公共資産の維持管理システム②ー市の資産に関する情報の一元管理

2006年10月31日[カテゴリ:公共施設マネジメント, 質問

 前回コラム(←クリックするとコラム「公共資産の維持管理システム①」が開きます。)の続きです。「2.公共資産のアセットマネジメントについて」の質問の本丸にあたる部分の質問を掲載します。

 市営住宅については、平成14年度に「西宮市営住宅ストック総合活用計画」が策定され、その計画に基づいて約1万戸もある住宅の外壁改修が計画的に行われていることが分かりました。また、修繕の依頼や点検記録情報を蓄積し、職員間で共有するシステムも開発されています。

 しかし、このような対応ができているのは市営住宅のみで、その他の建築物については「中長期修繕計画」が策定されているものの、公開されておらず、そして財源も示されず、実効性に乏しい内容となっています。

 また、市営住宅、学校、その他の建築物、公園といった縦割りで計画を策定しても、これらの情報が一元化されておらず、厳しい財政状況の中で、計画通りに進めることができるのかも不透明な状態となっています。これでは、安全に資産を管理することは難しくなることが懸念されます。

 平成18年6月議会では、公共資産のアセットマネジメントシステムの導入について、議論しました。

=====本会議場での議論の概要====

平成18年6月議会一般質問

2.公共資産のアセットマネジメントについて
イ)公共資産の維持管理システム

(市全体の公共資産)
■田中の指摘と提言
 行政経営改革基本計画の中で、アセットマネジメントの考え方を導入した公共施設の維持管理システムの構築を行うとされています。こちら、計画では平成17年度から実施されて見直しを進めていくとなっています。先ほどから一言で公共資産と申しておりますが、その範囲も現状では漠然としたものになっています。決算時に配付される公有財産明細書に掲載されている土地、建物はもちろんのこと、道路橋梁、雨水や汚水管を含めた下水道施設、公園・街路樹、そして水道管を含めた水道施設、大量の車両もあります。
 資料の一番下の表に「主な公共資産」として示しました。こちらは、それぞれ管理している所管課ごとに、建物について掲載しています。
 営繕・設備グループが中期修繕計画において把握されているもの、そして、各所管課──市営住宅、学校園それぞれ分けて掲載しております。それとは別に、公園・街路樹、道路橋梁、そして水路の、それぞれ数量と維持経費(工事契約額を平成16年度の事務報告書より抜粋)を掲載しています。
 たったこれだけの表をつくるだけでも、特に数量については各所管課に確認しなければならない状況で、市全体としての情報共有はできていません。先ほども議論でございましたが、現状でも維持、改修に十分な費用が充当できていない、予防修繕どころか、場当たり的ではありますが、工夫しながら現場の職員は対応されている様子です。

 一つ具体例を申し上げますと、公共施設の中期修繕計画は、市全体の財源の裏づけのない計画となっているため、計画どおりに修繕が進んでいない様子です。ちなみに、平成30年までの修繕費を約60億円と見込んでおり、単純に平準化したとしても、年間約4億円が必要である計算になりますが、本年度の予算額は4,995万円となっています。
 たとえ公共事業で新規事業の評価を行っても、この社会基盤の維持補修の見込みが甘ければ、将来に大きなツケを残すことになると思われます。また、例えば道路になると50年から100年の単位になりまして、この財政難のときにあえて調査費などのコストをかけてまでそのような試算を行う必要はないだろうとお感じの方もいらっしゃろうかとは思います。
 しかし、その50年後、100年後のことも考慮に入れて行政運営は行われるべきですし、今後それほど財政に余裕ができることも考えにくい状況にあります。また、阪神大震災の復興の余波、これが10年後には訪れるとも言われています。市の資産全体の状況を把握し、ハード面については予防修繕による大規模改修の時期の平準化、そしてまたライフサイクルコストの縮減など、資産をマネジメントできるシステムの導入が急務であると思われます。

 そして、これまで膨大な量の資産が生み出され、今後、アセットマネジメント、いわゆる資産管理を行うためには、膨大な量の情報を調査し、管理しなくてはなりません。IT技術が発達した現在では、データの保管は容易になりましたが、さらにこれまで目視調査など経験値で行われてきた分析も、それらの経験値に加えまして、非破壊検査機器による測量により、デジタル解析を用いた正確な分析、劣化予測も可能となってきているそうです。

 このように、公共資産の増大とともに、維持の技術も発達してきている様子を見ると、データ管理とか、それによる予防修繕、こういった必要性も高くなっていることがうかがえると思われます。先ほども少し述べましたが、資産の管理は多数の所管課にまたがっており、それらを総合的に把握し、財政担当者を中心としたプロジェクトチームを設置するなど体制を整えて仕組みづくりを検討すべき時期に入っていると思われます。

■質問1
 公共資産のアセットマネジメントについての市の基本的な考え方と公共資産の維持管理システムの進捗状況を伺います。

■市長の回答
 アセットマネジメントは、公共施設を資産としてとらえまして、その損傷や劣化等について具体的なデータによる現状の把握と的確な将来予測を行うことにより、最も費用対効果の高い維持管理を行おうとするものであります。
 このため、まず効果的な維持管理手法の導入により維持管理費用の縮減を図ること、また、適切なタイミングで効果的な修繕、更新を行うことによりまして施設の生涯費用であるライフサイクルコストを低く抑えることとともに、施設の寿命を延ばすことなどが重要となってまいります。
 市では、こうした観点から、平成16年度に市の公用・公共用施設の中期修繕計画を策定致しまして、効果的、効率的な施設保全を進めております。また、省エネルギー改修を行うことによりまして高い省エネルギー効果が見込まれる施設につきましては、光熱費の削減分ですべての投資を賄い、新たな財政負担を必要としないESCO事業の導入を積極的に進めております。
 公共資産のマネジメントをさらに進めていくためには、施設の長寿命化やライフサイクルコストの低減化を追求するだけではなくして、施設の効用を上げるための有効利用策を検討することや、政策目標の達成した施設や利用者ニーズと合わなくなった施設の転用、統廃合も含めた既存施設の有効活用を図る必要がございます。
 今後は、こうしたことに加えまして、新たな手法の活用による多様な維持管理、運営のあり方も視野に入れた公共資産のマネジメントの実現に向けて取り組みを進めてまいります。

■質問2
 公共資産の維持修繕コストの見込みの把握、全庁的な公共資産の状況把握に対する見解と点検履歴の蓄積、データ収集の方法を伺います。

■質問2に対する市の回答
 まず、公共資産の維持修繕コストの見込みの状況把握についてでございますが、本市の公用・公共用施設の現状でございますが、平成17年度末現在の施設の総床面積は約157万平方メートルに達し、その内訳は、学校及びその他の教育施設で62万平方メートル、住宅関連施設が59万平方メートル、庁舎等一般公共施設が36万平方メートルとなっております。これら施設の多くは昭和40年代から50年代前半までの高度経済成長期に建設されていることから、全体の58%は建築後20年以上経過しており、主要な部位、部材、設備等が修繕、更新の時期を迎えております。こうした施設は、市民の財産であり、適正に保全することにより長期間にわたり健全な状態で使用し、さらには次世代に良好な状態で継承していく必要がございます。
 これら多くの公用・公共用施設の計画的な保全を効果的に行うためには、施設個々の実態を的確に把握する必要があり、そのために、平成15年度より建物、設備の概要や修繕履歴を調査し、記録した施設カルテの作成を進めるとともに、国土交通省の建築物修繕措置判定手法により劣化の度合いを数値化し、修繕、更新の優先順位を定めた実施計画の策定に取り組んでおります。
 なお、施設の修繕、更新に当たりましては、中期修繕計画を踏まえ、予防的保全の観点に立ったバランスのとれた合理的で効率的な施設保全に努めてまいりたいと考えております。
 
 次に、公共施設の点検履歴の蓄積、データ収集の方法についてでございます。
 公共施設の点検につきましては、平成17年6月1日施行の建築基準法の改正により、本市が所有または管理する建築物について、劣化の状況を定期に点検することが義務づけられております。対象となる施設は、不特定または多数の者が利用する建築物、いわゆる特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100平方メートルを超える建築物及び階数が5以上でかつ延べ床面積が1,000平方メートル以上の建築物及び建築設備並びに昇降機となっております。
 点検の周期は、建築物については3年以内ごと、建築設備及び昇降機については1年以内ごととなっております。これら点検につきましては、平成18年度より総務局施設部施設保全管理グループの公共施設点検チームにより順次実施しておりまして、そのデータは電子ファイルとし、建物ごとに図面データ、保全データ、工事履歴データとともに点検データとしてフォルダー構成され、施設部内のサーバーに保存する予定でございます。
 また、施設の増改築や設備の更新、増設、撤去等が行われた場合は、その都度、フォルダー内のデータの修正を行う等、資料の収集及び蓄積が速やかに実施できる体制を構築してまいります。さらに、データベース化された情報は、必要に応じて閲覧と検索を行い、維持修繕に有効に活用できるよう運用を図ってまいりたいと考えております。

■意見・要望
 御答弁からうかがえましたのは、公共施設のみ適用しようとお考えであると受け取りました。安全性の確保という観点からは、当然、建物を優先すべきかとは思います。一気にすべてというわけにもいかなかないのかもしれません。
 しかし、私は、それでは不足していると考えまして、今回の質問で問題提起をしました。今後は、壇上でも申し上げました道路橋梁、公園、また、特別会計ではありますが、水路、雨水管、汚水管などの下水道施設、そして水道管など、維持、改修が必要な資産が多数ございます。こうしたものもすべて対象としてアセットマネジメントの考え方を導入すべきであるということをひとつ指摘しておきたいと思います。
 マネジメントを行う際に、詳細な調査が必要になってきます。そうした調査は、当然、所管課でなければできないとは思われます。その所管課の調査のもと、ライフサイクルコストの縮減、そしてまた改修時期の平準化、効率的な維持管理の観点から、計画修繕、予防修繕を実施しようとすれば、ある程度の財源の裏づけが必要になってくると思われます。
 ですので、所管課だけでは検討できないと思いますので、プロジェクトチームを設置するなどして全庁的に取り組んでいただきますように強く要望しておきたいと思います。
 
=====本会議場での議論の概要=====

 公共資産のアセットマネジメントについて、行政内部では個々の施設に関する情報の蓄積を始めていることは分かりましたが、情報の一元管理ができていないことから市全体の状況は見えづらく、議会での議論・検討がしづらい状況となっています。
 西宮市議会の本会議では初めての議論となり、まだまだ議論を深める必要があると感じています。今後も、市民の安全性の確保と財政の健全化の両面から重点的に取り組んで参ります。

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