地域包括ケアシステム。
地域包括ケアとは、
「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、
生活上の安全・安心、健康を確保するために、
医療や介護、予防のみならず、
福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが
日常生活の場で適切に提供できるような地域での体制」
のことです。
私が初めて「地域包括ケアシステム」のことを知ったのは、
平成17(2005)年度に
厚生常任委員会(福祉・環境・中央病院を所管)を担当した際に、
広島県尾道市にある公立みつぎ総合病院を視察させて頂いた時でした。
この病院は、
当時の院長の確固たる信念のもとで経営され、
介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどからなる
「保健福祉総合施設」と、
「地域包括支援センター」、「介護予防センター」が併設された
「公立病院」でした。
当時の院長が自ら、
私たちにレクチャーして頂いたのですが、
超高齢社会を見据えたビジョンと熱い思いをもって、
取り組んでおられる様子がひしひしと伝わってきました。
当時は、
病院経営について視察したのですが、
この病院は併設された施設全体で黒字を達成しており、
是非とも取り入れたい取組みであるとは感じましたが、
西宮市立中央病院でこのような体制を実現するには程遠いと感じていました。
現在は、
この病院で実践された「地域包括ケア」の考え方がモデルとなり、
全国で地域包括ケアシステムの構築が進められようとしています。
当時はパイオニアだった取組みが、
「病院」に留まることなく、「地域」全体での取組みとして、
「全国の標準になろうとしている」というのは、
本当にすごいことだと思います。
そして、
将来ビジョンと実践が大切であることを実感します。
あれから7年。
ようやく西宮でも「地域包括ケア」の議論ができる環境になりました。
私も、平成24(2012)年12月議会一般質問で取り上げました。
=======ここから、本会議場での議論の概要=========
3.今後の高齢化の対応について
ア)地域包括ケア体制の確立に向けた取り組み
■質問の背景・主張
資料は表面に戻ります。
(↑クリックして参照しながらお読みください。)
厚生労働省の調査によると、
一般的に75歳までは介護を必要とせず、
これまでどおりの生活ができ、
80代になると介護を必要とする度合いが進み、
80代後半になると、
特定の介護付き施設に入居する可能性が高くなるそうです。
資料には、
国立社会保障・人口問題研究所の推計を用いて、
本市の人口ピラミッドの移り変わりを示しました。
団塊の世代の方々が75歳以上となる
2025年の人口ピラミッドは図2に、
その後、推計が存在する最も先の
2035年の人口ピラミッドは図3のとおりとなっております。
そして、図4は、図1から3をまとめたものです。
2025年には、
75歳以上の人口は2010年の約1.8倍、
85歳以上の人口は約2.1倍となると推計されています。
また、
2035年には、
75歳以上の人口が約1.8倍、
85歳以上の人口が約3.3倍となる計算になります。
また、
図5に示しましたが、
2025年には、
65歳以上の高齢者のうち
75歳以上の高齢者が占める割合が6割になると推計され、
それをピークに、
その後、2035年には、
高齢者の総数は増えるものの、
75歳以上の高齢者の比率は少し下がり、
55%になると推計されております。
今後、ますます介護保険施設が不足し、
病院や診療所も不足することが予想されます。
そして、
ひとり暮らしの高齢者や高齢者夫婦世帯が増大し、
このまま医療技術が向上しなければ、
認知症高齢者も増大するでしょう。
孤独死や老老介護の問題も
深刻さを増すと考えられます。
よって、
在宅ケアの体制の充実は喫緊の課題であり、
在宅医療の充実や地域医療体制の充実、
地域包括ケアの体制の確立が急がれます。
そして、平成23年6月に、
地域包括ケアシステムの実現などに向けて、
介護保険法等が改正されました。
地域包括ケアとは、
「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、
生活上の安全・安心、健康を確保するために、
医療や介護、予防のみならず、
福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが
日常生活の場で適切に提供できるような地域での体制」
と定義されております。
しかし、
今年の4月に示された
西宮市の高齢者福祉計画・介護保険事業計画では、
設定された生活圏域ごとの課題、
例えば医療と介護の連携を進める上で
重要となる在宅医療支援診療所や訪問看護ステーションの
現状と課題なども示されておらず、
地域ごとの課題の分析に基づく計画とは言えません。
そして、
過去の一般質問における市の答弁では、
メディカルケアネット西宮を組織し、
医療と介護の連携を模索している様子が伺えますが、
具体的な現状分析や課題の洗い出しなど、
これからの連携のあり方を模索する動きが見えてきません。
具体的には、
例えば、地域連携パスの活用についても、
他市では、病院間における地域連携クリティカルパスの導入促進や、
介護サービス事業者との共有について取り組んでいる自治体もありますが、
本市では利用状況の把握すらされていません。
■質問
西宮市高齢者福祉計画・介護保険事業計画では、
地域包括ケアの体制の構築を見据えた取り組みの推進と掲載されておりますが、
医療と介護の連携について、
市内でどのような体制を構築しようと考え、
どのような課題があると認識し、
どのような取り組みを進めようと考えているのかお尋ね致します。
■回答
今年度からスタート致しました高齢者福祉計画・介護保険事業計画の第5期計画におきまして、
高齢化の進展や高齢者の保健、医療、福祉を取り巻く環境の変化などに適切に対応し、
高齢者が要介護状態になっても
可能な限り住みなれた地域において安心して生活ができるように、
地域包括ケアを一層推進していく施策について示しております。
具体的な取り組みと致しましては、
在宅生活における介護と医療の連携のための仕組みづくりがございます。
本市では、
医療と介護の連携を推進するために、
市内の医療や介護に従事する人を対象に、
勉強会などの活動を通して専門性の向上を図るための連絡会として、
メディカルケアネット西宮──以下「連絡会」と申しますが、
連絡会を平成23年11月に設置して、
支援をしているところでございます。
この連絡会の活動と致しましては、
毎月1回の代表者会議を行うほか、
勉強会としてパネルディスカッションやシンポジウム、
講演会を開催致しました。
さらに、
市内の五つの圏域ごとに事例検討会を開催し、
地域ごとに様々な意見交換を行いました。
このような勉強会や事例検討会を通して、
医療や介護に携わる人たちの顔が見える関係づくりが少しずつ可能となり、
要介護者に対して介護ニーズを充足させるだけでなく、
医療ニーズを適切に組み合わせたケアプランづくりをすることで、
サービスの向上につながるものと考えております。
連絡会には、
新たに薬剤師会や
訪問介護従事者連絡協議会、
医師会の有志の御参加もいただき、
これまで以上に
医療、介護の垣根を越えた連携強化につながる体制が整いつつあります。
しかしながら、
まだ医療関係者からの参加が少ないこと、
小規模事業者から参加しづらいといった課題もあることから、
引き続き、
顔の見える関係づくりを目標に、連絡会の支援を続けてまいります。
また、
地域連携パスの活用についてでございますが、
入院による急性期の治療や、
リハビリテーションから退院後の在宅療養まで、
切れ目なく適切な介護や医療サービスが提供できるよう、
関係機関が情報を共有するためには有効な手段であると考えておりますことから、
連絡会の中で提案してまいります。
今後も、連絡会を幅広く関係機関に周知し、
医療や介護に従事する人たちを初め、
在宅生活の御家族、地域住民とともに考える機会をつくり、
誰もが住みなれた地域で安心して生活ができるように、
医療と介護の連携づくりを推進してまいります。
■意見・要望
今日は、医療政策についても取り上げました。
西宮市総合計画では、地域医療体制の充実が項目としてございます。
本市においても、市立中央病院もございますし、応急診療所、また、各種検診事業、そうした様々な医療に関する事業が実施されておりますが、国や県の政策に基づいて、一元的に情報を把握して市としての医療政策を推進する部署が、今のところありません。
現在、市立中央病院の移転を検討していますが、「市の今後の医療政策はどうなっていくのか」ということが、まだまだ不明確です。ですので、市としても、「医療環境を今後どのようにしていくのか」ということ、権限の問題がありますので限界はありますが、市としてできることもたくさんあると思いますので、そうしたことをきっちりと示すべきと感じております。
また、今回、「メディカルケアネット西宮」という組織をつくって、顔の見える組織づくりをして連携を図ろうとしておりますが、市には、今、福祉に関しては担当している部署があるわけですから、今後、医療に関することを担当する部署が医療関係者との関係を築いて、その部署と(介護事業者との関係を築いている)介護の部署が市役所内で連携すれば、医療と介護の連携ももっと進めていけると思われますので、市においては、是非とも医療政策を担当する部署を設置していただきたいと思います。
=======ここまでが、本会議場での議論の概要=======
現在は、
地域包括ケアシステムの構築に向けた取組みを
始めたばかりです。
そして、
まずは、医療と介護の連携強化を目指し、
民間の介護や医療の従事者をメンバーとする
「メディカルケアネット西宮」を組織して、
横のつながりをつくっていくことから始めています。
今後は、さらに具体的なアクションが必要です。
この組織での取り組みがどのようにサービスの向上につなっがているのか検証も必要です。
続きは、後日に掲載します。