入札制度改革②-VE提案制度

2005年9月22日[カテゴリ:市役所改革, 質問

前回コラムの続きです。

 入札は税金の効率的かつ効果的な使い方に関わる事務事業であり、常に新しい情報を取り入れ改善を図るべきです。そして、今回提案した事業手法は、効率的かつ効果的な税の投入が可能となり、かつ、市内企業の育成を通じて雇用の増加、そして、市税収入の増加が期待されるものです。

 少しマニアックな内容ですが、ご覧ください。

====本会議場での議論の概要====

平成17年6月議会一般質問

1.入札と契約について
ア)入札制度改革に対する意欲

(VE(バリュー・エンジニアリング)提案制度の導入)
■田中の提案
 今回は、工事に関する入札についての御提案がございます。国や都道府県、他の入札制度の先進市から見れば、今ごろそんな提案かと笑われそうな施策ではありますが、本市では、意図があってか、採用されていないものです。まずはそこから始めなければ、本市における入札制度の進化はないと考えましたので、今回は4点御提案したいと思います。
 
 まず1点目、バリューエンジニアリング方式の入札(以後、VE提案制度と呼びます。)です。
 VE提案制度とはどういった制度なのか、簡単に説明致します。

 VE提案制度とは、目的物(工事完成後)の機能を低下させずにコストを下げるための技術、または同等のコストで機能を向上させるための技術の提案を民間企業から募り、コスト縮減額の一部を提案者に還元したり、後ほど述べますが、ランク分けの際の主観点に入れる等のインセンティブを付与することで、コストの縮減だけではなく、長期的な品質確保・向上に結びつける効果が期待されるとされています。


↑議場で使用したボード(クリックすると拡大されます。)
 
 こちらボードを用意しましたが、少し字が小さいので、お手元の資料(←クリックするとPDFファイルが開きます)をご覧ください。
 
 工事の施行が行われるまでの工程として、基本設計、詳細設計、積算、入札、契約、施工と、それぞれの段階に分かれます。VE提案を募るタイミングとしては、大きくは積算前と入札時と契約した後、この大きく3つの段階になります。
 それぞれ設計時VE、入札時VE、契約後VEと呼ばれていますが、設計時VEには、基本設計の際と詳細設計時と積算前と、さらにタイミングが3つに分かれるといった複雑なことになるわけですが、今回は省略致します。
 そして、この積算前と入札時と契約後のそれぞれのVE提案、それぞれのタイミングによって特徴があり、お手元の資料の方に簡単にまとめました。これは、これまで国や都道府県、他市において行われている事例を参考にして私がまとめたものです。ご覧頂ければと思います。
 
 コストの縮減効果としては、VEのタイミングが早ければ早いほど大きいとされていますが、そのVEを取り入れる技術は大変難しく、大抵は入札時か、もしくは契約後のVEを取り入れるVE提案制度を導入している自治体が多いのが現状です。これは、工事施工方法や原材料など、民間企業のノウハウを行政に提供してもらい、市役所の技術向上と、そしてコスト縮減、品質の確保を図ろうという大変欲張りな手法です。

 もちろん、その提案を受けるためには、企業にとってのメリットも考えなくてはなりません。入札時であれば、民間企業の利益が減る可能性もあり、ノウハウを出してもらうわけですから、VE提案を重点的に評価しなければなりませんし、その後の入札機会の際のメリットなども考慮すべきです。
 また、契約後VEであれば、実際に標準の案で落札して、その後の設計変更や施工方法の変更によりコストが削減できれば、その削減分の一定割合をVE提案費として企業にバックするなどのメリットを付与する必要があります。現実、導入している自治体においては、様々な工夫がなされています。

 民間企業では、市内企業だけで見ても、特許を取られているようなものも含めて、競争時代を生き抜くべく、新しい工法や施工方法、長もちする材料などノウハウを蓄積しておられます。市役所自体の技術向上と公共工事のコスト削減のために、そして、民間企業の成長意欲、技術向上に対する意欲を促進させるためにも、是非ともこのVE提案制度を導入すべきと考えます。

■田中の質問
 本日提案しましたVE提案制度に対する市の見解を伺います。

■質問に対する市(総務局)の回答
 バリューエンジニアリング制度についてでございますが、本制度は、御質問でも説明を頂きましたように、目的物の機能を低下させずにコストを縮減する、または同等のコストで機能を向上させるための技術の提案(を受け付ける制度)でございます。
 現在、工事の事業手法につきましては、本市では、各事業所管課において決定を致しておるところでございます。今後、価格及び入札者の提示する機能、技術等の価格以外の要素を総合的に評価し落札者を決定する方がよいと判断される事案につきましては、その事業手法について、また契約後において受注者からの技術の提案についても、各事業所管課と研究をしてまいりたいと考えております。

■回答を受けての意見・要望
 工事のコストだけではなくて、環境負荷の軽減など社会的コスト、そしてまた工期の縮減等の時間的コスト、またライフサイクルコスト、こうしたものを数値化して総合的に評価する手法、これが国では研究が始まっています。
 そこで、その前段階として、現在、都道府県レベルまではかなり進んできています。そして、政令市だけではなく、お隣の尼崎市では総合評価方式での工事の入札も行われており、金沢市でもVE提案制度を導入しています。

 御答弁では研究するという前向きなのかどうかよくわからない表現をなされました。いつまでに、どのような研究をするのか、そういった具体的なところを聞きたかったのですが、今のところは研究すらしていなかったことが分かりました。
 
 少し話はそれますが、現在本市が取り組んでいる行政経営改革は、限られた資源を最大限に活用し、市民満足度の高い行政運営を行うというのが理念であったはずです。そして、その仕組みをつくることで全職員の意識改革を促そうという目標があったはずです。その改革を進めなければいけない今議場におられる理事者の皆さんが、まだ意識改革ができてないのではないかと感じるわけです。

 この行政経営改革の中で「目標管理システム」の導入も盛り込んでいます。しかし、結局、今回の回答でも「研究する」と答えるだけで、具体的にいつまでとか、そういったことが答えられない、そうしたことが疑問の残るところです。この行政経営改革の理念は、行政経営改革の基本計画に上げた項目だけに当てはまることではないはずです。総合企画局だけが行政経営改革を行うわけではありません。早急に、全庁的にその辺の意識改革、行政経営改革の基本理念を実践してほしいと思います。

 本市の行政改革は非常に遅れています。御答弁を伺っていても、この入札制度を一つとってもそうだと感じました。新しい入札の方法、こうしたことに取り組む意欲が全く感じられません。これは、行政経営改革の項目には上がっていませんが、上がっていないからといって検討しないというのはおかしいです。この件は、総務局の契約課、契約についてはここで調査研究をするというのが事務分掌規則でも決められています。しかしながら、実際にVE提案制度を採用しようという段階になって、技術を評価できる、その技術を持っているのはその事業を行う所管課、ですので、所管課とともに研究をするという表現をされたのだと思います。

 似たようなことが以前にもありました。VE提案とは性質が違うかもしれませんが、総合企画局でPFI手法の導入に向けて検討していくということを決めて、事業を担当する課がいざ検討をするという段階になって、結局できなかったという失敗をしています。これと同じ失敗をしないでください。VE提案制度はこれまでにない入札方法ですので、同じ研究するのであれば、適切に導入できるようにというところまでお答えいただきたかったです。

 例えば、(入札制度の担当をする)総務局はどうやって(工事を担当する)所管課と研究していくのですか。この導入事例などを調べるのはそんなに時間はかかりません。さっさと契約課の方で調査をして、本市でこれから実施する事業、どのような事業に実際に適用できるのかというところまで調査すればいいです。そして、導入を前提とした準備を(公共事業の)担当課の方でしてもらうという姿勢で研究を進めてもらわないと、いつまでも導入できないことになるということを強く指摘しておきます。

====ここまでが本会議場での議論の概要====
 
 私の意見要望の部分は、分かりづらいと思いますが、端的にまとめると、期限も具体的な研究方法も示さずに「研究する」と回答する市の姿勢を改めて欲しいということでした。制度を導入する考えがないのであれば、その合理的な理由を回答するべきですし、研究するのであればどういう姿勢で研究するのか回答すべきであった、ということを「行政経営改革」に絡めて述べました。

 入札の手続きを担当している部署は総務局になります。そして、工事を担当している部署を市は「事業所管課」と呼んでいるのですが、工事は土木局や水道局、環境局が多く、その他、学校整備では教育委員会、公共施設の整備についてはほぼ全ての局に及びます。ですので、まずは入札事務を担当する総務局で入札手法に関する制度設計をする必要があります。

 議会で「研究する」と回答しながら放置されていることは多々あります。税金の効率的かつ効果的な使い方に関わることで、かつ産業振興、しいては市税収入の増加にも関わる非常に重要なことですので、引き続き、動向を見ていきたいと思います。

 さらに改革の提案は続きます。

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