地方版人口ビジョンの策定意義ー市役所全体での共有

2015年9月16日[カテゴリ:市役所改革, 質問

前回コラムの続きとなります。

====本会議場での議論の概要====

平成27年6月議会一般質問

1.人口ビジョンと少子化対策について
(人口ビジョンの市役所全体での共有)
■質問の背景(田中まさたけの説明、再掲)

 国会におきまして、昨年11月に、まち・ひと・しごと創生法が成立し、地方公共団体でも、地方人口ビジョンと地方版総合戦略(以後「総合戦略」と呼びます。)この二つが策定されることになりました。
 私は、以前より、長期的な人口推計に基づいて全ての政策の前提となるような少子高齢化社会における将来ビジョンが必要であることを指摘してまいりました。これは、今後の高齢者福祉政策のみならず、特に箱物に関する政策、道路などインフラ整備に大きく影響すると考えたからです。
 そして、平成24年12月及び平成25年12月議会での一般質問におきまして、本日も用いましたが、国立社会保障・人口問題研究所が公表している2040年までの西宮市の人口推計を見ながら、兵庫県が策定している少子高齢社会福祉ビジョンを例に挙げて、事態の深刻さを市民とも意識を共有するために、2040年の西宮の姿を具体的に明示した上で今後の政策を推進すべきであると提言致しました。市のほうからは、平成26年までにビジョンを示し、地域共生のまちづくりを策定する旨の答弁がございましたが、いまだ対応されておらず、誠に残念に思っております。

 西宮市では、震災以降20年間、人口が増え続け、お配りしました資料の表1のとおり、現在では子育て世代と呼ばれる40歳から44歳の人口が飛び抜けて多くなっているのがわかります。しかし、表2に示しましたとおり、平成18年度をピークに就学前児童数は減少を始め、表3のとおり、出生者数も、平成19年以降、減少の一途をたどっております。そして、今後さらに、裏面の表4のとおり、2040年までに、15歳から49歳の男性は約20%、女性は約25%も減少すると計算されています。
 こうした状況を鑑みると、人口ビジョンを単に総合戦略を策定するためだけに策定するという場当たり的な取り組みとすべきではありません。市の全ての計画や政策の前提となる考え方を示すべきであり、その意思を持って市は全力を挙げて取り組むべきと考えます。

■質問(田中まさたけ)
 今回策定される人口ビジョンの将来展望によっては、子ども・子育て支援事業計画を初め、現在の各種部門別計画の見直し作業が必要になるものが多数あると考えますが、市の見解をお尋ね致します。

■質問に対する市長の回答
 人口ビジョンと各種部門別計画との関係についてお答え致します。
 各部門別計画は、第4次総合計画と相互に補完、連携しながら、一体となって施策を推進するものでございます。一方、今回作成する人口ビジョンにつきましては、長期の推計や展望をお示しするものであります。したがいまして、期間が比較的短期間の部門別計画とは直接的にリンクするものではありません。しかしながら、次期総合計画策定にあたっては、2060年という長期の人口展望を推計する人口ビジョンは、まちづくりの将来ビジョンとかかわるものであることから、関係性について整理してまいります。

■質問の背景(田中まさたけの説明)
 本市の場合、表5のとおり、25年後の2040年には2005年当時の人口までの減少ですむと推計されておりますが、2005年と圧倒的に状況が異なるのは、高齢化率が2倍になっているということであります。本市においては高齢者福祉政策が大きな課題となると考えられます。

■質問2(田中まさたけ)
 今年度は次期地域福祉計画の策定に取り組まれておりますが、主に市民との協働を必要とする内容となることが予測されることから、市民との将来ビジョンの共有を図らなければ目標の実現は困難であると考えます。2025年問題まであと10年に迫った現在、今回策定される地方人口ビジョンと整合がとれた将来ビジョンの明示、明確化が必要と考えますが、市の方針をお尋ね致します。

■質問2に対する市(健康福祉局)の回答
 平成33年度までを計画期間とします次期地域福祉計画につきましては、2025年問題を考慮して、昨年度に策定した西宮市介護保険事業計画と整合させるとともに、国が頻繁に改定を行う福祉制度にも対応した内容となるよう策定作業を進めるべきものでございます。したがいまして、先ほども市長が御答弁申し上げましたとおり、地域福祉計画を初めとした部門別計画につきましては、第4次総合計画と相互に補完、連携しながら、一体となって施策を推進するものであり、長期の推計や展望を示す人口ビジョンとは直接的にリンクするものではないと考えております。

■再質問1(田中まさたけ)
 これまで、特に基本計画を定めるときには、人口推計を一定勘案しながら策定されてきました。ただ、人口に関する政策が、これまで、本市だけではないと思いますがなかったのではないかなと思います。今回の地方人口ビジョンの策定は、西宮市の人口に関する政策を策定すると私は理解していたのですが、その点どうなのか、教えていただけますか。

■再質問1に対する市の回答(政策局)
 このたびの地方総合戦略における人口ビジョンというのは、先ほど市長が御答弁申し上げましたように、2060年という将来の姿を市民とともに共有しようというものです。その2060年の将来の姿を見据えて、当面──総合戦略というのは5ヶ年の計画でございます。5ヶ年でできる政策目標、特に数値で重要数値目標等を設定してしっかり取り組んでおくということでございます。したがいまして、2060年の姿をやっぱり見据えるということが重要なことではないか、このように考えております。

■再質問2(田中まさたけ)
 2060年の西宮の姿を市民の方にお示しすることで、将来展望などを市民と共有するということです(それは、これまで私も必要性を主張してきたことです。)。しかし、2060年というと、まだ今から45年先ということで、その姿というものが非常に想像しにくい(実感が湧かない、自分には関係ないと感じる)ようなものでございます。ですので、十分その辺に留意して今後取り組まれる必要があると思っています。

 先ほど、部門別計画の見直しに関する答弁の中では、直接人口ビジョンとリンクしないため見直す必要はないという趣旨の御答弁を頂きましたが、一方で、先ほどの政策局長からのお答えでは、今後、人口ビジョンの将来展望、これをもとにしまして、5年間を計画期間とする具体的な総合戦略を策定するとなっております。
 
 この戦略の策定は、政策局が中心となって今後進められると思います。その総合戦略を個別具体に実施するのは、やはり広範に及ぶ各事業局になってくると思いまして、そういった総合戦略を今後進めていくためには、各部門別計画との整合性をきっちりと図っていかなければならないと考え、そういった見直しが必要になってくるのではないかと考えて質問をしたのですが、その点、そうした整合を図る必要があると思うのですが、必要ないのでしょうか、お答えください。

■再質問2に対する市長の回答
 政策推進において、もちろんデータに基づいてやらなければいけませんが、基本的には積み重ねの数値を使って政策推進というのはされるべきだと考えています。一方で、長期にわたる人口ビジョンというようなものとかで、西宮は将来的にはこういうふうなまちになっていく可能性がありますねという、そういうものが示されることというのと積み重ねでつくった政策、これが、積み重ねでつくっていくときに、長期的に西宮がこういう姿になるのであれば、積み重ねという数字から政策をつくり出すときに考えの中にあってしかるべきだと思っているんです。
 ただ、長期的な人口ビジョンに基づいて、2060年にこうなっているんだから、5年後はこうなっているわけで、だからこういう政策が必要だというふうな演繹的な政策設計よりは、実際現場にある数字──今のところこういうふうに伸びてきていますとか、現状こういうふうな課題がありますという課題及び現状の数値の積み重ねから政策をつくっていくと。もちろんそのときに頭の中には長期ビジョンというのも置いた上での設計が必要となってくると考えています。

 なので、今のところ、今の数値、積み重ねの数値でつくっている政策推進の方向性を今直ちに修正したり補正したりする必要があるとは思っておりませんで、答弁の中でも申しましたが、次に長期の総合計画をつくる段においては、2060年に西宮がこういう姿になるのであれば、これからの10年はこういうまちづくり──期間はまだ決まっておりませんが、長期においてはこういうまちづくりをするべきだろうという、そういう基本構想ですね、そういったものに導き、落とされてくるところだろうというふうに考えております。

■再質問3(田中まさたけ)
 今の市長の御答弁ですね、(甚だ分かりにくいので、)少し整理をしなければいけないかなと思うのですが、これまで積み上げてきたデータでつくる計画と将来の人口ビジョンに基づいて導き出されるもの、これが一致しないと、結局、総合戦略のために各部局は取り組みをし、そして、これまで積み上げてきた方向性に従って、プラスして各部局はこれまでの政策を推進していかなければいけないということが生じるのではないかと思っています。
 そうしたことは当然好ましくないと思うんですが、そういったことにならないように、今後どのようにしていくお考えなのかというところをお聞かせいただけますか。

■再質問3に対する市長の回答
 人口ビジョンに基づく政策というものが、そこまで細かいところにまで行き渡るような、細かい政策の施策とかにまで落とし込まれるようなものになるとは想定しておりません。なので、実際、現場にあります積み重ねによる政策との不整合とかということが直接的に生じるとはあまり思っておりません。
 特に御質問いただいた福祉であるとか子供施策であるとかの部分に関しては、現実に手前にある積み重ねの数字もさることながら、制度とかが国の法律等でよく変わります。そういったものに対しての対応というのは随時していかなくてはいけませんが、人口ビジョンから導き出されるべき政策というものは、もっと西宮全体の姿とかに関するようなものになるというふうに想定しておりまして、そうなってくると、細かい施策、事業に関して定めております部門別の計画というものに不整合、齟齬が生じるようなものとはあまり考えておりません。

■再質問4(田中まさたけ)
 国のほうも、いろいろ縦割りを今後解消していかなければいけないという中で、各部門の各省庁からおろされてくる政策というものがそういったものに整合されたものであるから、西宮市もそれに基づいていれば、それほど齟齬が出るものではないというお答えだったというふうに理解を致しました。
 ただ、今後、将来の人口ビジョンに基づいて総合戦略をつくるわけです。この中身というのは、国も今までの各省庁の政策がある中で長期ビジョンを策定して戦略を策定しているわけです。地方がつくる総合戦略については、地方の実情に応じてつくってくださいというふうになっています。
 ですので、当然この総合戦略を策定するにあたっては、これまでの各部局の政策というものときっちりと連携して、整合を図りながら策定していかなければならないと思うのですが、これまで西宮市のそうした取り組みというのが、私も、もう10年前ですかね、財政(改革)のことをいろいろここで議論させて頂いたときも、やはり各部局の連携がなかなかとれてませんねというお話をしたことがあります。
 今回につきましても、(政策局とその他の各局とで)連携を十分図っていかなければいけないと思っているのですが、これまでみたいにチームとかをつくったりするのかどうか、その辺の総合戦略を策定していくにあたっての市の取り組みの体制をお聞かせ頂けますか。

■再質問4に対する市の回答
 総合戦略の特に5ヶ年の計画という部分については、市の各部門にまたがりますので、各部門の今までの計画というのにやはり依拠しながら、また、新しいものを、少しどういうものを加えていくかということになってこようかと思います。その際に、やはり各部門を担当する各局と作業部会なり、あるいはチームをつくって、しっかりと議論していくなど、庁内挙げて連携して取り組んでまいります。

■田中まさたけ意見・要望
 市のこれからの取り組みの姿勢も聞かせて頂きました。ですので、先ほど最初の答弁でございましたとおり、人口ビジョンと総合戦略が今年度中に策定されるということですので、その中身をしっかりと期待しながら見ておきたいというふうに思います。
 繰り返しになるのですが、やはり人口ビジョンというのは、総合戦略の策定のためにつくるというものであってほしくないというのが私の思いでございます。ですので、先ほど、全庁で連携していく中で、全庁の皆さんがそうしたことを、市長の言葉にもありましたとおり、頭に入れながら政策が推進できる、計画が策定できる、そういった市政運営を今後して頂きたいということを要望にかえさせていただきたいと思います。

====ここまでが本会議場での議論の概要====

市民と共有する前に、政策を推進する市役所全体で共有するだけでも相当の時間がかかりそうです。
本当に残念なことです。

抜本的に市役所改革をしなければなりません。

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