学校給食調理業務の民間委託

2008年5月15日[カテゴリ:子育て・教育, 財政・財政改革, 質問

平成15年12月議会(←クリックする内容を掲載したコラムが開きます。)で取り上げてから、4年が経過した平成20年3月に、改めて一般質問で取り上げ、直営で行われている学校給食調理業務について検証しました。

質問1に対する回答において、直営のままで人件費を削減しても、給食サービスの向上にはつなげられていないことが示されました。

質問2に対する回答において、食の安心・安全の確保に関して、学校給食衛生管理指針の作成、研修や学校訪問、9種類の給食関係帳票の作成は、全て教育委員会事務局が実施していることであり、調理員が果たしている主体的な役割については何も答えられず、公務員である調理員はそれらを確実にこなしていることだけが示されました。

これらのことから、「調理をする方々が公務員である必要はない」と言えると考えるわけですが、質問3において、平成14年の「学校給食検討委員会提言書」に基づいて作成された西宮市学校給食基本方針を根拠に、給食の質の向上ではなく低下しないように注意して「直営体制に固執」する姿勢が暗に示されています。

教育委員会事務局主導で、わずか半年の作業で策定された「学校給食検討委員会提言書」に基づいているだけで、条例のように議会の議決もされていない「西宮市学校給食基本方針」が金科玉条のごとく扱われることに強く違和感を覚えます。

以下、そのやり取りを掲載します。

=====本会議場での議論の概要=====

平成20年3月議会一般質問

3.学校給食の運営効率化における調理員の人員配置計画と調理業務の民間委託化について
■主張

平成15年12月に、学校の給食調理部門を一部の小・中学校において民間に委託することに対する見解を伺いました。
平成14年に検討委員会から出された答申に基づき、直営のまま嘱託化を進めることで運営の効率化を図る方針を決定し、これまで取り組んでこられました。
こちらは表の5と6(←クリックするとPDFファイルが開きます。)に示しましたが、平成14年度と18年度の決算を比較すると、給食費、運営関連経費全体で約1億円削減されておりまして、そのうち人件費は約5,000万円削減されています。

一方で、平成20年3月末時点で、全正規職員100名中55歳から60歳の方が26名となっておりまして、近年、大量に退職者が出ることが確実であります。ここ数年のうちにチーフ調理員を正規職員で全校に配置することが不可能になるということが推測されます。正規職員の採用を再開するのか、それとも新しい制度で雇用している嘱託調理員にチーフの職まで任せるのか、それとも一部の小学校や中学校を民間に委託するのかという選択を迫られていると推測できます。

お隣の尼崎市が来年度から委託化を進める方針を決定しています。また、中核市35市のうち約57%が民間に委託しており、本市と同じく本年4月より中核市となる3市については、すべて民間委託しております。また、全国的に調理業務を民間に委託する市町村が増えており、平成19年度末段階では40%強になっているという総務省が発表しているデータもありまして、給食の調理部門の委託化は社会情勢の主流という状況にあります。

私自身、調理業務に直接携わる職員がすべて公務員でなければならないという理由を見出すことができません。
民間委託の導入メリットは、コスト削減はもちろんのこと、調理員の労務管理業務が民間に移るため、これまで欠勤の補充など調理のフォローに手をとられてきた栄養士も献立の作成や食育に集中できる、本来業務に集中できるといったことや、社会情勢の変化への対応が早い、そして、コストのみならず質の面からも官民比較が可能となり、サービスの向上に関する相乗効果が期待できるといったことが挙げられると思います。

そして、人材育成や共済費、退職金に要するトータルコストを考慮すると、今後正規職員の採用を再開するという選択肢は考えにくいと思われます。

■質問1
削減された経費の一部は、給食サービスの向上、例えば設備投資とか食の安心・安全の確保の充実に充当されるのが理想と考えますが、学校給食調理業務の運営効率化を進めるに当たり、給食サービスの向上の観点から、施設、設備等の改善にどのような効果があったのか、見解をお聞かせください。

■教育委員会の回答
 市教委が設置を行う施設や設備につきましては、すべての給食室について、工事や設置を行った時期を把握し、それぞれの耐用年数や使用状況をもとに、回転がまや食器消毒保管庫などを計画的に交換し、工事を実施しており、厳しい財政状況の中、学校給食の円滑な実施に支障がないよう努めてまいりました。さらに、現在は、児童数の急増に対しての対策も行っております。

■質問2
食の安心・安全の確保に関して、調理部門ではどのような措置が講じられ、調理員はどのような役割を担っているのか、改めてお尋ねします。

■教育委員会の回答
 文部科学省及び県教委の指針に基づいて西宮市の学校給食衛生管理指針を作成し、研修や学校訪問を行い、衛生管理についての徹底を図っております。さらに、給食室においては、衛生管理チェックリスト、作業工程表、物資検収簿など、毎日9種類の給食関係帳票を記録し、作業の確認を行うとともに、チーフ調理員が中心となり、各調理員が自覚を持って安心・安全な給食が提供できるよう最大の努力を行っております。

■質問3
正規職員の大量退職を目前にしている現在、不足する人員を補充する方針を検討する際に、平成16年5月に示されたアウトソーシング推進指針にのっとり、調理部門を計画的に民間に委託する考えはないものか、改めて見解をお聞かせください。

■教育委員会の回答
 学校給食調理業務の民間委託の推進につきましては、平成11年度に策定されました第2次行財政改善実施計画の取り組みの一環として課題となっておりました。このことから、学校給食の将来のあり方や委託による影響があるかどうか、既に民間委託を実施している他都市の実情などをさまざまな観点から検討を行うとともに、平成13年度に西宮市学校給食検討委員会を設置致しました。

検討委員会では調理業務の効率的な運用について検討が重ねられ、直営方式の中で正規調理員の退職を嘱託調理員に切りかえるとともに、給食数や調理作業の実態に即した効率的な配置基準に改正することなどにより、人件費を削減し、民間委託に近い経費で運営されたい旨の提言をいただきました。

教育委員会は、この提言をもとに、平成14年9月に西宮市学校給食基本方針を策定し、平成15年度よりチーフ調理員は正規職員、それ以外の調理員は7時間15分勤務と6時間15分勤務の嘱託調理員とする新体制に移行することとし、現在、調理員の退職に伴う補充は短時間勤務の嘱託調理員に切りかえ、人件費の削減に努めているところでございます。しかしながら、第3次行財政改善実施計画の実施や現行の体制における調理業務を取り巻く情勢の変化などを見きわめる必要があり、早期に整理すべき課題があると認識しております。

今後、学校給食の質や安全性の低下を招くことのないよう、効率的な運用について引き続き検討する考えでございます。

■意見・要望
 とりあえず調理部門のほうで質の確保に関しては事細かに定められた安全衛生など安心・安全に関するマニュアルというものが存在し、こうしたものをきっちりと守っていけば安全に給食が作ることができるという状況です。ということは、調理をする方々が公務員である必要はないと思いますので、壇上でも申しましたけれども、民間に委託するという効果というのは、コスト削減だけではありませんので、その辺も含めて、今後の人員配置の計画を立てていただきたいと思います。

=====ここまでが、本会議場での議論の概要=====

今後も、機会を捉え、追及し続けなければならないと考えています。

■最終目標
学校給食の質の向上
財政改革(効率的な行政運営)

■講じるべき手段
学校給食調理業務の民間委託の導入

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