公共施設マネジメントと指定管理者制度ー平成21年6月議会一般質問

2009年9月28日[カテゴリ:公共施設マネジメント, 質問

指定管理者制度

 平成15年より前は、「公の施設」の管理を自治体が外部に委ねる場合は、公共性の確保の観点から地方自治法により公共的団体等に限られていました(管理委託制度)が、平成15年に地方自治法が改正され、民間事業者等にも管理運営を委ねることができる指定管理者制度が設けられ、西宮市では、平成17年より導入されています。

 多様化する住民ニーズにより効果的、効率的に対応するため、公の施設の管理に民間の能力やアイデアを活用し、サービスの向上を図るとともに、経費の節減等を図ることを目的として導入し、事業者を選定しています。

公共アセットマネジメント

 学校、市営住宅、市民館、公民館、体育館などのいわゆる「ハコモノ」と、道路、上下水道などの「インフラ」を合わせた「公共施設」を、市民の「アセット(資産・財産)」としてとらえ、縦割りにより各部署で管理していた各公共施設の状態を一元的に把握して将来の費用負担を推計し、その上で、計画的に効率よく施設の維持管理を行うことで施設の寿命を延ばしり、老朽化した施設の統廃合や複合化を図り、長期的な財政支出の削減を図る取り組みです。
  
 3年前の本会議一般質問で、市全体の公共資産のアセットマネジメントの導入について取り上げて議論しました。その際には、市の回答に具体性を欠いていたことから、引き続き、平成21年6月議会では、公共施設マネジメント1本に絞り、さらに細かく施設の状況を示し、なかなか進まない「アセットマネジメント」について議論しました。

=====本会議場での議論=====

平成21年6月議会一般質問

1.公共施設マネジメントについて
■はじめに

 このテーマは、ちょうど3年前になります平成18年6月議会で、公共事業評価と公共資産のアセットマネジメントについて取り上げ、成熟社会を迎えた中で、学校や市営住宅を初めとした公共建築物、道路、橋梁、上下水道施設、公園など、いわゆる莫大な量の社会基盤を安全、快適に保つために、市全体を俯瞰した今後の維持管理体制について問題提起を行いました。
 市長からも、公共資産のマネジメントに関して前向きかつ意欲的な御答弁をいただき、その後、一定動向を見ておりました。今回は、公共資産のうち、前回の道路に引き続きまして、公共建築物を抽出し、公共資産のマネジメントの実現に向けた取り組みの進捗状況と職員の皆さんの意識改革の状況を問いたいと思います。
 
 公共建築物の状況は、資料(←クリックするとPDFファイルが開きます。)をご覧ください。
 
 小規模のものも含めまして、木造を除いた建築物の総床面積は約152万㎡で、これは、現在、約20億円をかけて校舎の建てかえを行っております浜脇小学校の老朽校舎約255棟分の計算になります。震災後5年間で建設された建築物がやはり突出して多く、約32万7,000平方メートル増加していることになります。

 そして、大規模改修の履歴が反映されておりませんが、40年以上経過しております建築物が約27万6,000㎡、そのうち昭和10年代の建築物が、浜脇小学校や夙川小学校も含めまして、約1万3,000㎡も残されております。そして、建築基準法の耐震基準が改正された1981年以前の建築物が全体の約45%を占めております。ですので、現在、慌てて耐震改修の準備を進められている様子です。
 
 また、今回も、決算書の性質別分類によりまして、維持補修費の推移を抜粋致しました。各施設は老朽化が確実に進んでいると思われるのですが、維持補修費が財政難のあおりを受けて、平成13年度以降急激に低い水準で推移しておりまして、平成10年度には約46億円をかけていたものが、平成19年度には24億円と約半分にまで絞られているという点で、安全性の確保の観点から、大変気がかりであります。

 ここで、今回取り上げておりますテーマであります公共施設マネジメントの説明をしておきたいと思います。資料の裏面(←クリックすると配布資料が開きます。)になります。
 公共施設を適切に維持管理していくためには、ミクロとマクロの視点での管理が必要であると考えます。
 
 ミクロの視点とは、各施設管理者による個別の建物管理の視点でございます。それもさらに分けると、利用率の向上や経費削減による利用者1人あたりのコストパフォーマンスの向上、利用者の満足度の向上など運営面での管理、そして、建物の安全性や快適性の確保、計画的な予防修繕などによる修繕の効率化及び長寿命化など、物理的な管理になります。

 一方、マクロの視点とは、市全体の施設の保有状況、用途別の施設の状況、地区別の配置や利用状況、施設の性質によっては近隣市の施設の状況も加味しながら、市全体の状況と将来像を俯瞰した観点で、公共施設を資産ととらえ、その利活用を模索する行政経営の視点です。そして、そうしたマクロの視点で各施設に関する政策推進、判断を行うことを想定しながら、全市統一的に個別の各施設の必要なデータを積み上げていく必要がございます。

 それでは、具体的に、公共施設マネジメントの要素を抽出致しまして、質問に移りたいと思います。

ア)指定管理者制度の活用
各施設の運営面での最適化
■質問の背景
 本市では、導入後、丸4年が経過し、これまでに277施設に導入され、平成21年度の指定管理料の合計は44億5,500万円となっております。また、導入前と比較して、昨年の9月議会の時点ではありますが、全体で年間約7,100万円の経費削減効果があったとしています。指定管理者制度は、施設の管理において、民間の力を活用しながらサービスの向上と経費の削減を図ることを目的に導入された制度でございます。
 今議会で報告されている包括外部監査報告書でも多様な視点から多数の指摘を受けているところですが、その多くは、導入当初、つまり5年も前から議論されてきたことでありまして、そうした課題が指摘されているわけであります。改めて選定時の情報提供に関する問題やモニタリングの実効性など、全庁的に改善を促すべきと考えます。

■質問
 先ほど申し上げました運営面での管理の観点を踏まえまして、指定管理者制度活用の今後の改善点、方針をお示しください。

■市の回答
 指定管理者制度は、平成15年9月の地方自治法改正により、市民サービスの向上とコスト縮減を目的として、公の施設の管理に関する制度が従来の管理委託制度から移行したものでございます。本市におきましても、平成17年の広田山荘、自転車駐車場の2種類67施設への導入に始まり、本年4月現在、34種類277施設において指定管理者による管理運営を行っております。22年4月には、指定期間満了により、広田山荘など4種類112施設の指定管理者を改めて指定する予定となっております。
 本市では、施設の設置者として、指定管理業務が適切に行われているかを確認するため、20年度から指定管理者運営評価シートを施設ごとに作成し、管理運営状況に対する評価を行っております。今後とも、このようなモニタリングの仕組みを充実させるとともに、モニタリングの結果を管理運営に反映させていくことで品質管理に努め、市民サービスの向上を図ってまいります。さらに、指定管理者の選定の際に、本市が運営に関する補助金を支出している外郭団体が応募してきた場合には、他の応募者とできる限り条件をそろえるような仕組みを取り入れてまいりたいと考えております。
 また、公募によって指定管理者を選定した施設でございますが、20年度に8種類44施設について、非公募から公募による選定に変更したことにより、130施設となっております。今後も、施設の性格や社会情勢、他市の状況なども勘案しながら、公募による選定の可能性を検討するとともに、適切な制度運営に努めてまいります。

■意見・要望
 まず、今回の質問をするにあたって、総合企画局が適切に機能していないと私は感じました。
 と言いますのも、今回、指定管理者制度を取り上げ、あと、PFI手法、公共事業評価、それから中長期修繕計画など、行政経営改革基本計画に基づいて導入を図ってきたのですが、その後の検証、(効果や課題に関する)調査が全くできていません。これらの制度は、当然各所管で取り組みの趣旨を理解して活用するという意識を持って活用して頂かなくてはいけないのですが、行政経営改革を進めてきた総合企画局が、これらの制度が現場で活用されているのか、特に指定管理者制度の問題点については最近指摘が非常に多くなっていますが、そういったことをしっかりと把握しているようには見えません。
 制度さえ作ってしまったら、あとは各所管に任せっきりになっていないかと感じます。確かに任せる部分もあってもいいとは思うのですが、その後どうなっているのかというのは、検証しなければいけないと思います。そもそも行政経営改革というのは、お役所仕事はやめましょう、やりっ放しの行政運営を改善しましょうということも趣旨としてあったと思うのですが、この改革を推進してきた総合企画局が最もやりっ放しにしているということをまず指摘したいと思います。
 ですので、全庁で導入した制度がどのように活用されているのかということを改めて検証し、適切に活用される状況をつくっていただきたいと思います。そのために、総合企画局は事務局的な機能になるとは思うのですが、しっかりと取り組んでいただきたいと、まず要望をしておきたいと思います。

=====ここまでが本会議場での議論の概要=====

次のコラムからは、各施設の再整備計画について掲載します。

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