補正予算が否決された経緯と討論―6月議会(4)

2018年7月31日[カテゴリ:商工政策

私たちの会派が提案した修正案以外にもう1件、
会派・ぜんしんより修正案が提案されました。
以下、それら修正案に対する討論です。

===本会議場で述べた討論概要===

■都市ブランド発信事業経費の修正案に対する賛成討論

政新会は、ただいま上程中の議案第500号
「平成30年度西宮市一般会計補正予算(第1号)」及び「修正案2件」につきましては、
2つの修正案に賛成するとともに、修正部分を除く原案に賛成します。

以下、理由を述べます。
まず、
都市ブランド発信事業経費の委託料598万円を削除する修正案についてです。

この補正予算は、
酒蔵ツーリズム推進事業として、
阪神西宮駅に情報発信拠点を(無料で)設置してもらい、
その運営を阪神電鉄関連会社に、
随意契約により、月額75万円で委託するための費用であります。

政新会は、市が観光施策を推進することについては賛成する立場であり、
これまでも、各施策の効果を高めるべく、
様々な場面で提案や意見も述べてまいりました。

そして、本事業につきましては、
以下3つの理由により、
これを時期尚早であると判断しました。

(1)まず一つ目は、本来この事業の主体となるべき本市の観光協会が脆弱すぎるという点です。

民生常任委員会の質疑において、
観光協会の事務局長を約9か月間、
法令に違反して本市職員が務めざるを得なかったことや、
まちたび博において
本市職員がみずからを観光協会の職員であると名乗っていることなど、
同協会が事実上機能せず、
業務についてはほぼ、市が肩代わりしていることが明らかになりました。

また同じく、
都市ブランド発信拠点とした阪急西宮北口、阪神甲子園の店舗は、
結局短期間で閉鎖を余儀なくされているのも現実です。
まず為すべきは、
これらの総括と観光事業及び観光協会の今後を定めることであり、
これなしに新たな拠点の設置を企図するのは時期尚早と考えます。

(2)次に、肝心の「酒蔵ツーリズム」が本市においてまだ確立されていないという点です。

酒蔵ツーリズムとは
「酒蔵の開放や酒蔵での体験イベント、スタンプラリーなどの仕組みづくり、外国人向けツアーのプロデュースなど」を総合的に指すものとしています。
確かに酒蔵通り周辺には各酒造会社のショップやレストランがあり、
それぞれ魅力的な事業を展開されておられます。

しかし、それらは体系化されておらず、
酒蔵の見学についても、個人を随時受け入れるところはありません。

ショップの案内であれば看板や地図を表示すれば事足りますし、
そもそも個別店舗の宣伝は各企業がするべきものです。
また、2020年度までの来訪者数の目標はあるものの、
これは情報発信拠点を設置することによりもたらされるものではなく、
酒蔵ツーリズムが確立されることで
期待される効果、目標と言って良いと思います。

ですので、案内拠点を用意する前に、
酒蔵ツーリズムを体系化し、
例えば市内のホテルに宿泊する外国人を対象とした
オプショナルツアーを企画して実績を積むなど、
やるべきことはまだまだあります。

これ(酒蔵ツーリズムの体系化)を為さずに先行する拠点づくりは、
投資効果に見合わない可能性が極めて高く、
「やってみなければわからない」というレベルにさえ
達していないものと考えます。

(3)最後に、「酒蔵ツーリズムに対する関心・需要は高まっている」とする市当局の認識に疑問が残るという点です。

市は、酒ぐらルネサンスの来場者が10万人を超え、
また、蔵開きや酒蔵アンテナショップめぐりでは、
最近、月を追うごとに来場者が増加している⇒酒蔵ツーリズムに対する関心が高まっている⇒だから案内拠点が必要だとされています。

しかし、定着したイベントの来場者が多いうえに、
新酒の試飲やプレミアム販売、イベントが活性化していることをもって、
酒蔵ツーリズムの案内所が必要な根拠とすることには、
そもそも無理があります。

なぜなら、そこ集まってこられる方々は、
情報収集をすでに終えた方たちであり、
少なくとも個々人や外国人観光客が西宮駅に降り立ち、
酒蔵を探してさまよう姿は、今のところ想像がつきません。

仮に、本当に関心が高まっているのであれば、
必要なのは、案内拠点よりもむしろ、
公共交通機関、移動手段の充実であると考えます。
今回は、阪神電鉄より場所の無償提供と有償の案内業務が
セットになって提案があったわけですが、
この案内業務によって、「酒蔵ツーリズム」をどう確立し、
この拠点の設置によって、どの程度の経済効果を上げるのかなど、
見込みも目標値も提案がなかったわけです。

観光政策は、経済波及効果を追求し、
産業振興や地域活性化に寄与することを
目的としていることは言うまでもありません。

今回は、本市にある伝統産業を守ることも目的の一つとされていますが、
血税を投入する以上、実施する施策は、
民間事業者以上に、その目的達成に向けて綿密に企画されなければなりません。

よって、現段階では、
案内業務の随意契約は見送り、
まずは下地作りに専念していただくべきと考え、
委託料を削除する修正案に賛同するものです。

■行政戦略事務経費(政策推進全般に関する助言・支援)の削減に対する討論

次に、行政戦略事務経費(政策推進全般に関する助言・支援)に関する修正案につきましても、賛成の立場から、意見を申し上げます。

当該事業につきましては、
(1)どのような課題に対して専門家を招聘するのか、
(2)専門家は何人招請し、どの程度のペースで何回お越し頂くのか、
(3)その専門家には、どのような成果を期待するのか、
(4)その課題に対して、その専門家がどのような実績を上げているのかなどの「招聘する専門家の妥当性」などは、どの段階で示されるのか、

こうした大切なことが、全てあいまいな状態のままとなっています。

要は、専門家に何をしてもらうのかくらいは明確にしていただかないと、
その経費の必要性を判断できないわけです。

270万円と少額であるとはいえ、市民が納めた血税です。
市長に予算編成権があるとはいえ、
きっちりと制度設計されることなく、
市長の意のままに予算が計上され、
議決が得られさえすればそれでよいというものではないことを、
石井市長には改めて認識していただきたいと思っています。

ましてや、市長の知人に対する「利益誘導」との疑念が
払しょくされていなければなおさらです。
石井市長もそのような疑念を抱かれたままでは不本意だとも思いますし、
このまま予算を執行するとすれば、
そもそも招こうとされている専門家に失礼な行為と言わざるを得ません。

以上のことから、今後、当局において、
さらに内容を精査すべきと考え、修正案を提案したものです。

修正部分を除く原案につきましては、
各委員会で政新会の所属議員より指摘、意見も申しておりますが、
賛成と致します。
以上、討論と致します。

===ここまでが、本会議場で述べた討論の概要です===

結果、2つの修正案はいずれも賛成者少数で否決されたことから、
この2つの予算が含まれる補正予算案全体に対して、
私たちの会派は、賛成することができなくなりました。
そして、
私たち政新会と、会派・ぜんしん、共産党(共産党からは修正案の提出なし)
の3つの会派が補正予算全体に反対することとなり、
補正予算案全体も賛成者少数となり否決されたというのが
補正予算が否決された経緯です。

このような結果になることも想定されたことから、
市政に対する影響を最小限に抑えるためにも、
今回の補正予算に賛成した他の会派に対して、
修正案に賛成してもらえるよう事前に説明をして回りましたが、
理解を得ることはできませんでした。

結局、
私たちが修正を試みた予算部分などを除いた補正予算が
改めて市より提案されることとなり、
8月1日に臨時の本会議が開催され、審議される予定です。

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