PFI手法と公共施設の複合化ー公共施設マネジメント

2009年9月30日[カテゴリ:公共施設マネジメント, 質問

 PFI手法については、初当選直後の平成15年6月議会で取り上げて(←クリックするとコラム「PFI手法の適用」が開きます。)以来、機会を捉えて一般質問で議論してきました。長年検討していた東部総合処理センターへの適用については、結果的に見送られましたが、市営住宅の建替えにあたって、PFI手法のBT方式で行われることが決定しています。
 
 本来のPFI手法は、施設の維持管理、運営についても設計・建設した事業体が担う事例が多いのですが、市営住宅については、市全体の市営住宅の管理をすでに指定管理者に委託していることから、活用方法に制約の多い公営住宅の管理運営だけであれば、スケールメリットが生かせる既存の指定管理者に、新たに再整備する住宅の維持管理も委託した方が効率的であると判断された結果、資金調達から設計・建設までを同じ事業体が担うBT(Built Transfer)方式という変則のPFI手法が用いられる計画となっています。

 公共施設マネジメント(←クリックすると議場で用いた配布資料が開きます。)を実施するにあたって、新たな資産を生み出すこととなる段階において、維持管理までを勘案して効率的な事業手法を選定する必要があります。そのスキームを盛り込む必要があると考え、この項目で取り上げました。

=====本会議場での議論の概要=====

平成21年6月議会一般質問

1.公共施設マネジメントについて
イ)個別の公共施設の再整備計画

(市営住宅と福祉施設との複合化)
■質問の背景
 次に、現在、マクロの視点を欠いたまま進められております公共施設の再整備計画について伺います。
 市営住宅ストック活用計画に基づいて、今後10年間の建てかえ事業計画が昨年3月に発表されました。その中で、甲子園九番町団地の再整備事業において、資金調達から設計、建設までを民間が行った後に施設を市が買い取るBT方式によるPFI手法の適用が決定され、そのほかにも、財源対策や余剰地の利活用なども含めて、本市では斬新な取り組みが複数取り入れられた事業計画となっており、念入りな調査と意欲的な検討の姿勢を大変評価しております。
 また、当事業では、敷地内に余剰地が確保されることになっております。そこで、老朽化などにより近々大規模改修や再整備の検討を要する高齢者施設、そして周辺の保育所などの状況も勘案しながら、複合機能を持つ福祉施設を整備するなど、新たに生まれる余剰地をニーズに合わせて利活用すべきであると考えております。
 そしてまた、その施設整備にあたっても、別のPFI手法による整備も検討できると考えられますので、そのためには早目の検討が必要となってまいります。
■質問1
 PFI法を適用したBT方式による甲子園九番町団地第1期建替え事業の進捗状況並びに当方式の評価、主な事業効果及びPFI手法の課題をお示しください。

■市長の回答
 事業の実施にあたりましては、単なる市営住宅の建替えにとどまるのではなくて、保育所や高齢者福祉施設などを併設できないか、また、従前から行われていた盆踊りなどの地域コミュニティー活動が再開できるか、さらに、枝川の桜などの景観を生かすことはできないかなどを配慮して、一つのまちづくりとして取り組むよう指示しているところでございます。

■質問1に対する市の回答
 当団地の建替え事業は、平成20年から平成29年の10年間に、3期に分けて、約430戸の市営住宅を建替えするものでございます。今回の第1期建替え事業は、事業費が20億円を超えることから、西宮市PFI基本指針に基づく検討の結果、PFI法によるBT方式、BT方式とは、民間事業者が住宅を完成させました後に市が買い取る方式のことでございますが、これが最適な事業手法であるとの方針決定を行い、業務を進めているところでございます。

 まず、一つ目のBT方式による建替え事業の進捗状況についてでございますが、本年1月の方針決定後、4月1日にPFI法に基づく実施方針及び要求水準書案を市のホームページに公表し、4月7日には、PFI事業の実施方針等の説明会を開催し、当事業の周知を図りつつ、発注者であります市と参加しようとする民間事業者との円滑な事業実施の促進に努めてまいりました。また、5月25日には、学識経験者から構成されますPFI事業者選定委員会において、特定事業の選定及びPFI事業における実施効果についての審議を経まして、当事業を特定事業として選定するとともに、今議会におきまして、当事業における建替え住宅の建物購入費に係る債務負担行為の設定につきまして御審議をお願いしているところでございます。
 今後の予定につきましては、7月中旬に当事業の特定事業選定の客観的評価内容の公表と入札公告を同時に行い、9月中旬ごろ入札、10月中旬ごろに落札者の決定、11月中旬に仮契約を経まして、12月市議会において本契約の御審議をいただく予定にしております。その後、PFI事業者との本契約を結び、事業完了につきましては、平成24年1月ごろを目指しているところでございます。

 次に、当事業の評価方法と事業効果についてでございますが、事業効果の検証作業と致しまして、定量的評価及び定性的評価を行いました。
 事業コスト面での比較となります定量的な評価と致しましては、従来方式と比べ、BT方式がコスト縮減を図れる割合、いわゆるVFMの値を約9%と算出しております。この主な要因は、性能発注による設計、施工の一括実施、民間事業者の創意工夫による工事費縮減及び設計・建設時に携わります市担当職員数の軽減などが挙げられます。
 また、品質、サービス等の面での比較となる定性的な評価につきましては、民間事業者が設計、建設を一括して行うことで、民間の持つノウハウや創意工夫により、民間の企画力及び技術力が生かされた整備が期待でき、また、市が事業完了時に施設を買い取るため、事業中の財政資金の効率的・効果的活用を図ることができます。さらに、このPFI事業の企業参加資格要件に、市内企業とのJV、いわゆる建設工事共同企業体を組むことを義務づけていることから、市内企業の競争力や企画・提案力の強化及び地域経済の活性化にもおおいに寄与するとも考えております。

 次に、PFI手法の課題についてでございますが、まず、この事業方式は、PFI法及び国のPFI事業実施に関する基本方針に基づいて、公平性、透明性、客観性等を確保しつつ、法的な手続を進めていく必要があることから、従来方式よりも1年以上の期間を要することでございます。また、今回の事業は、市内業者とのJVを事業者の参加資格要件にしておりますが、市からの前払い金がないことから、事業着手時の資金調達能力が問われる状況となることなどが考えられております。

■質問2
 市営住宅の統廃合に伴う土地の売却による財源の確保や利活用についてお考えをお聞かせください。

■質問2に対する市の回答
 次に、二つ目の市営住宅の統廃合に伴う土地の売却等による利活用についてでございますが、当団地の建替え事業は、甲子園九番町団地、古川町団地及び南甲子園3丁目団地の3ヶ所の市営住宅を1ヶ所に集約し、その跡地を処分することで、当建替え事業の国庫補助金以外の財源に充てることとしており、今後の建替え予定団地についても同様の手法を考えております。
 また、老朽化した木造住宅10団地の土地の売却など、利活用につきましては、現在、計画的な移転あっせんにより、住宅の集約化を鋭意進めているところでございますが、昭和30年代建設のテラス住宅6団地につきましても、今後新たに移転推進等の専門チームを強化するなど、本年度中に移転集約計画案を検討し、跡地の売却など土地の有効活用を積極的かつ計画的に推進していく予定としております。
 市と致しましては、今後10年間の建替え事業は、事業費のうちの一般財源等をこれらの土地の売却益で賄うことを見込んでおり、PFI事業によるコスト縮減及び良質な住宅整備などともあわせ、建替え事業の効率化を目指しているところでございます。

■質問3
 大規模市営住宅団地の建替えに伴う高齢者施設や保育所施設などの併設について、現在の検討状況をお聞かせください。

■質問3に対する市の回答
 建替えに伴う福祉施設などの併設についてでございますが、公営住宅整備事業等補助要領によりますと、100戸以上の大規模な建替え事業におきましては、原則的に保育所や高齢者福祉施設等の併設を検討するよう義務づけられております。市におきましても、今後も、高齢化が進み、特別養護老人ホームやケアハウス等の高齢者を対象とした施設が必要となってくるため、周辺の浜甲子園団地の建替え状況や既存の福祉施設の状況なども勘案しながら、市民ニーズに合いました施設の整備について、健康福祉局と検討協議を行っているところでございます。
 なお、この併設する福祉施設の着工時期は、第3期工事の既設の市営住宅の解体撤去後の平成27年度ごろの予定となるため、引き続き全庁的な調査検討を行い、国、県等の関係機関との協議調整も図りながら、市民サービスに寄与する魅力的なまちづくりを実施してまいりたいと考えております。

■意見・要望
 次に、市営住宅の再整備の中で、PFI手法は、大変手間のかかる手法と私も思っていたのですが、約1年多くかかるということで、逆に言うと、1年ぐらいの綿密な検討というのは、どの施設、直営で実施するにしても、それぐらいのことはしておかないといけないのではないかと感じました。
 ライフサイクルコスト、いわゆる施設を建設してからその後の維持のことまで考えた計画をしっかりと検討していないのが現状ではないのかと思っていますので、直営であっても1年程度発注までに時間をかけないといけないと私は思いますので、その辺の意識も持っていただきたいと思います。
 また、人員の軽減、担当職員を軽減できるというメリットが示されました。現在、耐震化事業に追われてまして、技術系の職員を増やさないといけないという議論もされていると聞いたのですが、目先の対応で技術職の方をどんどん雇うのではなく、まずはこうした(事業手法の)工夫をし、長期のスパンで採用計画を立てていると思いますので、無謀な採用につなげないように、工夫していただきたいと思いますので、総務局長にはくれぐれも要望しておきますので、お願い致します。

=====ここまでが、本会議場での議論の概要=====

 約430戸の住宅の建替えという、巨大なプロジェクトであることから、第1期から3期まで事業を分割しています。しかし私は、PFI手法の醍醐味である施設の維持管理・運営も一定期間委託するBTO方式を用いて、併設が義務化されている保育所や高齢者施設などの運営も含めて、市民ニーズや将来ニーズを踏まえた内容の事業提案を受けた方が、民間事業者の創意工夫をさらに引き出すことができ、より効率的で、建設期間の短縮や市の財政負担の平準化についても効果が生じると考えていたのですが、民間事業者にとってはリスクも高くなり、事業を受けて頂ける事業者がなければ成立しませんので、BT方式で進めざるを得ないと今回は判断しました。
 今後の公共施設の再整備においては、本来のPFI手法の利点をさらに活かせる事業手法を活用するべきと考えています。
 次のコラムでは、教育委員会の事業について掲載致します。

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