿勢は欠かせないと思います。業務の委託化や運営自身の委託化も検討しなければならないかもしれませんが、今回は、業務自体のIT技術を活用することによる効率化を提案したいと思います。

■RFIDの説明
 (導入を提案する仕組みを)簡単に説明しますと、こちらにありますこのタグにはICチップが埋め込まれています(実物を提示)。シール型のものもあります。このタグと専用の読み取り機を使って蔵書の管理と貸し出しの管理を行うというシステム(RFIDシステム)があるとのことです。
 ちなみに、この読み取り機をタグにかざすと、読み取り機の画面にすぐに書籍の情報が表示されるという機器であり、(現在のように)バーコードでの管理と比較すると、パソコンを確認しないといけないという手間がなくなるということです。このタグ(シール)からは微弱な電波が発せられています。
 これまで蔵書管理については、バーコードによって管理され、利用者が持つ貸出券と本に張り付けたバーコードで、「誰が、どの本を、いつ、どの図書館で借りて、いつ、どの図書館に返したか、」ということを管理できます。しかし、バーコードでは情報量に限界があり、現在の図書館サービスは維持できるものの、それ以上の利便性を追及することは難しくなってくると予想されます。
 
 そこで、このタグは、ICチップを利用していることから、処理できる情報量がバーコードよりはるかに多いこと、そしてまた、追記、情報の書き込みが可能です。また、情報を持った微弱な電波を発しているため、読み取り機を本に接触させなくても、近づけるだけでICタグの情報が読み取れるという機能を持っています。
 これら機能によって、棚卸しの点検作業の効率化が期待できます。現在、この作業に非常に手間がかかっていると思いますが、この作業が飛躍的にスピードアップすれば、よりきめ細やかな蔵書管理が可能となり、棚卸し作業の頻度を上げるなどすれば利用者の利便性も向上します。

 そのほかにも、貸し出しや返却業務のスピードアップ将来的には無人での貸出しも期待できます。本市でも借りた図書を市内のどの図書館に返却してもいいシステムとなっていることから、図書の転送仕分けの作業の効率化も期待できるでしょう。また、現在はバーコードとは別に磁気シートを張ることで盗難防止をしていますが、このタグがあれば、電波を発してますので、盗難防止にも使えるというメリットがあります。ただし、司書の役割はIT技術では今のところ果たしがたいとは思いますが、事務量の削減は明らかに可能だと思います。

 そして、デメリットとしては、ICタグの値段でして、今のところ20円から100円ぐらいのものがあるそうでして、現在、蔵書管理にかかっている人件費の削減額と比較する必要はあるとは思いますが、この経済性が確認できれば、現在の財政状況でも図書館サービスの拡大を図ることが可能となってくると思われます。

■質問
 このICタグを使った蔵書管理システムは、メーカーによってメリット、デメリットが違うようです。どのメーカーのものが西宮市の図書館運営に合っているのか、そうした検討も含めて、図書館という本市の資産を一部提供し、つまり場所の提供ということですが、(民間企業に)実証実験を行ってもらうなど、官民共同の研究を行ってはいかがでしょうか、市のお考えをお伺いします。あわせて、現在の図書館運営に対するお考えをお聞かせください。

■教育委員会の回答
 御提案頂きましたICタグを利用した蔵書管理システムでございますが、これは、情報を記録できるICチップと無線通信用のアンテナで構成されており、電波を用いて非接触でデータのやりとりを行うもので、従来のバーコードにかわる次世代の固体認識技術として期待されているものでございます。
 
 ICタグは、バーコードと比べますと圧倒的に情報量が大きく、情報の更新や追加、そして、複数固体の一括認識が可能であること、また、透過性があり、段ボールの中のものでも認識できる等の特徴がございます。また、無線で読み取り装置と通信する機能を持つことから、消費財や書籍に添付して流通の合理化や在庫管理の効率化を図れるものと思われます。
 昨年、大手の電機、通信、印刷など国内外の企業180社が参加致しまして、通信方式などICタグの統一規格を定め、既に実証実験も開始しております。現状のICタグは、実証実験におきまして、数%の読み残しが発生することなど、それから、金属の影響を受けやすい点、また、価格が高額であることなどの問題点があり、本格的な普及までにはあと数年はかかるものと考えられております。今後さらに国際的な統一規格や小型化、量産による値下げが進めば、急速に普及するものと思われます。

 図書館におきましては、ICタグを導入することによりまして、自動貸出機の導入や複数の本を一括処理できるためスムーズな窓口処理ができること、また、新規資料の受け入れ、蔵書点検、書架配置のチェック、図書の無断持ち出しの検出、返却ポストの迅速な処理が可能になるなど、数々のメリットがあり、効率的な運営が期待できるものでございます。
 したがいまして、将来の図書館管理システムにICタグを組み入れることも視野に入れながら、ICタグの価格や読み取り精度の向上等、市場の動向を見守ってまいりたいと考えております。
 今後、IT化などにより図書館のどのような業務が効率化できるか、また、その結果、どのようなサービスが利用者の方々に還元できるのかをよく研究致しまして、よりよい図書館運営を目指してまいりたいと考えております。

■意見・要望
 市の方でも、かなり研究されていると感じました。現在は、財政難の状況ですので、図書館運営についても経費が削減されて、(サービス向上に関する)要望も相変わらずあるという状況で、厳しい状態であると思われます。
 そうした場合に、効率化によって余った人員で、さらにサービスを拡充するなど、そうしたことを検討してもらいたいということで、今回は実証実験することを提案しました。
 公共の図書館を民間企業はなかなか実験に使いにくいと思いますし、そうした機会もないと思います。ですので、西宮市が、IT関連の会社とネットワークもあると思いますので、そうしたところに働きかけて、できたら1社ではなくて、何社かで協議していただいて、その中で本市の図書館に一番合うものを、財源の見込み、導入のめどついた時に迅速に導入できるように準備しておいて頂きたいと要望致します。

=====本会議での議論の概要=====

 民間企業との共同研究の場として、本市の図書館を提供すれば、システム開発を考えている企業にとっても、市にとってもメリットと考えられることから、システム導入に要する費用も官民で負担しあえば、市の負担の大幅な削減が見込め、かつ、本市の図書館にあったシステムを導入することが可能になると考え、実証実験の実施を提言しました。
 市が民間企業と共同で研究するという事例は少なく、リスクを避けがちな自治体にとっては、非常にハードルが高いとは思います。しかし、「行政経営改革」を進める自治体としては、コストを抑えつつサービスを向上するために、是非とも越えなければならないハードルであると考えています。

 市民の図書館に対する期待は小さくありませんので、今後も、動向を見守りたいと思います。

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