今後の幼児教育のあり方についてー平成21年12月議会一般質問

2010年2月1日[カテゴリ:幼児期教育, 質問

西宮市立幼稚園教育振興プラン

 平成21年8月に、西宮市立幼稚園教育振興プラン(素案)が発表されました。
 
 公立幼稚園の統廃合に関する内容が具体的であるのは良いのですが、西宮市での「幼稚園教育のあり方」や「幼児教育の将来ビジョン」、「保護者負担の公私間格差などの課題の解消」については具体性に欠けていたことから、平成21年12月議会一般質問においては、西宮市立幼稚園教育振興プランについて取り上げて市と議論しました。

 一般質問の時間の都合上、目先の課題として「公私間での保護者負担の差の解消」と「公立幼稚園の統廃合問題」を抽出しました。

====本会議場での議論の概要====

平成21年12月議会一般質問

1.今後の幼児教育のあり方について
ア)西宮市立幼稚園振興プランの策定を受けて
■質問の背景(田中まさたけ)

 西宮市立幼稚園教育振興プラン(素案)(以後、「振興プラン」)は、本年7月7日に行われた市民文教常任委員会において発表され、夏休み中に行われたパブリックコメントにおいて、1万5,000人近くもの方から意見提出があり、これは前代未聞の多さであり、今回の振興プランがいかに粗末な内容であったかを物語っております。
 
 幼稚園は3歳児以上の就学前児童の7割弱が利用しており、その中でも8割の児童が利用している私立幼稚園に関しては、ほぼ無視をされている内容と言えます。これまで公私を問わず幼稚園教育についてまじめに取り組んでこなかった行政の怠慢が今回の振興プランの内容に表れており、保護者を初めとする関係者の怒りが噴出した結果であると考えております。
 
 実際に幼稚園児の保護者の1人としても、今回、幼児教育について改めて疑問を抱く機会となりました。今後、パブリックコメントにおいて出された意見、特に多数出された意見の趣旨については、真摯に受けとめた対応を強く要望しておきたいと思います。
 
 今回は、時間の都合上、振興プランにつきましては、大きく二つの問題、「公私間での保護者負担の差の解消」と「公立幼稚園の統廃合問題」について取り上げたいと思います。
 
 議場の皆様にはお手元の資料、表1とその下のグラフ(←クリックするとPDFファイルが開きます。)をご覧ください。
 公立幼稚園に通園する児童1人あたりに対する税負担が、私立に比べて3倍であるのに対しまして、保護者負担は、就園奨励金支給前で約2.5倍となっております。そして、就園奨励金は入園者の約7割の方に支給されておりますが、全支給額を全私立幼稚園児の数で割った1人あたりの年平均約5万3,000円を差し引いてもなお、公立と私立の保護者負担の差は年間10万円を超えております。
 
 距離的に公立を選べない地区がたくさんあり、たとえ公立を希望しても、すべての児童を受け入れられない状況にある中では、「高い保育料であっても好きこのんで私立を選んでいるのだから、保育料に格差があっても仕方がない。」と言わんがばかりにこの状況に向き合わないのは、甚だ乱暴であります。
 
 そこで、粗い試算とはなりますが、現在の私立の園児1人あたりの負担額を公立の負担額に合わせるためには、さらに年間約10万円が必要であることから、私立幼稚園の入園児数を単純に掛け合わせますと、年間約8億円の財源が必要になると考えられます。
 一方で、表3にお示ししましたが、振興プランに示されました統廃合による経費削減の見込みは、概算で年間約2億8,730万円となるそうです。(公私間での保護者負担の差を解消するための財源としては)これでは全く足りません。
 
 後ほど少し触れますが、もともと公私間の保護者負担の差の是正と統廃合の問題は別問題として考えるべきです。

■質問1(田中まさたけ)
 公私間での保護者負担の差の是正に要する財源は、税負担と再配分の公平性の観点から確保されるべきと考えますが、市はどのように考えているのか、振興プランに示されている2倍以内、なぜ同程度ではなく、2倍以内の差と考えたのかも含めてお答えください。
 また、新年度からたとえ少しずつでも負担の差の是正に向けた取り組みを進めるお考えがあるのか、あわせて伺いたいと思います。

■質問1に対する市の回答
 公私間の保護者負担の格差是正の財源は税負担と再配分の公平性の観点から確保すべきとの御質問でございますが、個々の具体的な課題解決につきましては、多岐多様な施策の中から限られた財源の中で総合的に判断しながら推進していくことが求められます。

 幼稚園保育料の公私間格差是正につきましては、パブリックコメントなどでも多数の御意見をいただき、教育委員会と致しましても、重要課題の一つであるという考えに変わりはございません。
 また、公私間における保護者負担の格差を縮小し、より広い選択肢を提供する必要があると思われますが、当面2倍以内を目指して、段階的に増額を図りたい考えでございます。
 さらに、国の動向によっては、就園奨励助成金制度の一部で来年度より補助金が引き下げられる可能性もあり、その財源確保に向けた対応にも努めなければならないと考えております。

 また、本市の財政を取り巻く状況はなお厳しい状況にある中、課題解決に向けては、新たな財源を求めるだけではなく、効率的な運用など、自助努力も必要であると考えております。そのため、公私間格差是正の財源につきましては、(公立幼稚園の統廃合による経費の)削減額をその一部に充てるよう、今後とも財政当局と協議を行っていく考えでございます。

■意見・要望(田中まさたけ)
 国の動向によっては就園奨励助成金制度に関する補助金が来年から引き下げられる可能性があるということで、これは、恐らく政権交代の影響なのかと推測しているところですが、これは影響がはかり知れません。
 その財源がなくなったら、当然市の財源を捻出するのかどうかというところ、これは急になくなったら、困る方がたくさんいらっしゃると思います。ですので、市も大変かとは思いますが、私立幼稚園の需要は高いですから、きっちりと対応していただいて、公立と私立の保護者の負担の格差を是非ともなくしていただきたいと思います。

 また、4歳、5歳のお子さんが全員幼稚園か保育所に行っているわけではなく、表6に示した通り、3、4、5歳の児童を合計しても100%にはなってません。保育所にも幼稚園にも入園していない児童がいるご家庭の中には、私立では負担が大きすぎて、公立にも入れないから、結局幼稚園にも行けないということになっている方もいらっしゃるのではないかと推察しています。
 今回策定されております「次世代育成支援行動計画後期計画」の中では、そういった部分を把握していくと掲載していたと記憶していますが、なかなかその姿勢が見えてきません。実態調査も含めて、対応していかないといけないと思います。
 この就園奨励金がもっと充実していれば、幼稚園に行ける人がいるかもしれませんので、状況を把握して、是非とも重点化していただいて、真摯に取り組んでいただきたいと強く要望しておきたいと思います。

 なお、お断りしておきますが、私の子供も幼稚園でお世話になっていますが、うちは就園奨励金支給の対象にはなってませんし、対象にして欲しいと求めているのではないので、その点はお断りしておきます。
 
====ここまでが本会議場での議論の概要====

 就学前児童の教育=幼児教育は、公立幼稚園も私立幼稚園も義務ではありません。入園試験があるわけでもありません。そして、園児1人当たりに投じている公費負担額が3倍近く開き(公立の方が高い)がある中で、公立と私立での保護者負担が「なぜ同程度ではなく、2倍以内の差が許容されるのか」という質問に対して明確な根拠は示されず、「当面2倍を目指す」と回答するにとどまりました。
 これは、これまで受益者負担の観点をもたず、質と負担の割合など明快な制度設計がなされているわけではないことがはっきりしたと言えます。
 その結果、「公私間での負担の格差をなくすべき」、「税投入の公平化を図るべき」という主張が生じたのは、当然ことと言わざるを得ません。

 そして、この振興プランの構成、記載では、私立幼稚園の保護者負担を軽減するために公立幼稚園を統廃合して財源を確保するのかという誤解を招きます。そうではなく、元々ニーズの変化により入園児が減少している公立幼稚園を統廃合する必要性があり、その結果生まれた財源を、幼児教育センターの整備など幼稚園の振興に充てる計画なのです。

 ですので、公私間格差の是正と公立幼稚園の統廃合は、別問題として明確に記載するべきなのです。

 「公立幼稚園の統廃合問題」に関する議論については、次のコラムに掲載します。

記事一覧