市の職員を増やす前にやるべきことー平成30年12月議会議案質疑

2019年3月10日[カテゴリ:市役所改革, 質問

西宮市職員定数条例

 市役所で働く正規職員の人数は、西宮市職員定数条例で定められ、その定数を超えて市長は職員を任命できないことが地方自治法で定められています。しかし、職員数が条例で定められた定数を下回ってはいけないとはなっていないことから、事実上、条例では職員数の上限が定められていることになります。

 現在、西宮市全体で3,946人と定数が定められており、実際の常勤職員数は3,745人で、定数に対する実数は94.9%となっています。非正規職員である嘱託職員や臨時職員は、この条例上の職員数には含まれません。

 そして、平成30年12月議会では、この定数を事実上増やす内容の改正案が市長より市議会に提出されました。

その改正理由は、
 現在、育児休業を取得した職員が所属する職場では、当該職員の担当業務を他の職員に割り振って現員で対応し、現員で対応できない場合には、臨時職員を任用しているなかで、
①急速に増加する行政需要に伴い、職員1人が担当する業務が年々増加している、
②複数の育児休業取得職員がいる職場が増加している、
③育児休業取得職員が担当する業務を取りやめることはできず、その業務を他の職員が分担することも困難である、
④特に、保育所や病院など女性専門職の比率が高い職場では、より深刻な状況であり、育児休業を取得しようとする職員が気を遣うなど「仕事と子育ての両立支援」ができていない職場が発生している、
という状況から、業務を円滑に運営するため早急に対策を講じる必要が生じているためとのことです。

 そこで、「定数の外に置くことができる職員として、育児休業の承認を受けた職員を加え、休職等により定数の外に置かれていた職員が復職し、又は職務に復帰した場合にも、当該年度の末日までの間は、引き続き定数の外に置くことができるようにする。」ことで、職員のワーク・ライフ・バランスの推進及び育児休業を取得しやすい職場環境の整備に対応するということでした。

 市職員の育児休業の取得状況は、平成30年4月1日現在では117人となっており、平成26年度以降、毎年100から120人程度が育児休業を取得しているそうです。

 これだけ多くの職員数を定数外にすると、実際に何名の職員が働いているのか分かりづらくなってしまい、育休対応のためだけに大幅に正規職員数を増やすようなことになれば、将来的に固定経費である人件費が大きく膨らんでしまう恐れが出てきます。
  
 西宮市役所では、現在も一定「育児休業」は取得できています。さらに取得を促進する必要性や期待される効果等について質疑した結果、明確な回答は何一つなく、市役所職員の生産性を上げる努力も民間の活用も進めようとせずに、育休取得の促進を単なる口実にして、高給厚遇の正規職員数を増やすために条例を改正するものと判断し、私が所属する会派は反対をしました。
 
 つまり、「やるべきこと(効率化)を先にやってください。」ということです。
 
 市議会全体でも、反対が多数となり議案は否決されました。私が所属する会派の幹事長として代表して行った質疑とその解説、本会議最終日に述べた反対理由を以下にご紹介します。

====本会議場での質疑の概要====

平成30年12月議会 議案質疑(12月11日)

■質疑の背景
ただいま上程中の議案第533号西宮市職員定数条例の一部を改正する条例制定の件につきまして質疑を致します。
 当議案の提案理由は、市職員のワーク・ライフ・バランスの推進及び育児休業を取得しやすい職場環境の整備に対応することに伴い、育児休業中の正規職員を職員定数外に置くことを可能とするものとなっております。
 そこで、以下5点お尋ね致します。端的にお答えをお願い致します。

■質問1(改正する必要性の根拠について)
 現在、市の職場において育児休業を取得したいと希望しているものの遠慮して取得できていない方がどれぐらいいらっしゃるのか、もしくは定数外になるのであれば取得したいと考えている職員が何人いらっしゃるのかなど、条例改正の必要性を示すための具体的な根拠を数値でもってお答えください。数値がなければ、ないとお答えいただいて結構です。

■質問1に対する市の回答
 育児休業を取得したいと考えている職員の具体的な数につきましては、出産に起因する休業であることから、事前に把握することは困難であります。しかしながら、各局と定期的に行っている人事ヒアリング等を通じて、相当数の職場において、業務繁忙のため職員が育児休業を取得しづらい状況にあることを把握しております。

■解説
 「相当数。。。」。改正理由の4番目に挙げられた「④特に、保育所や病院など女性専門職の比率が高い職場では、より深刻な状況であり、育児休業を取得しようとする職員が気を遣うなど『仕事と子育ての両立支援』ができていない職場が発生」の根拠が曖昧であることが明らかになり、その他の理由についても明確な数字は示されていません。

■質問2(効果について)
 今年度は、全職員数の約3%に当たる117名の育児休業の取得者がいらっしゃるとのことです。私たちは、ワーク・ライフ・バランスの推進、育児休業の取得は、少子化対策の観点からも非常に重要な政策であると認識しております。しかし、単に職員を増やすための口実とされては困ります。この条例が可決された場合、育児休業の取得促進のために採用する職員数をどの程度見込んでおり、その結果、育児休業を取得できる方がどの程度増えると見込んでいるのか、具体的な計画や数値的な効果をお尋ね致します。なければ、ないとお答えいただいて結構です。

■質問2に対する市の回答
 今回の条例改正に伴い新たに採用する職員数については、現時点では未定でございます。条例が可決されました後に、改めて各所属へのヒアリング等を行った上で、適正な採用数について確定していきたいと考えております。

■解説
 話になりません。117名の育児休業者を正規職員でカバーするためには、当然、そのために採用しなければなならない正規職員数を明確にする必要がありますが、その準備がなされていないことがはっきりしました。

■質問3(民間企業との比較について)
 数値的な根拠は私は持ち合わせておりませんが、公務員は、比較的職場環境に恵まれており、民間企業に比べると育休を取得しやすい環境にあるのではないかというイメージが持たれております。市内民間企業における育児休業の取得状況と比較して市役所職員はどの程度取得率が低くなっているのかをお示しください。把握していなければ、わからないとお答えいただいて結構です。

■質問3に対する市の回答
 市職員と市内民間企業との育児休業取得率の比較についてですが、平成28年度に実施した西宮市労働実態基本調査によりますと、市内民間企業では、男性で5.8%、女性で88.1%との結果が示されております。一方、本市職員の状況といたしましては、男性で3.5%、女性では100%となっております。なお、この取得率は、期間の長短を問わず、産後休暇の後に1日でも取得した者を対象としたものでございます。

■解説
 民間企業に比較すると西宮市役所はまだ恵まれている方であることがはっきりしました。育児休業取得促進については、民間企業に対する政策、支援が先であり、それが実現できてから必要であれば西宮市役所の職場環境の改善を検討するべきと言えます。

■質問4(人事政策への影響について)
 一時期に大量に採用した職員がだんご状態になると、将来的に適正な人事政策を遂行しにくくなることも考えられます。また、条例で定める現在の職員定数に影響を及ぼさない範囲で対応すると事前に説明を受けておりますが、現状、職員定数と実数の差は、市長部局ではわずか31名となっております。職員の育児休業の促進を図るためには相当数の職員採用が必要であり、現在の条例で定める職員定数にも影響がある、むしろ影響がない程度の対応であれば、育児休業がとりやすい環境を整備することは難しいのではないかとも感じております。本当に職員定数への影響なく育児休業の促進が図れるのか、具体的な方法をお示しください。

■質問4に対する市委の回答
 今回の条例改正は、育児休業者を職員定数の外に置くことにより、この範囲内で代替職員の配置を可能とするものでございます。具体的に申しますと、現在は育児休業者を定数内職員として位置づけていることから、実際は欠員となっている状況であり、育児休業者を定数内職員の位置づけから除外することで、現行の職員定数枠を変えない中で新たに職員の配置をできるようにするということでございます。
 なお、育児休業者が職務復帰した場合は、あくまでも育休者の代替で配置するというものでありますことから、新たに育児休業を取得した職員がいる職場に配置し、人事異動により調整を行っていきます。
 また、年間を通じて育児休業を取得している職員数よりも代替で任用した職員数のほうが多くなると見込まれるような場合は、次年度の採用計画において採用数を減らすなどの手法により、あくまで現行の職員定数枠内で運用できるよう、適切な人事管理を行ってまいります。

■解説
 人事管理については場当たり的な対応をすることを明言したに等しく、育休復帰職員が増えて定数を超えてしまうようなことになった場合は、条例をさらに改正して取り繕う可能性は否定できません。これまでの市役所の対応を勘案すると、単に正規職員数を増やすことになると考えざるを得ません。つまり、ただでさえ人件費が上昇している中で、将来的な負担を残すことになることは明白なのです。

■質問5(職員の生産性の向上による育休取得環境の整備)
 これ以上職員定数を増加することに対しましては、納税者の理解は到底得られないと考えてまして、私たちは、まず業務改善に向けた分析を求めて、これまで反対をしてきております。そして、これまで、事業の取捨選択、業務遂行体制の改善や効率化、そして、保育所の民間移管――これは、本年11月9日、総務常任委員会で所管事務報告されました人件費・人員配置等の分析報告についての中でも、公立幼稚園と公立保育所が他市と比較して多い、そして、民間委託している割合が低いとの分析結果がありました。
 この公立保育所の民間移管を初めとする民間活力の導入、そして、勤務実績不良もしくは適格性欠如の状態にある職員に対する分限処分の適用を積極的に進めるようこれまで求めてまいりました。これらを迅速に着実に進めていれば、このわずか3%の職員が育児休業を取得しても、人事による調整によって業務を遂行できる体制は構築できたと考えております。そうした努力もまだ半ば、もしくは未着手の中で、なぜこのような定数条例の改正という方法を選ばれたのか、我々は不信感を抱いております。これら人事や定数に対する今後の対応を明確にお答えください。

■質問5に対する市長の回答
 まず、私が市長である限り、市長事務部局において、市民ないし議会の皆さん方から行政の肥大化と受けとめられる定数の増は行いません。今、市長事務部局ないし行政の肥大化というようなことを申し上げたのは、例えば他の部局、消防などの話は、また議会の皆さん方としっかりとさせていただかなければいけない話もございます。
 また、行政の肥大化に映らないというようなことで申し上げたのは、例えば教育委員会から丸々20人分、仕事を市長事務部局に持ってくるというようなケースも、それはあろうと思います。ただ、いずれにいたしましても、行政の肥大化になるそうした市長部局における定数増は、私が市長である限り行いません。

 それから、民間活力の導入に関しては、現在、業務プロセス分析を行おうと準備をしているということでもあります。業務量の縮減化・効率化を行うとともに、民間委託できるものは何かというようなことをしっかりと見てまいります。ただ、これも少し時間がかかるものでもありますので、しっかりと行ってまいりますが、これに関しても当然行ってまいります。
 次に、勤務実績不良の職員に関してのことでございますが、公金によって雇用されている市職員がしっかりと仕事をしていないというようなことがあるとすれば、それは問題であります。これまで当局も、平成28年に人事評価制度を導入するなどして対策を講じていると承知しておりますが、現行の対策が十分なのか、私の立場でより主体的にリーダーシップを発揮していきたいと思います。
 いずれに致しましても、行政経営改革は私の大きな公約であり、議会の大きな声であると承知をしております。簡単な道のりでないとは思いますが、議会の御指導、後押しをいただきながら進めてまいりたいと思います。

■解説
 現市長の任期の間だけの行政の肥大化による定数増はしないというのは、いささか場当たり的な対応と言わざるを得ません。私たちは、将来世代の負担増を懸念しており、将来にわたる懸念を払しょくできない限り認めることはできません。

■質疑のまとめ
 意見は控えますけれども、最後の5点目ですね、市長から決意を述べていただきました。その点はこの本会議場で確認をさせていただきました。
 あと、1点目から4点目につきまして、特に1点目から3点目につきましては、少し説明不足、準備不足の感が否めません。今後、総務常任委員会でさらに議論がされると思いますので、そちらのほうまでにまだ少しだけ時間はございます。しっかりと数値のほうを用意していただいて、議論がかみ合うようにしておいていただきたいと要望致しまして、私の質疑を終えたいと思います。

■反対討論(12月19日)
 政新会は、ただいま上程中の議案第533号西宮市職員定数条例の一部を改正する条例制定の件に反対致します。
 当議案の提案理由は、市職員のワーク・ライフ・バランスの推進及び育児休業を取得しやすい職場環境の整備に対応するということでした。質疑の際にも申しましたが、私たちは、ワーク・ライフ・バランスの推進、育児休業の取得促進につきましては非常に重要な政策であると考えております。そこで、本会議で質疑をいたしまして、会派の議員が総務常任委員会でも質問をし、以下の2点の問題が浮き彫りになりましたことから、今回の条例改正に反対するものでございます。

 まず、1つ目が、条例改正の必要性を説明する客観的な情報がないということでございます。
 条例改正の提案理由を根拠づける客観的・具体的な数値や情報について、つまり、市の職場においてどれだけ育児休業を取得しづらい環境にあるのか、定量的な根拠に基づく説明は終始なされませんでした。

 2つ目が、条例改正による効果が不透明であるということです。
 条例改正による効果につきましても、具体的な採用計画や、条例改正によって達成しようとするワーク・ライフ・バランスの推進等に関する目標値も示されず、この条例が可決された後に、私たちにとってはブラックボックスとも言える人事ヒアリングなるものによって正規職員を増員し、必要と判断した部署に配置すると答弁がございました。その判断基準も配置のルールも明示されることもないことから、本当に育児休業の取得促進という効果をもたらすのかが著しく不透明であるということです。
 
 以上のことから、今回の条例改正は、ワーク・ライフ・バランスの推進、育児休業の取得促進に真の目的があるのではなく、単に職員をふやすための口実とされてしまっていると判断せざるを得ません。
 
 そして、民間企業との比較において、市職員の育休取得率が女性は100%、民間企業が女性は88%とのことで、むしろ公務員は比較的職場環境に恵まれていることも示されました。まずは人材確保が困難な状況下で民間が置かれている厳しい環境を市幹部職員はもっと理解を深める必要があります。そして、市の職場に対する支援を訴える前に、納税者でもある市内民間企業や市民に対する政策を立案するのが先であると考えます。
 
 最後に要望です。
 私たちがこれまで求めてまいりました、①業務遂行体制の改善や効率化、②公立保育所の民間移管を初めとする民間活力の導入、③勤務実績不良もしくは適格性欠如の状態にある職員に対する分限処分、少なくともこれらを放置したままこれ以上職員定数を増加することについては、納税者の理解は到底得られないと考えております。
 先般の質疑に対する市長の御答弁からは、今のところこの考えについては共有できていると判断しております。これらの改革について、期限を明確に設定して私たち市民に示した上で、迅速に進めて頂きたいと思います。
 
 以上、今回の条例改正のように、ぬるま湯にちょっとお湯を足して湯かげんを調節するようなことはせず、厳しい環境の中で市職員の意識改革を促し、自発的な抜本的改革を目指すよう求めまして、反対討論といたします。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

 議会の意思として、職員定数を安易に増やすという市の姿勢が否定されたことは大きかったのではないかと感じています。民間は必至で努力している中で、役所だけがぬるま湯につかっているような状況を、市民を代表する市議会が見逃すことはできません。
 今回は否決されましたが、今後も引き続き、市役所改革の動向を注視していかなくてはならないと考えています。
 討論で述べた市役所の無駄を省いた上、職員が育休を取得しづらいという環境が明確に確認できれば、職員数を増やすことについても検討しなければなりませんが、まだまだその段階にはないと考えています。

 ①業務遂行体制の改善や効率化、②公立保育所の民間移管を初めとする民間力の活用、③勤務実績不良もしくは適格性欠如の状態にある職員に対する分限処分の遂行は最低条件です。
 そして、どうしても職員の手が足りないというのであれば、限られた財源で政策を遂行する必要がある以上、事業の取捨選択も検討しなければなりません。

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