公共資産の維持管理システム①ー市営住宅の管理

2006年10月29日[カテゴリ:公共施設マネジメント, 質問

前回コラム(←クリックするとコラム「公共事業評価の意義」が開きます。)の続きです。

公共施設は、一度建設すると、適切に計画的に適切に維持管理をしなければ、利用者の命を奪うことになりかねません。
平成18年6月議会一般質問で、「公共資産の維持管理システム」の質問の中で、具体例として、市営住宅の維持管理を取り上げ、質問しました。

=====本会議場での議論の概要=====

平成18年6月議会一般質問

1.公共資産のアセットマネジメントについて
イ)公共資産の維持管理システム
 まずは、港区でのエレベーター事故を受けて、本市の公共資産という観点から、市営住宅について取り上げたいと思います。
 シンドラー社製のエレベーターの故障により、まだわずか16歳の尊い命が奪われました。この場をおかりしまして、御冥福をお祈り申し上げます。
 その事故の原因は、現在確定はしておりませんが、保守管理が不足していたという説が濃厚になっています。人身事故が起きてから、やっとこれまでの閉じ込め事故など、いわゆるヒヤリ・ハットの事例が次々と全国的に報告されました。既に前兆が示されていたと言えます。ハードを整備した限りは保守点検が重要な要素となっていることを示していて、本市でも保守点検費用を無理に抑制すれば重大な事故を引き起こす可能性は十分に考えられます。また、エレベーターのような機械の保守点検はもちろんのこと、外壁の点検補修についても、手を抜けば、例えばはがれ落ちた外壁が通行人に当たるといった大きな事故にもつながるおそれがあります。つくった「モノ」の維持管理がいかに重大なことであるかを考え直す必要があるように思います。
 本市では、平成14年から23年を計画期間とした市営住宅ストック総合活用計画を策定されまして、来年度からは後期に突入するわけですが、今後、耐震補強工事や、バリアフリーの観点からエレベーターの設置要望がある中で、今後5年間で補修費だけでも約15億円が必要と算出されていると聞いています。平成14年段階で個別改善と診断された住宅の計画修繕がこの計画どおりに進む見込みはあるのか、本市においても人身事故が起こる前に再度確認する必要があると思われます。

■質問1
 市営住宅について、エレベーターなど機械、そしてまた外壁の保守点検をどのように進めているのかを伺います。

■質問1に対する回答
 本市の市営住宅のうち、74棟に100基のエレベーターが設置されております。これらの点検につきましては、製造メーカーもしくは系列のメンテナンス会社に委託をしております。法定点検を含め、毎月の点検を行っております。製造メーカーなどへ委託しているという理由につきましては、自社製品でございますので、すべてのエレベーターの機器に熟知していること、また、消耗致します部品が自社製品でありますことから、取りかえが可能であり、急な場合の取り寄せも速やかであること、また、製造から日常のメンテナンスまで一貫をしておりますため、万が一のトラブルのときの責任の所在が明確であることなどからの理由でございます。また、そのほか、給水設備の点検は毎月、消防設備は年2回など、いずれも専門の業者さんに点検をさせております。
 外壁の保守点検につきましては、職員が日常業務で日ごろ各団地を巡回する中で、ベランダやひさしのコンクリートのひび割れなどの状況を点検しており、全面的な外壁の改修につきましては、西宮市営住宅ストック総合活用計画に基づきまして、おおむね20年ごとに順次実施しております。また、昨年の6月に改正建築基準法が施行され、公の施設も建物及び設備につきまして定期的な点検を義務づけられたことにより、本年度からこの点検を開始しております。今後も、住宅の安全性確保を第一として、より慎重な点検に努めてまいります。

■質問2
点検履歴の蓄積、ヒヤリ・ハットの事例の蓄積と分析、そして予防修繕など、維持管理をどのように行っているのかを伺います。

■質問2に対する市の回答
 本市では、既に入居者からの修繕の依頼や点検記録情報を蓄積するとともに、3年前からコンピューターシステムの独自開発を行い、約1万戸の市営住宅につきまして職員間で修繕情報の共有ができるように図っております。なお、市営住宅にはさまざまな設備がありますが、ブランコや滑り台などの遊具につきましては、全団地のリストを入力したプログラムを作成し、毎年度の点検によりその状況把握に努め、老朽化が見られるものにつきましては優先順位をつけて予防修繕を行っております。今後とも、点検などの情報を蓄積、共有し、資産保全や安全性確保の観点から、計画的な修繕に努めてまいります。

■意見・要望
 まず、市営住宅に関してなんですけれども、こちらの方は、きっちりと「ストック総合活用計画」に基づいて計画的な修繕、保守点検が行われているということでした。現段階では評価できるのではないかと思います。ただ、今後も人身事故が起きないように管理することは当然のこととして、御答弁にもありましたけれども、安全性の確保の観点と、もう一つはやはりライフサイクルコストの縮減の観点から、計画的な点検、修繕が行われるように改めて要望しておきます。

=====本会議場での議論の概要=====

エレベーターなど、機械を設置する際には特に、設置時の入札の際に、メンテナンス費用や安全性の確保に関する提案を含めた総合評価で入札するのが好ましいと思っています。

市全体の資産管理については、次のコラムに続きます。

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